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24 バスジャック現る
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停留所で乗り込んできたのは三人組の男だ。
その三人組が武器を取り出して、運転手のおっちゃんを脅している。
一人が運転手を脅して、残りの二人が乗客を脅している。
乗客は俺とオルガ。
それに行商に出てきたのか、荷物の多いおばちゃん。
たったの三人だけだ。
「妙な真似するんじゃねえぞ。わ、分かったか」
おお。
まるでヒーロー物に出てくる悪党みたいなこと言っているぞ。
しかし、男と言ったが実際はどうだか、よく分からない。
なぜかって?
彼ら、人間のように二本足で歩いてはいるが、人間ではないからだ。
「なあなあ。都会はああいうのがたくさん、いるのか?」
「あんたねぇ……たくさんはいないけど、普通にいるんじゃない? そういうもんでしょ、この世界って」
そうなのか?
小声でもオルガのあたりは普通にきつい。
村でも見なかったし、学院にもそんな生徒はいなかった。
初めて見たんだから、この反応も仕方ないと思うんだ。
「アヒルとウサギと……なんだ、あのマスクマンは? あれが普通なのか。都会ってすげえんだな」
そうなんだ。
バスジャックしてきたのは動物の着ぐるみを着ていて、子供みたいに小さいヤツラ。
そうとしか見えないだけであって、そういう種族らしいんだが……。
オルガはもはや、返事すらしない。
ただ、じとっとした視線を向けてくるだけだ。
あの顔は「黙っときなさいよ」とでも言いたいんだろう。
「いいかー、このバスはおいら達が乗っ取ったー」
「そうだぞー」
アヒルとウサギが何か、強がって言っているが全く、怖くない。
脅しに使っている武器も食事で使う類のナイフとフォークだ。
殺傷力はあるもののバスジャックに向いた武器とはとても言えない。
何より、ぬいぐるみのような可愛らしい生き物がワイワイ言っているようにしか、聞こえないんだよなあ。
主犯はどうやら、マスクマン。
オルガ曰く、「あれはゴブリンね。彼らにとって、マスクは顔の一部で顔を隠すのが常識らしいわ」とのことだが、なんだそりゃ? としか言いようがない。
マスクも凶悪には見えないデザインになっている。
視界を取る為の目のところなんて、ぱっちりしていて怖いどころか、可愛いを目指しているようにしか見えない。
一体全体、何をしたいんだ、こいつら。
「なあ、オルガ。とりあえず、制圧してもいいのか、これ?」
「まぁ、いいんじゃない。怪我させないようにね?」
「何だよ、それ。そこは怪我しないでね、じゃないのか?」
「まさかぁ。あたしは彼らの方を心配しているのよ。オーバーキルになっちゃいそうだから」
ああ、そういう意味な……。
何だか、訳ありなようだし、うまく手加減するしか手はなさそうだ。
「じゃあ、ちょっくら、やってくる」
「「「ごめんなさい」」」
あまりにあっさりと片付いてしまった。
むしろ、運転手のおっちゃんが全く、慌てていないので気付くべきだったんだろう。
俺が席から、立ち上がって、彼らの武器を取り上げるまでにかかった時間、およそ十秒。
ほぼ一瞬とは言わないまでも秒で解決した。
力を加えるまでもなく、武器は簡単に無力化できた。
食器程度の代物であれば、指だけで曲げることが可能だ。
もっともそんな必要はなく、武器を取り上げるだけで終わった。
怪我人もいない。
運転手だけでなく、おばちゃんも慌ててないどころか、日常の一コマ程度のノリで気にしていない。
一体、どうなっているんだ?
「おいら達はですねー。ブルゴスに行きたくてですねー」
あれ?
この乗合バスはブルゴス行きではないか。
オルガの方を見るとやれやれみたいに天を仰ぐポーズをしている。
「ブルゴス行きだぞ」
「「「…………」」」
そこで運転手のおっちゃんがぼそっと言った。
三人組は呆然としていたが、暫くして我に返ったのか、小銭を集めて、料金を支払っていた。
おばちゃんが「偶に出るのよぉ」とけらけらと笑っているところを見るとそれほど、珍しくもない日常茶飯事の光景のようだ。
どうやら、田舎者は案外、多いらしい。
少なかった乗客がちょっとだけ増えて、かなりうるさくなった。
「なーなー。兄ちゃん、強いんだなあ。どうなってんだ、この腕?」
「どうやったら、そんなでっかくなるんだ?」
「おいらにも教えてくれよー」
バスジャック未遂で取り押さえたせいなのか。
それとも俺が話し相手に最適だと思ったのか。
オルガのヤツは「近寄んな」オーラを隠そうともしないから、仕方ないんだが。
周囲の温度が下がってそうな不機嫌さだ。
あれは俺でも近づきたくない。
単調で代り映えのしない荒野をただ眺めているより、少々うるさくてもこの方が退屈しないで済みそうだ。
その三人組が武器を取り出して、運転手のおっちゃんを脅している。
一人が運転手を脅して、残りの二人が乗客を脅している。
乗客は俺とオルガ。
それに行商に出てきたのか、荷物の多いおばちゃん。
たったの三人だけだ。
「妙な真似するんじゃねえぞ。わ、分かったか」
おお。
まるでヒーロー物に出てくる悪党みたいなこと言っているぞ。
しかし、男と言ったが実際はどうだか、よく分からない。
なぜかって?
