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弐 ストンパディの麒麟児
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ストンパディ村はそれほど、名を知られぬ小さな村だ。
中央に位置する大きな湖が影響し、盆地にしては比較的、穏やかな気候で知られる土地だった。
村の長を務めるのはトマス・ストンパディという名の男である。
学才豊かな人となりで知られるトマスは、幼少期から博学多才ぶりを発揮した。
その才を愛した時の領主に取り立てられたばかりか、名だけで既に落ちぶれていた家の復興も約束された。
それがストンパディ村の始まりとなり、代官としてトマスが村を治めている。
トマスと若き頃より苦楽を共にした妻ゾーイの間には四人の子がいる。
息子が二人と娘が二人。
長男のジャクソンは十三歳になったばかりだが、将来を嘱望される才能豊かな少年である。
学問好きな父親とは対照的なところがあり、剣の道を志そうと幼少期より修行に励んでいるが生来、体が頑健ではないのをトマスとゾーイは心配している。
次男のカイルは十歳で父親によく似たところがあった。
学問を好み、常に本を片手に空想するのが好きな夢見がちな少年でもある。
長女のジュリアは九歳、次女のメーベルは六歳。
二人とも佳人として、近隣の村落に知られていた母親似の愛らしい女の子である。
そして、その日、ストンパディ家に新たな家族が生まれた。
キラキラと輝く瞳が印象的な大きな目をした男児である。
運命の子はコーネリアスと名付けられた。
コーネリアスは五歳になった。
コウの愛称で呼ばれ、誰からも愛されてすくすくと育った。
愛らしい見た目の美少年と言ってもいい容貌の持ち主だが、一度言い出したことを曲げない頑固な一面が既に顔を覗かせている。
容姿にも変わったところがあった。
父親のトマスはダークブラウン、母親のゾーイはブルネットだがコーネリアスの髪の色はくすんだグレーである。
灰を被ったような色合いと収まりの悪い強い癖毛のせいで遠目にもすぐに分かるほどだ。
さらに不思議な物を好み、食した。
そのままでは食べることが出来ない渋い味の果実を乾燥させた物である。
それまで利用法が無く、捨てられていた果実の有効な活用法として、現在ではストンパディ村の特産品として、出荷されているほどだ。
コーネリアスは五歳児でありながら、難解な書が多いトマスの蔵書を読まんと気構えを見せていた。
利発、聡明といった言葉がこれほど、ふさわしいものはない。
ところがある日のことである。
干した果実を急にたくさん食べ過ぎて、喉に詰まらせた。
幸いなことに次女のメーベルが傍にいた。
すぐに人を呼びに走ったメーベルが連れてきたのは当時、既に体を壊し実家で養生していた長兄のジャクソンである。
騎士になることを目指し、剣の道を邁進していたジャクソンだが道を半ばにして、断念せざるを得なかった。
この時、騎士を目指していたジャクソンが剣術だけではなく、様々なことを学んでいたことが幸いした。
ジャクソンが適切にみぞおちを圧迫したことで喉に痞えていた果実が吐き出された。
この時、危うく冥府の門を潜りかねない状況にあったコーネリアスは不思議な体験をしていた。
ストンパディの家に生まれてからの五年間の記憶が走馬灯のように流れたのではない。
自分が異なる世界、違う時代に一人の男として人生を歩んでいた記憶である。
(こうた? ぼくがこうたなのか)
脳天から爪先まで一気に貫くように膨大な量の記憶がデータとして、コーネリアスの中を流れていった。
記憶の中にある知識と経験がコーネリアスの灰色の脳を刺激し、活性化させる。
(そうだ。ぼくがすきだったのは……)
そして、彼は気付いた。
己が五年間生きてきたこの世界が何かによく似ていることに……。
中央に位置する大きな湖が影響し、盆地にしては比較的、穏やかな気候で知られる土地だった。
村の長を務めるのはトマス・ストンパディという名の男である。
学才豊かな人となりで知られるトマスは、幼少期から博学多才ぶりを発揮した。
その才を愛した時の領主に取り立てられたばかりか、名だけで既に落ちぶれていた家の復興も約束された。
それがストンパディ村の始まりとなり、代官としてトマスが村を治めている。
トマスと若き頃より苦楽を共にした妻ゾーイの間には四人の子がいる。
息子が二人と娘が二人。
長男のジャクソンは十三歳になったばかりだが、将来を嘱望される才能豊かな少年である。
学問好きな父親とは対照的なところがあり、剣の道を志そうと幼少期より修行に励んでいるが生来、体が頑健ではないのをトマスとゾーイは心配している。
次男のカイルは十歳で父親によく似たところがあった。
学問を好み、常に本を片手に空想するのが好きな夢見がちな少年でもある。
長女のジュリアは九歳、次女のメーベルは六歳。
二人とも佳人として、近隣の村落に知られていた母親似の愛らしい女の子である。
そして、その日、ストンパディ家に新たな家族が生まれた。
キラキラと輝く瞳が印象的な大きな目をした男児である。
運命の子はコーネリアスと名付けられた。
コーネリアスは五歳になった。
コウの愛称で呼ばれ、誰からも愛されてすくすくと育った。
愛らしい見た目の美少年と言ってもいい容貌の持ち主だが、一度言い出したことを曲げない頑固な一面が既に顔を覗かせている。
容姿にも変わったところがあった。
父親のトマスはダークブラウン、母親のゾーイはブルネットだがコーネリアスの髪の色はくすんだグレーである。
灰を被ったような色合いと収まりの悪い強い癖毛のせいで遠目にもすぐに分かるほどだ。
さらに不思議な物を好み、食した。
そのままでは食べることが出来ない渋い味の果実を乾燥させた物である。
それまで利用法が無く、捨てられていた果実の有効な活用法として、現在ではストンパディ村の特産品として、出荷されているほどだ。
コーネリアスは五歳児でありながら、難解な書が多いトマスの蔵書を読まんと気構えを見せていた。
利発、聡明といった言葉がこれほど、ふさわしいものはない。
ところがある日のことである。
干した果実を急にたくさん食べ過ぎて、喉に詰まらせた。
幸いなことに次女のメーベルが傍にいた。
すぐに人を呼びに走ったメーベルが連れてきたのは当時、既に体を壊し実家で養生していた長兄のジャクソンである。
騎士になることを目指し、剣の道を邁進していたジャクソンだが道を半ばにして、断念せざるを得なかった。
この時、騎士を目指していたジャクソンが剣術だけではなく、様々なことを学んでいたことが幸いした。
ジャクソンが適切にみぞおちを圧迫したことで喉に痞えていた果実が吐き出された。
この時、危うく冥府の門を潜りかねない状況にあったコーネリアスは不思議な体験をしていた。
ストンパディの家に生まれてからの五年間の記憶が走馬灯のように流れたのではない。
自分が異なる世界、違う時代に一人の男として人生を歩んでいた記憶である。
(こうた? ぼくがこうたなのか)
脳天から爪先まで一気に貫くように膨大な量の記憶がデータとして、コーネリアスの中を流れていった。
記憶の中にある知識と経験がコーネリアスの灰色の脳を刺激し、活性化させる。
(そうだ。ぼくがすきだったのは……)
そして、彼は気付いた。
己が五年間生きてきたこの世界が何かによく似ていることに……。
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