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第2章 自由都市リジュボー
第76話 プレゼントしたら、美味しくいただかれたのです
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レオの誕生日に自分自身をプレゼントしたら、美味しくいただかれたのです。
これだけなら、よくある(?)恋人同士の睦事で終わったのですけど。
あまりに美味しくいただかれすぎて、二日も起き上がれなくなるとは思ってませんでしたわ。
『愛されすぎて辛いですわ』などと笑顔で言えないレベルの腰痛に襲われましたし、全身がドロドロからカピカピになって、汗に混じった生臭い匂いが部屋を支配していたのです。
それを『きれいにしないといけないよね』って、レオの満面の笑顔に背筋の寒さを覚えたのは気のせいではないと思いますの。
ほぼ意識が無かった私の身体はそれはもう、きれいにされました。
もう隅々まであまりにきれいにされすぎて、体内の水分がなくなるかもという恐怖を覚えたのは初体験でしたわ。
え?回復魔法を使えば、問題ないのになぜ使わないのか、ですって?
普通に動けたら、レオに構ってもらえませんもの。
それはとても悲しいことですわ。
動けないでいるとこんなにも大切に扱ってもらえますのよ?
そう。
動けないでいるとレオがお世話してくれるんですもの。
こんなに嬉しくて、幸せなことって、あるのかしら?
ただ、問題がない訳ではありませんの。
動けないのをいいことに膝の上に乗せて、物を食べさせようとするんですもの。
さすがにやり過ぎだと思いますの。
これではまるで私が甘えているみたいですわ。
私はレオを甘えさせたいんですの!
甘えたい訳ではな…はい、甘えたいですわ。
で、でも、これはやり過ぎですわ。
食べさせ方が普通にふぅふぅして、あーんなら、いいのですよ?
違いますからね!
く・ち・う・つ・し!
それもちょっと唇を啄む程度ではありませんの。
舌を絡め合う本気の勢いそのままに口移しで食べさせようとしてくるのです。
これでは私の心臓が保ちませんわ。
「リーナ、美味しいかな?」
薄っすらと太陽のような暖かみのある笑みを浮かべながら、そう聞かれたら、『はい、美味しいですわ』と答えるしか、ありませんでしょう?
実際、美味しいのですけど、味よりも胸の高鳴りが激しくて、倒れそうですわ。
ちょっと仕返しをしたくて、彼が口移しでくれた果実ジュースを逆に舌を絡めながら、彼の口に流し込んだのです。
悪手でしたわね。
ゴクッと彼の喉が鳴るのが分かって、してやったりなんて考えている余裕はなかったのです。
そのまま、ベッドに押し倒されたんですもの!
待ってくださいな、私、動けないのですけど?
「レ、レオ?」
どうにか声を出して、彼の胸板に抵抗の意思を示すべく、軽く手を置いてみます。
多分、意味ないですわね。
だって、彼の瞳にギラギラした獣のような煌めきが見えますもの。
起き上がれないのが三日になりそうですわ。
「止められなくなるよ?」
ふぁ!?
これは本当に私、18歳の誕生日を迎える前に抱き殺されるのではありませんの?
まずいですわ。
ここから、挽回する手立てはあるのかしら?
考えようにも全く、頭が回りません。
心臓はさらに激しくドキドキしていて、治まるどころか、ますます酷くなっています。
もう駄目そうですわ。
その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえました。
私にとってはまさに天からの助けそのもの。
「お嬢さま、殿下。お届け物ですぅ」
アン!あなたの基本給一割増にするわね。
それくらいでは足りないかしら?
彼女の望みを何でも叶えてあげたい気分ですわ。
🐺🐺🐺
「あっざーしたっす」
配達人は黒い兎の獣人でちょっと意味不明の言語を喋る騒々しい人でした。
イポスはうさぎのぬいぐるみがそのまま、人間サイズになったという趣で動かなければ、とてもかわいらしいのですけど、この方はかわいいとはまた、違う次元にあるみたい。
レオがサインを書き込むとペコリと深く頭を下げて、あっという間に消えました。
さすが、うさちゃんというべき素早さですわね。
『黒うさ運輸』…まさか?