彼ら、人間のように二本足で歩いてはいるが、人間ではないからだ。
「なあなあ。都会はああいうのがたくさん、いるのか?」
「あんたねぇ……たくさんはいないけど、普通にいるんじゃない? そういうもんでしょ、この世界って」
そうなのか?
小声でもオルガのあたりは普通にきつい。
村でも見なかったし、学院にもそんな生徒はいなかった。
初めて見たんだから、この反応も仕方ないと思うんだ。
「アヒルとウサギと……なんだ、あのマスクマンは? あれが普通なのか。都会ってすげえんだな」
そうなんだ。
バスジャックしてきたのは動物の着ぐるみを着ていて、子供みたいに小さいヤツラ。
そうとしか見えないだけであって、そういう種族らしいんだが……。
オルガはもはや、返事すらしない。
ただ、じとっとした視線を向けてくるだけだ。
あの顔は「黙っときなさいよ」とでも言いたいんだろう。
「いいかー、このバスはおいら達が乗っ取ったー」
「そうだぞー」
アヒルとウサギが何か、強がって言っているが全く、怖くない。
脅しに使っている武器も食事で使う類のナイフとフォークだ。
殺傷力はあるもののバスジャックに向いた武器とはとても言えない。
何より、ぬいぐるみのような可愛らしい生き物がワイワイ言っているようにしか、聞こえないんだよなあ。
主犯はどうやら、マスクマン。
オルガ曰く、「あれはゴブリンね。彼らにとって、マスクは顔の一部で顔を隠すのが常識らしいわ」とのことだが、なんだそりゃ? としか言いようがない。
マスクも凶悪には見えないデザインになっている。
視界を取る為の目のところなんて、ぱっちりしていて怖いどころか、可愛いを目指しているようにしか見えない。
一体全体、何をしたいんだ、こいつら。
「なあ、オルガ。とりあえず、制圧してもいいのか、これ?」
「まぁ、いいんじゃない。怪我させないようにね?」
「何だよ、それ。そこは怪我しないでね、じゃないのか?」
「まさかぁ。あたしは彼らの方を心配しているのよ。オーバーキルになっちゃいそうだから」
ああ、そういう意味な……。
何だか、訳ありなようだし、うまく手加減するしか手はなさそうだ。
「じゃあ、ちょっくら、やってくる」
「「「ごめんなさい」」」
あまりにあっさりと片付いてしまった。
むしろ、運転手のおっちゃんが全く、慌てていないので気付くべきだったんだろう。
俺が席から、立ち上がって、彼らの武器を取り上げるまでにかかった時間、およそ十秒。
ほぼ一瞬とは言わないまでも秒で解決した。
力を加えるまでもなく、武器は簡単に無力化できた。
食器程度の代物であれば、指だけで曲げることが可能だ。
もっともそんな必要はなく、武器を取り上げるだけで終わった。
怪我人もいない。
運転手だけでなく、おばちゃんも慌ててないどころか、日常の一コマ程度のノリで気にしていない。
一体、どうなっているんだ?
「おいら達はですねー。ブルゴスに行きたくてですねー」
あれ?
この乗合バスはブルゴス行きではないか。
オルガの方を見るとやれやれみたいに天を仰ぐポーズをしている。
「ブルゴス行きだぞ」
「「「…………」」」
そこで運転手のおっちゃんがぼそっと言った。
三人組は呆然としていたが、暫くして我に返ったのか、小銭を集めて、料金を支払っていた。
おばちゃんが「偶に出るのよぉ」とけらけらと笑っているところを見るとそれほど、珍しくもない日常茶飯事の光景のようだ。
どうやら、田舎者は案外、多いらしい。
少なかった乗客がちょっとだけ増えて、かなりうるさくなった。
「なーなー。兄ちゃん、強いんだなあ。どうなってんだ、この腕?」
「どうやったら、そんなでっかくなるんだ?」
「おいらにも教えてくれよー」
バスジャック未遂で取り押さえたせいなのか。
それとも俺が話し相手に最適だと思ったのか。
オルガのヤツは「近寄んな」オーラを隠そうともしないから、仕方ないんだが。
周囲の温度が下がってそうな不機嫌さだ。
あれは俺でも近づきたくない。
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