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23 バスに揺られて
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「バスって、すげえな」
「田舎者バレるから、やめてよねぇ」
オルガは人生初の乗合バスに乗って、興奮が収まらない俺に向けて、何とも辛辣な視線と口撃を向けてくる。
俺は確かに田舎者だ。
それは認めよう。
バスなんて、なかったんだ。
仕方ないだろう。
これは好奇心であって、ワクワクしてどうしようもないんだ。
なぜ、俺がオルガと二人、乗合バスに乗っているのか。
本当は三人旅の予定だった。
スリーパーはまだ、療養中で当分、復帰が叶わない。
あの肉達磨のような姿は偽装体であって、あれを再現するのがまず、難しいらしい。
そこで新たな訓練をしなければ、いけないとのことで復帰が遠のいた。
「大丈夫なのか?」
「オラ、すぐに治るでござるよ」
「ご、ござる?」
「知らないでござるか。東洋には……」
最後に会った時はそんな会話をしていたので恐ろしく、不安だ。
「今度は考え込んで忙しいわね?」
「いや、ちょっと色々とありすぎてなあ」
「ふぅ~ん」とだけ返すとオルガは窓の方を向いた。
俺だって、窓側の席が良かったんだが、「レディファーストって、知らないの?」と言われると何とも言えねえ。
仕方ないので譲った。
じっちゃんも言っていた。
女性には優しくしろってな。
オルガがそのレディなのかは怪しいところだが、見てくれだけはレディと認めよう。
そうルックスは確かにイケている。
華があるってやつだろう。
いるだけで映える。
ただし、口を開かなければ、という条件が付くが……。
「なあなあ。それでどこまで行くんだっけか?」
「ブルゴスよ。そこまで出ないとポータルがないの。これも散々、聞いたと思うんだけど?」
そうだった。
少し、大きな町にはプレイヤーを管理するギルドの出先機関みたいなのがあって、そこにポータルも置かれている。
ポータルがあれば、所定のお金を払うことで別のポータルへと瞬間移動ができるらしい。
何とも便利だ。
ブルゴスは古来から、交通の要衝なだけあって、現在でも栄えていると聞いた。
ギルドの出張所も当然、あるのでそこから、ポータルでボルドーへ向かえばいいって、寸法なのだ。
「ああ。そうそう。そういえば、聞いた気もするなあ。まあ。オルガがいるから、でえじょうぶだろ」
「呆れた……。あんた、あたしがいなかったら、どうする気だったのよ?」
「それはその……何とか、なるだろ」
一を言ったら、倍以上返ってくるがこればかりは言い返せない。
全くもって、その通りだからだ。
しかし、覚えようとしても右から左に受け流してしまうので覚えられない。
「それなら、耳閉じなさいよ」とオルガにツッコまれたが、そうすると今度は聞こえない。
「あんたってさ。結婚したら、『母さん、着る物はどこかな?』、『母さん、お茶』って、全部奥さんに丸投げするんじゃないの?」
「い、いやあ。まさか。そんなわけないやろお」
「いいえ。どう考えてもそうなる未来しか見えなくて、将来の奥さんが可哀想だわー」
それはさすがに余計なお世話だと思ったが、オルガの言うことには一理ある。
人間、どうしても楽しがちだから、頼れる物があれば、そちらに寄りかかりがちになるもんだ。
だいたい、ここで下手に言い訳しようものなら、俺が白旗を上げるまで徹底的に論破してくるに違いない。
勝てる気がしない舌戦に出るほど、俺も馬鹿じゃないのでやめておく。
これは戦術的撤退であって、逃げた訳ではないのだ。
「なあなあ。あれも都会ではよくあることなのか?」
「あんた、バカよねぇ? どこの世界でも武器持って乗り込んで、喚くのは悪いヤツよ」
「そうだよなあ。そうだとは思ったよ」
