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「いくらだ?」
「1000」
ぶっきらぼうに言う船の船頭に、お金を渡して対岸へ向かう。帝国にはない、横幅2キロほどある緑河はその名の通り水が濁って緑に見えた。
ここにくるともはや、帝国で使われていた言葉は聞くこともない。服装も毛皮のようなものへと変わり、今は冬と春の境目らしい。
飯は辛いものが多く、隣国の飯よりも美味かったが油分が多く好きになれそうになかった。
「この先に宿はあるか?」
「あぁ、探せばあるだろ。あっちはそこそこ発展しているから」
隣にいる男は仙流という場所から来たらしい。東の国の商品を扱っているのだそうだ。
「東の国へ行きたいのだが」
「ん? あぁ、大和か」
「そうだ」
男はため息を吐き、首を振った。
「死にたいなら行ってくればいい。嵐やら潮の流れが強いせいで、あそこへ着くにはまる1年、船の上で生活せにゃならん」
それほど道のりは厳しいのか。
「船に乗ったことはあるのか?」
「あ? 無いよ。だが、よく大和に行こうとして嵐にあった船の残骸がこっちに流れてくる。いやでも分かるんだよ。半月前に出港した船っぽいなぁとかな。まぁ、大和は異色の国だからな。珍しい商品が手に入るから行こうとする奴らは絶えないんだろう」
だが、この男は大和の国の商品を扱っていると聞いた。
「ならばどうやって商品を仕入れている?」
「うん? そりゃあお前、言ったらダメだろうが」
よくよく見ればこの男、服は地味だが良い布地を使っている。あぁ、帝国を出ていくときに置いていったあの商人の仲間か。
「私は以前あなた方に世話になったことがあってな。ほら」
持っていた神石を取り出した。
「お!?!? それは!? なんて純度の高い神石なんだ!!!! あんた、もしかして……」
商人は目の色を変えて、興奮したように私の持っている神石に近寄ってきた。やはり、これは相当貴重なものか。
「どうやって品物を仕入れているか、聞いてもいいか?」
「う……、分かった」
渋々ながらに頷いた男が話した内容はここまでの旅がアホらしくなるようなものだった。
「つまり、海底通路があるということか?」
「あぁ、そうだ。大和の民は神力ってのを持っているらしい。その力を使って何百万キロも離れた場所を短時間で行き来できるように変えるらしい」
あの旧王国の地下通路か。
身近に体験した例があったために、即座に理解できた。だが、海底通路とはどういうことか?
「大和は昔、神の国って呼ばれてたんだ。海底通路はその名残らしいぞ」
なるほど。
「私もそこへ行きたいのだが」
「え? あんたは無理だ。あそこに行くには大和の国の許可がいるんだよ」
「許可……か」
「そうさ」
「どうやって許可をとるんだ?」
それが分かれば石板であちらの協力者に依頼できる。
「ん? なんだったかな。俺は持ってないんだけど、石の板みたいなもんをもっとけばいいらしいぜ?」
「それはこれか?」
「あーー、そうそう、そんなやつ……っ!? お前、マジか!? それを持っているならそうと言ってくれよな! 驚かしやがって、それがあるなら海底通路は通れる。安心しろ」
そうか。伯爵は一言もそんなことは言ってなかったが……思えば渡してきたのはルーナの兄だったな。
「なら、案内してくれるか?」
「分かった。海底通路を通ればあっちに着くのは3週間ほどだ。あ、そういえばあっちの言語は分かるか? あんた、こっちの顔じゃねぇもんな」
「ん? 心配はいらない。すでに頭に入れてある」
3種類の文字を扱う独特の文化には手こずったが、問題なく習得できている。これも伯爵が教えてくれたおかげだ。
「そっか、あんたすげぇな」
「普通だ」
「着いたぞ」
ちょうど船が対岸に着いたようだった。
「じゃ、こっちだ」
そう言って歩き出した男のあとに着いて行った。
予想よりもだいぶ大和に着く時間が短くなった。ルーナは驚くだろうか?
