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教皇はナタリアさんで、ナタリアさんは……
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「早く捕らえろ‼︎」
大声で王が叫び、槍を持った騎士達に周りを取り囲まれる。ちょっと言い返しただけでコレだ。
(しょうがない、荷物は諦めようかな)
はぁと、ため息を吐き莉子は転移の魔法を展開させようとした。魔法は一度行ったところへしか飛べない。
(とりあえず、ナタリアさんの所へ一回飛んで、そこから歩いて森を突っ切ろう)
そう思った矢先ーー
「何をしている?」
パキンパキンとまるで氷を砕くかのように莉子に向けられていた槍が砕けていく。低く、落ち着きのある美しい声が広間に響き渡った。
「きょ、教皇様!?」
「久しぶりだな、ラスク王」
「こ、このような場にどうなさいましたか?」
カツンカツンと足音を響かせて、その美しい声の主は暗闇から現れた。銀髪の髪と金の瞳、何より一瞬で目を奪われてしまった美しすぎる容貌に、莉子は、ほぅと見惚れた。
「いや何、聖女が見つかったと聞いてな」
「聖女じゃないですよ」
教皇とやらから発せられた言葉に、莉子は即座に否定した。
「貴様‼︎」
「よい、聖女ではないと?」
「ええ、だって私はこの世界がどうなろうと関係ないですから。もし、魔王が話が通じる人なら私は喜んで魔王側につきます」
ギョッと王の目が見開かれる。莉子はもうどうでもよかった。教皇とやらも知らないし、聖女も知らない。莉子の居場所はここにはないから。
「魔王側に着くと?」
「はい」
面白そうに細まる目を真っ直ぐ見返して莉子は答えた。こんな国、助けてやる価値もない。
(ナタリアさんは別だけど)
ナタリアさんは助けるつもりだ。
「リコ」
フイに目の前の人物から、聞きなれた声が聞こえた。すぅっと姿が変わり、莉子の恩人であるナタリアさんの姿になる。
「え?」
「何が起こった!?」
ざわざわと周囲に動揺が走った。
「なた、りあさん?」
「うん、久しぶりだね」
教皇の姿が変わって、ナタリアさんが莉子の目の前にいた。
「ーーっなんで?」
どうして教皇がナタリアさんなのか?
莉子は一緒に過ごしていて気づかなかったが、違和感は感じていた。だから、納得もした。
(そっか、魔法で姿を変えていたんだ)
注意して観察すれば、微量な魔力が溢れている。
「リコは魔王に着くと言ったね?」
「はい。例え、ナタリアさんにお願いされてもこれだけは聞けません」
「そうか……」
スッと姿が変わり、また教皇の姿になる。しかしそこで莉子はおや?と目を見開いた。
(あれ? 教皇の姿になっても魔力が漏れてる)
ナタリアさんの時よりかさらに漏れ出る量は減っているものの、聖女たる莉子の前ではすぐに分かったてしまう。
「あの……⁇」
「ふふっ、リコは分かったか」
「え?」
「私の本当の姿はこちらだ」
悪戯っ子のように目を細めた教皇の姿が今度は黒い光で包まれた。サッと周囲の王侯貴族達の顔が引き攣る。
ーー黒い光。真逆の性質を宿しているはずのものが一体になる。それはすなわち魔王の誕生であるということ。
「ど、どういうことだ⁉︎ 魔王が教皇様だと⁉︎ 信じられるか! せ、聖女よ! 早く倒すのだ‼︎ 今が1番魔王の無防備な瞬間! お願いだから倒してくれ‼︎」
王が泣き叫ぶように莉子に言う。
「嫌です」
莉子は不思議な現象に目を取られながら答えた。ナタリアさんが魔王なら好都合。莉子に助けたいと思える人はこの時点でいなくなった。
「聖女よ! お願いだ‼︎ このままではこの国が無くなってしまう」
(無くなればいい)