「レオ、誰宛てにですの?」
「僕だね」
「レオに?誰から…いえ、どこからの品ですの?」
「アルフィンだね。送り主は俺様ってあるね」
レオの手には片手で余裕で持てるような小さな箱があります。
『俺様』と名乗るような人物に該当するのは只一人ですわ。
「それ、お祖父さまですわ。レオ宛てになんて、何が入っているのかしら?」
「さあ?とりあえず、開けてみよっか」
んんん?
レーオー、もう少し、警戒心を持ちましょう?
お祖父さまですのよ?
私が止めようと言葉を掛ける前にもう箱を開けてしまいましたの!?
「これは…」
「何が入ってましたの?」
「これ、魔装だ」
「ええ?」
魔装って、まさか、私達が探していたのに手掛かりすら、全く掴めなかったあの魔装ですの?
どういうことですの?
「ほら、これ」
レオが箱から取り出したのは金色に黒い象嵌の意匠が施された二個のブレスレット。
彼が魔装を使っていた頃はかつて、バールと呼ばれていて。
遥か記憶の彼方の出来事でしたもの。
てっきり鎧の形であるものと思い込んでいたのが悪いのかしら?
まさか、そんな形状だったとは盲点でしたわ。
「それがレオの魔装でしたのね」
「うん、これだね。あと手紙が入ってるなぁ。まだ、文字読むのは無理なんだよね」
そうでしたわ。
レオは十年間も裏世界―複雑ですけどあちらは『表世界』と称していて、こちらが『裏世界』。でも、こちらではこちらが『表世界』であちらが『裏世界』なのです―で暮らしていたから、文字はまだ覚えている途中なのです。
代わりに封を切って、手紙を紐解くとお祖父さまらしい内容でした。
元から、レオ宛てに手紙を書いていないんですもの。
「この手紙は最初から、私に宛てて出されたようですわ」
「そうなんだ。何だって?」
「レオの誕生日プレゼントとして、探してくれたそうです。『アンディが回収したのでちょっと遅れてしまったがプレゼントとして送った』とのことですわ。『感謝しろ、我を崇めよ』とも書いてありますわ」
お祖父さまは相変わらず、面倒な性格のようで逆に安心ですわね。
面倒ですけど優しくて、口が悪いのは玉に瑕ですけど、こうしてレオにプレゼントを送ってくれたのですから、感謝しかありませんわ。
それに加えて、お祖父さまと爺やにお任せしていたレライエの素体―ホムンクルスの精製がほぼ終わったともありました。
レライエが仮初とはいえ、身体を取り戻したら、この武器はどうしましょう。
ふと手首に嵌めたブレスレットで輝きを放つ紅玉色の魔石を見て、考えこんでしまいました。
「さて、それでは着けてみますか。暴食なる王の降臨に恐怖せよ!」
「ん…あのレオ?」
「うわ、リーナにすごく冷たい目をされた。傷つくなぁ」
真顔でそんな変なことを言い出したら、いくらレオが大好きな私でもそういう反応になりますわ。
お道化るように両手を天井に向け、お手上げといったポーズを取っているところから、彼が本気で言っている訳ではないのは分かりますけど。
「それじゃ、今度こそ、着けてみるよ」
レオはブレスレットを手に取り、それぞれの手首に装着します。
それはまるであたかもそこにあったのが当然とでも言うように彼の体内へと吸収され、消えました。
正しく、魔装ですわね。
身に纏うのではなく、力の一端ですもの。
「本物で間違いないですわね」
「うん、本物だね」
「レオ?」
「くっくっくっ、あっーははは!刮目せよ!我はここに復活せり。魔装鎧化」
ちょっと頭痛がしてきましたわ。
気のせいではないと思いますのよ?
