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22 バシリア
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俺はダメもとで学院長もとい伯母さんにそのものズバリ聞いてみることにした。
面談を申し出るとあっさりと許可されたのは意外ではある。
「ふむ。そういうことですか」
伯母さんは癖なのか、一通り喋るとくいっと黒縁眼鏡を直す。
髪はひっつめ髪にしたままだし、相変わらずお洒落とは無縁みたいだ。
しかし、よく見ると夢で見た母さんと顔立ちが似ている気がする。
じっくりと見たことが無かったから、気付かなかったし、敢えてそう見えないようにしているんだろうか。
本当はきれいなのにそう見えないようにしたいんだろうなあ。
「知ってるんですか!」
「こほん」
何だか、知っていそうな雰囲気だ。
さすがは学院長。
期待していいんだろうか。
下調べは大事だからなあ。
「私も詳しいことは知りません」
「知らないんかよ」
「何でも知っていると思うんじゃないよ、クソガキ」
おお、怖い。
学院長として、器用なことに普段、何枚もの猫を被っているんだぜ。
どうやら俺は身内ってことで本性を取り繕うつもりがないらしい。
「それで知っていることは何ですか。少しはあるんだよね?」
「ふむ。いいでしょう。そういうことであれば」
「お願いします」
「分かりました。少しだけ、ですよ」
激昂してみせたのはブラフだったってことか。
それで引くようであれば、教える気がなかったに違いない。
何となく、伯母さんの気持ちも分かる。
生半可な覚悟で知るべきことではないってことなんだろう。
「テイラー・サウルの経歴は謎に包まれています。彼は環太平洋地域……アメリカから、この地へと渡ってきた者。命懸けで海を越えてくる者はえてして、そういうものなのです」
「それ以外は分からないってことですか?」
「いいえ、それもまた、少し違うわ、フリオ」
一呼吸置いて、伯母さんはまた黒縁眼鏡をくいっと直した。
何とも言えない緊張感が漂うのは気のせいではない。
「あの男はブリテンで財を成した。ここまでは分かっている点です。そして、それ以上は分からない。どこにいるのかも」
「ブリテンって、北の?」
「そうよ。他にブリテンがあるの? 勉強が足りなかったのなら、留年したいのかい? それでも私は構いませんよ」
キラリと黒縁眼鏡が光ったような!?
いやいや、ごめん被るよ。
全力で首を横に振った。
何が悲しくて、卒業できるのに留年しなきゃいけないんだよ。
「まずはここから、北東にあるボルドーの町を目指すといいでしょう。そこのギルドは公正であると評判です」
「ボルドー……ワインの?」
「そうです。なぜ、そういうことだけ、あなたは知っているのでしょうね。そこに私の知り合いがいます。話を通しておきましょう。甥がそこに向かうと……」
そして、伯母さんは初めて、薄らとだけど笑顔を浮かべた。
学院に入ってから、一度もそんな顔を見たことがない。
いつも仏頂面を下げていた。
鉄仮面なんて言われ方をしていた人が笑ったんだよ!
「ありがとよ、伯母さん」
「その”おば”というのはやめなさい、フリオ。おばさんみたいに聞こえるから」
いや、伯母さんだから、間違ってないと思うんだ。
それなのに女神様みたいな微笑みを浮かべながら、何で絶対に許さないという威圧感を出してくるんだか。
「バシリー。いえ、ベティと呼ぶことを許可します」
「は、はあ。ええ。べ、ベティさん」
「何ですか、フリオ」
どうして、そう嬉しそうな顔をするんですかね。
そこで思い出したのはじっちゃんのことだ。
じっちゃんもそういえば、こんな人だったわ。
一度、心を許すと甘い人なんだよ。
ただし、そこになるまでが厳しいから、大概の人は心折れちゃうんだけどな!
面談を申し出るとあっさりと許可されたのは意外ではある。
「ふむ。そういうことですか」
伯母さんは癖なのか、一通り喋るとくいっと黒縁眼鏡を直す。
髪はひっつめ髪にしたままだし、相変わらずお洒落とは無縁みたいだ。
しかし、よく見ると夢で見た母さんと顔立ちが似ている気がする。
じっくりと見たことが無かったから、気付かなかったし、敢えてそう見えないようにしているんだろうか。
本当はきれいなのにそう見えないようにしたいんだろうなあ。
「知ってるんですか!」
「こほん」
何だか、知っていそうな雰囲気だ。
さすがは学院長。
期待していいんだろうか。
下調べは大事だからなあ。
「私も詳しいことは知りません」
「知らないんかよ」
「何でも知っていると思うんじゃないよ、クソガキ」
おお、怖い。
学院長として、器用なことに普段、何枚もの猫を被っているんだぜ。
どうやら俺は身内ってことで本性を取り繕うつもりがないらしい。
「それで知っていることは何ですか。少しはあるんだよね?」
「ふむ。いいでしょう。そういうことであれば」
「お願いします」
「分かりました。少しだけ、ですよ」
激昂してみせたのはブラフだったってことか。
それで引くようであれば、教える気がなかったに違いない。
何となく、伯母さんの気持ちも分かる。
生半可な覚悟で知るべきことではないってことなんだろう。
「テイラー・サウルの経歴は謎に包まれています。彼は環太平洋地域……アメリカから、この地へと渡ってきた者。命懸けで海を越えてくる者はえてして、そういうものなのです」
「それ以外は分からないってことですか?」
「いいえ、それもまた、少し違うわ、フリオ」
一呼吸置いて、伯母さんはまた黒縁眼鏡をくいっと直した。
何とも言えない緊張感が漂うのは気のせいではない。
「あの男はブリテンで財を成した。ここまでは分かっている点です。そして、それ以上は分からない。どこにいるのかも」
「ブリテンって、北の?」
「そうよ。他にブリテンがあるの? 勉強が足りなかったのなら、留年したいのかい? それでも私は構いませんよ」
キラリと黒縁眼鏡が光ったような!?
いやいや、ごめん被るよ。
全力で首を横に振った。
何が悲しくて、卒業できるのに留年しなきゃいけないんだよ。
「まずはここから、北東にあるボルドーの町を目指すといいでしょう。そこのギルドは公正であると評判です」
「ボルドー……ワインの?」
「そうです。なぜ、そういうことだけ、あなたは知っているのでしょうね。そこに私の知り合いがいます。話を通しておきましょう。甥がそこに向かうと……」
そして、伯母さんは初めて、薄らとだけど笑顔を浮かべた。
学院に入ってから、一度もそんな顔を見たことがない。
いつも仏頂面を下げていた。
鉄仮面なんて言われ方をしていた人が笑ったんだよ!
「ありがとよ、伯母さん」
「その”おば”というのはやめなさい、フリオ。おばさんみたいに聞こえるから」
いや、伯母さんだから、間違ってないと思うんだ。
それなのに女神様みたいな微笑みを浮かべながら、何で絶対に許さないという威圧感を出してくるんだか。
「バシリー。いえ、ベティと呼ぶことを許可します」
「は、はあ。ええ。べ、ベティさん」
「何ですか、フリオ」
どうして、そう嬉しそうな顔をするんですかね。
そこで思い出したのはじっちゃんのことだ。
じっちゃんもそういえば、こんな人だったわ。
一度、心を許すと甘い人なんだよ。
ただし、そこになるまでが厳しいから、大概の人は心折れちゃうんだけどな!
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