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第54話【領主からの呼び出し】
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「旦那様、薬師ギルドのギルドマスターが面会を希望されているのですがいかが致しましょうか?」
侍女長のミリーナはアーロンド伯爵が執務を行っている机の前に立ち報告をあげる。
「薬師ギルド? 何か問題でもあったのか?」
伯爵の言葉にミリーナは頷き、簡単な説明を始めた。
「どうやら、先日開所したナオキ様の診療所に薬師達の仕事の半分を奪われて生活が苦しくなったとの上申書を持参しているようです」
「それで、薬師達はどうして欲しいと言っているのだ?」
「そこまでは私には分かりませんが、おそらく診療所の制限を求めてくるのではないかと推測します」
「ふむ。ただの一軒の診療所の開所でそんなに薬師達に影響がでるものなのか?」
「彼の治療はどんな怪我や病気も完全に治してしまいますからね。
これまで治療や維持のために継続して使っていた薬が全く要らなくなるのですから薬師にとっては天敵な能力だと思います」
「ああ、なるほど。
確かに薬は継続して使って貰えるからこそ消費して新たに調薬が必要になるものだ。
それが無くなれば市場の薬がだぶついて薬師の仕事が減るのも理解出来る」
「どう致しましょうか?
今回はとりあえず上申書のみ受け取っておいて内容を吟味してからあらためて回答をするとして帰って頂く事も出来ますが……」
ミリーナがそう告げるとアーロンド伯爵は「そうだな、妻の意見も聞きたいからとりあえず会って上申書を受け取るからセッティングしてくれ」とミリーナに指示をした。
ミリーナは「分かりました。では、準備が整い次第応接室へとおいでくださいますようお願い致します」と答えてから準備に走った。
「ーーー待たせたかな?」
アーロンド伯爵は薬師ギルドマスターのノーラを前に言葉をかけた。
「いえ、貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。
早速ですが、こちらが上申書になります」
ノーラはそう言うと伯爵にギルドで纏めた上申書を渡し、簡単な経緯と大まかな要望を告げた。
「ふむ。そちらの要望はおおむね理解した。
だが、一方の意見のみ聞いて判断するのは領主として浅慮であると思うので相手方の意見も聞いてから判断を下す事にする。
よって、暫く……いや3日程待つように。
その際に双方を交えて私の意見を述べるとする。
それで良いか?」
伯爵の言葉にノーラは頷き「分かりました。領主様にお任せ致します」と言い席を立った。
「ーーーナオキ様を呼び出されますか?」
ミリーナは上申書に目を通すアーロンドに問う。
「もちろん、そのつもりだがその前に呼んでどのような話に落とし込むかを決めておかねばならぬ。
すまないがサラを執務室へ呼んでくれないか?
その後で診療所へ明日、面会に来るように伝えてくれ。
ああ、彼だけでなくリリスと言ったか? 彼女も一緒に頼む。
その方が話が上手く纏まる気がするからな」
「了解しました。すぐに手配を致します」
ミリーナはそう言うとお辞儀をして応接室から退室した。
* * *
「ーーーこの件、どう対処するが正解か……。
サラはどう思う?」
執務室に移動したアーロンドは妻のサラを側に薬師ギルドからの上申書の検討をしていた。
「そうね。私もまさかここまで影響が大きいとは考えて無かったわ。
だけどこのままにしておく事は出来ないわ」
サラはそう言うといくつかの案を話しだした。
「まず、ひとつは診療所は今までどおりに好きにやらせて薬師ギルドに補助金を出すやり方。
次に薬師ギルドの面子を立てて診療所に自粛を求めるやり方。
最後はその中間で話し合いによる患者の振り分け基準を作るやり方。
私が今出せる提案はそのくらいね」
「ふむ。どれもそれなりの解決策になりそうだが双方の遺恨を残すやり方はこれからのあり方としては好ましくないな」
「ならば患者の振り分けが一番無難ではないかしら、そしてそれでも薬師の経営が厳しいならばそこを支援してあげれば良いのではないですか?」
「そうだな。
薬師達もいままで領都の民を支えてきてくれたのだから報いてやるのが領主の務めだろう」
アーロンドはサラの意見に頷くとナオキ達に話す内容を纏めていった。
* * *
「ーーーすみません。
ナオキ様は居られますか?」
夕の鐘が鳴る少し前にミリーナはアーロンドから指示をされた内容をナオキに伝えるために診療所を訪れていた。
「あ、ミリーナさんじゃないですか。
今日はどうされたんですか?」
受付をしていたリリスはミリーナが訪ねてきた事に大方の予想はついたが敢えて普通に接してみた。
「旦那様から言伝を預かっております。
ナオキ様に面会は出来ますでしょうか?」
「ちょっと待ってくれる?