男の子って、こういう生き物ですものね。
ええ、いいのです。
レオの全てを受け止めて、愛せますもの。
「猛き獅子の如く。強き牙の如く。黒獅子ここに降臨」
レオの全身から、黄金の闘気が立ち昇り、まるで生き物のように身体に纏わりついていきます。
数秒もしないうちにレオの全身は金属の光沢を放つ甲冑のような物に覆われていました。
全体は黒を基調としていて、渋いデザインなのですけど、ところどころに金色の意匠や装飾が施されていて、引き締められているのよね。
全体としてはスマートな印象を受けるのに肩と腕周りはものすごくマッシブで頼りがいがあるように見えて…好きですわ!
基本的にレオなら何でも好きなのかもしれないですけど。
「あの頃を思い出すわ」
「リーナ、急に年寄り臭いこと言わない!」
お姉さんではなく、年寄り?
微妙にイラッときましたけど、表情に出さずにいられるのは淑女教育の賜物ですわね。
「五千年振りに取り戻した力はどうですの?」
ガッチャキ、ガッチャキと金属質のちょっと耳障りな音を立てつつ、私が横になっているベッドに近付いてきたレオは魔装を解くと跪いて、私の手を取りました。
え?この展開は何ですの?
何が起きますの?
「え?何ですの?急にどうしましたの?」
そして、手の甲に口付けを落としてから、真っ直ぐに私の目を見つめて、言うのでした。
「今なら、何でも…いや何度でも出来ますよ、僕のお姫さま」
さっき、年寄り呼ばわりをしたのにこんなことで騙されたりしませんからね。
ロマンス小説で良く見るロマンチックな求愛風景だからって…
「はい。永久に愛してくださいませ」
な、なんで!?
どうしてですの?
口が勝手にYESと紡ぎ出してますわ。
しかも致命的なことを言ってますわね…。
まだ、身体が満足に動かないのですけど。
「お姫さまにおねだりされたら、しょうがないよね」
おかしいですわ。
レオは爽やかな笑顔を向けてくれますのに冷や汗が背を伝うのが止まりません。
まさか、動けないのに無理矢理ですの?
何度でも?
意識が飛ぶまで愛されるのって、身体は辛いですけど気持ちいいですし、案外癖になるのかも…って、違いますわね。
涙が零れ落ちそうですけど、嬉し涙ではありませんから!
その涙もペロッとそれは美味しそうに舐められて、ゾクッときている私は間違いなく、彼に何をされても…そう殺されたって、構わないわ。
「リーナ、怖がらなくても大丈夫だから」
また、薄っすらと笑みを浮かべると彼の身体から、放たれた温かな光が私を包みます。
ええ、そうよね。
レオが軽い回復魔法を使えるのを忘れていましたわ。
「夜までゆっくりと楽しめるね」
「え?」
有無を言わさず、がっちりと両手を押さえつけられ、レオの顔がゆっくりと近付いてきて、唇を奪われました。
彼の舌が私の口内を蹂躙してきて、見つからないに潜めていた舌を絡め取られると頭の中で何かがプッツンと切れた気がします。
気付いた時には自分から、互いの舌を絡め合って、唾液を交換していて。
『これが好きなの』って、本格的に頭がおかしくなったのかしら?
「優しくして欲しいの」
何を言ってるのかしら?
『本当は激しいのが好きだよね』と彼の瞳が言っているみたい。
「我慢出来るかな」
ええ、分かっていますとも。
あなたの目は獲物を目にした怖い捕食者のようですもの。
でも、私も変になってますのよ?
押さえる彼の手がなくなって、自由になっているのにレオを止めようとするどころか、煽るように首の後ろに手を回しているのだから。
きっと蕩けきって、潤んだ瞳で見つめているのでしょう。
自分では分からないけど、彼の目がそう言っているもの。
もう止められないわ。
それでどうなったのか、ですって?