ほとんど乗客もいない貸し切りバスのような快適な旅だったんだが。
何とも物騒な客が乗ってきたようだぞ。
「田舎者バレるから、やめてよねぇ」
オルガは人生初の乗合バスに乗って、興奮が収まらない俺に向けて、何とも辛辣な視線と口撃を向けてくる。
俺は確かに田舎者だ。
それは認めよう。
バスなんて、なかったんだ。
仕方ないだろう。
これは好奇心であって、ワクワクしてどうしようもないんだ。
なぜ、俺がオルガと二人、乗合バスに乗っているのか。
本当は三人旅の予定だった。
スリーパーはまだ、療養中で当分、復帰が叶わない。
あの肉達磨のような姿は偽装体であって、あれを再現するのがまず、難しいらしい。
そこで新たな訓練をしなければ、いけないとのことで復帰が遠のいた。
「大丈夫なのか?」
「オラ、すぐに治るでござるよ」
「ご、ござる?」
「知らないでござるか。東洋には……」
最後に会った時はそんな会話をしていたので恐ろしく、不安だ。
「今度は考え込んで忙しいわね?」
「いや、ちょっと色々とありすぎてなあ」
「ふぅ~ん」とだけ返すとオルガは窓の方を向いた。
俺だって、窓側の席が良かったんだが、「レディファーストって、知らないの?」と言われると何とも言えねえ。
仕方ないので譲った。
じっちゃんも言っていた。
女性には優しくしろってな。
オルガがそのレディなのかは怪しいところだが、見てくれだけはレディと認めよう。
そうルックスは確かにイケている。
華があるってやつだろう。
いるだけで映える。
ただし、口を開かなければ、という条件が付くが……。
「なあなあ。それでどこまで行くんだっけか?」
「ブルゴスよ。そこまで出ないとポータルがないの。これも散々、聞いたと思うんだけど?」
そうだった。
少し、大きな町にはプレイヤーを管理するギルドの出先機関みたいなのがあって、そこにポータルも置かれている。
ポータルがあれば、所定のお金を払うことで別のポータルへと瞬間移動ができるらしい。
何とも便利だ。
ブルゴスは古来から、交通の要衝なだけあって、現在でも栄えていると聞いた。
ギルドの出張所も当然、あるのでそこから、ポータルでボルドーへ向かえばいいって、寸法なのだ。
「ああ。そうそう。そういえば、聞いた気もするなあ。まあ。オルガがいるから、でえじょうぶだろ」
「呆れた……。あんた、あたしがいなかったら、どうする気だったのよ?」
「それはその……何とか、なるだろ」
一を言ったら、倍以上返ってくるがこればかりは言い返せない。
全くもって、その通りだからだ。
しかし、覚えようとしても右から左に受け流してしまうので覚えられない。
「それなら、耳閉じなさいよ」とオルガにツッコまれたが、そうすると今度は聞こえない。
「あんたってさ。結婚したら、『母さん、着る物はどこかな?』、『母さん、お茶』って、全部奥さんに丸投げするんじゃないの?」
「い、いやあ。まさか。そんなわけないやろお」
「いいえ。どう考えてもそうなる未来しか見えなくて、将来の奥さんが可哀想だわー」
それはさすがに余計なお世話だと思ったが、オルガの言うことには一理ある。
人間、どうしても楽しがちだから、頼れる物があれば、そちらに寄りかかりがちになるもんだ。
だいたい、ここで下手に言い訳しようものなら、俺が白旗を上げるまで徹底的に論破してくるに違いない。
勝てる気がしない舌戦に出るほど、俺も馬鹿じゃないのでやめておく。
これは戦術的撤退であって、逃げた訳ではないのだ。
「なあなあ。あれも都会ではよくあることなのか?」
「あんた、バカよねぇ? どこの世界でも武器持って乗り込んで、喚くのは悪いヤツよ」
「そうだよなあ。そうだとは思ったよ」
ほとんど乗客もいない貸し切りバスのような快適な旅だったんだが。
何とも物騒な客が乗ってきたようだぞ。
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