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……言い訳するなら、気が緩んでいた
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今日は何故かすおう様が来ていた。
「華雪様」
「華雪でいいです」
「そうですか? では、華雪と」
にっこり笑顔のすおう様。客間に通してお茶をいれ、お菓子を用意して数時間。彼はいつも通り目の笑っていない麗しい笑みを浮かべ、ニコニコと私に話しかけてきた。当然、私も質問に答えていたのだが、彼はなぜか日が暮れてもこの家に居座っていたのだ。
「あの、今日は何用で?」
やっと聞けたここにきた理由。聞こうと思ってもすおう様が質問攻めにしてくるので聞く暇がなかったのだ。
「あぁ、万葉様に会いたいと思いまして」
たしかに、今、まよ様は遺跡の祭祀があり帰りが遅い。
「そうでしたか。私は先に夕食を取るのですが……」
すおう様はどういたしますか? と言う前にすおう様か口を開いていた。
「よろしければ私もいいでしょうか?」
つまり、一緒に食べるということか。
「分かりました」
てことは、3人分作らなければならない。いつもなら凛がいるのに、今日に限って家の手伝いがあるらしくいない。
男と2人っきりの空間はどこか殿下の時と酷似していて苦手だが、しょうがないと思い直し俺は今日の夕飯に取り掛かった。
大根を一口大に切り、人参を乱切りに。玉ねぎはくし形に切って、大きな鍋に入れる。台所には遺物が使われていて、それらは前世のカセットコンロによく似ていた。ただ、神力で動くそれらは私が思った通りの火力を出してくれる。
「これは?」
「ヒッ!?」
音もなく近寄ってきたすおう様に、声にならない声が出た。びっっくりしたぁ!
「やめてください」
「あぁ、すみません」
絶対思ってない。
目を細めて謝るすおう様。反省した様子もない彼に、俺は木ベラを押し付けた。
「⁇」
「しばらく炒めておいてください」
「炒める⁇」
「鍋の中にある野菜をその木ベラで混ぜていてください」
「なるほど」
困ったような笑みを浮かべたすおう様は慣れない手つきで木ベラを回し始めた。皇族にこんなことさせたら多分、凛とか怒るんだろうなとは思ったが、俺は知らん。
肉じゃがを作りたかったけれど、猪の肉はクセが強いので、やめておいた。肉なし肉じゃがを作る予定だ。あれ? 肉じゃがって炒めなくていいんだっけ⁇ いや、炒めてたよな?
「華雪、これでいいですか?」
「あ、はい」
しばらくしてすおう様がこちらに声をかけてきた。
「あ、いいですね」
「そうですか? よかったです」
こんがりといい感じに炒められた野菜達。ちくしょう! イケメンは料理もできるっていうのか!?
ジャバーッと煮干しでとっただし汁を加えて一煮立ちさせ、醤油や味醂を加える。
「初めて見る料理ですね」
「そうですか?」
前世の料理だからどことも言えず、知らんぷりして作っていく。その間、なにかを探ろうとするすおう様の視線がとても痛かった。
「さ、出来ました」
1時間ほど前に炊いておいたご飯をお茶碗によそい、お椀に肉なし肉じゃがを入れる。
「じゃあ、これどうぞ」
「……どこに持っていけばいいですか?」
あ、そっか。
「じゃあ、さっきすおう様がいた部屋に持っていってください。あ、箸!」
「……ありがとうございます」
「いいえ」
盆に乗せてすおう様に渡せば微妙な顔をしたすおう様が私を見ていた。なんだよ。こっちにきたすおう様が悪いんだ。自業自得だよ!
「華雪も一緒に食べましょう」
別の部屋で食べようとしていた私の考えを見透かすように、すおう様が先手を打ってきた。
「分かりました」
渋々自分の分を用意してすおう様についていく。
「お茶淹れてきますね」
「はい」
客室は綺麗だから汚したくなくて、あまりそこでご飯は食べたくなかったけど、仕方がない。お茶を取りに戻り、私は嫌々すおう様が待つ部屋へ戻った。
「華雪の料理は美味しいですね」
一足先に食べていたらしいすおう様に、料理の腕を褒められる。実は、ここにきた当初は料理なんてできなかった。何度焦がしたことか。凛とまよ様の尽力の末に今の私がいるのだ。
「ありがとうございます」
肉なし肉じゃがは、私が初めて自分で作って成功させた料理だったので、褒められると素直に嬉しい。例え、それが悪の親玉っぽいすおう様でも、だ。
ただ、少し気になるのが肉じゃがの味が今日は山椒でも入れたかのようにピリッとしていること。何か入れたっけ? と思ったが思い当たることがなく、多分玉ねぎが生煮えだったのかもと思うことにした。
今思えば、客観的考えろと過去の自分に言いたい。ピリッとなんて毒の特徴の代名詞だし、皇族のすおう様が台所に来たのとか、怪しさ満点じゃないか! と。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【日記スペースby作者】
皆さまは肉じゃがに白滝、または糸蒟蒻を入れる派ですか? それとも入れない派ですか?