あまり思い出したくないので聞かないでくださいませ。
ただ一つだけ、はっきりしているのは『今日は動けませんわ』という逃げ口上が今後、使えなくなったということですわ。
それでも甘やかしてくれるのは変わっていません。
甘やかし方が変わった、ということだけで。
これだけなら、よくある(?)恋人同士の睦事で終わったのですけど。
あまりに美味しくいただかれすぎて、二日も起き上がれなくなるとは思ってませんでしたわ。
『愛されすぎて辛いですわ』などと笑顔で言えないレベルの腰痛に襲われましたし、全身がドロドロからカピカピになって、汗に混じった生臭い匂いが部屋を支配していたのです。
それを『きれいにしないといけないよね』って、レオの満面の笑顔に背筋の寒さを覚えたのは気のせいではないと思いますの。
ほぼ意識が無かった私の身体はそれはもう、きれいにされました。
もう隅々まであまりにきれいにされすぎて、体内の水分がなくなるかもという恐怖を覚えたのは初体験でしたわ。
え?回復魔法を使えば、問題ないのになぜ使わないのか、ですって?
普通に動けたら、レオに構ってもらえませんもの。
それはとても悲しいことですわ。
動けないでいるとこんなにも大切に扱ってもらえますのよ?
そう。
動けないでいるとレオがお世話してくれるんですもの。
こんなに嬉しくて、幸せなことって、あるのかしら?
ただ、問題がない訳ではありませんの。
動けないのをいいことに膝の上に乗せて、物を食べさせようとするんですもの。
さすがにやり過ぎだと思いますの。
これではまるで私が甘えているみたいですわ。
私はレオを甘えさせたいんですの!
甘えたい訳ではな…はい、甘えたいですわ。
で、でも、これはやり過ぎですわ。
食べさせ方が普通にふぅふぅして、あーんなら、いいのですよ?
違いますからね!
く・ち・う・つ・し!
それもちょっと唇を啄む程度ではありませんの。
舌を絡め合う本気の勢いそのままに口移しで食べさせようとしてくるのです。
これでは私の心臓が保ちませんわ。
「リーナ、美味しいかな?」
薄っすらと太陽のような暖かみのある笑みを浮かべながら、そう聞かれたら、『はい、美味しいですわ』と答えるしか、ありませんでしょう?
実際、美味しいのですけど、味よりも胸の高鳴りが激しくて、倒れそうですわ。
ちょっと仕返しをしたくて、彼が口移しでくれた果実ジュースを逆に舌を絡めながら、彼の口に流し込んだのです。
悪手でしたわね。
ゴクッと彼の喉が鳴るのが分かって、してやったりなんて考えている余裕はなかったのです。
そのまま、ベッドに押し倒されたんですもの!
待ってくださいな、私、動けないのですけど?
「レ、レオ?」
どうにか声を出して、彼の胸板に抵抗の意思を示すべく、軽く手を置いてみます。
多分、意味ないですわね。
だって、彼の瞳にギラギラした獣のような煌めきが見えますもの。
起き上がれないのが三日になりそうですわ。
「止められなくなるよ?」
ふぁ!?
これは本当に私、18歳の誕生日を迎える前に抱き殺されるのではありませんの?
まずいですわ。
ここから、挽回する手立てはあるのかしら?
考えようにも全く、頭が回りません。
心臓はさらに激しくドキドキしていて、治まるどころか、ますます酷くなっています。
もう駄目そうですわ。
その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえました。
私にとってはまさに天からの助けそのもの。
「お嬢さま、殿下。お届け物ですぅ」
アン!あなたの基本給一割増にするわね。
それくらいでは足りないかしら?
彼女の望みを何でも叶えてあげたい気分ですわ。
🐺🐺🐺
「あっざーしたっす」
配達人は黒い兎の獣人でちょっと意味不明の言語を喋る騒々しい人でした。
イポスはうさぎのぬいぐるみがそのまま、人間サイズになったという趣で動かなければ、とてもかわいらしいのですけど、この方はかわいいとはまた、違う次元にあるみたい。
レオがサインを書き込むとペコリと深く頭を下げて、あっという間に消えました。
さすが、うさちゃんというべき素早さですわね。
『黒うさ運輸』…まさか?
