16 / 43
本編
第11話 はまるって意味ちょっとだけ、分かったかも
しおりを挟む
部長さんがうまく話を切り上げてくれなかったら、やばかった。
ログアウトして、ゲームをやめると窓から見える景色はもう夕焼けがきれいで……って、感傷に浸ってる場合じゃないよっ。
夕食の準備しなきゃ、間に合わないじゃない。
あたふたしながらもタケルが好きな若鳥の竜田揚げを間に合わせることが出来て、ほっとする。
そういえば、ゲームをログアウトした後、『アプリを入れると便利だよぉ』とスミカからメッセが来てたのでアプリを入れたんだっけ。
お風呂に入る前、気になったので見てみたら、アプリにメッセありだった。
慌てて、確認してみるとフレンド登録した人、ランスさんからだ。
内容は夜に時間があれば、全員集まって歓迎会を兼ねた冒険に行く予定だったのが三人は都合が合わないらしい。それでランスさんが新人教育という形であたしを連れていってくれる、ということみたい。二人でとか、デートかいっ!タケルともしたことないのに!
ううん、違った。ゲームだし、これはゲームだし。
デートじゃない。
そこ、理解しよう。
落ち着こう、あたし。
しかし、お風呂に入って湯船に浸かって、考えてもあまりにリアルなあのゲームの世界で知らない人と二人は『やっぱり、デートじゃん』、『いや違うよ』、『リアルじゃないよ!』と堂々巡りから抜けられない。
あまりに長く入っていたせいで頭がボッーとしてたから、タケルの入る時間になってることに気付かなかったあたしもどうかしてるけど、確認してから入って! と釘差して、差しまくったのに入ってきたタケルとどっちが悪いのかしら?
最近、わざとあたしの裸を見ようとしてるんじゃないかって、ちょっと疑ってもいるのよね。
まぁ、お礼としてほっぺに真っ赤な紅葉マークをプレゼントすることでチャラにしといたけどねっ。
「タケルがゲームにはまるって意味ちょっとだけ、分かったかも」
部屋に戻って、お肌のケアと髪をまとめておくのを忘れない。ゲームやりたいけどそこは我慢しなきゃね。
モデルのお仕事がきた時に失礼なことになるのは避けたいもん。
はい、そんなこと言ってて、手早くちゃっちゃっとやって、ゲーム!
ランスさんと待ち合わせをしてるんだから、待たせるのも失礼じゃない?
まだ、よく知らない人相手には猫かぶっておかないといけないわ。
ログインするとそこは夕方にログアウトしたギルドのサロンだった。
「そりゃ、そうよね。違うところだったら、どうしようかと思っちゃった」
「おうふっ!? リナリアさん、早いですね」
鎧の人が唐突にサロンに出現した。
ちょっとびっくりしたけどログアウトする時、一緒にした気がするから、不自然なことはないと思う。
不自然なのは鎧を着込んだのとフードを目深に被ったのが見つめ合っていることね。
「ごめんなさい。遅れたかと思っちゃって」
「あ、いえ、僕こそ、ごめんなさい。お風呂入ってたもんで間に合わなくなるかと焦っちゃいました」
偶然なの?
それともお風呂って、だいたい同じ時間帯に入るもの?
「えっと、それで僕がリナリアさんに冒険するにあたって色々と教えるようにって、言われたんです。それでまず、冒険するのには武器と防具なんです」
そして、ランスさんはあたしの見た目を値踏みするように上から下まで確認する。
「武器は持っていないですよね。それは僕が何とか、出来ると思うんです。防具が問題だなぁ、そのローブ、結構すごいもんじゃないかって思うんですよ。ステータスで確認出来るんですが」
「ステータスで分かるんですか? ふぅーん、えっと、どれどれ」
クラスがプリンセスでレベルは1と。
それでローブはこれかな?
回避力+とか、魔力+とか、色々書いてあるけど何これ?
「蒼き魔女の衣って、書いてあります」
「え? 蒼き魔女の衣ですか……うーん、それ、超レアな物ですよ。どうしてそんなすごいのを……」
ランスさん、ちょっとびっくりしてるのが兜で顔見えないのに分かっちゃう。
「貰ったんです。エラーって出て変な森に飛ばされちゃった時に出会った親切な女の子に」
「それはまた、その体験自体がレアですよ。リナリアさん持ってますね!」
「持ってないわよ? あたし、今、手ぶらよ」
「あっ、いや、そうじゃなくて……よし、じゃあ、防具はそれで充分すぎるので武器ですね。僕の持ってる物で使える物がないか、探してみましょう」
ランスさんはそう言うと猫型ロボットのポケットみたいに空中から、次々と武器を取り出しては机の上に並べていく。
「一個一個、試してみましょう。リナリアさんに合う武器があったら、使ってください」
「はい、分かりました」
そう言われて、まずは肩くらいまではありそうな大きな剣を試してみる。持ち上がらない。ないわね。
「大剣はやっぱり、駄目みたいですね。ロングソードはどうですか」
普通に剣って感じのを試してみる。
持てる。
持てるんだけど何か、これじゃない感がする。
「何か、違う気がします。よく分からないけどこれじゃない感?」
「ロングソードも違うか。プリンセスだもんなぁ。それじゃ、このレイピアはどうですか」
ランスさんが次に渡してくれたのは細身の剣だった。
フェンシングの選手が使ってるのに似てるけどもうちょっと刃がついてる感じがする。
「さっきのより、使いやすい気がします。軽いですし」
「リナリアさんはプリンセスですしね。レイピアのような優雅な武器なんだと思います。じゃあ、そのレイピアは僕からのギルド入会記念ということでプレゼントします」
「いいんですか? ありがとうございます。でも、貰うだけって、気持ち悪くって」
「そんなこと気にしなくてもいいんですよ。それじゃ、今から、フィールドに出て、実際に冒険をする。僕と一緒に冒険するのがお礼の代わりってことで駄目ですかね?」
「は、はい。そんなことでよろしければ」
よしっ、まだ、猫かぶりは剥がれてないわっ。今のところは多分、おとなしい女の子ってイメージで通ってるはずだし、バレるまではこのままの路線で猫かぶっとこっと。
そして、あたしの冒険者としての生活の第一歩が始まるのだった。
ログアウトして、ゲームをやめると窓から見える景色はもう夕焼けがきれいで……って、感傷に浸ってる場合じゃないよっ。
夕食の準備しなきゃ、間に合わないじゃない。
あたふたしながらもタケルが好きな若鳥の竜田揚げを間に合わせることが出来て、ほっとする。
そういえば、ゲームをログアウトした後、『アプリを入れると便利だよぉ』とスミカからメッセが来てたのでアプリを入れたんだっけ。
お風呂に入る前、気になったので見てみたら、アプリにメッセありだった。
慌てて、確認してみるとフレンド登録した人、ランスさんからだ。
内容は夜に時間があれば、全員集まって歓迎会を兼ねた冒険に行く予定だったのが三人は都合が合わないらしい。それでランスさんが新人教育という形であたしを連れていってくれる、ということみたい。二人でとか、デートかいっ!タケルともしたことないのに!
ううん、違った。ゲームだし、これはゲームだし。
デートじゃない。
そこ、理解しよう。
落ち着こう、あたし。
しかし、お風呂に入って湯船に浸かって、考えてもあまりにリアルなあのゲームの世界で知らない人と二人は『やっぱり、デートじゃん』、『いや違うよ』、『リアルじゃないよ!』と堂々巡りから抜けられない。
あまりに長く入っていたせいで頭がボッーとしてたから、タケルの入る時間になってることに気付かなかったあたしもどうかしてるけど、確認してから入って! と釘差して、差しまくったのに入ってきたタケルとどっちが悪いのかしら?
最近、わざとあたしの裸を見ようとしてるんじゃないかって、ちょっと疑ってもいるのよね。
まぁ、お礼としてほっぺに真っ赤な紅葉マークをプレゼントすることでチャラにしといたけどねっ。
「タケルがゲームにはまるって意味ちょっとだけ、分かったかも」
部屋に戻って、お肌のケアと髪をまとめておくのを忘れない。ゲームやりたいけどそこは我慢しなきゃね。
モデルのお仕事がきた時に失礼なことになるのは避けたいもん。
はい、そんなこと言ってて、手早くちゃっちゃっとやって、ゲーム!
