女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
9 / 159

第9話【領都への旅と招かれざる客】

しおりを挟む
 次の日の朝、斡旋ギルドの前には小型の馬車が出発を待っていた。
 乗り合い馬車とは違い、定員4名程で御者に案内人の女性がひとり乗っていた。

「お待ちしておりました。治癒魔法士のナオキ様ですね?
 この度はアーロンド様の依頼を受けて頂きありがとうございます。
 アーロンド様は領主邸にてお待ちですのでこれから向かう事になります。
 乗り合い馬車と違い、直行で進みますので到着まで約4日となります。中間地点に村がありますのでそこでは宿屋を準備しておりますがその他の日は野営となりますのでご了承ください」

 案内人の女性はテキパキと運行説明をしてくる。

「お荷物は宜しいのでしょうか?」

 僕が何も持たずに馬車に乗り込もうとするのを見て彼女が聞いてきた。

「ええ、荷物は全て収納魔法に入れてありますから大丈夫ですよ」

「収納……魔法……ですか?」

「ええ、こんな感じで別の空間に荷物を入れておける魔法です」

 僕はそう言いながらアイテムボックスから飲み物を取り出して彼女に差し出した。

「!? 今、何もない空間から取り出しました?」

 彼女の態度を見て、しまったなと思いながらも平静を装って普通に返した。

「これが収納魔法なんです。
 聞いたところによると結構珍しい魔法みたいなので初めて見る人達にはよく驚かれます」

 僕がなんでもないかのように答えると彼女は深く追及することもなく「わかりました」とだけ答えた。

「あ、自己紹介を忘れていましたね。
 私はアーロンド伯爵家の侍女長をしています『ミリーナ』と申します。
 領都サナールまでのお世話を申し付けられておりますので宜しくお願いします」

「僕の事は知ってると思うけどナオキで治癒魔法士を主の職業として活動しています。
 領都は初めて行くので色々と教えて欲しい事があるので宜しくです」

 お互いに簡単な自己紹介をすませた頃、ひとりの女性が何か叫びながら走って来た。

「その馬車待ってくださーい!」

 その聞き覚えのある声に僕は思わず叫んでいた。

「リリスさんじゃないですか!? 
そう言えば一緒にサナールへ行くと言われてましたね。
 ギルドの制服で来られたから何か僕に渡す書類でも忘れて急いで持ってきてくれたのかと思いましたよ」

 僕の方をチラリと見た彼女は「ふうっ」と息を整えながら側にいたミリーナに一枚の書類を見せた。

「……なるほど、了解しました。どうぞ、一緒に馬車へお乗りください」

 書類を確認したミリーナはリリスにそう告げると僕にも馬車に乗るように促した。

「分かりました」

 僕が馬車に乗り込むとミリーナは御者の男性に指示を出すと自らも馬車に乗り込んでから出発の合図を出した。

「先日の話でも出ていたと思いますが、私も仕事でサナールの斡旋ギルドに行く許可が出まして……。
 それで先方へのナオキさんの事情説明も兼ねて同行するようにとのギルマスからの指示かあり、同行させて貰う事になりました」

「それは簡単に言うと『僕が何をするか分からないからしっかりと見張っておけ』という意味なのかな?」

「まあ、ぶっちゃけそうですね(笑)」

「はあ……。僕はそんなに信用ないかなぁ?」

「いえいえ、そんな事はありませんよ。
 ナオキさんの場合は信用が無いんじゃなくてやらかすのが普通ですから」

 リリスは全く悪びれずにニコニコしながら僕をディスってくる。

「あの……。ナオキ様は本当に大丈夫な方なんでしょうか?」

 僕達のやりとりを横で聞いていたミリーナが不安そうな顔でリリスに聞いた。

「ほら、リリスさんが不安を煽るからミリーナさんまでが僕を信用しなくなるじゃないですか」

「あはは、ごめんね。ナオキさんの顔を見てたらいつもの調子でやっちゃったの。
 まあ、いろいろ言いたい事はあるけれど腕前だけは信用して良いですよ」

「そ、そうですか……」

 ミリーナは微妙な表情で生返事をしていたが、一応納得してくれたようだった。

   *   *   *

 そんな会話をしているうちに馬車は野営の出来る水場に到着した。
 領都までは乗り合い馬車で約5日、今回の直行馬車でも4日はかかる道程だったので途中の中程に小さな村があるだけで基本的には野営をして休息を入れていた。

「今日はこの辺りで野営をします。
 夕食の準備をしますので馬車から降りられてゆっくり休まれてくださいね」

 ミリーナが馬車の荷物置場から簡易の調理器具と材料を取り出して夕食の準備を始めた。

「領都って結構遠いんですね。カルカルの町と比べてどのくらい大きいんですか?」

 夕食を作りながらミリーナは「そうですね……」と少し考えて答えた。

「街の規模はカルカルの4倍くらいでしょうか。当然ながら住んでいる人達の数もそれ以上ですのでナオキ様の職業が活かせる可能性が高い街だと思います」

 ミリーナはそう答えると手際よく夕食を作り終えた。

「出来ましたので夕食にしましょうか」

 辺りには作りたての料理の匂いが漂っており、簡易的なものとは思えない出来栄えに僕が感心していると、後ろの方から男達の声が聞こえてきた。

「なんかいい匂いがすると思ったらこんな所に旨そうな飯《えもの》があるじゃあないか」

男二人じゃまものは片付けてくいものと女はいただいて行くとするか」

「馬車は目立つから馬だけではこは谷にでも落としておくか」

 ニヤニヤと下品な笑い顔をした男達が剣を片手に近づいてきた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...