「レオ、誰宛てにですの?」
「僕だね」
「レオに?誰から…いえ、どこからの品ですの?」
「アルフィンだね。送り主は俺様ってあるね」
レオの手には片手で余裕で持てるような小さな箱があります。
『俺様』と名乗るような人物に該当するのは只一人ですわ。
「それ、お祖父さまですわ。レオ宛てになんて、何が入っているのかしら?」
「さあ?とりあえず、開けてみよっか」
んんん?
レーオー、もう少し、警戒心を持ちましょう?
お祖父さまですのよ?
私が止めようと言葉を掛ける前にもう箱を開けてしまいましたの!?
「これは…」
「何が入ってましたの?」
「これ、魔装だ」
「ええ?」
魔装って、まさか、私達が探していたのに手掛かりすら、全く掴めなかったあの魔装ですの?
どういうことですの?
「ほら、これ」
レオが箱から取り出したのは金色に黒い象嵌の意匠が施された二個のブレスレット。
彼が魔装を使っていた頃はかつて、バールと呼ばれていて。
遥か記憶の彼方の出来事でしたもの。
てっきり鎧の形であるものと思い込んでいたのが悪いのかしら?
まさか、そんな形状だったとは盲点でしたわ。
「それがレオの魔装でしたのね」
「うん、これだね。あと手紙が入ってるなぁ。まだ、文字読むのは無理なんだよね」
そうでしたわ。
レオは十年間も裏世界―複雑ですけどあちらは『表世界』と称していて、こちらが『裏世界』。でも、こちらではこちらが『表世界』であちらが『裏世界』なのです―で暮らしていたから、文字はまだ覚えている途中なのです。
代わりに封を切って、手紙を紐解くとお祖父さまらしい内容でした。
元から、レオ宛てに手紙を書いていないんですもの。
「この手紙は最初から、私に宛てて出されたようですわ」
「そうなんだ。何だって?」
「レオの誕生日プレゼントとして、探してくれたそうです。『アンディが回収したのでちょっと遅れてしまったがプレゼントとして送った』とのことですわ。『感謝しろ、我を崇めよ』とも書いてありますわ」
お祖父さまは相変わらず、面倒な性格のようで逆に安心ですわね。
面倒ですけど優しくて、口が悪いのは玉に瑕ですけど、こうしてレオにプレゼントを送ってくれたのですから、感謝しかありませんわ。
それに加えて、お祖父さまと爺やにお任せしていたレライエの素体―ホムンクルスの精製がほぼ終わったともありました。
レライエが仮初とはいえ、身体を取り戻したら、この武器はどうしましょう。
ふと手首に嵌めたブレスレットで輝きを放つ紅玉色の魔石を見て、考えこんでしまいました。
「さて、それでは着けてみますか。暴食なる王の降臨に恐怖せよ!」
「ん…あのレオ?」
「うわ、リーナにすごく冷たい目をされた。傷つくなぁ」
真顔でそんな変なことを言い出したら、いくらレオが大好きな私でもそういう反応になりますわ。
お道化るように両手を天井に向け、お手上げといったポーズを取っているところから、彼が本気で言っている訳ではないのは分かりますけど。
「それじゃ、今度こそ、着けてみるよ」
レオはブレスレットを手に取り、それぞれの手首に装着します。
それはまるであたかもそこにあったのが当然とでも言うように彼の体内へと吸収され、消えました。
正しく、魔装ですわね。
身に纏うのではなく、力の一端ですもの。
「本物で間違いないですわね」
「うん、本物だね」
「レオ?」
「くっくっくっ、あっーははは!刮目せよ!我はここに復活せり。魔装鎧化」
ちょっと頭痛がしてきましたわ。
気のせいではないと思いますのよ?
