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本編
第20話 後で本当のキスしようね
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「え!?」
「行かないで」
踵を返して、走り去ろうとしたあたしはタケルに後ろから強く抱き締められて、引き止められてしまった。
彼が発した『行かないで』という言葉に力強さがなかったから。
このまま手を振り払って逃げだしたら、もう二度と彼の声が聞けない。
そんな気がしたのだ。
「どうして……止めるの?」
そのまま抵抗することも出来なくて、背中からタケルに抱き締められたまま。
かなり恥ずかしい。
こんな姿を他人に見られたら、気を失っちゃうかもしれない。
「あたしはタケルに幸せになって欲しいの。だから、止めないで」
「それ、おかしいよね。アリスがいないのに僕が幸せになれるって、本気でそう思ってる?」
さっきまで泣きそうで消えてしまいそうだったタケルの声に変化が生じていた。
ちょっと怒ってない?
タケルがなぜ怒ってるのか、分からなくて不思議に思ってると身体がくるんと向き直させられてた。
力任せなのに乱暴じゃなくて、労わるような優しさを感じさせる力具合で密着した状態で抱き締め合っている恰好になってる。
「な、な、何でこんなこと! 近いってばぁ」
「アリスが僕の言うことを聞こうとしないからだよ」
「それは……そうなんだけど……でも……」
「でも、じゃないよね。僕はアリスがいないと幸せになれないんだよ。君が隣にいてくれないと幸せになれないんだ。その意味、分かってる?」
え? あれ? おかしい。
タケルが好きなのはあたしでない誰かであって、隣にいていいのもあたしでない誰か……じゃなくて、あたしってことなの!?
「タケルがあたしのことを好き? そんなの……信じられない」
「どうしたら、信じてくれるのかな」
タケルの好きって、家族を好きと同じのだよね。
いつも一緒にいて、笑い合って。
だから……その好きとずっと一緒にいたい、愛してるとは違うよね?
「信じてくれないアリスが悪いんだ」
タケルの好きが本当に好きか、分からない。
混乱するあたしの身体にタケルは直接、自分の存在感を知らしめたかったみたい。
軽く痛みを感じるくらいにギュウと抱き締められた。
「え? タケル……? んっ」
気付いたら、彼の唇とあたしの唇が重なり合っていた。
初めてのキス。
ロマンチックな状況でしたいなんて、夢見ていたこともあったけど、唐突に訪れたこのキスをあたしは一生、忘れないだろう。
離れていくタケルの唇を残念に思って、もっと欲しいと思ってしまう自分をちょっと浅ましく感じる。
さっきまで逃げようとしてた癖にって。
「アリス、僕はずっとずっと君だけを……好きだった。これからもずっと、君だけを好きでいてもいいかな?」
少し、上気した顔であたしを見つめてくるタケルにあたしはコクコクと頷くことしか、出来ない。
今、何を言われても『はい』って、答える自信があるわ。
また、どちらからともなく、唇が近付いてきた。
今度はさっきの軽いキスと違う。
お互いの舌が絡み合って、唾液が混じり合う大人のキスだった。
「い、いきなり、舌とかバカぁ……」
「アリスだって、舌入れてきたじゃないか」
「そ、そんなことないもん」
タケルの顔が真っ赤だけど、きっとあたしの顔も真っ赤で見られたもんじゃないだろう。
二人とも初めてなんだし、しょうがないよね。
これから、二人で色々と試し……って、何を試すんだ、あたし!?
「これ、リアルな感触だけどバーチャルなのが残念だな」
「そっかぁ。そういえば、VRゲームだったの忘れてたわ」
「そのお陰で素直になれたから、僕は感謝してるけどね」
「うん。後で本当のキスしようね」
「え、え!? ほ、本当の……ゴクッ」
「タケルのバカぁ」
タケルが生唾のみ込む音がえらく大きく聞こえてきて、思わず二人で顔を見合わせて、笑い合う。
でも、このままログアウトしちゃって、タケルの顔見たら、すごく恥ずかしくなるんだろうなって思う。
タケルもそう考えてるのかな?
動きを見せないまま、固まってる。
まさか、変な妄想してるとか、じゃないよね?
それから二人とも恥ずかしくって、モジモジと動けないまま、ずっと抱き締め合っていた。
それも一時間も!
時が経つのも忘れてって、ホントだったのね。
その間もどちらから、求めてるって訳じゃないのに何度も唇を重ね合って。
あたしたちはずっと初恋を胸に秘めてきたのだ。
そのせいかしら?
これだけしちゃうと止まらなくなって、それ以上の関係に進んじゃいそうって、気付いてた。
抑えられる自制心があって、良かったと思ってたのよね。
その時は!
