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地味な商人たち
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大理石で造られた円卓に座る男たち。いつもはにこにこと感情を読み取れない笑みを浮かべている筈だが、今は焦りのためか自慢の笑みも消えていた。
遅れて1人の老人が入室してくる。
そして、椅子に座ると重々しく口を開いた。
「ゴホンッ! 今回集まってもらったのは他でもない、遺物が使えなくなったことについてだ」
ざわりと男たちがどよめく。
「さて、ここからは龍源様に説明していただこう」
進行役らしき老人に促され、円卓に座っていた1人の男が立ち上がった。
「東の国の貿易を担当している龍源だ。今回の騒動だが国内の石板にも影響が出ている。だが、それは我々天秤商会の石板のみだった。おそらく東の国の皇族が関係していると踏んでいる」
「誰かはまだ分かっていないのか?」
「ああ、現在調査中だ」
重々しく返事をする龍源に、その場の男たちから落胆のため息が漏れた。だが、これはしょうがないのだ。何故なら、石板が機能しなければ仕事ができないのだから。
「そもそも遺跡に立ち入ったのがいけなかったのでは?」
1人の男がボソリと呟く。
「確かに。東の国の遺跡は神族との関わりが深い。流石にやりすぎたのではないか?」
「む? そのようなことはない。もうすでに身代わりは立てている。私たちが裏で手を引いていると気づいても、手出しできないようになっている」
責めるように自身をみる男たちに龍源は自身満々に言い放った。
近年、遺物の価値は高まっている。これを利用しない手はないのだ。
「すまないが、しばらく商品の取引はできたいだろう。しばし堪えてくれ」
そう言って龍源が席に着こうとした瞬間だった。
「りゅうちゃーん! 久しぶりやなあ?」
その場に似つかわしくない明るい声。
「なっ!?」
ピクリと数人の男たちの眉が動く。突如乱入した人物はそれを見逃さなかった。
「ウチが生きとって残念やねぇ?」
数十年前と同じ笑みを浮かべてその人は立っていた。
「か、や、さま……」
「帝国で処分したと思っとったんやろ?」
頭から爪の先まで美しい。伽耶はにっこりと笑みを浮かべたまま円卓へゆっくりと歩み寄った。
「あんたらちょいとやりすぎやわ」
大量の神気が制御できずに漏れ出たためにふわりと伽耶の髪が浮く。
「すーちゃんが天皇に悪戯しようとしはったみたいやけど、あの子があんな馬鹿な真似はせんとうちは思うんや。誰が入れ知恵しはった?」
"華雪が連れ去られた。おそらく夜盗の仕業と思われる。場所はーー"
読み上げられた内容に、視線を彷徨わせる男たち。天皇の石板へと緊急連絡を装って送った内容だったからだ。
「華雪はうちの子やし兄様も大事にしはってくれとる。やから、こんなん届いたら自分の兵を送ろうとするやろなぁ?」
まぁ、兄様は強いから余裕やろうけど……そう呟いて伽耶はじろりと円卓に座る男たちを睨みつけた。
「流石にやりすぎやわ」
ぶわりと風が起こる。
「ひ……っ!?」
数人の男たちが立ち上がり逃げようとする。しかし、何かに弾かれてヘタリとその場にへたり込んでしまった。
「伽耶様。お待ちください」
この会の纏め役だった老人が焦ったように言うが伽耶はひと睨みするだけだった。
「またへんよ。あんたらがここ数年にかけてやってきた悪事や。しっかり償ってもらいます」
「だが、我々がいなくなればこの後の貿易はどうなる?」
「安心しぃ。代わりを用意したわ」
伽耶が指をパチンと鳴らした瞬間、数人の男女が入ってきた。
「なっ!?」
どの顔も見知った者ばかり。それはそうだ。何故なら、彼、彼女らは以前男たちが潰したライバル企業の者たちだったから。
「な、何でお前たちが!?」
「伽耶様に助けていただいておりました。これからは我々があなた方の代わりにこの商会を運営していく。伽耶様が生きていることは誰にも言ってはならない。お前たちは知ってしまったから……」
代表して話していた伽耶が連れて来た者の1人の顔がにやりと楽しそうな笑みを浮かべた。
沈黙がその場を支配する。
「消えてもらおう」
その言葉通り、男たちは悲鳴さえも出せずその場に崩れ落ちた。
「さあ、あなた方の時代は終わりました。今後は地の底から我々の成功を祈ってください」
グパリと何もなかった場所に穴が開く。言い伝えでは"地獄"と言われる場所の入り口である。
「ではーーーー」
男たちが穴に吸い寄せられる。顔が恐怖に歪んでいるのに声が出せない。
そのまま、男たちは消えていった。
「ふう、では新たなメンバーでこの商会の未来を話し合いましょう。会長は伽耶様です。異論はないですね?」
「「「「「「はい」」」」」」
「ウチ、隠居したんやけどなぁ」
渋々といった様子で伽耶は頷いたのだった。
後に、世界を代表する企業の誕生である。ただ、纏め役である会長は世間には出ず、商会の重鎮以外誰も知らない存在のままであった。
遅れて1人の老人が入室してくる。
そして、椅子に座ると重々しく口を開いた。
「ゴホンッ! 今回集まってもらったのは他でもない、遺物が使えなくなったことについてだ」
ざわりと男たちがどよめく。
「さて、ここからは龍源様に説明していただこう」
進行役らしき老人に促され、円卓に座っていた1人の男が立ち上がった。
「東の国の貿易を担当している龍源だ。今回の騒動だが国内の石板にも影響が出ている。だが、それは我々天秤商会の石板のみだった。おそらく東の国の皇族が関係していると踏んでいる」
「誰かはまだ分かっていないのか?」
「ああ、現在調査中だ」
重々しく返事をする龍源に、その場の男たちから落胆のため息が漏れた。だが、これはしょうがないのだ。何故なら、石板が機能しなければ仕事ができないのだから。
「そもそも遺跡に立ち入ったのがいけなかったのでは?」
1人の男がボソリと呟く。
「確かに。東の国の遺跡は神族との関わりが深い。流石にやりすぎたのではないか?」
「む? そのようなことはない。もうすでに身代わりは立てている。私たちが裏で手を引いていると気づいても、手出しできないようになっている」
責めるように自身をみる男たちに龍源は自身満々に言い放った。
近年、遺物の価値は高まっている。これを利用しない手はないのだ。
「すまないが、しばらく商品の取引はできたいだろう。しばし堪えてくれ」
そう言って龍源が席に着こうとした瞬間だった。
「りゅうちゃーん! 久しぶりやなあ?」
その場に似つかわしくない明るい声。
「なっ!?」
ピクリと数人の男たちの眉が動く。突如乱入した人物はそれを見逃さなかった。
「ウチが生きとって残念やねぇ?」
数十年前と同じ笑みを浮かべてその人は立っていた。
「か、や、さま……」
「帝国で処分したと思っとったんやろ?」
頭から爪の先まで美しい。伽耶はにっこりと笑みを浮かべたまま円卓へゆっくりと歩み寄った。
「あんたらちょいとやりすぎやわ」
大量の神気が制御できずに漏れ出たためにふわりと伽耶の髪が浮く。
「すーちゃんが天皇に悪戯しようとしはったみたいやけど、あの子があんな馬鹿な真似はせんとうちは思うんや。誰が入れ知恵しはった?」
"華雪が連れ去られた。おそらく夜盗の仕業と思われる。場所はーー"
読み上げられた内容に、視線を彷徨わせる男たち。天皇の石板へと緊急連絡を装って送った内容だったからだ。
「華雪はうちの子やし兄様も大事にしはってくれとる。やから、こんなん届いたら自分の兵を送ろうとするやろなぁ?」
まぁ、兄様は強いから余裕やろうけど……そう呟いて伽耶はじろりと円卓に座る男たちを睨みつけた。
「流石にやりすぎやわ」
ぶわりと風が起こる。
「ひ……っ!?」
数人の男たちが立ち上がり逃げようとする。しかし、何かに弾かれてヘタリとその場にへたり込んでしまった。
「伽耶様。お待ちください」
この会の纏め役だった老人が焦ったように言うが伽耶はひと睨みするだけだった。
「またへんよ。あんたらがここ数年にかけてやってきた悪事や。しっかり償ってもらいます」
「だが、我々がいなくなればこの後の貿易はどうなる?」
「安心しぃ。代わりを用意したわ」
伽耶が指をパチンと鳴らした瞬間、数人の男女が入ってきた。
「なっ!?」
どの顔も見知った者ばかり。それはそうだ。何故なら、彼、彼女らは以前男たちが潰したライバル企業の者たちだったから。
「な、何でお前たちが!?」
「伽耶様に助けていただいておりました。これからは我々があなた方の代わりにこの商会を運営していく。伽耶様が生きていることは誰にも言ってはならない。お前たちは知ってしまったから……」
代表して話していた伽耶が連れて来た者の1人の顔がにやりと楽しそうな笑みを浮かべた。
沈黙がその場を支配する。
「消えてもらおう」
その言葉通り、男たちは悲鳴さえも出せずその場に崩れ落ちた。
「さあ、あなた方の時代は終わりました。今後は地の底から我々の成功を祈ってください」
グパリと何もなかった場所に穴が開く。言い伝えでは"地獄"と言われる場所の入り口である。
「ではーーーー」
男たちが穴に吸い寄せられる。顔が恐怖に歪んでいるのに声が出せない。
そのまま、男たちは消えていった。
「ふう、では新たなメンバーでこの商会の未来を話し合いましょう。会長は伽耶様です。異論はないですね?」
「「「「「「はい」」」」」」
「ウチ、隠居したんやけどなぁ」
渋々といった様子で伽耶は頷いたのだった。
後に、世界を代表する企業の誕生である。ただ、纏め役である会長は世間には出ず、商会の重鎮以外誰も知らない存在のままであった。
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