男の子って、こういう生き物ですものね。
ええ、いいのです。
レオの全てを受け止めて、愛せますもの。
「猛き獅子の如く。強き牙の如く。黒獅子ここに降臨」
レオの全身から、黄金の闘気が立ち昇り、まるで生き物のように身体に纏わりついていきます。
数秒もしないうちにレオの全身は金属の光沢を放つ甲冑のような物に覆われていました。
全体は黒を基調としていて、渋いデザインなのですけど、ところどころに金色の意匠や装飾が施されていて、引き締められているのよね。
全体としてはスマートな印象を受けるのに肩と腕周りはものすごくマッシブで頼りがいがあるように見えて…好きですわ!
基本的にレオなら何でも好きなのかもしれないですけど。
「あの頃を思い出すわ」
「リーナ、急に年寄り臭いこと言わない!」
お姉さんではなく、年寄り?
微妙にイラッときましたけど、表情に出さずにいられるのは淑女教育の賜物ですわね。
「五千年振りに取り戻した力はどうですの?」
ガッチャキ、ガッチャキと金属質のちょっと耳障りな音を立てつつ、私が横になっているベッドに近付いてきたレオは魔装を解くと跪いて、私の手を取りました。
え?この展開は何ですの?
何が起きますの?
「え?何ですの?急にどうしましたの?」
そして、手の甲に口付けを落としてから、真っ直ぐに私の目を見つめて、言うのでした。
「今なら、何でも…いや何度でも出来ますよ、僕のお姫さま」
さっき、年寄り呼ばわりをしたのにこんなことで騙されたりしませんからね。
ロマンス小説で良く見るロマンチックな求愛風景だからって…
「はい。永久に愛してくださいませ」
な、なんで!?
どうしてですの?
口が勝手にYESと紡ぎ出してますわ。
しかも致命的なことを言ってますわね…。
まだ、身体が満足に動かないのですけど。
「お姫さまにおねだりされたら、しょうがないよね」
おかしいですわ。
レオは爽やかな笑顔を向けてくれますのに冷や汗が背を伝うのが止まりません。
まさか、動けないのに無理矢理ですの?
何度でも?
意識が飛ぶまで愛されるのって、身体は辛いですけど気持ちいいですし、案外癖になるのかも…って、違いますわね。
涙が零れ落ちそうですけど、嬉し涙ではありませんから!
その涙もペロッとそれは美味しそうに舐められて、ゾクッときている私は間違いなく、彼に何をされても…そう殺されたって、構わないわ。
「リーナ、怖がらなくても大丈夫だから」
また、薄っすらと笑みを浮かべると彼の身体から、放たれた温かな光が私を包みます。
ええ、そうよね。
レオが軽い回復魔法を使えるのを忘れていましたわ。
「夜までゆっくりと楽しめるね」
「え?」
有無を言わさず、がっちりと両手を押さえつけられ、レオの顔がゆっくりと近付いてきて、唇を奪われました。
彼の舌が私の口内を蹂躙してきて、見つからないに潜めていた舌を絡め取られると頭の中で何かがプッツンと切れた気がします。
気付いた時には自分から、互いの舌を絡め合って、唾液を交換していて。
『これが好きなの』って、本格的に頭がおかしくなったのかしら?
「優しくして欲しいの」
何を言ってるのかしら?
『本当は激しいのが好きだよね』と彼の瞳が言っているみたい。
「我慢出来るかな」
ええ、分かっていますとも。
あなたの目は獲物を目にした怖い捕食者のようですもの。
でも、私も変になってますのよ?
押さえる彼の手がなくなって、自由になっているのにレオを止めようとするどころか、煽るように首の後ろに手を回しているのだから。
きっと蕩けきって、潤んだ瞳で見つめているのでしょう。
自分では分からないけど、彼の目がそう言っているもの。
もう止められないわ。
それでどうなったのか、ですって?
あまり思い出したくないので聞かないでくださいませ。
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