不死身の吸血鬼〜死を選べぬ不幸な者よ〜

真冬

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第62話「特訓①」

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 「2号てめぇ!」
 強烈な不意打ちを食らいこれから特訓が始まった。

 涙目で頭を押さえる竜太に2号は更に容赦なく木刀を振りかざしたが竜太はそれを避けてから前転ついでに素早く木刀を広い2号の膝下めがけて勢いよく薙いだ。
 しかし、2号は体操選手を思わせるような靭やかなジャンプを見せて交わしてみせる。
「2号やるじゃんか、褒めてやるよ」
 竜太の声は2号には当然ながら聞こえていないが2号は終始一貫して険しい顔のまま表情一つ動かすことがない。
「せめてなんか言えよ!」と虚しくAIに突っ込みをいれた竜太は楓に振り返って、
「楓もそろそろ始めようぜ」と言った。
 
 楓は頷いて赤い着物そして、2号同様に険しい表情を浮かべる1号に木刀を振りかざして戦闘を開始しようとしたが楓の攻撃を予測していたかのように1号は楓の攻撃を止めた。
「え?」
「攻撃したら開始って言ってなかったか?」
 二人共驚くがそんなことはお構いなしと1号は当たり前のように攻撃を始めた。楓もその攻撃を受けてカウンターの機会を狙う。
「まあいいや。とりあえずこれで訓練開始だな。どっちが早く倒せるか競争しようぜ」
 竜太と楓は背中を合わせて1号、2号とそれぞれ対峙する。
「いいよ。竜太には負けない」


 あれから3時間が経過した。
「全く勝てん…。一発も当たらない。どうなってんだ一体」
「なんかこっちの攻撃が読まれてるみたいに全部防がれてるよね」
 楓と竜太は地べたに座り込みあぐらをかく。その姿をお侍たちは血の通っていない冷え切った視線で見下ろしている。
「そう言えば西郷がヴァンパイアの戦闘データを学習させたとか言ってたよな。それって俺らの動きがコイツらが学習した奴らの動きに似てるから防御されんじゃね?」
「でも、そうだとしてどうやって攻撃すればいいの?」
 竜太は膝に手を着いて立ち上がる。
「型にはまらない攻撃をすりゃあいいんだよ。今まで俺たちは鋼星に戦いを仕込まれてきた。アイツも型破りな戦い方をするけど経験値のない俺らに教えたのは戦いの基礎になる部分で俺らはまだ独自の戦い方を確立してないんだよ」
「独自の戦い方?」
 竜太は頷いて応える。
「そ、だからここで俺らだけの戦い方を見い出せばいい。今まで自分が攻撃を受け後、距離を取っていたら逆に縮めてみる。いつもだったら攻撃しないタイミングで全力の一発を入れてみるって感じでとにかにくいつもの自分がやらないような攻撃を仕掛けて自分の戦い方を見つけるんだ」
「なるほど。確かにこうやって何度でも試せる機会って今までになかったかもね」
「だろ! 丁度いいぜ。自分探しの旅と行こうか」

 竜太と楓はお侍シリーズに対して自分たちが考えうる様々な攻撃のパターンを試してみた。あるときはお侍が攻撃を止めた時に即座に二人で反省会を開いて今の動きの良かったところ悪かったところを互いに改善しあって次に活かすように努めた。

 お侍シリーズの体にようやく木刀を当てることができたのは訓練を開始して3日後のことだった。
「いっちょやったるわ」
 竜太がお侍2号と1対1でお互いに視線をぶつけ合う。瞳に眼力を蓄える竜太に対して2号は初日と相変わらず気に入らないことでもあるかのように険しい顔付きを継続している。
「正面で戦ってダメなら…」

 2号は正面に立つ敵をロックオンしたかのようにかすかに揺れていた首が安定して竜太を一直線に見つめている。
 目の前に立つ物体を敵と認識した2号は竜太に攻撃を仕掛けて最短距離で飛んでくるが竜太はそれを交わして壁を蹴って後方へ飛んだ。そして、2号の背中から攻撃を仕掛ける。
 2号は人間ではありえにような腰の回転速度で瞬時に振り向いて竜太の攻撃を防いだ。
 すると、竜太は渾身の攻撃が防がれたことよりも更に次に攻撃を繰り出すことを優先するように横に前転してから攻撃をかける。それもまた防がれた。
 竜太はそれでも攻撃を続けては距離を取ることを繰り返しているうちに2号の回りを円を描き取り囲むようにして高速で走り始めた。あまりの速さに無風だった室内には風が吹き始めて竜太の動きを見ていた楓の髪を揺らした。
 忍者のごとく高速の連撃を繰り返す竜太だったがその動きを学習した2号は獲物を捉える肉食動物のように竜太の動きを凝視してプログラムではじき出した最適なタイミングで竜太の捉えにかかった。
 しかし、2号の攻撃は空振りに終わった。

 2号の回りを囲んでいた疾風は更に風の勢いを増したと思ったら、竜太が2号の首筋めがけて木刀を振り下ろそうとしていた。
「もらい!」
 攻撃を外したことに気がついた2号は即座に後ろの存在に気づいて身を翻した。
 竜太が振りかざした木刀が僅かに2号の耳をかすめた。
 2号の耳からはポリゴンのような四角い粒が吹き出していてダメージを与えた様子を表していた。
 勢い余って地面を転がっていった竜太は楓から離れたところで悔しそうにして、木刀の攻撃を当てた部分を見つめていた。

 息を切らしている竜太の元へ楓が駆け寄る。
「竜太、何をやったの?」
 竜太はへへへと鼻の下をかいて笑う。
「限界突破」
 漢字4文字、シンプルにそう応えた。当然楓は聞き返す。
「なにくそ! って感じでスピードアップして2号に今までの俺にないスピードを見せてやったんだよ。筋肉が割れるかと思ったぜ」
 しかし、竜太は肩を落として再度木刀でかすめた部分を撫でた。
「でも、あんなに頑張ってかすり傷付けただけなんだもんな」
 
「…限界突破か」
 楓は自分が握りしめている木刀に目を落とした。
「僕も試してみよう」
 意を決したように楓は竜太に踵を返して1号のもとへ向かった。
「おーい、楓どうするんだ」
 楓は1号と対峙して木刀を両手で握りしめる。両手の力は手の血管が浮き出るほど力強く握っていた。
「僕がキースを倒した腕力を持っているなら自分でもその力を呼び起こせるはずだ」
「お! 確かに! 本来楓に眠っている力なら限界突破してそのロボットを欺くにはいい作戦だな」
 楓と1号。1号は表情を全く変えないが二人の間で貴重が走っているように感じる。
「よし!」

 結論から言えば限界突破作戦は失敗に終わった。楓がどんなに頑張っても竜太が目撃したキースを倒したほどの力を出すことはできず1号に好き放題にやられただけに終わった。
「ダメかぁ。楓の腕っぷしじゃそもそも無理なのかもしれないな」
「ちょっと竜太それどういう事?」
「冗談冗談」
 期待を寄せいていた竜太は肩を落として開き直るようにして笑っていた。
「僕にも竜太みたいな運動神経が隠れてると思ったのになぁ」
「やっぱりあの時の楓は楓じゃなかったのかもな。あんまり気にしないほうが良いのかもしれない」
 お侍1号と2号は二人が攻撃をしかけてこないことを認識してスイッチが切れたようにその場に立ち尽くしている。それを確認した竜太は傷一つ無い真っ白な壁に背中を預けて座った。楓も竜太の隣に座る。
 二人の視線の正面にはただただ真っ白に天井の照明を反射する床と壁際には立ち尽くしているだけのお侍シリーズがいるだけだった。

 竜太は一つ息を吐いて肩の力を抜いてから言った。
「なんかさ、二人でこうやって必死こいてさ、そんで笑い合うのって久しぶりだよな」
 じっと竜太の横顔を見ていた楓は正面に向き直って少し頬を緩めた。 
「そうだね。僕らがヴァンパイアになってから本当に色々あったよね」
「ほんっとそうだよな。色々ありすぎだ、全く」と竜太は思わず吹き出す。
「竜太をヴァンパイアにした。この手でヴァンパイアを倒した。人間の血を飲んだ。地下の武闘会に出た」
「俺らこの前まで普通の高校生だったんだぜ。信じられないよな」
 楓は「うん」と頷いてから竜太に向き直る。
「まじで人生って何があるかわかんないわ」と肩を揺らして笑う竜太を楓は上目で一度見てから正面に視線を移した。
「ねえ竜太訊いていい?」
「ん?」と竜太は首を傾げた。

 
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