DUEL [デュエル]

ケイ・ナック

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決闘

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自動車企業が開催するパーティー当日、空は綺麗に晴れ渡っていた。

会場周辺には、清々すがすがしい風が吹いていた。

風に乗って、数羽のからすが飛んでいた。



一般人には公開されないパーティーなので、会場のまわりには、パーティーの開催をしらせるものは、何ひとつなかった。

自動車企業のトップが、高級ミニバンで政府のトップを迎えに行き、一緒に会場入りすることが決まっていた。

その高級ミニバンが、最新式の高級セダンのパトカーに前後をガードされて、自動車企業の施設からゆっくりと出て行った。

おだやかな一日が始まろうとしていた。





自動車企業のトップが乗る高級ミニバンは、政府の施設を出発した。

内部を豪華なインテリアに改装されたミニバンの後部には、政府のトップと自動車企業のトップが向かい合って座っていた。

「政府専用車は、来月から新型に変更させていただきますので、新しい専用車をどうぞお楽しみください」
と、自動車企業のトップがうやうやしく言った。

「うむ、そうか。それは素晴らしい」
と、政府のトップが前髪を後ろにでつけながら言った。
「今後、政府に何か求めることがあれば、そのむねを伝えてくれれば良い」

「はっ、ありがとうございます」
自動車企業のトップは低くこうべれた。


政府の施設から一般道に入る時、高級ミニバンをガードするパトカーの後ろには、十人ほどの機動ポリスを乗せた装甲バンが車列に加わった。


パーティー会場へのルートは、警備上、一般車は立ち入り禁止となっていた。

刺客しかくからすれば、それが逆にターゲットをしぼりやすくしていた。


晴れ渡った空、烏の数が増えていた。

腐敗ふはいしたえさでも見つけたのであろうか。

確かに烏は、腐敗した餌を見つけて、それに向かっていた。

この日、先陣せんじんを切ったのは烏であった。


パーティー会場へ、あと二十キロの地点で、数羽の烏が高度を下げて飛んできた。

烏は、高級ミニバンの車列の上に来ると、腹から黒いなまりき散らした。

黒い鉛は車の屋根やボンネットで激しく爆発し、白い煙があたりにただよった。

視界を失ったパトカーはブレーキを踏み、その場に停止した。

急に停止したパトカーに、後ろに続いていたミニバンと、さらにその後ろのパトカーがぶつかって停まった。

かろうじて追突をまぬがれた装甲バンは、停止する寸前で、背後のドアから機動ポリスが飛び出してきた。

しかし、車の屋根やボンネットから炎が上がり、あたりは騒然としていた。



わめきちらすポリスマンとは違い、機動ポリスの隊員は冷静に行動していた。

銃器をかまえ、政府のトップが乗るミニバンへと直行した。

白い煙がうすれてくると、辺りの様子が見えてきた。

しかし、車輌爆破の原因がつかめていないまま、すべての隊員がミニバンに来てしまった。

ミニバンのスライドドアが開いて、政府のトップが飛び出してきた時、烏は再びミニバンの上から何かを撒き散らした。

数羽の烏が、今度は鉛ではなく、催眠さいみんガスの入ったカプセルを多量に撒いた。

カプセルは、ポリスマンや隊員の体に当たると激しく飛び散り、催眠成分を周囲に放出した。

政府や自動車企業のトップをふくめ、ポリスマンたちの意識が朦朧もうろうとしてきた時、ホバリングしていた烏は空高く舞い上がった。

烏と思われた黒い物体は、遠隔操作された、電動飛翔体ひしょうたいであった。



ポリスマンや隊員たちは、意識が朦朧とする中、よろよろとうごめいていた。

すでにひざをついて、動けなくなったものもいる。

政府のトップは、薄れる意識の中で逃げ道を探していた。

自動車企業のトップが、遠くの方からやってくる車輌を見つけた。

そして安堵あんどの表情で、
「助けが来たぞ! こっちだ!こっちだ!」
と叫んだ。

遠くの方からやってきた車輌は、赤い色をしていた。


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