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第33話「ディアス家」
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烏丸と楓が屋上で話していた時の空はすっかりと明るくなり楓も2人が作り出す騒音の中、なんとか入眠できたようだった。
「楓、お前いつまで寝てんだよ。シゼナでも朝弱かったよな、どうしたんだ急に元々朝強かっただろう?」
爽快な朝を迎えて清々しいほどにスッキリとした表情を楓に向ける竜太はまるで楓の今までの夜の苦労を1ミリも知っていない様子だった。そして、昨夜隣で豪快ないびきを立てていた鋼星も楓が目を覚ます前にすでに起きて毎日欠かさず行っているという朝の筋トレを済ませていたいたらしい。
「色々あって疲れててね」と楓は愛想笑いを浮かべるが毛布に隠れて軽く拳を握った。
しかし、楓の苦労はつゆ知らず、ベッドに座っていた鋼星は弾むように立ち上がって腰に手を当てた。
「今日ならご主人様いるから早く城に行こうぜ」
5人はホテルのチェックアウトを済ませて鋼星が使えてるというディアス家のお城の前に来ていた。
門の前までは前日尋ねたため見覚えのある佇まいをしているが改めて全体を見渡してみると一家が住むには大きすぎるのではないかと思わされるぐらいに広い土地と大きな建物であった。
鋼星はズボンのポケットからジャラジャラと音を立てながら輪っかに数珠つなぎのように様々な鍵がくくりつけられている物体を取り出して、鋼星は一つずつあーでもないこーでもないとつぶやきながら門の鍵を探してからそのうちの一つを手にとって門の鍵穴に差し込んで鍵を開けた。
そして、両開きの門は1人でも開けるのに苦労しそうな重厚感があったが鋼星は両脇に弾き飛ばすようにこじ開けた。
「さ、行こうぜ!」
相変わらずの怪力に皆、唖然としたが皆鋼星の言うままに敷地内に入っていった。
門をくぐり敷地内に入ってみると玄関の前にはしっかりと手入れされたに植木に囲まれた噴水が5人の帰りを待ちわびていたかのように勢いよく上方へ向けて水を噴射している。
楓たちが呆然とその噴水を眺めていると玄関のドアがゆっくりと開いてタキシードを着た西洋人風の初老の男が5人を方へ向かってきた。
「皆様お持ちしておりました。私はここで執事をしております。ロバートと申します」
ロバートと名乗った執事のヴァンパイアは胸に手を当てて軽く頭を下げて数秒間静止した後、頭を上げてから鋼星に視線を向けた。
「お手紙拝見しましたよ。鋼星君。ご主人様も皆さんにお会いできることを大変喜んでおられました」
ロバートは紳士らしい柔和な物言いで、5人と1人ずつ目を合わせながら話していた。そして、ロバートはシワのある顔を歪めて優しそうな笑みを浮かべて「どうぞお入りください」と言って中に5人を城の中に通した。
城に入ってみると金の額縁に入れられた絵画や壁には豪奢な装飾が施されていたり、ギラギラとした光を放つシャンデリアが天井から吊るされていて今まで入ってきた建物とはまるで雰囲気が違っていた。
「鋼星君、ご主人様方は1階のダイニングルームにいらっしゃる。失礼のないようにしてくださいね」
「わーった、わーった。ダイニングね」
そして、鋼星は「こっちこっち」と左右に分かれる通路の左側を指差した。
竜太は初めて入る貴族のお城を目ですべての空間をスキャンするように眺めながら歩いた。
「すげぇ、部屋もめっちゃたくさんあるしよくわかんない絵も飾ってあるしまさに金持ちの家だな」
5人が通路を歩いていると前方の部屋から扉を開けて男性のヴァンパイアが出てきた。その男はふと向かってくる5人に気がついて両手を広げて歓迎している様子だった。
「おお、あなた方が鋼星のお知り合いの方ですか!」
そう言って、その男は白いシャツのボタンが弾け飛びそうなほどパンパンに張った腹部を揺らしながらゆっくりと楓たちに近づいてきた。
「ディアス家当主のディアス・バートンと申します。うちの鋼星がお世話になりました」
バートンと名乗った中年太りをしたヴァンパイアは楓たち1人ずつに握手して回った。
初めて会う貴族という身分にも関わらず腰が低く、優しそうな表情を浮かべるバートンに楓は少し驚いた。
「なんかいい人そうだね」と楓が竜太に耳打ちして、竜太は「ついでにこれももらえるかもな」と人差し指と親指で丸の形を作った。