男の後ろをついていくマクシミリムの顔には抑えきれないといったような風の歪んだ笑みが浮かんでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【日記スペースby作者】
なんだろう? 段々とマクシミリムが変態に……ゴホンッ。
さて、海底の道といえば北海道の海底トンネルが有名ではないでしょうか。青函トンネルでしたっけ? テレビで海底トンネルの特集があり、凄いなぁと思いながら見た記憶があります。東京などにも海底トンネルがあるみたいなのですが、行ったことはありますか? よかったら感想欄にコメントしてください! お気に入り登録もよろしくお願いします。
「1000」
ぶっきらぼうに言う船の船頭に、お金を渡して対岸へ向かう。帝国にはない、横幅2キロほどある緑河はその名の通り水が濁って緑に見えた。
ここにくるともはや、帝国で使われていた言葉は聞くこともない。服装も毛皮のようなものへと変わり、今は冬と春の境目らしい。
飯は辛いものが多く、隣国の飯よりも美味かったが油分が多く好きになれそうになかった。
「この先に宿はあるか?」
「あぁ、探せばあるだろ。あっちはそこそこ発展しているから」
隣にいる男は仙流という場所から来たらしい。東の国の商品を扱っているのだそうだ。
「東の国へ行きたいのだが」
「ん? あぁ、大和か」
「そうだ」
男はため息を吐き、首を振った。
「死にたいなら行ってくればいい。嵐やら潮の流れが強いせいで、あそこへ着くにはまる1年、船の上で生活せにゃならん」
それほど道のりは厳しいのか。
「船に乗ったことはあるのか?」
「あ? 無いよ。だが、よく大和に行こうとして嵐にあった船の残骸がこっちに流れてくる。いやでも分かるんだよ。半月前に出港した船っぽいなぁとかな。まぁ、大和は異色の国だからな。珍しい商品が手に入るから行こうとする奴らは絶えないんだろう」
だが、この男は大和の国の商品を扱っていると聞いた。
「ならばどうやって商品を仕入れている?」
「うん? そりゃあお前、言ったらダメだろうが」
よくよく見ればこの男、服は地味だが良い布地を使っている。あぁ、帝国を出ていくときに置いていったあの商人の仲間か。
「私は以前あなた方に世話になったことがあってな。ほら」
持っていた神石を取り出した。
「お!?!? それは!? なんて純度の高い神石なんだ!!!! あんた、もしかして……」
商人は目の色を変えて、興奮したように私の持っている神石に近寄ってきた。やはり、これは相当貴重なものか。
「どうやって品物を仕入れているか、聞いてもいいか?」
「う……、分かった」
渋々ながらに頷いた男が話した内容はここまでの旅がアホらしくなるようなものだった。
「つまり、海底通路があるということか?」
「あぁ、そうだ。大和の民は神力ってのを持っているらしい。その力を使って何百万キロも離れた場所を短時間で行き来できるように変えるらしい」
あの旧王国の地下通路か。
身近に体験した例があったために、即座に理解できた。だが、海底通路とはどういうことか?
「大和は昔、神の国って呼ばれてたんだ。海底通路はその名残らしいぞ」
なるほど。
「私もそこへ行きたいのだが」
「え? あんたは無理だ。あそこに行くには大和の国の許可がいるんだよ」
「許可……か」
「そうさ」
「どうやって許可をとるんだ?」
それが分かれば石板であちらの協力者に依頼できる。
「ん? なんだったかな。俺は持ってないんだけど、石の板みたいなもんをもっとけばいいらしいぜ?」
「それはこれか?」
「あーー、そうそう、そんなやつ……っ!? お前、マジか!? それを持っているならそうと言ってくれよな! 驚かしやがって、それがあるなら海底通路は通れる。安心しろ」
そうか。伯爵は一言もそんなことは言ってなかったが……思えば渡してきたのはルーナの兄だったな。
「なら、案内してくれるか?」
「分かった。海底通路を通ればあっちに着くのは3週間ほどだ。あ、そういえばあっちの言語は分かるか? あんた、こっちの顔じゃねぇもんな」
「ん? 心配はいらない。すでに頭に入れてある」
3種類の文字を扱う独特の文化には手こずったが、問題なく習得できている。これも伯爵が教えてくれたおかげだ。
「そっか、あんたすげぇな」
「普通だ」
「着いたぞ」
ちょうど船が対岸に着いたようだった。
「じゃ、こっちだ」
そう言って歩き出した男のあとに着いて行った。
予想よりもだいぶ大和に着く時間が短くなった。ルーナは驚くだろうか?
男の後ろをついていくマクシミリムの顔には抑えきれないといったような風の歪んだ笑みが浮かんでいた。
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【日記スペースby作者】
なんだろう? 段々とマクシミリムが変態に……ゴホンッ。
さて、海底の道といえば北海道の海底トンネルが有名ではないでしょうか。青函トンネルでしたっけ? テレビで海底トンネルの特集があり、凄いなぁと思いながら見た記憶があります。東京などにも海底トンネルがあるみたいなのですが、行ったことはありますか? よかったら感想欄にコメントしてください! お気に入り登録もよろしくお願いします。
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