18 / 50
第18話 複合魔法
しおりを挟む
その日もセシリアの特訓は続く。講義を始めてからまだ三日しか経っていないがセシリアは既に一つ目の魔法、火の矢の習得を済ませており次なる魔法、風の渦の訓練を進めていた。
「良い感じだ。コツを掴んできたな」
魔力量が増えてきたからだろうか、セシリアの使う魔法が安定性を増してきているのを感じる。
「先生の教え方が良いのですよ」
セシリアは額の汗を拭いながら魔法練習の手を休めない。やはり、一つ出来るようになったことがプラスの方向に向かっているのだろう。彼女の目はまっすぐに前を向いて短杖の先に集中していた。
「そこまで! 休憩だ。休憩」
数回の魔力切れを起こしたセシリアに俺は強制的に休憩をとらせる。そろそろ次の段階に進んでも良い頃だろう。
「俺のスパルタによく付いてきてくれたな。まだ早いと思っていたが気が変わった。今の魔法の先を特別に見せてやろう」
「以前、見せてくれた魔法ですか?」
「ほう、憶えていたか。火風弾という魔法だ。今回は特別にその特性がよく見えるように魔法陣を可視化してやるからよく観察するといい」
俺はそう告げると両手のひらを上にして右手には赤色の魔法陣を持つ火の矢を左手には緑色の魔法陣を持つ風の渦を発動させた。
「二つの魔法を同時に発動ですか!?」
「そうだ。どちらの魔法も初級の攻撃魔法だが、それらを併せると一つ上の威力を出すことが出来る」
俺は両手のひらにある魔法を身体の前に併せると二つの魔法陣が重なり合い金色に輝く一つの魔法陣となる。
「これが火風弾の魔法陣だ。本来ならば、この作業を身体の中にある魔力を練ることによって合成する。でなければ、敵を前にこんな時間のかかる合成なんて自殺行為だからな」
俺の手のひら上に浮かぶ魔法陣をマジマジと見つめながらセシリアはため息をつく。
「これを身体の中で合成するなんて本当に出来るんでしょうか?」
「もっと実践的に覚えることも出来るぞ。ちょっと短杖を上に向けてみろ」
「え? こうですか?」
セシリアは俺に言われるままに短杖を空に向かって指し示す。
「そのまま集中しているんだ。今から火風弾の魔法陣を渡すからしっかり制御してみろ。気を抜くと爆発するぞ」
「ば、ば、爆発ですか!? そんな危ないもの渡さないでくださいよぉ!」
「上手く制御できれば魔法陣の構造も理解できるはずだ。そうすれば体内で魔法を合成する際にきっと助けになるだろう」
俺はセシリアの短杖の上に魔法陣を乗せるように手渡していく。彼女は片手で扱っていた短杖を両手で握り、その先に舞い降りた魔法陣をじっと見つめながら身体に入り込んでいく情報に魂を揺さぶられている様子だ。
「少しだけ手助けしてやろう」
俺はセシリアの短杖を持つ手に自分の手をそっと重ねて魔力の補充をしてやる。これで魔力枯渇による魔法暴走が起きる心配はないだろう。
「先生! なんだか分かったような気がします」
セシリアがそう叫ぶと同時に短杖上にあった魔法陣が掻き消えた。おそらく彼女が魔法陣の構造を理解して体内に取り込んだのだろう。
「よし。なら的を見事に打ち抜いてみろ!」
俺はそう言って十メートルほど先にある的を指す。距離的に命中させられるかは微妙だが、魔法を成功させることが重要なのだ。
「はい! 火風弾」
――バキバキバキ
セシリアの放った魔法は確かに俺の指した的の方向へ飛んで行った。だが、魔法は的を大きく逸れて別の木に直撃するとその太い幹に大穴を開けて突き抜けていった。そして、穴で支えを失った大木は当然ながら倒れることになる。こちらに向かって……。
「きゃー。こっちに来ないでください!」
倒れて来る大木に慌てるセシリア。こういった時にどう対処するかも教えておかないといけないな。
「騒いでないで倒木範囲外へ逃げるぞ」
俺はセシリアの手を引っ張って倒木範囲から避難する。倒木時に破損した木の欠片や石れきが飛んで来ても大丈夫なように魔法障壁も張る。
コツコツコツ
予想通りに大きく巻き上がった土埃に小石が跳ね上げられて魔法障壁に弾かれる音がする。
「念の為に張った障壁が役に立ったようだ」
俺が倒れた木とその衝撃が落ち着いたのを確認して息を吐く。そのすぐ傍から細い声が聞こえてきたので俺は声の方を見た。
「せ、先生。あの、そろそろ放して頂けますか?」
そこには反射的に衝撃から庇う動作をした為に結果的に俺の腕でセシリアを抱きこむ形になっていたのだ。
「ん? ああ、もう大丈夫だ。怪我はないか?」
なぜか顔を赤くしたセシリアだったが、危険回避にとった行動だけに俺は彼女の様子を気にせず倒れた大木の処理をする。
「とりあえず邪魔だから処分してしまおう」
俺はそう言うと倒れた大木を魔法鞄の中に仕舞い込む。どうもこの魔法鞄はどんなに大きくても地面に突き刺さっていなければ入れることが出来るようだ。
「こんな大きなものでも入るのですね」
「ああ、そうみたいだな。正直言って今まで気にしたことが無かったからな」
「……もう先生のことで驚くのは疲れましたので何も言わないことにします」
呆れた表情のセシリアは小さく溜息を吐くとそう告げたのだった。
「良い感じだ。コツを掴んできたな」
魔力量が増えてきたからだろうか、セシリアの使う魔法が安定性を増してきているのを感じる。
「先生の教え方が良いのですよ」
セシリアは額の汗を拭いながら魔法練習の手を休めない。やはり、一つ出来るようになったことがプラスの方向に向かっているのだろう。彼女の目はまっすぐに前を向いて短杖の先に集中していた。
「そこまで! 休憩だ。休憩」
数回の魔力切れを起こしたセシリアに俺は強制的に休憩をとらせる。そろそろ次の段階に進んでも良い頃だろう。
「俺のスパルタによく付いてきてくれたな。まだ早いと思っていたが気が変わった。今の魔法の先を特別に見せてやろう」
「以前、見せてくれた魔法ですか?」
「ほう、憶えていたか。火風弾という魔法だ。今回は特別にその特性がよく見えるように魔法陣を可視化してやるからよく観察するといい」
俺はそう告げると両手のひらを上にして右手には赤色の魔法陣を持つ火の矢を左手には緑色の魔法陣を持つ風の渦を発動させた。
「二つの魔法を同時に発動ですか!?」
「そうだ。どちらの魔法も初級の攻撃魔法だが、それらを併せると一つ上の威力を出すことが出来る」
俺は両手のひらにある魔法を身体の前に併せると二つの魔法陣が重なり合い金色に輝く一つの魔法陣となる。
「これが火風弾の魔法陣だ。本来ならば、この作業を身体の中にある魔力を練ることによって合成する。でなければ、敵を前にこんな時間のかかる合成なんて自殺行為だからな」
俺の手のひら上に浮かぶ魔法陣をマジマジと見つめながらセシリアはため息をつく。
「これを身体の中で合成するなんて本当に出来るんでしょうか?」
「もっと実践的に覚えることも出来るぞ。ちょっと短杖を上に向けてみろ」
「え? こうですか?」
セシリアは俺に言われるままに短杖を空に向かって指し示す。
「そのまま集中しているんだ。今から火風弾の魔法陣を渡すからしっかり制御してみろ。気を抜くと爆発するぞ」
「ば、ば、爆発ですか!? そんな危ないもの渡さないでくださいよぉ!」
「上手く制御できれば魔法陣の構造も理解できるはずだ。そうすれば体内で魔法を合成する際にきっと助けになるだろう」
俺はセシリアの短杖の上に魔法陣を乗せるように手渡していく。彼女は片手で扱っていた短杖を両手で握り、その先に舞い降りた魔法陣をじっと見つめながら身体に入り込んでいく情報に魂を揺さぶられている様子だ。
「少しだけ手助けしてやろう」
俺はセシリアの短杖を持つ手に自分の手をそっと重ねて魔力の補充をしてやる。これで魔力枯渇による魔法暴走が起きる心配はないだろう。
「先生! なんだか分かったような気がします」
セシリアがそう叫ぶと同時に短杖上にあった魔法陣が掻き消えた。おそらく彼女が魔法陣の構造を理解して体内に取り込んだのだろう。
「よし。なら的を見事に打ち抜いてみろ!」
俺はそう言って十メートルほど先にある的を指す。距離的に命中させられるかは微妙だが、魔法を成功させることが重要なのだ。
「はい! 火風弾」
――バキバキバキ
セシリアの放った魔法は確かに俺の指した的の方向へ飛んで行った。だが、魔法は的を大きく逸れて別の木に直撃するとその太い幹に大穴を開けて突き抜けていった。そして、穴で支えを失った大木は当然ながら倒れることになる。こちらに向かって……。
「きゃー。こっちに来ないでください!」
倒れて来る大木に慌てるセシリア。こういった時にどう対処するかも教えておかないといけないな。
「騒いでないで倒木範囲外へ逃げるぞ」
俺はセシリアの手を引っ張って倒木範囲から避難する。倒木時に破損した木の欠片や石れきが飛んで来ても大丈夫なように魔法障壁も張る。
コツコツコツ
予想通りに大きく巻き上がった土埃に小石が跳ね上げられて魔法障壁に弾かれる音がする。
「念の為に張った障壁が役に立ったようだ」
俺が倒れた木とその衝撃が落ち着いたのを確認して息を吐く。そのすぐ傍から細い声が聞こえてきたので俺は声の方を見た。
「せ、先生。あの、そろそろ放して頂けますか?」
そこには反射的に衝撃から庇う動作をした為に結果的に俺の腕でセシリアを抱きこむ形になっていたのだ。
「ん? ああ、もう大丈夫だ。怪我はないか?」
なぜか顔を赤くしたセシリアだったが、危険回避にとった行動だけに俺は彼女の様子を気にせず倒れた大木の処理をする。
「とりあえず邪魔だから処分してしまおう」
俺はそう言うと倒れた大木を魔法鞄の中に仕舞い込む。どうもこの魔法鞄はどんなに大きくても地面に突き刺さっていなければ入れることが出来るようだ。
「こんな大きなものでも入るのですね」
「ああ、そうみたいだな。正直言って今まで気にしたことが無かったからな」
「……もう先生のことで驚くのは疲れましたので何も言わないことにします」
呆れた表情のセシリアは小さく溜息を吐くとそう告げたのだった。
42
あなたにおすすめの小説
異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日開店です 〜女神に貰ったカード化スキルは皆を笑顔にさせるギフトでした〜
夢幻の翼
ファンタジー
自分のお店を経営したい!
そんな夢を持つアラサー女子・理愛(リア)はアルバイト中に気を失う。次に気がつけばそこでは平謝りする女神の姿。
死亡理由が故意か過失か分からないままに肉体が無い事を理由に異世界転生を薦められたリアは仕方なしに転生を選択する。
だが、その世界では悪事を働かなければ自由に暮らして良い世界。女神に貰ったスキルを駆使して生前の夢だった店舗経営に乗り出したリア。
少々チートなスキルだけれど皆を笑顔にさせる使い方でたちまち町の人気店に。
商業ギルドのマスターに気に入られていろんな依頼も引き受けながら今日も元気にお店を開く。
異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日も開店しています。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる