52 / 159
第52話【薬師ギルドからの訪問者】
しおりを挟む
次の日の朝、リリスは少し早めに起き出してきて昨夜出来なかった入浴をしながら身体の調子が良い事に驚き考え込んでいた。
(やっぱりナオキの治癒魔法には疲労回復の効果もちゃんとあるし、お肌の調子を整える効果も見られるようね。
ちょっと恥ずかしいけど毎日やってもらう価値は十分にあるわよね)
鏡に写る自分の顔や身体の肌の張り具合に満足しながらリリスはお風呂から上がった。
「ーーーおはよう。身体の調子はどうだい?」
ほんの少し前に目が覚めた僕は台所で紅茶を淹れてゆっくりとしていたところへ風呂上がりのリリスが少しばかりラフで胸元のはだけた格好で入ってきた。
「あっ、おはようございま……す」
まだ起きて来ていないと思っていた僕が台所に居た事に動揺したリリスは一瞬固まり、挨拶もそこそこに自分の部屋に飛び込んだ。
ーーー数分後、何事も無かったように平静を装ったリリスがオシャレな部屋着を纏って台所に戻ってきた。
「おはようございます。
昨夜は寝てしまってごめんなさい」
彼女の言葉に「昨日はお疲れ様だったね」と返す僕に「今日は凄く調子が良いみたいです。またお願いしますね」と頬を赤らめながらリリスは言った。
「あ、ああ。それは良かった。
さて、朝食を準備するとしようか、結局昨日の夕飯は食べてないからお腹が空いてるだろう?」
僕はそう言うと台所に立った。
「作ってくれるんですか?ありがとうございます。
じゃあ私は仕事着に着替えて来ますね」
「リリス、ちょっと待って」
たった今、わざわざきちんとした部屋着に着替えてきたのにもう仕事モードに入ろうとするリリスを引き止めた僕は「せっかく可愛い部屋着を着てきたんだからせめて朝食の間ぐらいは僕にも見せて欲しいな」とテーブルで待つように促した。
その後、簡単な朝食を作ってふたりで食べながら昨日見つけた薬師ギルドからの要望書をリリスに見せてどう対応するかを話し合った。
「何よこれ? 随分と一方的な言い分じゃないの。
怪我や病気を完全に治されたら薬が売れなくなって薬師が職を失うからどうにかしてくれって自分達の立場から言ってるだけで努力はしてるのかしらね?」
「まあ、正直言ってかなり厳しい状況なんだろうと思うよ。
女性であれば年齢に関係なく僕の治癒魔法で治してしまうから男性向きに販売する薬だけだと単純に今までの半分しか売れなくなったと言う事だろうし。
そのせいで薬師の半分が廃業に追い込まれるとなると何か対策をしていかないと駄目かもしれないな」
結局のところ結論は今日の診察が終わってから話し合う事にして診療所の開所準備を先にすることにした。
「では、お大事に……」
その日、最後の患者を見送ったリリスが診療所を閉めようとしていた時、後ろから声がかかった。
「すみません。この診療所の責任者の方はいらっしゃいますか?」
そこに居たのは黒っぽいローブを羽織った20歳くらいの女性だった。
「どちら様でしょうか?
本日の診察はもう終わりましたので治療依頼でしたら明日にご来所頂けたらと思います」
リリスは営業スマイルで女性に断りを入れた。
もちろん、彼女が治療依頼者ではないであろう事はリリスには分かっていたが敢えて業務定型文で返して相手の出方を見たのだ。
「いえ、治療依頼ではなくてこの診療所の責任者で治癒士の方にお話があり、取り次いで頂きたいのです。
あ、申し遅れましたが私は領都サナールの薬師ギルドのマスターをしている『ノーラ』と言います」
「はあ、私はこの診療所の受付兼事務全般を受け持っているリリスと言います。
今、彼は診療所の片付けで忙しいのですがどういったご要件でしょうか?」
リリスは毅然とした態度でノーラに向かい合った。
「いえいえ、たかが受付の方にお話をしても仕方のない内容ですので責任者にお取次ぎをお願いします」
ノーラも一歩も引かない。
薬師ギルドの代表として来たからには何が何でもナオキと話をして帰らなければ意味がないとばかりにリリスに詰め寄る。
一触即発の雰囲気に周りの空気が薄くなっているかのように感じられた時、診療所から声がかかった。
「リリス。せっかく向こうから来てくれたのだから話だけでも聞いてみよう。
但し、許容出来ない事は一切妥協するつもりはありませんけどね」
僕がそう伝えるとリリスがため息をついてから「分かりました。では応接室へどうぞ」とノーラを案内した。
「初めましてですね。
この診療所の治癒士を務めているナオキと言います。
こちらは事務、雑務の全般をお願いしているリリスです」
先にこちら側が自己紹介をする。
「領都サナール薬師ギルドのギルドマスターを務めているノーラです。
まずは話し合いの場を設けて頂きありがとうございます」
ノーラが僕に軽く頭を下げる。
彼女もギルドの代表として来ている手前、いきなり喧嘩腰での話し方はせずに礼儀をわきまえての会話を心がけているようだ。
ここからはお互いの意地とプライドをかけた駆け引きが始まろうとしていた。
(やっぱりナオキの治癒魔法には疲労回復の効果もちゃんとあるし、お肌の調子を整える効果も見られるようね。
ちょっと恥ずかしいけど毎日やってもらう価値は十分にあるわよね)
鏡に写る自分の顔や身体の肌の張り具合に満足しながらリリスはお風呂から上がった。
「ーーーおはよう。身体の調子はどうだい?」
ほんの少し前に目が覚めた僕は台所で紅茶を淹れてゆっくりとしていたところへ風呂上がりのリリスが少しばかりラフで胸元のはだけた格好で入ってきた。
「あっ、おはようございま……す」
まだ起きて来ていないと思っていた僕が台所に居た事に動揺したリリスは一瞬固まり、挨拶もそこそこに自分の部屋に飛び込んだ。
ーーー数分後、何事も無かったように平静を装ったリリスがオシャレな部屋着を纏って台所に戻ってきた。
「おはようございます。
昨夜は寝てしまってごめんなさい」
彼女の言葉に「昨日はお疲れ様だったね」と返す僕に「今日は凄く調子が良いみたいです。またお願いしますね」と頬を赤らめながらリリスは言った。
「あ、ああ。それは良かった。
さて、朝食を準備するとしようか、結局昨日の夕飯は食べてないからお腹が空いてるだろう?」
僕はそう言うと台所に立った。
「作ってくれるんですか?ありがとうございます。
じゃあ私は仕事着に着替えて来ますね」
「リリス、ちょっと待って」
たった今、わざわざきちんとした部屋着に着替えてきたのにもう仕事モードに入ろうとするリリスを引き止めた僕は「せっかく可愛い部屋着を着てきたんだからせめて朝食の間ぐらいは僕にも見せて欲しいな」とテーブルで待つように促した。
その後、簡単な朝食を作ってふたりで食べながら昨日見つけた薬師ギルドからの要望書をリリスに見せてどう対応するかを話し合った。
「何よこれ? 随分と一方的な言い分じゃないの。
怪我や病気を完全に治されたら薬が売れなくなって薬師が職を失うからどうにかしてくれって自分達の立場から言ってるだけで努力はしてるのかしらね?」
「まあ、正直言ってかなり厳しい状況なんだろうと思うよ。
女性であれば年齢に関係なく僕の治癒魔法で治してしまうから男性向きに販売する薬だけだと単純に今までの半分しか売れなくなったと言う事だろうし。
そのせいで薬師の半分が廃業に追い込まれるとなると何か対策をしていかないと駄目かもしれないな」
結局のところ結論は今日の診察が終わってから話し合う事にして診療所の開所準備を先にすることにした。
「では、お大事に……」
その日、最後の患者を見送ったリリスが診療所を閉めようとしていた時、後ろから声がかかった。
「すみません。この診療所の責任者の方はいらっしゃいますか?」
そこに居たのは黒っぽいローブを羽織った20歳くらいの女性だった。
「どちら様でしょうか?
本日の診察はもう終わりましたので治療依頼でしたら明日にご来所頂けたらと思います」
リリスは営業スマイルで女性に断りを入れた。
もちろん、彼女が治療依頼者ではないであろう事はリリスには分かっていたが敢えて業務定型文で返して相手の出方を見たのだ。
「いえ、治療依頼ではなくてこの診療所の責任者で治癒士の方にお話があり、取り次いで頂きたいのです。
あ、申し遅れましたが私は領都サナールの薬師ギルドのマスターをしている『ノーラ』と言います」
「はあ、私はこの診療所の受付兼事務全般を受け持っているリリスと言います。
今、彼は診療所の片付けで忙しいのですがどういったご要件でしょうか?」
リリスは毅然とした態度でノーラに向かい合った。
「いえいえ、たかが受付の方にお話をしても仕方のない内容ですので責任者にお取次ぎをお願いします」
ノーラも一歩も引かない。
薬師ギルドの代表として来たからには何が何でもナオキと話をして帰らなければ意味がないとばかりにリリスに詰め寄る。
一触即発の雰囲気に周りの空気が薄くなっているかのように感じられた時、診療所から声がかかった。
「リリス。せっかく向こうから来てくれたのだから話だけでも聞いてみよう。
但し、許容出来ない事は一切妥協するつもりはありませんけどね」
僕がそう伝えるとリリスがため息をついてから「分かりました。では応接室へどうぞ」とノーラを案内した。
「初めましてですね。
この診療所の治癒士を務めているナオキと言います。
こちらは事務、雑務の全般をお願いしているリリスです」
先にこちら側が自己紹介をする。
「領都サナール薬師ギルドのギルドマスターを務めているノーラです。
まずは話し合いの場を設けて頂きありがとうございます」
ノーラが僕に軽く頭を下げる。
彼女もギルドの代表として来ている手前、いきなり喧嘩腰での話し方はせずに礼儀をわきまえての会話を心がけているようだ。
ここからはお互いの意地とプライドをかけた駆け引きが始まろうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる