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【完】異常な執着
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「ろまんす……」
そう言われた瞬間、かせつの顔が真っ赤に染まったのが分かった。
やっとか、嬉しさが隠せない。
あともう少しでかせつが手に入る。
「お客のお兄さん、悪い笑みになってますよ~?」
「ああ、嬉しくてな」
「そーですか、わざわざ私たちにお願いした甲斐がありましたね?」
「ああ、助かった」
満面の笑みを浮かべる村人に、礼を言う。彼女たちは私がかせつに何をしたのか知らない。だから、このような企みも簡単に乗ってくれる。
「私たちは華雪様が大好きですから! 幸せになってくれるなら何でもします!!!!」
「ああ、ちゃんと幸せにするつもりだ」
にこりと微笑んで約束する。他の場所で幸せになってもらっては困る。かせつが幸せになるのは私の元でないといけないのだからーー
○○○
殿下と目が合わせられない。殿下のことが好きだと認めてしまった今、私は大ピンチに陥っていた。
「まよ様にはそなたの好きなようにしろと言われるし……」
まよ様は放任主義だった。
「はぁぁぁ……どうしよう?」
殿下は殿下で普通だし……いや、わずかに口角が上がってるな。
「うーーーん」
ゴロンゴロンと畳の上を行ったり来たり。
あ、これ楽しい。
畳を満喫しまくった後はもちろん疲れて眠くなる。
「入っていいか?」
しかし、その声が聞こえた途端、私は一気に覚醒した。
「っいいですよ」
「失礼する」
襖を開けて入ってきた殿下は、寝転がったままの私を見てふっと笑った。
「変わらないな」
なにが? とは思ったものの流石に殿下の前でねっ転がるのはまずいと今更ながらに気づき、パッと起き上がって正座する。
「どういうご用件で?」
「少し話があってきた」
なんの話だろう? 疑問に思ったが、殿下の顔は難しそうに歪んでいた。もしかすると良くないことでもあったのかな?
「長らくこちらに滞在していたのだが、そろそろ本国へ戻らなければならなくなった」
静かに告げられたその言葉に、私は頭が真っ白になった。今まで待ち望んでいたはずの言葉なのに、胸がぎゅっと締め付けられる。
「そこでかせつ、最後に聞く。私と共に帝国に来てはくれないか?」
声にならない声が漏れた。
「ーーっ」
「私は明日にでも帰るつもりだ」
ーー行かないでほしい。
ふと、自然にその言葉が頭に浮かんだ。私はいつから殿下にこんな気持ちになっていたのだろう?
「かせつ」
「わ、わかりました」
頭が真っ白になって、でも、私は気付けば言葉を絞り出していた。
「そうか!」
殿下の弾んだ声と共に、私の頬は固い弾力のある何かにぶつかった。それが殿下の胸だと分かるのに数秒。それから殿下に抱きしめられていると分かるのに数分。
「帰ったら正式に婚姻を交わそう」
「はい」
ボンッと顔が赤くなり、頬が火照る。今まで逃げていたのに、気付けば殿下に囚われていた。だけど、それが嫌ではない。人間の心というものは不思議なんだな、そう思いながら私は殿下の腕の中に身を預けていた。
結婚してから分かったことだが、殿下の腹黒度は変わっていなかった。
「かせつ……」
「だあああああーーーーーーーー!?!? もうだめです! もう無理!!!!」
迫り来る美貌をおしのけ、私はベットの上を逃げ回る。
クソやろう! 誰だ、殿下は改心した! とか言って結婚したやつ!?!?
「何がロマンスだよぉぉぉぉぉ!?!?」
【おしまい】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
多分、幸せに暮らしたと思います……
そう言われた瞬間、かせつの顔が真っ赤に染まったのが分かった。
やっとか、嬉しさが隠せない。
あともう少しでかせつが手に入る。
「お客のお兄さん、悪い笑みになってますよ~?」
「ああ、嬉しくてな」
「そーですか、わざわざ私たちにお願いした甲斐がありましたね?」
「ああ、助かった」
満面の笑みを浮かべる村人に、礼を言う。彼女たちは私がかせつに何をしたのか知らない。だから、このような企みも簡単に乗ってくれる。
「私たちは華雪様が大好きですから! 幸せになってくれるなら何でもします!!!!」
「ああ、ちゃんと幸せにするつもりだ」
にこりと微笑んで約束する。他の場所で幸せになってもらっては困る。かせつが幸せになるのは私の元でないといけないのだからーー
○○○
殿下と目が合わせられない。殿下のことが好きだと認めてしまった今、私は大ピンチに陥っていた。
「まよ様にはそなたの好きなようにしろと言われるし……」
まよ様は放任主義だった。
「はぁぁぁ……どうしよう?」
殿下は殿下で普通だし……いや、わずかに口角が上がってるな。
「うーーーん」
ゴロンゴロンと畳の上を行ったり来たり。
あ、これ楽しい。
畳を満喫しまくった後はもちろん疲れて眠くなる。
「入っていいか?」
しかし、その声が聞こえた途端、私は一気に覚醒した。
「っいいですよ」
「失礼する」
襖を開けて入ってきた殿下は、寝転がったままの私を見てふっと笑った。
「変わらないな」
なにが? とは思ったものの流石に殿下の前でねっ転がるのはまずいと今更ながらに気づき、パッと起き上がって正座する。
「どういうご用件で?」
「少し話があってきた」
なんの話だろう? 疑問に思ったが、殿下の顔は難しそうに歪んでいた。もしかすると良くないことでもあったのかな?
「長らくこちらに滞在していたのだが、そろそろ本国へ戻らなければならなくなった」
静かに告げられたその言葉に、私は頭が真っ白になった。今まで待ち望んでいたはずの言葉なのに、胸がぎゅっと締め付けられる。
「そこでかせつ、最後に聞く。私と共に帝国に来てはくれないか?」
声にならない声が漏れた。
「ーーっ」
「私は明日にでも帰るつもりだ」
ーー行かないでほしい。
ふと、自然にその言葉が頭に浮かんだ。私はいつから殿下にこんな気持ちになっていたのだろう?
「かせつ」
「わ、わかりました」
頭が真っ白になって、でも、私は気付けば言葉を絞り出していた。
「そうか!」
殿下の弾んだ声と共に、私の頬は固い弾力のある何かにぶつかった。それが殿下の胸だと分かるのに数秒。それから殿下に抱きしめられていると分かるのに数分。
「帰ったら正式に婚姻を交わそう」
「はい」
ボンッと顔が赤くなり、頬が火照る。今まで逃げていたのに、気付けば殿下に囚われていた。だけど、それが嫌ではない。人間の心というものは不思議なんだな、そう思いながら私は殿下の腕の中に身を預けていた。
結婚してから分かったことだが、殿下の腹黒度は変わっていなかった。
「かせつ……」
「だあああああーーーーーーーー!?!? もうだめです! もう無理!!!!」
迫り来る美貌をおしのけ、私はベットの上を逃げ回る。
クソやろう! 誰だ、殿下は改心した! とか言って結婚したやつ!?!?
「何がロマンスだよぉぉぉぉぉ!?!?」
【おしまい】
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多分、幸せに暮らしたと思います……
応援ありがとうございます!
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