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第23話【リリスの大胆な決断力】
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ミリーナの雰囲気に旗色が悪いと感じた僕はふたりに座るように促してから飲み物を注文した。
真剣な表情のミリーナに対していつもの笑顔を崩さないリリス。ふたりの論議が始まろうとしていた。
「まず、リリスさん。ナオキさんの依頼の受付をされたのはあなたですよね?
たしか、あなたはカルカル斡旋ギルド担当の受付嬢ですよね?
それがどうして領都サナール斡旋ギルドに依頼した案件を処理されたのかしら?」
「それは、私が領都ギルドに研修目的で来ていたのがひとつ、そしてカルカルギルドのマスターからナオキさんが困っていたら手伝ってあげるようにとの命令を受けてたからですね」
「なるほど。その件は後でギルドに確認を取りますが一応了解しました。
では、次にギルドの受付嬢は依頼者の依頼を個人的に受ける事は出来ない規則についてはどう申し開きをされますか?
こちらはあなたが個人的にナオキさんの依頼を受けていると認識していますよ」
ミリーナの追求に涼しい顔でリリスが答えた。
「ああ、やっぱりそうなりますよね。さっき本部でも同じ事を問いただされたので『認めてくれなければギルドを辞めます』と言ったら……」
「言ったら……?」
「『どうぞ辞めて頂いて結構です』と言われたので辞めてきちゃいました(笑)」
「………はぁ!?」
僕は彼女が何でもないかのように笑って答えるので心配になりリリスに聞いた。
「それって僕のせい……だよね」
笑っているリリスを見ると胸が痛くなるが何故か彼女には悲壮感が無かった。
「そうですか。それでギルドを辞められてこれからどうされるのですか?」
話を聞いていたミリーナがリリスに問う。
「そうね。折角だからこの診療所で雇って貰おうかな。
責任とってもらえるそうだしね」
リリスはそう言うと僕に向けてウインクをひとつした。
「まさか、本当にギルドを辞める事になるとは思わなかったんだけど本部の偉い人の頭が堅くて何を言っても通らなかったのよね。
カルカルギルドのマスターには悪い事しちゃったからこっちが一段落したら一緒に謝りに行ってね」
リリスはぶちぶちと愚痴を言い始めたが『後悔はしていない』とばかりに終始笑顔だった。
「あなたがそう決めたのでしたら特にありませんが、もしギルドに戻りたいならば私から旦那様に報告してギルドにとりなしてもらう事も出来るかと思いますが……必要は無さそうですね」
ミリーナは溜め息をついてリリスに確認するが無駄だと悟ってすぐに案を引っ込めた。
「分かりました。では、診療所の開業にはリリスさんがサポートされると言う事で報告をしておきます。
開業の日にちが決まりましたら必ず知らせるようにお願いします。
では、私はこれで失礼しますね」
ミリーナはそう言うと報告する為に伯爵邸へと帰って行った。
「さあて、私達も役所に行きますか」
リリスは元気な声で僕を促した。
「なんですか? その顔は……。
もしかして、私がナオキさんを手伝ってギルドを辞めたのを後悔してると思ってるのですか?
だったら心配しないでください、確かにギルドの受付嬢もいろんな人と出会えて楽しかったですけど、ナオキさんと出会ってもっとあなたの事を知りたいと思ったらギルドの受付でおとなしく立ってるだけなんてつまらなく感じてしまったのですから」
「そこまで評価してくれてありがとう。
できるだけ期待に応えられるように頑張るよ」
僕が答えると
「宣伝、事務、接客、お金の管理までなんでも任せてくれて大丈夫よ。
しっかり稼がせて貰いますからね(笑)」
「法外な報酬は取らないぞ」
「分かってますって。取るのは生活に余裕のある人達からにするから心配しなくても大丈夫よ。
あ、それと診療所が完成したら私も住み込みにして貰うからね。
余計なお金は出来るだけ使わないようにしないとなかなか貯まらないからね」
「そんなにお金を貯めて何か買いたいものでもあるのか?」
「今は特に無いけど必要な時に有ると無いとじゃお金の価値が変わるからね」
「意外としっかりしてるんだな」
「でしょ? いい奥さんになれるかな?」
リリスはしれっと爆弾を投下していく。
「そっ、そうだななれるんじゃないかな……」
僕はなんとなく曖昧な返事を返しておいた。それが爆弾だとは気が付かずに……。
「まあ、それは置いといて役所に行かないか?」
「そうね。さっさと開業の手続きをして仕事をしないと『無職』になってしまったからね(怒)」
あれだけ機嫌の良かったリリスが急に声のトーンが下がりあからさまに不機嫌になったのを感じて(やっぱり僕には女性の扱いが下手なんだな)と反省していた。
その後、役所にて必要な手続きを完了した僕はリリスにお礼という名目で甘いお菓子を贈ったら「仕方ないわね。今回はこれで誤魔化されてあげるわ」と言って機嫌をなおしてくれた。
(良かった。本当に良かった……)
心の底から本当にホッとした瞬間だった。
真剣な表情のミリーナに対していつもの笑顔を崩さないリリス。ふたりの論議が始まろうとしていた。
「まず、リリスさん。ナオキさんの依頼の受付をされたのはあなたですよね?