「鋼星、皆様に御迷惑はかけなかったか?」
「大丈夫、大丈夫。な?」と鋼星は楓たちは見たが4人は鋼星をじっと見つめる、そして鋼星は何か思い出したように苦笑を浮かべた。
「あ、そうだった。宿泊費出してもらったんだった。バートンさん悪いけど…」
そういいかけるとバートンはまた、柔らかい笑みを浮かべて、
「ああ、構わないよ」
鋼星から楓たちに視線を向けて更に言った。
「では、あちらでお渡ししましょう。うちの家族もあちらで待ってますので」
5人は先に歩くバートンに続いて楓たちが来た時にバートンが出てきた部屋に向かって歩く。
すると、ダイニングに入ろうとした竜太がなにかに気がついた。
「バートンさん。あのドアノブが鎖でガチガチに固められてる部屋なに? 猛獣でも飼ってんの?」と竜太は冗談めかしに言った。
竜太の視線の先あるその扉は立ち並んでいる部屋の扉の中でも一際重厚感ある分厚い扉でさらにそのドアノブには南京錠がかけられており、その南京錠を金属の鎖で何重にも巻き付けられている。まるで、アリ一匹通さないような厳重さだった。
さっきまでにこやかな笑みを浮かべていたバートンはほんの一瞬だけだったが笑みは顔から消え去った。しかし、すぐに元に戻りさっきと同じ笑みを顔に戻した。
「いえいえ、その部屋は床が傷んでまして間違えて入らないようにしてるんですよ。近々工事の方に来て修理してもらうつもりなんですよ」
5人はダイニングルームに入るとバートンの息子とその夫人がこれもまた縁が金色の高級感のある椅子に腰掛けて夫人は5人が入ってくるのに気がついて視線を向けた。夫人は立ち上がり。夫とは対照的に骨ばった鎖骨を強調したドレスを引きずりながらしずしずとした振る舞いで一礼した。
一方、母親の隣に座っている息子は視線を膝の上に広げている図鑑のような大きな本に視線を落としていた。それに気がついた母親は「アーニーご挨拶は?」と言われた息子は大きな本をパタンとわざとらしく音を立てて閉じて渋々と立ち上がり、母よりも頭の位置は高いが母に釣られて仕方なくお辞儀した。
その頭の位置が高い息子は人間の年齢で言えば中学生くらいの少年で父親に似て小太りで、実にふてぶてしい態度だった。
「妻のルーゼルと息子のアーノルドだよ」とバートンは家族2人を紹介した。
そう言うと息子のアーノルドの隣で頭を下げる妻のルーゼルは「アーニー」と名前を呼んだがアーノルドはそっぽを向いて無視をした。人間にもあるように年頃のヴァンパイアでもまるで反抗期のように親のことを煙たがっているようだった。
楓たちも各々自己紹介した。
その反抗期さながらのあどけないアーノルドを見て可愛い後輩を見ているように竜太と楓の2人は目を合わせてクスリと頬を緩めた。
挨拶が終わってバートンは5人を横に細長い食卓用のテーブルに椅子が人数分置かれているところを案内して全員が着席する。
そして、全員が着席したことを遠目から確認していたのかさっき玄関で会った初老の男ロバートが部屋に入ってきた。
そして、ロバートは4人に食事はすでに取ったか訊いてまだ取っていないことを4人はその旨を告げた。
しばらくして、執事のロバートはテーブルに座る人数分のワイングラスに注がれた赤い液体をトレーにそのせて運んできた。
トレーから一つずつ骨ばったシワのある手でグラスを手に取りテーブルの上を滑らせるように全員の前に置いた。その赤い液体は澄んだ赤色をしており天井にぶら下がっているシャンデリアの光をよく反射した。
バートンはそのグラスに注がれた液体に視線を落としてグラスを掴んだ。
「では、みなさんと出会えたことに…」とバートンはグラスを顔の前まで持ち上げた。
「乾杯」
楓はまたグラスに苦々しい顔をして鼻を近づけて結局口は付けなかった。
それを見た竜太が自分のグラスの血をすべて飲み干してからこっそりと楓のグラスと取り替えた。
「ねえ、楓って強いんでしょ? 鋼星が言ってたよ」とアーノルドは頬杖を付きながらその肉肉しくふてぶてしい顔の口角を上げた。
「アーニー行儀が悪いから頬杖を付いてはいけないぞ。何度言ったら分かるんだ」と父のバートンは注意したがアーノルドの父を一瞬睨みつけてテーブルに付いた腕をしまうことはしなかった。母のルーゼルもバートンと顔を見合わせて呆れたように首を横に振った。
そして、唐突なアーノルドの発言に予想していなかった楓は驚いた。
「僕が?」
すると、鋼星は自分の心臓部分を拳で数回叩いてから言った。
「そうだよアーニーこいつはいい根性してんだよ。死にかけても向かってくる精神、俺はそういう戦い方大好きだね」
「僕は別に強くはないんだけどな…」
「でも、鋼星が言うなら間違いないよ。なんたって鋼星はルーロの武闘会で優勝してるんだから」
アーノルドはまるで自分の自慢の息子でも見るような満足げな表情で鋼星を見た。バートンもルーゼルも同様だった。
「武闘会、お前と当たるの楽しみだな。そのしぶとい根性見せてくれよな」
鋼星は前へ後ろへと体重をかけて椅子をグラグラと揺らしながら陽気にそう言った。
アーノルドはワイングラスに注がれた血を一気に飲み干して3敵ほど服にこぼしてまた父親から注意されたが無視をして鋼星と談笑していた。
「鋼星には懐いているんだがな」と父親は母親に向かって溜息を吐くように言った。
その後も楓たちとディアス家で談笑が続いた。ディアス家は息子が親の言うことを訊かない家庭ではあるがそれでも貴族だからといってお高く止まって話しにくい雰囲気というよりは庶民的で話しやすい一家だった。それも相まってか、話した内容はここまでの旅の話だったり鋼星と出会った経緯だったりと何か特別な会話をしたわけではないが他愛もない会話をした。それもあってディアスと楓たちは打ち解けていた。
鋼星も以前主人と仲が良いと言っていたとおりに雇う側と雇われる側ながら、まるで家族の一員のように仲良く話していた。鋼星の外交的な性格からしたら誰とでも打ち解けられる能力を持っているため当然のことかもしれない。
鋼星はディアス家と話している間、冗談を言い合ったり談笑していたり普段陽気な鋼星だったがそれでも今までの旅では見せないような表情を見せていた。それほど、彼らが打ち解けているということなのだろう。
「ちゃんとやるんだぞ鋼星」
「任せとけって」
バートンと鋼星はこれから始まる戦いに固い握手を交わした。
「楽しんで来いよ!」
「ありがとなアーニー。存分に楽しんでくるぜ」
束の間の寄り道が終了し、ディアス家と楓たちは打ち解けたところで武闘会が開かれる国であるルーロへ向かうべく城を離れることにした。
短い時間だったがディアス家と別れの握手を交わして楓たちは武闘会に向けて着実に進んでゆく。
「楓、お前いつまで寝てんだよ。シゼナでも朝弱かったよな、どうしたんだ急に元々朝強かっただろう?」
爽快な朝を迎えて清々しいほどにスッキリとした表情を楓に向ける竜太はまるで楓の今までの夜の苦労を1ミリも知っていない様子だった。そして、昨夜隣で豪快ないびきを立てていた鋼星も楓が目を覚ます前にすでに起きて毎日欠かさず行っているという朝の筋トレを済ませていたいたらしい。
「色々あって疲れててね」と楓は愛想笑いを浮かべるが毛布に隠れて軽く拳を握った。
しかし、楓の苦労はつゆ知らず、ベッドに座っていた鋼星は弾むように立ち上がって腰に手を当てた。
「今日ならご主人様いるから早く城に行こうぜ」
5人はホテルのチェックアウトを済ませて鋼星が使えてるというディアス家のお城の前に来ていた。
門の前までは前日尋ねたため見覚えのある佇まいをしているが改めて全体を見渡してみると一家が住むには大きすぎるのではないかと思わされるぐらいに広い土地と大きな建物であった。
鋼星はズボンのポケットからジャラジャラと音を立てながら輪っかに数珠つなぎのように様々な鍵がくくりつけられている物体を取り出して、鋼星は一つずつあーでもないこーでもないとつぶやきながら門の鍵を探してからそのうちの一つを手にとって門の鍵穴に差し込んで鍵を開けた。
そして、両開きの門は1人でも開けるのに苦労しそうな重厚感があったが鋼星は両脇に弾き飛ばすようにこじ開けた。
「さ、行こうぜ!」
相変わらずの怪力に皆、唖然としたが皆鋼星の言うままに敷地内に入っていった。
門をくぐり敷地内に入ってみると玄関の前にはしっかりと手入れされたに植木に囲まれた噴水が5人の帰りを待ちわびていたかのように勢いよく上方へ向けて水を噴射している。
楓たちが呆然とその噴水を眺めていると玄関のドアがゆっくりと開いてタキシードを着た西洋人風の初老の男が5人を方へ向かってきた。
「皆様お持ちしておりました。私はここで執事をしております。ロバートと申します」
ロバートと名乗った執事のヴァンパイアは胸に手を当てて軽く頭を下げて数秒間静止した後、頭を上げてから鋼星に視線を向けた。
「お手紙拝見しましたよ。鋼星君。ご主人様も皆さんにお会いできることを大変喜んでおられました」
ロバートは紳士らしい柔和な物言いで、5人と1人ずつ目を合わせながら話していた。そして、ロバートはシワのある顔を歪めて優しそうな笑みを浮かべて「どうぞお入りください」と言って中に5人を城の中に通した。
城に入ってみると金の額縁に入れられた絵画や壁には豪奢な装飾が施されていたり、ギラギラとした光を放つシャンデリアが天井から吊るされていて今まで入ってきた建物とはまるで雰囲気が違っていた。
「鋼星君、ご主人様方は1階のダイニングルームにいらっしゃる。失礼のないようにしてくださいね」
「わーった、わーった。ダイニングね」
そして、鋼星は「こっちこっち」と左右に分かれる通路の左側を指差した。
竜太は初めて入る貴族のお城を目ですべての空間をスキャンするように眺めながら歩いた。
「すげぇ、部屋もめっちゃたくさんあるしよくわかんない絵も飾ってあるしまさに金持ちの家だな」
5人が通路を歩いていると前方の部屋から扉を開けて男性のヴァンパイアが出てきた。その男はふと向かってくる5人に気がついて両手を広げて歓迎している様子だった。
「おお、あなた方が鋼星のお知り合いの方ですか!」
そう言って、その男は白いシャツのボタンが弾け飛びそうなほどパンパンに張った腹部を揺らしながらゆっくりと楓たちに近づいてきた。
「ディアス家当主のディアス・バートンと申します。うちの鋼星がお世話になりました」
バートンと名乗った中年太りをしたヴァンパイアは楓たち1人ずつに握手して回った。
初めて会う貴族という身分にも関わらず腰が低く、優しそうな表情を浮かべるバートンに楓は少し驚いた。
「なんかいい人そうだね」と楓が竜太に耳打ちして、竜太は「ついでにこれももらえるかもな」と人差し指と親指で丸の形を作った。
「鋼星、皆様に御迷惑はかけなかったか?」
「大丈夫、大丈夫。な?」と鋼星は楓たちは見たが4人は鋼星をじっと見つめる、そして鋼星は何か思い出したように苦笑を浮かべた。
「あ、そうだった。宿泊費出してもらったんだった。バートンさん悪いけど…」
そういいかけるとバートンはまた、柔らかい笑みを浮かべて、
「ああ、構わないよ」
鋼星から楓たちに視線を向けて更に言った。
「では、あちらでお渡ししましょう。うちの家族もあちらで待ってますので」
5人は先に歩くバートンに続いて楓たちが来た時にバートンが出てきた部屋に向かって歩く。
すると、ダイニングに入ろうとした竜太がなにかに気がついた。
「バートンさん。あのドアノブが鎖でガチガチに固められてる部屋なに? 猛獣でも飼ってんの?」と竜太は冗談めかしに言った。
竜太の視線の先あるその扉は立ち並んでいる部屋の扉の中でも一際重厚感ある分厚い扉でさらにそのドアノブには南京錠がかけられており、その南京錠を金属の鎖で何重にも巻き付けられている。まるで、アリ一匹通さないような厳重さだった。
さっきまでにこやかな笑みを浮かべていたバートンはほんの一瞬だけだったが笑みは顔から消え去った。しかし、すぐに元に戻りさっきと同じ笑みを顔に戻した。
「いえいえ、その部屋は床が傷んでまして間違えて入らないようにしてるんですよ。近々工事の方に来て修理してもらうつもりなんですよ」
5人はダイニングルームに入るとバートンの息子とその夫人がこれもまた縁が金色の高級感のある椅子に腰掛けて夫人は5人が入ってくるのに気がついて視線を向けた。夫人は立ち上がり。夫とは対照的に骨ばった鎖骨を強調したドレスを引きずりながらしずしずとした振る舞いで一礼した。
一方、母親の隣に座っている息子は視線を膝の上に広げている図鑑のような大きな本に視線を落としていた。それに気がついた母親は「アーニーご挨拶は?」と言われた息子は大きな本をパタンとわざとらしく音を立てて閉じて渋々と立ち上がり、母よりも頭の位置は高いが母に釣られて仕方なくお辞儀した。
その頭の位置が高い息子は人間の年齢で言えば中学生くらいの少年で父親に似て小太りで、実にふてぶてしい態度だった。
「妻のルーゼルと息子のアーノルドだよ」とバートンは家族2人を紹介した。
そう言うと息子のアーノルドの隣で頭を下げる妻のルーゼルは「アーニー」と名前を呼んだがアーノルドはそっぽを向いて無視をした。人間にもあるように年頃のヴァンパイアでもまるで反抗期のように親のことを煙たがっているようだった。
楓たちも各々自己紹介した。
その反抗期さながらのあどけないアーノルドを見て可愛い後輩を見ているように竜太と楓の2人は目を合わせてクスリと頬を緩めた。
挨拶が終わってバートンは5人を横に細長い食卓用のテーブルに椅子が人数分置かれているところを案内して全員が着席する。
そして、全員が着席したことを遠目から確認していたのかさっき玄関で会った初老の男ロバートが部屋に入ってきた。
そして、ロバートは4人に食事はすでに取ったか訊いてまだ取っていないことを4人はその旨を告げた。
しばらくして、執事のロバートはテーブルに座る人数分のワイングラスに注がれた赤い液体をトレーにそのせて運んできた。
トレーから一つずつ骨ばったシワのある手でグラスを手に取りテーブルの上を滑らせるように全員の前に置いた。その赤い液体は澄んだ赤色をしており天井にぶら下がっているシャンデリアの光をよく反射した。
バートンはそのグラスに注がれた液体に視線を落としてグラスを掴んだ。
「では、みなさんと出会えたことに…」とバートンはグラスを顔の前まで持ち上げた。
「乾杯」
楓はまたグラスに苦々しい顔をして鼻を近づけて結局口は付けなかった。
それを見た竜太が自分のグラスの血をすべて飲み干してからこっそりと楓のグラスと取り替えた。
「ねえ、楓って強いんでしょ? 鋼星が言ってたよ」とアーノルドは頬杖を付きながらその肉肉しくふてぶてしい顔の口角を上げた。
「アーニー行儀が悪いから頬杖を付いてはいけないぞ。何度言ったら分かるんだ」と父のバートンは注意したがアーノルドの父を一瞬睨みつけてテーブルに付いた腕をしまうことはしなかった。母のルーゼルもバートンと顔を見合わせて呆れたように首を横に振った。
そして、唐突なアーノルドの発言に予想していなかった楓は驚いた。
「僕が?」
すると、鋼星は自分の心臓部分を拳で数回叩いてから言った。
「そうだよアーニーこいつはいい根性してんだよ。死にかけても向かってくる精神、俺はそういう戦い方大好きだね」
「僕は別に強くはないんだけどな…」
「でも、鋼星が言うなら間違いないよ。なんたって鋼星はルーロの武闘会で優勝してるんだから」
アーノルドはまるで自分の自慢の息子でも見るような満足げな表情で鋼星を見た。バートンもルーゼルも同様だった。
「武闘会、お前と当たるの楽しみだな。そのしぶとい根性見せてくれよな」
鋼星は前へ後ろへと体重をかけて椅子をグラグラと揺らしながら陽気にそう言った。
アーノルドはワイングラスに注がれた血を一気に飲み干して3敵ほど服にこぼしてまた父親から注意されたが無視をして鋼星と談笑していた。
「鋼星には懐いているんだがな」と父親は母親に向かって溜息を吐くように言った。
その後も楓たちとディアス家で談笑が続いた。ディアス家は息子が親の言うことを訊かない家庭ではあるがそれでも貴族だからといってお高く止まって話しにくい雰囲気というよりは庶民的で話しやすい一家だった。それも相まってか、話した内容はここまでの旅の話だったり鋼星と出会った経緯だったりと何か特別な会話をしたわけではないが他愛もない会話をした。それもあってディアスと楓たちは打ち解けていた。
鋼星も以前主人と仲が良いと言っていたとおりに雇う側と雇われる側ながら、まるで家族の一員のように仲良く話していた。鋼星の外交的な性格からしたら誰とでも打ち解けられる能力を持っているため当然のことかもしれない。
鋼星はディアス家と話している間、冗談を言い合ったり談笑していたり普段陽気な鋼星だったがそれでも今までの旅では見せないような表情を見せていた。それほど、彼らが打ち解けているということなのだろう。
「ちゃんとやるんだぞ鋼星」
「任せとけって」
バートンと鋼星はこれから始まる戦いに固い握手を交わした。
「楽しんで来いよ!」
「ありがとなアーニー。存分に楽しんでくるぜ」
束の間の寄り道が終了し、ディアス家と楓たちは打ち解けたところで武闘会が開かれる国であるルーロへ向かうべく城を離れることにした。
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