【完結】氷の魔女は若き黒獅子に溶かされる~最強の魔女なのに年下の婚約者が積極的で抗えません~

黒幸

文字の大きさ
175 / 232
第4章 麗しのアルフィン

第160話 三度目の正直かしら

しおりを挟む
 南海から、出現した黒蝕竜ギータによる大地と海の浸蝕被害は相当、深刻な物でした。
 人的な被害・損失があまり出なかったことだけが不幸中の幸いと言うべきかしら?
 犠牲者の遺族へのケアは内政を取り仕切るネビーと協議を着々と進めています。
 こちらも問題はないでしょう。
 バノジェに被害が及ぶ前に除くことが出来て、本当に良かったですわ。

『隔壁閉鎖。オデュッセウス、第一拘束具を解除。リフトアップを開始します』

 聞きやすい落ち着いた女性の声が響き、隣に見えていたレオの魔動騎士アルケインナイトオデュッセウスの姿が遠ざかっていくのが見えました。
 修復と再調整の終わったトリトンも既に地表に搬出されており、オデュッセウスが発進したので次は私の番ですわね。
 もっとも私のペネロペは地上を走行するより、空を舞う方が得意な機体。
 本来は搬出機構を使わなくてもいいのですけど。

『シグナルオールグリーン。発進どうぞ』
「ペネロペ、出ますわ」



「ねぇ、今日は別に大丈夫ですのよ?」
「うん? でも、僕がしたいんだ。駄目?」
「ダ、ダメではなくってよ」

 むしろ、宜しくお願いしますと言いたいのですけど、それは白旗を上げるようなものですから、言いませんの。
 でも、こうしてレオの胸に顔を預けていると本当、安心出来て落ち着きますわ。
 そうなのです。
 今日も安定のお姫様抱っこで移動ですわ。

「さすがに今回のトリトンは大丈夫みたいだね」
「そうですわね。三度目の正直かしら?」

 ディーことデュカリオンの操るトリトンはやや、ぎこちない動きではあるものの陸上を歩けるようになったみたい。
 油断するとかなり、危ないらしく、その度に『うわ~』とか、『あひゃ~』という変な悲鳴が聞こえますけど。
 とりあえず、陸上テストはギリギリ、合格ということになりました。
 続いて、湖での水中運用テストを行う予定になっています。

「リーナのは白いままでいいのかな?」
「ええ。パールホワイトですのよ? ただのホワイトではありませんの」
「でも、白は白だよね?」
「いいえ。パールホワイトですわ」

 湖の畔を飾るのはアルフィンを代表する二機の魔動騎士アルケインナイト、オデュッセウスとペネロペ。
 陽光に煌めく、美しい機体を二人で見上げ、暫し、感傷的になってしまいました。
 ようやくテストが出来るレベルまで仕上げられたのは優秀なスタッフのお陰ですもの。

 ちなみにレオが気にしていた機体色。
 基本色であるホワイトだけで塗られるのが慣例となっています。
 ですから、両機とも基本色は白なのです。
 ただ、ペネロペはただの白ではありません。
 光沢を帯びており、光線の加減によって白銀のようにも見える特殊なカラーで塗装されています。
 私の髪色に合わせてあるのですけども、この魔動騎士アルケインナイトの塗装にはちゃんとした意味があるのです。
 単に軍の士気を上げるという象徴的な意味合いだけではなく、実は対魔法アンチアルケイン付与エンチャントが施されているのは機密だったりします。

「そういうレオはどうしますの? 白だけではお嫌なのでしょう?」
「うーん、そうなんだよね。折角だから、リーナみたいに僕の髪の色も入れて、瞳の色も入れようかな」
「それはいいアイデアですわね。私もルビーの色を差し色として、取り入れたいですわ」

 そんな言葉を交わして、笑い合って、レオの顔に見惚れていたら、不意に私達を呼ぶ声が聞こえてきました。
 どうやら、時間のようですわ。



 レオは私が肌を晒すのに抵抗があるみたい。
 私も令嬢として、淑女教育の終わっている身。
 二の腕や太股が露出する、いわゆる素肌が表に出る装束は極力、避けています。
 それなのに夜は服を剥ぐのが好きなのはどうしてかしら?
 そこがかわいいと思えるのは私だけなのかしら?

 でも、魔動騎士アルケインナイトの操縦と同調率シンクロに関して、意外な研究結果が出たのです。
 何と、肌が出ていれば、出ているほど、より高くフィードバックされるということが判明しました。
 極端な話ですが何も着ないで搭乗するのが一番ということになりますわね。

 タチアナが独特なデザインの装束を身に付けていたのはこの為だったのでしょう。
 彼女の養父は開発者の一人だから、恐らくその事実を知っていたのです。
 ただ、バレエを踊る際に着るレオタードに酷似した水着にしか、見えなかったのですけど。
 そこに趣味が混じっていなかったとは言い切れるのかしら?

