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捌 藪の子
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光汰も決して、腕っ節が強い訳ではなく、歴史が好きなどちらかと言えば、文学青年に近い男だった。
どちらかと言えば、心根は穏やかで気弱な部類に属していた。
だからこそ、父親の死とブラック企業での過労で精神的に衰弱したのである。
しかし、コーネリアスとして、この世界に生まれ変わってからは驚くほどに豪胆になったと感じていた。
その証拠に光汰の時にはありえなかった行動を取ろうとしていた。
藪の枝と葉が不自然な動きを見せ、がさがさと明らかに何者かがいる気配と音がした。
コーネリアスは何が原因なのか、己の目で確かめようと藪に近付いている。
利き手に握っている剣代わりの枝はあまりに頼りないが、それを上回る好奇心と何者も恐れぬ勇気が勝ったのだ。
「誰か、いるのか?」
まずは探ってみるのが兵法の手であると考えたコーネリアスは敢えて、呼びかけることにした。
不心得者が潜んでいるのであれば、正体を現す。
そうでなければ、何か事情のある者が潜んでいると見て、間違いないと推理した。
どちらにも該当しなければ、獣の類が紛れ込んだに過ぎないと軽く、考えていたのもある。
「…………」
藪から、枝をかき分け出てきたのはコーネリアスの予想したのとは全く、異なる小さな影だ。
己とあまり変わらない背丈の子供だった。
森の中で目立ちにくくしたいのか、若草色のチュニックと薄茶の革のレギンスを身に着けているが、髪が陽光に煌く銀糸のようなシルバーブロンドでは意味があるまいとコーネリアスは失礼なことを考えている。
そこには己の推理が大外れしたことによる照れと落胆も少なからず、影響していた。
「子供?」
「君も子供なのに変なこと、言うね」
「いや。そりゃ、そうなんだけど」
より目立っているのはその子の瞳だった。
猫を思わせる大きな目に収まる瞳はまるで紫水晶のように見えた。
透き通るような色合いは相手の心の底を見通すとでも言う不思議な輝きを放っていた。
「見ない顔だけど、村の子ではないな?」
「あ……それはえっと、あっちから来た」
コーネリアスの無言の威圧に藪から出てきた子供はおずおずと砦がある山を指差す。
「じゃあ、一人ではないか。迷子か?」
「ち、違うし。ボク、迷子になんてならないし」
山までは距離があるので子供一人で来たのではないとコーネリアスは再び、推理する。
歩いてきたのにしては足元が全く、汚れていない。
山を歩くにせよ、森を歩くにせよ、向いているとは思えない革のブーツに泥の汚れがついていないのが何よりの証拠だった。
そうである以上、大人が連れてきたと考えるのが一番、妥当な線だとコーネリアスは思った。
「迷子はだいたい、そう言うんだ。知ってたか」
「だから、迷子じゃないって!」
張り合うようにいつしか、互いの息がかかるほどの距離に接近し、顔を近づけていた。
男の子なのに花のようないい香りがするのを不思議に思いつつ、コーネリアスはこのやり取りを楽しんでいる。
「お前達、伏せろ!」
その時、野太い男の大音声に切羽詰まるものを感じたコーネリアスは何か、言いたげな藪の子の頭を押さえ、反射的に身を屈めた。
ひゅんという風を切る音と共にそれまで二人の頭があった位置を凄まじい勢いで過ぎて行った。
矢だった。
どちらかと言えば、心根は穏やかで気弱な部類に属していた。
だからこそ、父親の死とブラック企業での過労で精神的に衰弱したのである。
しかし、コーネリアスとして、この世界に生まれ変わってからは驚くほどに豪胆になったと感じていた。
その証拠に光汰の時にはありえなかった行動を取ろうとしていた。
藪の枝と葉が不自然な動きを見せ、がさがさと明らかに何者かがいる気配と音がした。
コーネリアスは何が原因なのか、己の目で確かめようと藪に近付いている。
利き手に握っている剣代わりの枝はあまりに頼りないが、それを上回る好奇心と何者も恐れぬ勇気が勝ったのだ。
「誰か、いるのか?」
まずは探ってみるのが兵法の手であると考えたコーネリアスは敢えて、呼びかけることにした。
不心得者が潜んでいるのであれば、正体を現す。
そうでなければ、何か事情のある者が潜んでいると見て、間違いないと推理した。
どちらにも該当しなければ、獣の類が紛れ込んだに過ぎないと軽く、考えていたのもある。
「…………」
藪から、枝をかき分け出てきたのはコーネリアスの予想したのとは全く、異なる小さな影だ。
己とあまり変わらない背丈の子供だった。
森の中で目立ちにくくしたいのか、若草色のチュニックと薄茶の革のレギンスを身に着けているが、髪が陽光に煌く銀糸のようなシルバーブロンドでは意味があるまいとコーネリアスは失礼なことを考えている。
そこには己の推理が大外れしたことによる照れと落胆も少なからず、影響していた。
「子供?」
「君も子供なのに変なこと、言うね」
「いや。そりゃ、そうなんだけど」
より目立っているのはその子の瞳だった。
猫を思わせる大きな目に収まる瞳はまるで紫水晶のように見えた。
透き通るような色合いは相手の心の底を見通すとでも言う不思議な輝きを放っていた。
「見ない顔だけど、村の子ではないな?」
「あ……それはえっと、あっちから来た」
コーネリアスの無言の威圧に藪から出てきた子供はおずおずと砦がある山を指差す。
「じゃあ、一人ではないか。迷子か?」
「ち、違うし。ボク、迷子になんてならないし」
山までは距離があるので子供一人で来たのではないとコーネリアスは再び、推理する。
歩いてきたのにしては足元が全く、汚れていない。
山を歩くにせよ、森を歩くにせよ、向いているとは思えない革のブーツに泥の汚れがついていないのが何よりの証拠だった。
そうである以上、大人が連れてきたと考えるのが一番、妥当な線だとコーネリアスは思った。
「迷子はだいたい、そう言うんだ。知ってたか」
「だから、迷子じゃないって!」
張り合うようにいつしか、互いの息がかかるほどの距離に接近し、顔を近づけていた。
男の子なのに花のようないい香りがするのを不思議に思いつつ、コーネリアスはこのやり取りを楽しんでいる。
「お前達、伏せろ!」
その時、野太い男の大音声に切羽詰まるものを感じたコーネリアスは何か、言いたげな藪の子の頭を押さえ、反射的に身を屈めた。
ひゅんという風を切る音と共にそれまで二人の頭があった位置を凄まじい勢いで過ぎて行った。
矢だった。
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