たしか、あなたはカルカル斡旋ギルド担当の受付嬢ですよね?
それがどうして領都サナール斡旋ギルドに依頼した案件を処理されたのかしら?」
「それは、私が領都ギルドに研修目的で来ていたのがひとつ、そしてカルカルギルドのマスターからナオキさんが困っていたら手伝ってあげるようにとの命令を受けてたからですね」
「なるほど。その件は後でギルドに確認を取りますが一応了解しました。
では、次にギルドの受付嬢は依頼者の依頼を個人的に受ける事は出来ない規則についてはどう申し開きをされますか?
こちらはあなたが個人的にナオキさんの依頼を受けていると認識していますよ」
ミリーナの追求に涼しい顔でリリスが答えた。
「ああ、やっぱりそうなりますよね。さっき本部でも同じ事を問いただされたので『認めてくれなければギルドを辞めます』と言ったら……」
「言ったら……?」
「『どうぞ辞めて頂いて結構です』と言われたので辞めてきちゃいました(笑)」
「………はぁ!?」
僕は彼女が何でもないかのように笑って答えるので心配になりリリスに聞いた。
「それって僕のせい……だよね」
笑っているリリスを見ると胸が痛くなるが何故か彼女には悲壮感が無かった。
「そうですか。それでギルドを辞められてこれからどうされるのですか?」
話を聞いていたミリーナがリリスに問う。
「そうね。折角だからこの診療所で雇って貰おうかな。
責任とってもらえるそうだしね」
リリスはそう言うと僕に向けてウインクをひとつした。
「まさか、本当にギルドを辞める事になるとは思わなかったんだけど本部の偉い人の頭が堅くて何を言っても通らなかったのよね。
カルカルギルドのマスターには悪い事しちゃったからこっちが一段落したら一緒に謝りに行ってね」
リリスはぶちぶちと愚痴を言い始めたが『後悔はしていない』とばかりに終始笑顔だった。
「あなたがそう決めたのでしたら特にありませんが、もしギルドに戻りたいならば私から旦那様に報告してギルドにとりなしてもらう事も出来るかと思いますが……必要は無さそうですね」
ミリーナは溜め息をついてリリスに確認するが無駄だと悟ってすぐに案を引っ込めた。
「分かりました。では、診療所の開業にはリリスさんがサポートされると言う事で報告をしておきます。
開業の日にちが決まりましたら必ず知らせるようにお願いします。
では、私はこれで失礼しますね」
ミリーナはそう言うと報告する為に伯爵邸へと帰って行った。
「さあて、私達も役所に行きますか」
リリスは元気な声で僕を促した。
「なんですか? その顔は……。
もしかして、私がナオキさんを手伝ってギルドを辞めたのを後悔してると思ってるのですか?
だったら心配しないでください、確かにギルドの受付嬢もいろんな人と出会えて楽しかったですけど、ナオキさんと出会ってもっとあなたの事を知りたいと思ったらギルドの受付でおとなしく立ってるだけなんてつまらなく感じてしまったのですから」
「そこまで評価してくれてありがとう。
できるだけ期待に応えられるように頑張るよ」
僕が答えると
「宣伝、事務、接客、お金の管理までなんでも任せてくれて大丈夫よ。
しっかり稼がせて貰いますからね(笑)」
「法外な報酬は取らないぞ」
「分かってますって。取るのは生活に余裕のある人達からにするから心配しなくても大丈夫よ。
あ、それと診療所が完成したら私も住み込みにして貰うからね。
余計なお金は出来るだけ使わないようにしないとなかなか貯まらないからね」
「そんなにお金を貯めて何か買いたいものでもあるのか?」
「今は特に無いけど必要な時に有ると無いとじゃお金の価値が変わるからね」
「意外としっかりしてるんだな」
「でしょ? いい奥さんになれるかな?」
リリスはしれっと爆弾を投下していく。
「そっ、そうだななれるんじゃないかな……」
僕はなんとなく曖昧な返事を返しておいた。それが爆弾だとは気が付かずに……。
「まあ、それは置いといて役所に行かないか?」
「そうね。さっさと開業の手続きをして仕事をしないと『無職』になってしまったからね(怒)」
あれだけ機嫌の良かったリリスが急に声のトーンが下がりあからさまに不機嫌になったのを感じて(やっぱり僕には女性の扱いが下手なんだな)と反省していた。
その後、役所にて必要な手続きを完了した僕はリリスにお礼という名目で甘いお菓子を贈ったら「仕方ないわね。今回はこれで誤魔化されてあげるわ」と言って機嫌をなおしてくれた。
(良かった。本当に良かった……)
心の底から本当にホッとした瞬間だった。
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