ちなみに、私の母は入れない派でした。じゃがいもを沢山入れるので他の材料が鍋に入りきらないという意味不明な理由があったそうです。
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「華雪様」
「華雪でいいです」
「そうですか? では、華雪と」
にっこり笑顔のすおう様。客間に通してお茶をいれ、お菓子を用意して数時間。彼はいつも通り目の笑っていない麗しい笑みを浮かべ、ニコニコと私に話しかけてきた。当然、私も質問に答えていたのだが、彼はなぜか日が暮れてもこの家に居座っていたのだ。
「あの、今日は何用で?」
やっと聞けたここにきた理由。聞こうと思ってもすおう様が質問攻めにしてくるので聞く暇がなかったのだ。
「あぁ、万葉様に会いたいと思いまして」
たしかに、今、まよ様は遺跡の祭祀があり帰りが遅い。
「そうでしたか。私は先に夕食を取るのですが……」
すおう様はどういたしますか? と言う前にすおう様か口を開いていた。
「よろしければ私もいいでしょうか?」
つまり、一緒に食べるということか。
「分かりました」
てことは、3人分作らなければならない。いつもなら凛がいるのに、今日に限って家の手伝いがあるらしくいない。
男と2人っきりの空間はどこか殿下の時と酷似していて苦手だが、しょうがないと思い直し俺は今日の夕飯に取り掛かった。
大根を一口大に切り、人参を乱切りに。玉ねぎはくし形に切って、大きな鍋に入れる。台所には遺物が使われていて、それらは前世のカセットコンロによく似ていた。ただ、神力で動くそれらは私が思った通りの火力を出してくれる。
「これは?」
「ヒッ!?」
音もなく近寄ってきたすおう様に、声にならない声が出た。びっっくりしたぁ!
「やめてください」
「あぁ、すみません」
絶対思ってない。
目を細めて謝るすおう様。反省した様子もない彼に、俺は木ベラを押し付けた。
「⁇」
「しばらく炒めておいてください」
「炒める⁇」
「鍋の中にある野菜をその木ベラで混ぜていてください」
「なるほど」
困ったような笑みを浮かべたすおう様は慣れない手つきで木ベラを回し始めた。皇族にこんなことさせたら多分、凛とか怒るんだろうなとは思ったが、俺は知らん。
肉じゃがを作りたかったけれど、猪の肉はクセが強いので、やめておいた。肉なし肉じゃがを作る予定だ。あれ? 肉じゃがって炒めなくていいんだっけ⁇ いや、炒めてたよな?
「華雪、これでいいですか?」
「あ、はい」
しばらくしてすおう様がこちらに声をかけてきた。
「あ、いいですね」
「そうですか? よかったです」
こんがりといい感じに炒められた野菜達。ちくしょう! イケメンは料理もできるっていうのか!?
ジャバーッと煮干しでとっただし汁を加えて一煮立ちさせ、醤油や味醂を加える。
「初めて見る料理ですね」
「そうですか?」
前世の料理だからどことも言えず、知らんぷりして作っていく。その間、なにかを探ろうとするすおう様の視線がとても痛かった。
「さ、出来ました」
1時間ほど前に炊いておいたご飯をお茶碗によそい、お椀に肉なし肉じゃがを入れる。
「じゃあ、これどうぞ」
「……どこに持っていけばいいですか?」
あ、そっか。
「じゃあ、さっきすおう様がいた部屋に持っていってください。あ、箸!」
「……ありがとうございます」
「いいえ」
盆に乗せてすおう様に渡せば微妙な顔をしたすおう様が私を見ていた。なんだよ。こっちにきたすおう様が悪いんだ。自業自得だよ!
「華雪も一緒に食べましょう」
別の部屋で食べようとしていた私の考えを見透かすように、すおう様が先手を打ってきた。
「分かりました」
渋々自分の分を用意してすおう様についていく。
「お茶淹れてきますね」
「はい」
客室は綺麗だから汚したくなくて、あまりそこでご飯は食べたくなかったけど、仕方がない。お茶を取りに戻り、私は嫌々すおう様が待つ部屋へ戻った。
「華雪の料理は美味しいですね」
一足先に食べていたらしいすおう様に、料理の腕を褒められる。実は、ここにきた当初は料理なんてできなかった。何度焦がしたことか。凛とまよ様の尽力の末に今の私がいるのだ。
「ありがとうございます」
肉なし肉じゃがは、私が初めて自分で作って成功させた料理だったので、褒められると素直に嬉しい。例え、それが悪の親玉っぽいすおう様でも、だ。
ただ、少し気になるのが肉じゃがの味が今日は山椒でも入れたかのようにピリッとしていること。何か入れたっけ? と思ったが思い当たることがなく、多分玉ねぎが生煮えだったのかもと思うことにした。
今思えば、客観的考えろと過去の自分に言いたい。ピリッとなんて毒の特徴の代名詞だし、皇族のすおう様が台所に来たのとか、怪しさ満点じゃないか! と。
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皆さまは肉じゃがに白滝、または糸蒟蒻を入れる派ですか? それとも入れない派ですか?
ちなみに、私の母は入れない派でした。じゃがいもを沢山入れるので他の材料が鍋に入りきらないという意味不明な理由があったそうです。
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