 ちょっと思いを馳せていると一足先に起動したオデュッセウスが背部のリアクターバインダーを翼のように広げ、大空へと舞い上がっていきました。
 魔力波が赤い燐光となって、バインダーから放出され始め、輝ける翼シャイネン・フリューゲルが起動したようです。

「速いわ。まるで分身ですわね……」

 その驚異的なスピードは異常と言える異次元の物。
 何と言ってもあまりの速さに動きを止めてから、動き出すことで残像が生まれるのです。
 まるでそれが分身しているかのように見えてしまう。
 単なる錯覚に過ぎないのですけど。
 恐らく、あの速さを捉えられる者は片手も存在しないのではないかしら?

「さて、私も行きましょうか」

 私の声に呼応するようにゆっくりと浮上し始めたペネロペは一気に魔力波を放出しました。
 一瞬で雲の上に移動したのでちょっと、びっくりしましたわ。
 オデュッセウスほどではないですが、十分過ぎるスピードですわね。

薔薇の花弁ローゼンブラットのテストをすれば、いいのよね?」
『そうじゃない? こっちは問題なし』

 やはり、レオに聞いておいた方が確実ですわ。
 また、うっかり間違えていると困りますもの。

 意識を集中させ、特殊兵装である薔薇の花弁ローゼンブラットの動きを頭の中でイメージします。
 まるで生命あるもののように自由に飛ぶ姿をイメージすればいいのです。
 オートクレールを操るのと同じ要領で……。

「さぁ、いきなさい」

 背部のウイングバインダーに装着された六基の曲剣の形をした薔薇の花弁ローゼンブラットと呼ばれる特殊兵装が切り離されました。
 ペネロペの周囲を守るように宙に漂っています。

 とりあえず、成功といったところかしら?
 ペネロペの特徴的な外見は流線形の美しい機体構成です。
 その象徴とも言うべき物が背部のウイングバインダーと変形し、腕部を覆える大きなショルダーバインダーです。
 このショルダーバインダーにも薔薇の花弁ローゼンブラットの技術を応用した小型の遠隔操作兵装が内蔵されています。
 全てを合わせて、薔薇の花弁ローゼンブラットなのですけど、面倒ですもの。
 私、面倒なの嫌いですし……。

 ショルダーバインダーからも放出されたのを合わせると合計二十六基の薔薇の花弁ローゼンブラットが周囲に漂っています。
 さて、次の段階ですわね。
 オートクレールは伸縮させ、刺し貫くイメージでしたけど、薔薇の花弁ローゼンブラットはちょっと違うのです。
 まず、目標を捉えてから、魔力で撃ち抜くイメージといったら、いいのかしら?

「こんな感じに?」

 大小二十六基の薔薇の花弁ローゼンブラットが高速で飛び交い、私が目標と定めた雲を目掛け、色とりどりの光条を撃ち始めます。
 恐らく、これは氷だけをイメージすれば、氷魔法での攻撃が可能になるはずですわ。
 今日は撃つイメージだけを思い浮かべたので属性が全て、放出されてしまったのでしょう。
 でも、これなら、十分に成功と言えますわ。

「レオ、こちらも問題ないですわ」
『じゃあ、今日はもう終ろう。いやー、楽しみだなー』

 ん? んんん?
 もう終わりでいいんですの?
 実戦を鑑みた模擬戦闘試験や耐久試験はやらなくてもいいのかしら?
 何か、レオの声が最後の方はウキウキしているように聞こえたのですけど。
 背筋に寒気がして、鳥肌が立ったのは気のせいですの?
 嫌な予感は気のせいかしら?
 本当に?
 そうですわ……きっと気のせいですわ。
 決して、現実逃避している訳ではありませんのよ?
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

清楚な執事長、常駐位置が“お嬢様の隣”に確定しました

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話・後日談12話⭐︎ 清楚で完璧、屋敷の秩序そのもの——そんな執事長ユリウスの“常駐位置”が、なぜか私の隣に確定しました。 膝掛けは標準装備、角砂糖は二つ、そして「隣にいます」が口癖に。 さらに恐ろしいことに、私が小声で“要求”すると、清楚な笑顔で「承知しました」と甘く返事をしてくるのです。 社交は上品に、恋心は必死に隠したい。 なのに執事長は、恋を“業務改善”みたいに制度化して逃がしてくれない——! むっつり令嬢の乙女心臓が限界を迎える、甘々コメディ恋愛譚。 清楚な顔の執事長が、あなたの心臓まで囲い込みにきます。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

処理中です...