そう、莉子は思った。王は莉子に命令するだけで兵士たちを動かそうとしない。結局は他人任せなのだ。
大声で王が叫び、槍を持った騎士達に周りを取り囲まれる。ちょっと言い返しただけでコレだ。
(しょうがない、荷物は諦めようかな)
はぁと、ため息を吐き莉子は転移の魔法を展開させようとした。魔法は一度行ったところへしか飛べない。
(とりあえず、ナタリアさんの所へ一回飛んで、そこから歩いて森を突っ切ろう)
そう思った矢先ーー
「何をしている?」
パキンパキンとまるで氷を砕くかのように莉子に向けられていた槍が砕けていく。低く、落ち着きのある美しい声が広間に響き渡った。
「きょ、教皇様!?」
「久しぶりだな、ラスク王」
「こ、このような場にどうなさいましたか?」
カツンカツンと足音を響かせて、その美しい声の主は暗闇から現れた。銀髪の髪と金の瞳、何より一瞬で目を奪われてしまった美しすぎる容貌に、莉子は、ほぅと見惚れた。
「いや何、聖女が見つかったと聞いてな」
「聖女じゃないですよ」
教皇とやらから発せられた言葉に、莉子は即座に否定した。
「貴様‼︎」
「よい、聖女ではないと?」
「ええ、だって私はこの世界がどうなろうと関係ないですから。もし、魔王が話が通じる人なら私は喜んで魔王側につきます」
ギョッと王の目が見開かれる。莉子はもうどうでもよかった。教皇とやらも知らないし、聖女も知らない。莉子の居場所はここにはないから。
「魔王側に着くと?」
「はい」
面白そうに細まる目を真っ直ぐ見返して莉子は答えた。こんな国、助けてやる価値もない。
(ナタリアさんは別だけど)
ナタリアさんは助けるつもりだ。
「リコ」
フイに目の前の人物から、聞きなれた声が聞こえた。すぅっと姿が変わり、莉子の恩人であるナタリアさんの姿になる。
「え?」
「何が起こった!?」
ざわざわと周囲に動揺が走った。
「なた、りあさん?」
「うん、久しぶりだね」
教皇の姿が変わって、ナタリアさんが莉子の目の前にいた。
「ーーっなんで?」
どうして教皇がナタリアさんなのか?
莉子は一緒に過ごしていて気づかなかったが、違和感は感じていた。だから、納得もした。
(そっか、魔法で姿を変えていたんだ)
注意して観察すれば、微量な魔力が溢れている。
「リコは魔王に着くと言ったね?」
「はい。例え、ナタリアさんにお願いされてもこれだけは聞けません」
「そうか……」
スッと姿が変わり、また教皇の姿になる。しかしそこで莉子はおや?と目を見開いた。
(あれ? 教皇の姿になっても魔力が漏れてる)
ナタリアさんの時よりかさらに漏れ出る量は減っているものの、聖女たる莉子の前ではすぐに分かったてしまう。
「あの……⁇」
「ふふっ、リコは分かったか」
「え?」
「私の本当の姿はこちらだ」
悪戯っ子のように目を細めた教皇の姿が今度は黒い光で包まれた。サッと周囲の王侯貴族達の顔が引き攣る。
ーー黒い光。真逆の性質を宿しているはずのものが一体になる。それはすなわち魔王の誕生であるということ。
「ど、どういうことだ⁉︎ 魔王が教皇様だと⁉︎ 信じられるか! せ、聖女よ! 早く倒すのだ‼︎ 今が1番魔王の無防備な瞬間! お願いだから倒してくれ‼︎」
王が泣き叫ぶように莉子に言う。
「嫌です」
莉子は不思議な現象に目を取られながら答えた。ナタリアさんが魔王なら好都合。莉子に助けたいと思える人はこの時点でいなくなった。
「聖女よ! お願いだ‼︎ このままではこの国が無くなってしまう」
(無くなればいい)
そう、莉子は思った。王は莉子に命令するだけで兵士たちを動かそうとしない。結局は他人任せなのだ。
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