それにこれだけキスしたんだから、ログアウトしてリアルでも大丈夫って、変な自信を持ってしまったんだと思う……。
👩 👩 👩
あの時、自信を持ったとか、思ってた自分を罵りたい気分。
ログアウトして、二人ほぼ同時に部屋から出たもんだから、顔を見合わせて、笑って……そこまでは良かったわ。
でも、止められなかったのよ!
自制心って何!?
廊下で映画のワンシーンみたいに抱き合って、お互いの存在を確認し合うように抱き締め合いながら、見つめ合ったのがいけなかったのかな?
キスしちゃったの。
今度はホントのキス。
何度も啄むように唇を重ねて、舌を絡めあった。
現実のタケルをもっと感じたいって、思ったから。
離れたら、銀色の橋が出来てるなんて、ホントに映画みたい。
なんて、思って夢見心地だったのはここまで!
さすがに廊下でずっとキスしてて、ユイナさんに見つかるのはまずい。
あたしの部屋ですることにしたわ。
何をって?
何をする為に!
お互いに小さい頃から、裸なんて見慣れていて、最近でもお風呂で見てたはずなのにいざ、生まれたままの姿で抱き合うのはすごい恥ずかしかった。
そして、あたしとタケルは初めて、結ばれた。
ずっとこうなることを望んでて、すごく幸せ。
今、思い出すだけでも頭が沸騰しそうなくらい熱くなってくる。
うん、でも、あたしはなめてた。
運動部所属の男子高校生がどれだけ、性欲と体力がありあまってるのかってことをね。
あたしはタケルに愛されて、一回で満足してた。
正直、痛かったからだ。
痛いとは聞いてたんだけど、ホントに痛いじゃない。
だから、今日はもう、いいかなぁって。
それなのにタケルが『もう一回だけ』って、仔犬みたいな顔で言うもんだから、ダメって、断れない。
うん、それでもう一回が一回で済まなかったのよね。
あたしはもうただ『あんっ、そこ』とか、『あん。いやぁ、そこダメぇ』とか、単語がワンパターンになって、声が枯れちゃうくらいに啼かされた。
おまけに後ろからされたり、上にならされたりであたしは単なるおもちゃか!
好き放題に愛されたけど、すごく幸せ。
幸せ気分に浸れるのって、最高なのね。
だけど、これがいわゆる、抱き潰されたって現象かしら?
次の日の朝、起きれなくなってて、すごく焦っちゃった。
日曜日で良かった。
翌日が学校だったら、アウトだもん。
「行かないで」
踵を返して、走り去ろうとしたあたしはタケルに後ろから強く抱き締められて、引き止められてしまった。
彼が発した『行かないで』という言葉に力強さがなかったから。
このまま手を振り払って逃げだしたら、もう二度と彼の声が聞けない。
そんな気がしたのだ。
「どうして……止めるの?」
そのまま抵抗することも出来なくて、背中からタケルに抱き締められたまま。
かなり恥ずかしい。
こんな姿を他人に見られたら、気を失っちゃうかもしれない。
「あたしはタケルに幸せになって欲しいの。だから、止めないで」
「それ、おかしいよね。アリスがいないのに僕が幸せになれるって、本気でそう思ってる?」
さっきまで泣きそうで消えてしまいそうだったタケルの声に変化が生じていた。
ちょっと怒ってない?
タケルがなぜ怒ってるのか、分からなくて不思議に思ってると身体がくるんと向き直させられてた。
力任せなのに乱暴じゃなくて、労わるような優しさを感じさせる力具合で密着した状態で抱き締め合っている恰好になってる。
「な、な、何でこんなこと! 近いってばぁ」
「アリスが僕の言うことを聞こうとしないからだよ」
「それは……そうなんだけど……でも……」
「でも、じゃないよね。僕はアリスがいないと幸せになれないんだよ。君が隣にいてくれないと幸せになれないんだ。その意味、分かってる?」
え? あれ? おかしい。
タケルが好きなのはあたしでない誰かであって、隣にいていいのもあたしでない誰か……じゃなくて、あたしってことなの!?
「タケルがあたしのことを好き? そんなの……信じられない」
「どうしたら、信じてくれるのかな」
タケルの好きって、家族を好きと同じのだよね。
いつも一緒にいて、笑い合って。
だから……その好きとずっと一緒にいたい、愛してるとは違うよね?
