8 / 159
第8話【順調な稼ぎと予想外の指名依頼】
しおりを挟む
あれから斡旋ギルドにはちょくちょく荷物の配送依頼が舞い込んできていた。
どんな大きくて重い荷物も簡単に運んでくれると斡旋ギルドで口コミが広がっていったからだった。
「はい、今回の報酬はこれだけですよ」
すっかり僕の専属扱いになったリリスから依頼報酬を受け取ると毎日の日課となったあの言葉を伝える。
「それで本職の治癒依頼は入って無いですか?」
リリスはその言葉に笑顔で毎日同じセリフを言っていた。
「ふっふっふ。残念、ありませんねー(笑)」
((笑)じゃないと思うんだけどなぁ)
つまり、そう言う事だった。
大きな怪我や病気でない限り薬で対応出来る事の多いこの町では治癒魔法士としての仕事は壊滅的に無く、副職であるはずの荷物運搬依頼ばかりをこなす日々。
確かにお金は多少なりとも貯まってきたし、前に高くて手が出ないと思っていた領都への馬車代金も払えるくらいには余裕ができていた。
(でも、このままここで荷物運搬の仕事をしていても、人を助ける為に貰った能力を使わないまま時間が過ぎるだけなのは何だか違うよな)
「やっぱり領都に行ってみるしかないのかな……」
荷物運搬の依頼を着実にこなしている中で、この町の人達ともそれなりに知り合いが出来て居心地も良くなってきていた。
最近ではあれだけ広まっていた悪評もすっかり鳴りを潜めてギルド内でも皆が気軽に話しかけてくれるようになっていた。
「まったく、羨ましいねぇ。その能力だけで一財産くらい簡単に稼げそうじゃないか。
今度頼みたい依頼があるから安く受けてくれよ」
「そうしたいですけど、ギルドにもお世話になってるのでギルドに依頼を出して貰えると助かります」
そんな他愛もない会話をしていると受付からリリスが僕を呼んだ。
「ナオキさん! 緊急の指名依頼が届いたのですが、今からお時間は取れますか?」
(緊急の指名依頼? そんなものはギルドに所属してから初めての事じゃないか?)
「ええ、大丈夫ですよ」
僕が答えると、リリスは「では第一応接室にお越しください」と言って、自分は誰かを呼びに奥へ走って行った。
僕は言われた通り第一応接室の前で待っていると、リリスが奥の通路からギルマスを連れてやって来た。
「ナオキさん、お待たせしました。では中へどうぞ」
リリスはドアを開けて先に僕を迎え入れる。
その後をついてリリスとギルマスのラーズが入り、向かいのソファに腰を下ろすとラーズが数枚の依頼書をテーブルに置いた。
「領主のアーロンド伯爵からの依頼書だ。
簡単に説明すると少し前に事故で大怪我をされた伯爵夫人の治療を依頼したいと言うものだ」
「大怪我との事ですが、一体どんな状態なんですか?」
「いや、詳細は書かれていないが、まずは領都の領主邸に来るようにとの事だ」
「いつ出発すればいいですか?」
「明日の朝に馬車を準備すると書いてある。
領主様からの依頼だから断ることは難しいのですまないが行ってくれるか?」
「まあ、ちょうど領都には行ってみたいと思っていた所ですから馬車代金がかからずに行けると思えばある意味ラッキーだとも言えるかな」
僕がそう言って席を立とうとすると突然リリスが「私も一緒に行っても良いですか?」と言い出した。
「突然何を言い出すんですか? リリスさんはこのギルドの受付嬢であってわざわざ僕の依頼についてくる必要はないんですよ」
「それは分かってますけど、ナオキさんの能力を良く知っているのは私ですし、ナオキさんがもしこのまま領都に移住するならば今回の完了報告の受付が出来る私が一緒に行った方が無駄が無くていいと思うんです」
リリスは必死に自分がついて行く意義をギルマスに説明する。
「まあ、リリスの言うことも一理あるとは思うが、お前が居ない間のギルド運営に支障は出ないのか?」
「うっ それは……少しだけ心配かもしれないけど私が居なくても回せるギルド運営の練習だと思って……駄目ですか?」
「領都まで行って彼が依頼をこなして完了処理をして帰ってくる。
大体20日程かかるな」
「あはは、やっぱり駄目ですよね? ナオキさんが領主様に失礼を働かないかが凄く心配ですけど、やっぱり20日間も仕事を空けるのはまずいですもんね。
すみません。諦めます」
リリスは残念そうな表情を隠そうともせずにお辞儀をして先に部屋を出て行こうとするがそれをラーズが静止する。
「まあ待て、リリス。俺は駄目だとは言ってないぞ」
「えっ!?」
リリスがドアの前で振り返る。
「やれやれ、ナオキはうちのギルド所属のメンバーだ。
普通ならば個人の責任で行動してもらうのだが今回は領主様からの依頼だ。
彼の能力についての説明も必要だし、もしナオキが領都のギルドに登録変更をするならばその手続きをする者が必要だ。
少しばかり期間が長いが、領都斡旋ギルドへの研修扱いで行かせてやるよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
リリスはラーズの言葉に跳び上がって喜んだが、当の僕は説明担当を付けないと領主様に失礼な事をする人物だと認識されていた事に軽いショックを受けていた。
