女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
23 / 159

第23話【リリスの大胆な決断力】

しおりを挟む
 ミリーナの雰囲気に旗色が悪いと感じた僕はふたりに座るように促してから飲み物を注文した。

 真剣な表情のミリーナに対していつもの笑顔を崩さないリリス。ふたりの論議が始まろうとしていた。

「まず、リリスさん。ナオキさんの依頼の受付をされたのはあなたですよね?
 たしか、あなたはカルカル斡旋ギルド担当の受付嬢ですよね?
 それがどうして領都サナール斡旋ギルドに依頼した案件を処理されたのかしら?」

「それは、私が領都ギルドに研修目的で来ていたのがひとつ、そしてカルカルギルドのマスターからナオキさんが困っていたら手伝ってあげるようにとの命令を受けてたからですね」

「なるほど。その件は後でギルドに確認を取りますが一応了解しました。
 では、次にギルドの受付嬢は依頼者の依頼を個人的に受ける事は出来ない規則についてはどう申し開きをされますか?
 こちらはあなたが個人的にナオキさんの依頼を受けていると認識していますよ」

 ミリーナの追求に涼しい顔でリリスが答えた。

「ああ、やっぱりそうなりますよね。さっき本部でも同じ事を問いただされたので『認めてくれなければギルドを辞めます』と言ったら……」

「言ったら……?」

「『どうぞ辞めて頂いて結構です』と言われたので辞めてきちゃいました(笑)」

「………はぁ!?」

 僕は彼女が何でもないかのように笑って答えるので心配になりリリスに聞いた。

「それって僕のせい……だよね」

 笑っているリリスを見ると胸が痛くなるが何故か彼女には悲壮感が無かった。

「そうですか。それでギルドを辞められてこれからどうされるのですか?」

 話を聞いていたミリーナがリリスに問う。

「そうね。折角だからこの診療所で雇って貰おうかな。
 責任とってもらえるそうだしね」

 リリスはそう言うと僕に向けてウインクをひとつした。

「まさか、本当にギルドを辞める事になるとは思わなかったんだけど本部の偉い人の頭が堅くて何を言っても通らなかったのよね。
 カルカルギルドのマスターには悪い事しちゃったからこっちが一段落したら一緒に謝りに行ってね」

 リリスはぶちぶちと愚痴を言い始めたが『後悔はしていない』とばかりに終始笑顔だった。

「あなたがそう決めたのでしたら特にありませんが、もしギルドに戻りたいならば私から旦那様に報告してギルドにとりなしてもらう事も出来るかと思いますが……必要は無さそうですね」

 ミリーナは溜め息をついてリリスに確認するが無駄だと悟ってすぐに案を引っ込めた。

「分かりました。では、診療所の開業にはリリスさんがサポートされると言う事で報告をしておきます。
 開業の日にちが決まりましたら必ず知らせるようにお願いします。
 では、私はこれで失礼しますね」

 ミリーナはそう言うと報告する為に伯爵邸へと帰って行った。

「さあて、私達も役所に行きますか」

 リリスは元気な声で僕を促した。

「なんですか? その顔は……。
 もしかして、私がナオキさんを手伝ってギルドを辞めたのを後悔してると思ってるのですか?
 だったら心配しないでください、確かにギルドの受付嬢もいろんな人と出会えて楽しかったですけど、ナオキさんと出会ってもっとあなたの事を知りたいと思ったらギルドの受付でおとなしく立ってるだけなんてつまらなく感じてしまったのですから」

「そこまで評価してくれてありがとう。
 できるだけ期待に応えられるように頑張るよ」

 僕が答えると

「宣伝、事務、接客、お金の管理までなんでも任せてくれて大丈夫よ。
 しっかり稼がせて貰いますからね(笑)」

「法外な報酬は取らないぞ」

「分かってますって。取るのは生活に余裕のある人達からにするから心配しなくても大丈夫よ。
 あ、それと診療所が完成したら私も住み込みにして貰うからね。
 余計なお金は出来るだけ使わないようにしないとなかなか貯まらないからね」

「そんなにお金を貯めて何か買いたいものでもあるのか?」

「今は特に無いけど必要な時に有ると無いとじゃお金の価値が変わるからね」

「意外としっかりしてるんだな」

「でしょ? いい奥さんになれるかな?」

 リリスはしれっと爆弾を投下していく。

「そっ、そうだななれるんじゃないかな……」

 僕はなんとなく曖昧な返事を返しておいた。それが爆弾だとは気が付かずに……。

「まあ、それは置いといて役所に行かないか?」

「そうね。さっさと開業の手続きをして仕事をしないと『無職』になってしまったからね(怒)」

 あれだけ機嫌の良かったリリスが急に声のトーンが下がりあからさまに不機嫌になったのを感じて(やっぱり僕には女性の扱いが下手なんだな)と反省していた。

 その後、役所にて必要な手続きを完了した僕はリリスにお礼という名目で甘いお菓子を贈ったら「仕方ないわね。今回はこれで誤魔化されてあげるわ」と言って機嫌をなおしてくれた。

(良かった。本当に良かった……)

 心の底から本当にホッとした瞬間だった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...