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第17話 100歳差の教え子
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「やっ……た」
初めて放つ攻撃魔法にセシリアは肩を大きく揺らしながら息を吐くとぺたりと地面にしゃがみ込む。
「なかなかやるじゃないか。今の感覚を忘れるんじゃないぞ。ほら、魔力を回復してやろう。手を出しな」
俺はそう言って彼女の手を握り有り余る魔力を流し込んでやる。
「あー、癒されますぅ」
もともと少ない魔力を全力で魔法に変換して放ったのだ。身体に疲労感が出るのは仕方ないことだ。
「今の感覚で自在にコントロール出来るようになれば合格だ。その後は次の魔法を覚えてもらうから出来るだけすぐに合格できるように頑張れよ」
「い、今の魔法以外にも覚える魔法があるのですか? それもすぐに習得する必要が? そんなの無――」
セシリアは一瞬、無理と言いそうになったが俺の視線と先ほどの事を思い出して必死に口を閉じた。
「どうかしたか?」
「い、いえ。何でもありません。わたくしもちょうど別の魔法も覚えたいと思っていたんです。わー、嬉しいなぁ」
最後は棒読みで言葉に感情が入っていなかったが俺は特に気にせず素直に受け止めることにしたのだ。
「――だけど、新しい魔法を仮に覚えても一度発動しただけで魔力枯渇していたら全く使えないと思うのですが」
「そうだな。それについても解決策は考えてあるぞ。セシリア嬢、体内に蓄積される魔力の最大量はどうやって決まると思う?」
「え? 生まれつき……ですか?」
「確かに初期値はそうかもしれない。だが、魔力の最大値は訓練で上げることが出来る」
「そんなこと教科書には載っていませんでしたよ?」
セシリアは学院で買った教科書の内容を思い返してみるが、そのような記述が書かれていた記憶はない。そもそも、そんな方法があったら絶対に噂にもなるし授業でも教えてもらっているはずだ。
「そうなのか? まあ、確かに実践するには勇気と時間が必要だからな」
「どういうことなんですか?」
「体内の魔力総量を上げるには主に二つの方法がある。ひとつは毎日寝る前に魔力枯渇を起こすまで魔力を使い切ってから寝ること。そうすることによって体内で魔力が回復するときに起こる反動で最大量が増えるんだ。まあ、ほんの僅かだから時間はかかるが地道にやるしかない」
「もう一つの方法は?」
「当然ながら自然回復を待つのは時間がかかりすぎる。そのために魔力量が桁違いの者に『魔力譲渡』をして貰い、強制的に回復と消費を繰り返すことによって限界突破できるんだ」
「そんな方法、どこで知るのですか?」
「母親に聞いたんだよ。エルフの里では基本的な方法のようだぞ」
「エルフの里? もしかしてグラン先生ってエルフ族なのですか? それにしては特徴ある耳も普通の人間に見えますが……」
セシリアは俺の話を聞いてすぐに耳を確認する。だが、残念ながらハーフエルフの俺の耳は父親の血を濃く受け継いだのか人間の耳に近いものだった。
「残念ながら、俺は純粋なエルフ族じゃないんだよ。父親が人族で母親が純粋エルフ族なんだ。だから見た目はおっさんでも実年齢は百歳を超えているってわけだ。納得したか?」
「実際の年齢をお聞きしてもいいですか?」
「そんなに気になるものか? 確か今年で百十八歳だったと思うぞ」
「百十八歳……。わたくしとはちょうど百歳差ですね」
「なんだ、そんなに驚いてないな」
「いえ、十分に驚いていますよ。ただ、賢者の称号を得ているグラン先生の魔法に関する知識や実力の根源を知れて嬉しく思います」
セシリアはそう言いながら微笑むとゆっくり立ち上がり覚えたばかりの魔法を的に向けて発動させたのだった。
◇◇◇
「――今日はもう終わりにしようか。いくら何度も回復できるといっても枯渇と回復を繰り返すのは身体に負担のかかるものだ。美味い飯でも食べてゆっくり休むのも大切なことだぞ」
消費と回復を繰り返すこと数十回、スパルタを自負していても身体を壊すほどやらせるつもりはない俺はセシリアに休むことを提案した。
「そういえば、お腹も空きましたね。集中していて気がつきませんでした」
「今日一日だけでもかなり魔力量が増えたようだな。初めは一度魔法を発動させただけで枯渇していた魔力が最後には二連続で発動させることが出来ていたからな」
俺はセシリアの成長を褒めながら食事を魔法鞄より取り出す。これは王都を出る際に宿の主人に作らせた弁当だが、今まで食べるタイミングがなく仕方なく鞄に入れっぱなしにしていたものだ。
「お弁当ですか? 一体いつの間に作ってもらっていたのですか?」
「そうだな。王都を出発した時だから軽く十日は過ぎているだろうな」
「え? 王都で購入したお弁当なのですか?」
「ああ、そうだ。美味そうだろ? 宿の主人に頼み込んで作ってもらっていたんだが、乗合馬車での移動時は一人だけ弁当を食うのも悪いと思って出せなかったんだよ」
俺の話を聞いてセシリアは弁当をじっと見つめながら問いかけてくる。
「このお弁当、腐っていませんよね?」
「ああ、それは大丈夫だ。この魔法鞄に入れてあるものは劣化をしないからな。だから、まだ弁当が暖かいだろ?」
「本当ですね。しかし、魔法鞄の存在は聞いていましたけど見たのは初めてです。中に入れたものが時間経過による劣化を防ぐとの話も初めて聞きました」
「そうなのか? まあ、魔法鞄は登録された者の魔力量によって内部空間の質が変わるのは有名だからな。もしかすると俺と同等の魔力量がないと品質未劣化の恩恵は難しいのかもしれないな」
これも母親から引き継いだ品だったので特に意識をしたこともなく。ただ、便利に使えると重宝していただけだったのだ。
「もう先生のことで驚くのは無駄なので受け入れますね。いただきます」
セシリアはそう言ってため息を吐くと俺の渡した弁当に手をつけたのだった。
初めて放つ攻撃魔法にセシリアは肩を大きく揺らしながら息を吐くとぺたりと地面にしゃがみ込む。
「なかなかやるじゃないか。今の感覚を忘れるんじゃないぞ。ほら、魔力を回復してやろう。手を出しな」
俺はそう言って彼女の手を握り有り余る魔力を流し込んでやる。
「あー、癒されますぅ」
もともと少ない魔力を全力で魔法に変換して放ったのだ。身体に疲労感が出るのは仕方ないことだ。
「今の感覚で自在にコントロール出来るようになれば合格だ。その後は次の魔法を覚えてもらうから出来るだけすぐに合格できるように頑張れよ」
「い、今の魔法以外にも覚える魔法があるのですか? それもすぐに習得する必要が? そんなの無――」
セシリアは一瞬、無理と言いそうになったが俺の視線と先ほどの事を思い出して必死に口を閉じた。
「どうかしたか?」
「い、いえ。何でもありません。わたくしもちょうど別の魔法も覚えたいと思っていたんです。わー、嬉しいなぁ」
最後は棒読みで言葉に感情が入っていなかったが俺は特に気にせず素直に受け止めることにしたのだ。
「――だけど、新しい魔法を仮に覚えても一度発動しただけで魔力枯渇していたら全く使えないと思うのですが」
「そうだな。それについても解決策は考えてあるぞ。セシリア嬢、体内に蓄積される魔力の最大量はどうやって決まると思う?」
「え? 生まれつき……ですか?」
「確かに初期値はそうかもしれない。だが、魔力の最大値は訓練で上げることが出来る」
「そんなこと教科書には載っていませんでしたよ?」
セシリアは学院で買った教科書の内容を思い返してみるが、そのような記述が書かれていた記憶はない。そもそも、そんな方法があったら絶対に噂にもなるし授業でも教えてもらっているはずだ。
「そうなのか? まあ、確かに実践するには勇気と時間が必要だからな」
「どういうことなんですか?」
「体内の魔力総量を上げるには主に二つの方法がある。ひとつは毎日寝る前に魔力枯渇を起こすまで魔力を使い切ってから寝ること。そうすることによって体内で魔力が回復するときに起こる反動で最大量が増えるんだ。まあ、ほんの僅かだから時間はかかるが地道にやるしかない」
「もう一つの方法は?」
「当然ながら自然回復を待つのは時間がかかりすぎる。そのために魔力量が桁違いの者に『魔力譲渡』をして貰い、強制的に回復と消費を繰り返すことによって限界突破できるんだ」
「そんな方法、どこで知るのですか?」
「母親に聞いたんだよ。エルフの里では基本的な方法のようだぞ」
「エルフの里? もしかしてグラン先生ってエルフ族なのですか? それにしては特徴ある耳も普通の人間に見えますが……」
セシリアは俺の話を聞いてすぐに耳を確認する。だが、残念ながらハーフエルフの俺の耳は父親の血を濃く受け継いだのか人間の耳に近いものだった。
「残念ながら、俺は純粋なエルフ族じゃないんだよ。父親が人族で母親が純粋エルフ族なんだ。だから見た目はおっさんでも実年齢は百歳を超えているってわけだ。納得したか?」
「実際の年齢をお聞きしてもいいですか?」
「そんなに気になるものか? 確か今年で百十八歳だったと思うぞ」
「百十八歳……。わたくしとはちょうど百歳差ですね」
「なんだ、そんなに驚いてないな」
「いえ、十分に驚いていますよ。ただ、賢者の称号を得ているグラン先生の魔法に関する知識や実力の根源を知れて嬉しく思います」
セシリアはそう言いながら微笑むとゆっくり立ち上がり覚えたばかりの魔法を的に向けて発動させたのだった。
◇◇◇
「――今日はもう終わりにしようか。いくら何度も回復できるといっても枯渇と回復を繰り返すのは身体に負担のかかるものだ。美味い飯でも食べてゆっくり休むのも大切なことだぞ」
消費と回復を繰り返すこと数十回、スパルタを自負していても身体を壊すほどやらせるつもりはない俺はセシリアに休むことを提案した。
「そういえば、お腹も空きましたね。集中していて気がつきませんでした」
「今日一日だけでもかなり魔力量が増えたようだな。初めは一度魔法を発動させただけで枯渇していた魔力が最後には二連続で発動させることが出来ていたからな」
俺はセシリアの成長を褒めながら食事を魔法鞄より取り出す。これは王都を出る際に宿の主人に作らせた弁当だが、今まで食べるタイミングがなく仕方なく鞄に入れっぱなしにしていたものだ。
「お弁当ですか? 一体いつの間に作ってもらっていたのですか?」
「そうだな。王都を出発した時だから軽く十日は過ぎているだろうな」
「え? 王都で購入したお弁当なのですか?」
「ああ、そうだ。美味そうだろ? 宿の主人に頼み込んで作ってもらっていたんだが、乗合馬車での移動時は一人だけ弁当を食うのも悪いと思って出せなかったんだよ」
俺の話を聞いてセシリアは弁当をじっと見つめながら問いかけてくる。
「このお弁当、腐っていませんよね?」
「ああ、それは大丈夫だ。この魔法鞄に入れてあるものは劣化をしないからな。だから、まだ弁当が暖かいだろ?」
「本当ですね。しかし、魔法鞄の存在は聞いていましたけど見たのは初めてです。中に入れたものが時間経過による劣化を防ぐとの話も初めて聞きました」
「そうなのか? まあ、魔法鞄は登録された者の魔力量によって内部空間の質が変わるのは有名だからな。もしかすると俺と同等の魔力量がないと品質未劣化の恩恵は難しいのかもしれないな」
これも母親から引き継いだ品だったので特に意識をしたこともなく。ただ、便利に使えると重宝していただけだったのだ。
「もう先生のことで驚くのは無駄なので受け入れますね。いただきます」
セシリアはそう言ってため息を吐くと俺の渡した弁当に手をつけたのだった。
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