どんな大きくて重い荷物も簡単に運んでくれると斡旋ギルドで口コミが広がっていったからだった。
「はい、今回の報酬はこれだけですよ」
すっかり僕の専属扱いになったリリスから依頼報酬を受け取ると毎日の日課となったあの言葉を伝える。
「それで本職の治癒依頼は入って無いですか?」
リリスはその言葉に笑顔で毎日同じセリフを言っていた。
「ふっふっふ。残念、ありませんねー(笑)」
((笑)じゃないと思うんだけどなぁ)
つまり、そう言う事だった。
大きな怪我や病気でない限り薬で対応出来る事の多いこの町では治癒魔法士としての仕事は壊滅的に無く、副職であるはずの荷物運搬依頼ばかりをこなす日々。
確かにお金は多少なりとも貯まってきたし、前に高くて手が出ないと思っていた領都への馬車代金も払えるくらいには余裕ができていた。
(でも、このままここで荷物運搬の仕事をしていても、人を助ける為に貰った能力を使わないまま時間が過ぎるだけなのは何だか違うよな)
「やっぱり領都に行ってみるしかないのかな……」
荷物運搬の依頼を着実にこなしている中で、この町の人達ともそれなりに知り合いが出来て居心地も良くなってきていた。
最近ではあれだけ広まっていた悪評もすっかり鳴りを潜めてギルド内でも皆が気軽に話しかけてくれるようになっていた。
「まったく、羨ましいねぇ。その能力だけで一財産くらい簡単に稼げそうじゃないか。
今度頼みたい依頼があるから安く受けてくれよ」
「そうしたいですけど、ギルドにもお世話になってるのでギルドに依頼を出して貰えると助かります」
そんな他愛もない会話をしていると受付からリリスが僕を呼んだ。
「ナオキさん! 緊急の指名依頼が届いたのですが、今からお時間は取れますか?」
(緊急の指名依頼? そんなものはギルドに所属してから初めての事じゃないか?)
「ええ、大丈夫ですよ」
僕が答えると、リリスは「では第一応接室にお越しください」と言って、自分は誰かを呼びに奥へ走って行った。
僕は言われた通り第一応接室の前で待っていると、リリスが奥の通路からギルマスを連れてやって来た。
「ナオキさん、お待たせしました。では中へどうぞ」
リリスはドアを開けて先に僕を迎え入れる。
その後をついてリリスとギルマスのラーズが入り、向かいのソファに腰を下ろすとラーズが数枚の依頼書をテーブルに置いた。
「領主のアーロンド伯爵からの依頼書だ。
簡単に説明すると少し前に事故で大怪我をされた伯爵夫人の治療を依頼したいと言うものだ」
「大怪我との事ですが、一体どんな状態なんですか?」
「いや、詳細は書かれていないが、まずは領都の領主邸に来るようにとの事だ」
「いつ出発すればいいですか?」
「明日の朝に馬車を準備すると書いてある。
領主様からの依頼だから断ることは難しいのですまないが行ってくれるか?」
「まあ、ちょうど領都には行ってみたいと思っていた所ですから馬車代金がかからずに行けると思えばある意味ラッキーだとも言えるかな」
僕がそう言って席を立とうとすると突然リリスが「私も一緒に行っても良いですか?」と言い出した。
「突然何を言い出すんですか? リリスさんはこのギルドの受付嬢であってわざわざ僕の依頼についてくる必要はないんですよ」
「それは分かってますけど、ナオキさんの能力を良く知っているのは私ですし、ナオキさんがもしこのまま領都に移住するならば今回の完了報告の受付が出来る私が一緒に行った方が無駄が無くていいと思うんです」
リリスは必死に自分がついて行く意義をギルマスに説明する。
「まあ、リリスの言うことも一理あるとは思うが、お前が居ない間のギルド運営に支障は出ないのか?」
「うっ それは……少しだけ心配かもしれないけど私が居なくても回せるギルド運営の練習だと思って……駄目ですか?」
「領都まで行って彼が依頼をこなして完了処理をして帰ってくる。
大体20日程かかるな」
「あはは、やっぱり駄目ですよね? ナオキさんが領主様に失礼を働かないかが凄く心配ですけど、やっぱり20日間も仕事を空けるのはまずいですもんね。
すみません。諦めます」
リリスは残念そうな表情を隠そうともせずにお辞儀をして先に部屋を出て行こうとするがそれをラーズが静止する。
「まあ待て、リリス。俺は駄目だとは言ってないぞ」
「えっ!?」
リリスがドアの前で振り返る。
「やれやれ、ナオキはうちのギルド所属のメンバーだ。
普通ならば個人の責任で行動してもらうのだが今回は領主様からの依頼だ。
彼の能力についての説明も必要だし、もしナオキが領都のギルドに登録変更をするならばその手続きをする者が必要だ。
少しばかり期間が長いが、領都斡旋ギルドへの研修扱いで行かせてやるよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
リリスはラーズの言葉に跳び上がって喜んだが、当の僕は説明担当を付けないと領主様に失礼な事をする人物だと認識されていた事に軽いショックを受けていた。
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる