聖女様はストレスで太ったので追放され森で行き倒れる〜黒猫に拾われ幸せに暮らしてます〜

ひとまる

文字の大きさ
9 / 29
~出会い編~

9.やあ、また会ったね。黒猫の飼い豚さん

しおりを挟む


「メリル、今日は森に素材を取りに行かなきゃいけないから、留守にするよ。ごめんね、留守番頼んだよ」


そう言ってクロさんは森に入っていった──。
留守番任せてね!なんて言って見送ったのが朝のこと。


家に入った瞬間、足元が光出し─…見覚えのある浮遊感に襲われた─…


「きゃ──っ!!!」


いつも支えてくれていたクロさん無しの転移魔法での着地は失敗し、地面に叩き落とされる。


「い…痛い…。ってここ…何処…?」


薄暗い大きな部屋の中心に魔法陣が書かれており、その中心に着地してしまったみたいだ。
部屋の中の椅子には、見たことのある男が足を組んで座っていた。


「やあ、また会ったね。黒猫の飼い豚さん」


ローブの男、ロブ・ロードが妖しく微笑んでいた──。



「あの時はしっかり挨拶できなかったからね。今日は私の家に招いてあげたんだよ。光栄に思うんだね」

「それはどうも。で、帰してなんて…くれませんよね…?」


クロさんと今度ロブ・ロードと会ったら全力で逃げるって約束したけど、招かれちゃった場合はどうしたらいいのだろうか…。


「せっかく来たんだから、ゆっくりしてきなよ。そうだ、面白いゲームをしよう」


そう言って愉快そうに笑うと、ロブ・ロードは私の首にカチリと何かを嵌める。
な…何…?


「私はね、黒猫が心底嫌いなんだよ。だから、あいつの大切なものは全て壊すって決めてるのさ─」


背筋が寒くなる。ロブ・ロードから黒い霞がどんどん湧き出てくる。
これは…まずいっ…──


「最初にあいつの飼っていた豚に手を掛けた時…あいつのあの顔が忘れられない─…。あの豚と同じだ。君も私が壊してあげる。一番面白い方法でね─…」


豚…。
飼ってたんだ。クロさん…。

え…、私のこと、その豚さんだと思ってないよね?

急に生まれた疑惑の方が気になってしまい、ロブ・ロードの話に集中できない。



「…ねえ、聞いてるのかい?」

「え、はい。一応…」

「いい度胸じゃないか。まあ、強気で居られるのも今だけさ。君のその首輪にはね、特殊な魔法が掛けられているんだよ─」

「首輪!?これ、首輪なんですか!?」


益々ペットの豚さんじゃない!!



「ねえ、同じ効能のペンダントとかに変えてもらえません?」

「変えるわけないだろ!!人の話を聞け!!」



ロブ・ロードの黒い靄が一気に大きく畝る。
駄目か…。ああ、こんな姿クロさんに見られたら…─

そう思うと胸が締め付けられる。
と、共に首も苦しくなり、息が出来なくなった──。



「…な、何…──、くるしい…」


「はははは。お前、黒猫の事考えただろう。黒猫を『好き』だと考えると、首が絞まる魔法が掛けられてるんだよ…!!黒猫を想いながら苦しむお前の姿をみて…あいつどんな顔するかなぁ」


え……。
ちょっと…待って…。



「あの、え?好きって…」

「まさに、愛の首輪…─!はーはっはははは!!!傑作だなー!!」



あ…愛…?
私が…クロさんを…──?

ぎゅうーっとまた首が絞まる。

苦しさよりも、その事実に困惑する。


だって…だって…
もう恋愛関係はまっぴらだって…そう思ったのに─…



「何てことしてくれんのよー!ロブ・ロード!!!」



まさか…こんな形で強制的に気が付くはめになるなんて!!
ロブ・ロードに怒りが募る──

クロさんへ生まれた小さな気持ちが…
無理やり暴かれてしまったことに、動揺が隠せない…。


こんな状態でクロさんに会ったら…
どうなってしまうんだろう…──




嫌な予感に背中に汗が流れる。

その瞬間───

物凄い爆発音がして、屋敷の屋根が全て吹き飛んだ──





「メリルを返してもらおうか─…」




炎を身に纏い、怒りの表情を浮かべたクロさんが──

ロブ・ロードの目の前に立っていた──









しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

処理中です...