「信じてくれないアリスが悪いんだ」
タケルの好きが本当に好きか、分からない。
混乱するあたしの身体にタケルは直接、自分の存在感を知らしめたかったみたい。
軽く痛みを感じるくらいにギュウと抱き締められた。
「え? タケル……? んっ」
気付いたら、彼の唇とあたしの唇が重なり合っていた。
初めてのキス。
ロマンチックな状況でしたいなんて、夢見ていたこともあったけど、唐突に訪れたこのキスをあたしは一生、忘れないだろう。
離れていくタケルの唇を残念に思って、もっと欲しいと思ってしまう自分をちょっと浅ましく感じる。
さっきまで逃げようとしてた癖にって。
「アリス、僕はずっとずっと君だけを……好きだった。これからもずっと、君だけを好きでいてもいいかな?」
少し、上気した顔であたしを見つめてくるタケルにあたしはコクコクと頷くことしか、出来ない。
今、何を言われても『はい』って、答える自信があるわ。
また、どちらからともなく、唇が近付いてきた。
今度はさっきの軽いキスと違う。
お互いの舌が絡み合って、唾液が混じり合う大人のキスだった。
「い、いきなり、舌とかバカぁ……」
「アリスだって、舌入れてきたじゃないか」
「そ、そんなことないもん」
タケルの顔が真っ赤だけど、きっとあたしの顔も真っ赤で見られたもんじゃないだろう。
二人とも初めてなんだし、しょうがないよね。
これから、二人で色々と試し……って、何を試すんだ、あたし!?
「これ、リアルな感触だけどバーチャルなのが残念だな」
「そっかぁ。そういえば、VRゲームだったの忘れてたわ」
「そのお陰で素直になれたから、僕は感謝してるけどね」
「うん。後で本当のキスしようね」
「え、え!? ほ、本当の……ゴクッ」
「タケルのバカぁ」
タケルが生唾のみ込む音がえらく大きく聞こえてきて、思わず二人で顔を見合わせて、笑い合う。
でも、このままログアウトしちゃって、タケルの顔見たら、すごく恥ずかしくなるんだろうなって思う。
タケルもそう考えてるのかな?
動きを見せないまま、固まってる。
まさか、変な妄想してるとか、じゃないよね?
それから二人とも恥ずかしくって、モジモジと動けないまま、ずっと抱き締め合っていた。
それも一時間も!
時が経つのも忘れてって、ホントだったのね。
その間もどちらから、求めてるって訳じゃないのに何度も唇を重ね合って。
あたしたちはずっと初恋を胸に秘めてきたのだ。
そのせいかしら?
これだけしちゃうと止まらなくなって、それ以上の関係に進んじゃいそうって、気付いてた。
抑えられる自制心があって、良かったと思ってたのよね。
その時は!
それにこれだけキスしたんだから、ログアウトしてリアルでも大丈夫って、変な自信を持ってしまったんだと思う……。
👩 👩 👩
あの時、自信を持ったとか、思ってた自分を罵りたい気分。
ログアウトして、二人ほぼ同時に部屋から出たもんだから、顔を見合わせて、笑って……そこまでは良かったわ。
でも、止められなかったのよ!
自制心って何!?
廊下で映画のワンシーンみたいに抱き合って、お互いの存在を確認し合うように抱き締め合いながら、見つめ合ったのがいけなかったのかな?
キスしちゃったの。
今度はホントのキス。
何度も啄むように唇を重ねて、舌を絡めあった。
現実のタケルをもっと感じたいって、思ったから。
離れたら、銀色の橋が出来てるなんて、ホントに映画みたい。
なんて、思って夢見心地だったのはここまで!
さすがに廊下でずっとキスしてて、ユイナさんに見つかるのはまずい。
あたしの部屋ですることにしたわ。
何をって?
何をする為に!
お互いに小さい頃から、裸なんて見慣れていて、最近でもお風呂で見てたはずなのにいざ、生まれたままの姿で抱き合うのはすごい恥ずかしかった。
そして、あたしとタケルは初めて、結ばれた。
ずっとこうなることを望んでて、すごく幸せ。
今、思い出すだけでも頭が沸騰しそうなくらい熱くなってくる。
うん、でも、あたしはなめてた。
運動部所属の男子高校生がどれだけ、性欲と体力がありあまってるのかってことをね。
あたしはタケルに愛されて、一回で満足してた。
正直、痛かったからだ。
痛いとは聞いてたんだけど、ホントに痛いじゃない。
だから、今日はもう、いいかなぁって。
それなのにタケルが『もう一回だけ』って、仔犬みたいな顔で言うもんだから、ダメって、断れない。
うん、それでもう一回が一回で済まなかったのよね。
あたしはもうただ『あんっ、そこ』とか、『あん。いやぁ、そこダメぇ』とか、単語がワンパターンになって、声が枯れちゃうくらいに啼かされた。
おまけに後ろからされたり、上にならされたりであたしは単なるおもちゃか!
好き放題に愛されたけど、すごく幸せ。
幸せ気分に浸れるのって、最高なのね。
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