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最後の疾走
しおりを挟むミツオと出会って、一年が経ち、また暑い季節がやってきました。
出会った頃のミツオは、わたしに振り落とされないように、怖々しがみついていました。
しかし、一年も経つと、しっかり体力がつき、がたがたの山道でも、振り落とされそうになることはありませんでした。
ミツオが自分の力でわたしを走らせて、一年前よりも遠い場所まで行くことができました。
紫陽花の時期は終わり、肌を焦がすような陽射しがやってきました。
その日は、家から少し離れた古墳を見に行くつもりで走り出しました。
厳しい陽射しがミツオの肌をじりじりと焼いていきます。
そして時折、熱い風が吹き抜けていきました。
風が強く、低くたれ込んだ雲が勢い良く流れていきます。
ミツオとわたしは、薄暗いトンネルを通りました。
トンネルの中は、強い陽射しの影響をまったく受けません。
ずっといたら、体が冷えてしまうほど、トンネルの中はひんやりしていました。
わたしたちがトンネルの抜けた時、白かった雲が、かなり黒くなっていました。
そして、風の勢いも強くなっていました。
道端の草木が大きく揺れ出します。
風が道路を巻き上げ、砂埃が中を舞います。
ミツオは空を見上げ、その日初めて、不安を覚えました。
砂埃が舞う中、大粒の雨が降り出し、ミツオとわたしはずぶ濡れになってしまいました。
空はすっかり暗くなり、時折、轟音とともに閃光が走ります。
それでもミツオはペダルを一生懸命にこぎ、恐怖心を振り払いました。
あと少し行けば、誰かの民家に辿り着ける。
「あと少しだ、ネオ、がんばれ」
そう言ってミツオはペダルをこぎました。
そして、緩やかな坂道を下っていた時、わたしたちの視界は真っ白になりました。
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