ランスさんと待ち合わせをしてるんだから、待たせるのも失礼じゃない?
まだ、よく知らない人相手には猫かぶっておかないといけないわ。
ログインするとそこは夕方にログアウトしたギルドのサロンだった。
「そりゃ、そうよね。違うところだったら、どうしようかと思っちゃった」
「おうふっ!? リナリアさん、早いですね」
鎧の人が唐突にサロンに出現した。
ちょっとびっくりしたけどログアウトする時、一緒にした気がするから、不自然なことはないと思う。
不自然なのは鎧を着込んだのとフードを目深に被ったのが見つめ合っていることね。
「ごめんなさい。遅れたかと思っちゃって」
「あ、いえ、僕こそ、ごめんなさい。お風呂入ってたもんで間に合わなくなるかと焦っちゃいました」
偶然なの?
それともお風呂って、だいたい同じ時間帯に入るもの?
「えっと、それで僕がリナリアさんに冒険するにあたって色々と教えるようにって、言われたんです。それでまず、冒険するのには武器と防具なんです」
そして、ランスさんはあたしの見た目を値踏みするように上から下まで確認する。
「武器は持っていないですよね。それは僕が何とか、出来ると思うんです。防具が問題だなぁ、そのローブ、結構すごいもんじゃないかって思うんですよ。ステータスで確認出来るんですが」
「ステータスで分かるんですか? ふぅーん、えっと、どれどれ」
クラスがプリンセスでレベルは1と。
それでローブはこれかな?
回避力+とか、魔力+とか、色々書いてあるけど何これ?
「蒼き魔女の衣って、書いてあります」
「え? 蒼き魔女の衣ですか……うーん、それ、超レアな物ですよ。どうしてそんなすごいのを……」
ランスさん、ちょっとびっくりしてるのが兜で顔見えないのに分かっちゃう。
「貰ったんです。エラーって出て変な森に飛ばされちゃった時に出会った親切な女の子に」
「それはまた、その体験自体がレアですよ。リナリアさん持ってますね!」
「持ってないわよ? あたし、今、手ぶらよ」
「あっ、いや、そうじゃなくて……よし、じゃあ、防具はそれで充分すぎるので武器ですね。僕の持ってる物で使える物がないか、探してみましょう」
ランスさんはそう言うと猫型ロボットのポケットみたいに空中から、次々と武器を取り出しては机の上に並べていく。
「一個一個、試してみましょう。リナリアさんに合う武器があったら、使ってください」
「はい、分かりました」
そう言われて、まずは肩くらいまではありそうな大きな剣を試してみる。持ち上がらない。ないわね。
「大剣はやっぱり、駄目みたいですね。ロングソードはどうですか」
普通に剣って感じのを試してみる。
持てる。
持てるんだけど何か、これじゃない感がする。
「何か、違う気がします。よく分からないけどこれじゃない感?」
「ロングソードも違うか。プリンセスだもんなぁ。それじゃ、このレイピアはどうですか」
ランスさんが次に渡してくれたのは細身の剣だった。
フェンシングの選手が使ってるのに似てるけどもうちょっと刃がついてる感じがする。
「さっきのより、使いやすい気がします。軽いですし」
「リナリアさんはプリンセスですしね。レイピアのような優雅な武器なんだと思います。じゃあ、そのレイピアは僕からのギルド入会記念ということでプレゼントします」
「いいんですか? ありがとうございます。でも、貰うだけって、気持ち悪くって」
「そんなこと気にしなくてもいいんですよ。それじゃ、今から、フィールドに出て、実際に冒険をする。僕と一緒に冒険するのがお礼の代わりってことで駄目ですかね?」
「は、はい。そんなことでよろしければ」
よしっ、まだ、猫かぶりは剥がれてないわっ。今のところは多分、おとなしい女の子ってイメージで通ってるはずだし、バレるまではこのままの路線で猫かぶっとこっと。
そして、あたしの冒険者としての生活の第一歩が始まるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる