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第4話【初めての治療はビンタと罵声で終了した】
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「この部屋になります」
ーーーコンコン カチャリ。
「ミリー入るよ」
ミリーの姉は先に部屋に入ると妹の側に行き、熱と息づかいの確認をした。
「まだ、熱が下がらないわね。胸も苦しそうだし、お薬が効いてないのかしら……」
女性はそう言いながら側に置いてある水桶でタオルを絞りミリーの額の汗を拭う。
「あれ?マリーお姉ちゃん? お仕事は大丈夫なの?」
汗を拭かれた事により眠っていたミリーが目を覚ましたがまだ朦朧としている様子だった。
「昨日からこの状態が続いているんです。どうか妹を治してやってくれませんか?」
初めての治療依頼に気持ちが動転していた僕は『絶対に初めに説明しておかなければならない事』を失念していたまま、患者の前に立っていた。
「では、患者の状態を確認します。
ーーー状態鑑定」
状態鑑定は右目を手で隠して左目で患者を見る事でどういった体の不備があるかを確認する事が出来る。
(発熱に呼吸器系の炎症か……。前世だったら「風邪ですね」の一言で薬を出されて終わるレベルだけど、この世界では薬のレベルが低いのかもしれないししっかりと治してあげなきゃ)
そう思った僕はおもむろにミリーの胸に手を押し当ててからすぐに治療魔法を唱えた。
「完全治癒」
回復魔法を唱えると魔力の注入が始まり彼女の体を満たしていき、軽微な症状だったためかすぐに注入は完了した。
この間、約十数秒だったが突然の事で硬直していたマリーがいきなり僕の肩を掴んで自分の方に向けると頬を思い切りはたいてから叫んだ。
パシーン!
「妹に何してるのこの痴漢!変態!」
マリーが凄い形相で僕を睨みつけていた。
「い、いや僕は治療をしただけで……」
僕は必死に説明を試みるが興奮しているマリーには通用しない上に後ろでは町長のバルドも冷ややかな目でこちらを見ていた。
(勘弁してくれ……。確かに説明を忘れた僕が悪いんだけどこの治療方法しか知らないんだからどうしようもないだろう(泣))
マリーから激しく責め立てられていたその時、僕の後ろで救世主の声が響いた。
「あれ? 苦しくないわ。私、どうしたんだっけ?」
そこには、僕の治癒魔法が効いて体調の回復したミリーがベッドから半分体を起こして胸をさすったり額の熱を確認したりしながら首を傾げていた。
「ミリー! 大丈夫なの!?」
すぐさま姉のマリーが駆け寄り妹の状態を確認し、無事に回復したのが分かると思い切り抱きついた。
「良かった! ミリー、熱は下がらないし本当に死んじゃうかと思ったんだから!」
マリーは涙を流しながら何度も「良かった」を繰り返した。
「ーーー本当にごめんなさい。そして妹を治してくれてありがとうございました」
ミリーの容体が回復したのが僕の治癒魔法のおかげだと認識したマリーは深々と頭を下げながら謝罪とお礼を言ってきた。
「いや、僕も治療方法についてきちんと事前説明をしておかなかったんだから仕方ないよ。
確かにいきなり女性患者の胸に手を置く行為は誰が見てもびっくりするだろうからね」
僕は叩かれて赤くなった頬をさすりながら苦笑いをした。
「その傷は魔法では治せないのかね?」
僕の行為を見て疑問に思ったバルドが質問をする。
「ええ、非常に言いにくいのですが僕の治癒魔法は『女性にしか効果が無い』のです。
つまり男である僕自身に治癒魔法をかけたら『現状よりも酷くなる』と言われています。
もちろん試したことはないですけどね」
「なんと!? そんな制約があるとは……。
もしかするとミリーの胸に手を置いたのも?」
「はい。制約のひとつで『治癒魔法を使用する際に患者の胸に手を添え、魔法を唱えてから魔力の充填が終わるまでその状態を維持する事』となっています」
そう言うと僕は持っていた契約プレートをバルドに見せた。
「なるほど、嘘は言ってないようだな。
ミリーも無事に回復したし、マリーの誤解も解けたようだから約束どおり報酬を出そう。
他に何か私に聞きたい事でもありますかな?」
「そうですね。そう言えばここに来るまでに『身分証の発行』が必要だと聞きましたが町長様の権限で発行は出来るのでしょうか?」
「身分証か……。確かに私の権限で発行出来る身分証もあるが、色々と規則があって一般人が持つには勧められんぞ。
それよりも君はそれだけの能力があるのだから斡旋ギルドで登録をして身分証を発行して貰ったほうが君の為になるはずだ。
登録がスムーズに行くように紹介状を書いてあげるからこの後、行ってみるといいだろう」
(また、斡旋ギルドか……。それにしても町長が発行する身分証は薦めないってあの御者も言ってたよな……)
「ありがとうございます。この後行ってみる事にします」
僕はお礼を言うとバルドが紹介状の用意をしている間、応接室でこれからの行動をシミュレーションしていた。
ーーーコンコン カチャリ。
「失礼しますよ」
そう言って先程の御者が部屋に入ってきた。
「お待たせしましたかな?
もしかしてもう町長様とのお話はお済みでしたか?」
「ええ、ついでにここで働いておられる女性に病気の方がおられましたので治療をさせて頂きました。今は斡旋ギルド宛の紹介状を準備してくれている最中です」
「そうでしたか。ではその紹介状が出来ましたら私があなたを斡旋ギルドまで案内しましょう」
そう言うと御者の男は軽く会釈をして僕の横方向のソファに座った。
ーーーコンコン カチャリ。
「ミリー入るよ」
ミリーの姉は先に部屋に入ると妹の側に行き、熱と息づかいの確認をした。
「まだ、熱が下がらないわね。胸も苦しそうだし、お薬が効いてないのかしら……」
女性はそう言いながら側に置いてある水桶でタオルを絞りミリーの額の汗を拭う。
「あれ?マリーお姉ちゃん? お仕事は大丈夫なの?」
汗を拭かれた事により眠っていたミリーが目を覚ましたがまだ朦朧としている様子だった。
「昨日からこの状態が続いているんです。どうか妹を治してやってくれませんか?」
初めての治療依頼に気持ちが動転していた僕は『絶対に初めに説明しておかなければならない事』を失念していたまま、患者の前に立っていた。
「では、患者の状態を確認します。
ーーー状態鑑定」
状態鑑定は右目を手で隠して左目で患者を見る事でどういった体の不備があるかを確認する事が出来る。
(発熱に呼吸器系の炎症か……。前世だったら「風邪ですね」の一言で薬を出されて終わるレベルだけど、この世界では薬のレベルが低いのかもしれないししっかりと治してあげなきゃ)
そう思った僕はおもむろにミリーの胸に手を押し当ててからすぐに治療魔法を唱えた。
「完全治癒」
回復魔法を唱えると魔力の注入が始まり彼女の体を満たしていき、軽微な症状だったためかすぐに注入は完了した。
この間、約十数秒だったが突然の事で硬直していたマリーがいきなり僕の肩を掴んで自分の方に向けると頬を思い切りはたいてから叫んだ。
パシーン!
「妹に何してるのこの痴漢!変態!」
マリーが凄い形相で僕を睨みつけていた。
「い、いや僕は治療をしただけで……」
僕は必死に説明を試みるが興奮しているマリーには通用しない上に後ろでは町長のバルドも冷ややかな目でこちらを見ていた。
(勘弁してくれ……。確かに説明を忘れた僕が悪いんだけどこの治療方法しか知らないんだからどうしようもないだろう(泣))
マリーから激しく責め立てられていたその時、僕の後ろで救世主の声が響いた。
「あれ? 苦しくないわ。私、どうしたんだっけ?」
そこには、僕の治癒魔法が効いて体調の回復したミリーがベッドから半分体を起こして胸をさすったり額の熱を確認したりしながら首を傾げていた。
「ミリー! 大丈夫なの!?」
すぐさま姉のマリーが駆け寄り妹の状態を確認し、無事に回復したのが分かると思い切り抱きついた。
「良かった! ミリー、熱は下がらないし本当に死んじゃうかと思ったんだから!」
マリーは涙を流しながら何度も「良かった」を繰り返した。
「ーーー本当にごめんなさい。そして妹を治してくれてありがとうございました」
ミリーの容体が回復したのが僕の治癒魔法のおかげだと認識したマリーは深々と頭を下げながら謝罪とお礼を言ってきた。
「いや、僕も治療方法についてきちんと事前説明をしておかなかったんだから仕方ないよ。
確かにいきなり女性患者の胸に手を置く行為は誰が見てもびっくりするだろうからね」
僕は叩かれて赤くなった頬をさすりながら苦笑いをした。
「その傷は魔法では治せないのかね?」
僕の行為を見て疑問に思ったバルドが質問をする。
「ええ、非常に言いにくいのですが僕の治癒魔法は『女性にしか効果が無い』のです。
つまり男である僕自身に治癒魔法をかけたら『現状よりも酷くなる』と言われています。
もちろん試したことはないですけどね」
「なんと!? そんな制約があるとは……。
もしかするとミリーの胸に手を置いたのも?」
「はい。制約のひとつで『治癒魔法を使用する際に患者の胸に手を添え、魔法を唱えてから魔力の充填が終わるまでその状態を維持する事』となっています」
そう言うと僕は持っていた契約プレートをバルドに見せた。
「なるほど、嘘は言ってないようだな。
ミリーも無事に回復したし、マリーの誤解も解けたようだから約束どおり報酬を出そう。
他に何か私に聞きたい事でもありますかな?」
「そうですね。そう言えばここに来るまでに『身分証の発行』が必要だと聞きましたが町長様の権限で発行は出来るのでしょうか?」
「身分証か……。確かに私の権限で発行出来る身分証もあるが、色々と規則があって一般人が持つには勧められんぞ。
それよりも君はそれだけの能力があるのだから斡旋ギルドで登録をして身分証を発行して貰ったほうが君の為になるはずだ。
登録がスムーズに行くように紹介状を書いてあげるからこの後、行ってみるといいだろう」
(また、斡旋ギルドか……。それにしても町長が発行する身分証は薦めないってあの御者も言ってたよな……)
「ありがとうございます。この後行ってみる事にします」
僕はお礼を言うとバルドが紹介状の用意をしている間、応接室でこれからの行動をシミュレーションしていた。
ーーーコンコン カチャリ。
「失礼しますよ」
そう言って先程の御者が部屋に入ってきた。
「お待たせしましたかな?
もしかしてもう町長様とのお話はお済みでしたか?」
「ええ、ついでにここで働いておられる女性に病気の方がおられましたので治療をさせて頂きました。今は斡旋ギルド宛の紹介状を準備してくれている最中です」
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