エスとオー

KAZUNAKA2020

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アルバムからの回想

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休日、ほこりが舞う部屋の中で、オレは荷造りをしていた。

おおかたの物は、段ボール箱にめこんだ。

近いうちに転勤することになり、少し離れた場所に引っ越すことになったのだ。

残りの細々こまごました物を段ボール箱に入れていた時、ふと昔のアルバムに目が止まった。

オレはそっとアルバムを開いてみた。

十代後半からの自分のアルバム。

そこには、大人になりかけたオレがいた。

そして、その時代を共に過ごしたあいつらがいた。


今では音信不通になってしまった二人だけど、アルバムの中には、あいつらとのまぶしい時間があった。


オレは1980年代のあの頃を思い出した。

一緒に笑った日。

一緒にさわいだ日。

そして、一緒に悲しんだ日。


オレの脳裏のうりには、数々のなつかしい映像がよみがえってくるのだった。




懐かしい映像とともに、あの頃よく聴いていた、洋楽が頭の中に流れてきた。

思い出と一緒に、KISS キッスTOTO トト  のメロディが流れ出し、大人になる前のあの頃、あいつらと過ごした時間がもどってくるのだった。

あいつら。

江洲田と王崎。

エスとオー。

青春を謳歌おうかしていた時、いつもこの二人がいた。


江洲田えすだ、おまえもうちょっとしっかりしろや。いつもぐずぐず言ってたらあかんで」

(こいつはいつもどんくさいし、ネクラだし、ほんとイライラするよ)


王崎おうさき、おまえの車、かっこええなぁ。今度、愛車でドライブ連れてってや」

(どうせ、親の金やろ。金があれば、オレだってすぐに彼女ができるはずや)


内向的なエスと、社交的なオー。

二人に影響され、そして翻弄ほんろうされてきた男、オレ、中村なかむら


五十歳を過ぎた今、こんな二人と過ごしたあの頃を、オレはアルバムを見ながら回想していた。


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