今の患者さんが帰ったら今日はもう終わるから」
「はい、大丈夫です。
では、待合室にて待たせて貰っても良いですか?」
「そうね。そうして貰えるとこっちも助かるわ」
リリスはそう言うとミリーナを待合室に通してからナオキにミリーナが来た事を伝えに行った。
「ーーーお任せしました。
ミリーナさんお久しぶりですね。
体調の方はいかがですか?」
待合室に入った僕は久しぶりに会うミリーナに挨拶をする。
「今のところは特に問題ないですね。
それよりも、今日は旦那様からの言伝をお伝えするために来ましたので少しお時間を頂きます」
ミリーナはそう前置きをしてから話を始めた。
「大変申し訳無いのですが、明日の朝に領主邸へおふたりで来て頂きます。
これは旦那様……いえ領主様の指示ですので必ず来るようにしてください。
話の詳細はその時にあると思いますが薬師ギルドの件との事だと伺ってます」
ミリーナの言葉に僕は頷き「やはりそうですか。まあ、少しばかり言い過ぎたところもありましたから」と言い「分かりました。明日の朝、必ず伺いますと領主様にお伝えください」と頭を下げた。
「ーーーでは明日の朝、領主邸にてお待ちしております」
ミリーナは診療所の前でこちらを振り返り深々と礼をしてから領主邸へと帰って行った。
侍女長のミリーナはアーロンド伯爵が執務を行っている机の前に立ち報告をあげる。
「薬師ギルド? 何か問題でもあったのか?」
伯爵の言葉にミリーナは頷き、簡単な説明を始めた。
「どうやら、先日開所したナオキ様の診療所に薬師達の仕事の半分を奪われて生活が苦しくなったとの上申書を持参しているようです」
「それで、薬師達はどうして欲しいと言っているのだ?」
「そこまでは私には分かりませんが、おそらく診療所の制限を求めてくるのではないかと推測します」
「ふむ。ただの一軒の診療所の開所でそんなに薬師達に影響がでるものなのか?」
「彼の治療はどんな怪我や病気も完全に治してしまいますからね。
これまで治療や維持のために継続して使っていた薬が全く要らなくなるのですから薬師にとっては天敵な能力だと思います」
「ああ、なるほど。
確かに薬は継続して使って貰えるからこそ消費して新たに調薬が必要になるものだ。
それが無くなれば市場の薬がだぶついて薬師の仕事が減るのも理解出来る」
「どう致しましょうか?
今回はとりあえず上申書のみ受け取っておいて内容を吟味してからあらためて回答をするとして帰って頂く事も出来ますが……」
ミリーナがそう告げるとアーロンド伯爵は「そうだな、妻の意見も聞きたいからとりあえず会って上申書を受け取るからセッティングしてくれ」とミリーナに指示をした。
ミリーナは「分かりました。では、準備が整い次第応接室へとおいでくださいますようお願い致します」と答えてから準備に走った。
「ーーー待たせたかな?」
アーロンド伯爵は薬師ギルドマスターのノーラを前に言葉をかけた。
「いえ、貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。
早速ですが、こちらが上申書になります」
ノーラはそう言うと伯爵にギルドで纏めた上申書を渡し、簡単な経緯と大まかな要望を告げた。
「ふむ。そちらの要望はおおむね理解した。
だが、一方の意見のみ聞いて判断するのは領主として浅慮であると思うので相手方の意見も聞いてから判断を下す事にする。
よって、暫く……いや3日程待つように。
その際に双方を交えて私の意見を述べるとする。
それで良いか?」
伯爵の言葉にノーラは頷き「分かりました。領主様にお任せ致します」と言い席を立った。
「ーーーナオキ様を呼び出されますか?」
ミリーナは上申書に目を通すアーロンドに問う。
「もちろん、そのつもりだがその前に呼んでどのような話に落とし込むかを決めておかねばならぬ。
すまないがサラを執務室へ呼んでくれないか?
その後で診療所へ明日、面会に来るように伝えてくれ。
ああ、彼だけでなくリリスと言ったか? 彼女も一緒に頼む。
その方が話が上手く纏まる気がするからな」
「了解しました。すぐに手配を致します」
ミリーナはそう言うとお辞儀をして応接室から退室した。
* * *
「ーーーこの件、どう対処するが正解か……。
サラはどう思う?」
執務室に移動したアーロンドは妻のサラを側に薬師ギルドからの上申書の検討をしていた。
「そうね。私もまさかここまで影響が大きいとは考えて無かったわ。
だけどこのままにしておく事は出来ないわ」
サラはそう言うといくつかの案を話しだした。
「まず、ひとつは診療所は今までどおりに好きにやらせて薬師ギルドに補助金を出すやり方。
次に薬師ギルドの面子を立てて診療所に自粛を求めるやり方。
最後はその中間で話し合いによる患者の振り分け基準を作るやり方。
私が今出せる提案はそのくらいね」
「ふむ。どれもそれなりの解決策になりそうだが双方の遺恨を残すやり方はこれからのあり方としては好ましくないな」
「ならば患者の振り分けが一番無難ではないかしら、そしてそれでも薬師の経営が厳しいならばそこを支援してあげれば良いのではないですか?」
「そうだな。
薬師達もいままで領都の民を支えてきてくれたのだから報いてやるのが領主の務めだろう」
アーロンドはサラの意見に頷くとナオキ達に話す内容を纏めていった。
* * *
「ーーーすみません。
ナオキ様は居られますか?」
夕の鐘が鳴る少し前にミリーナはアーロンドから指示をされた内容をナオキに伝えるために診療所を訪れていた。
「あ、ミリーナさんじゃないですか。
今日はどうされたんですか?」
受付をしていたリリスはミリーナが訪ねてきた事に大方の予想はついたが敢えて普通に接してみた。
「旦那様から言伝を預かっております。
ナオキ様に面会は出来ますでしょうか?」
「ちょっと待ってくれる?
今の患者さんが帰ったら今日はもう終わるから」
「はい、大丈夫です。
では、待合室にて待たせて貰っても良いですか?」
「そうね。そうして貰えるとこっちも助かるわ」
リリスはそう言うとミリーナを待合室に通してからナオキにミリーナが来た事を伝えに行った。
「ーーーお任せしました。
ミリーナさんお久しぶりですね。
体調の方はいかがですか?」
待合室に入った僕は久しぶりに会うミリーナに挨拶をする。
「今のところは特に問題ないですね。
それよりも、今日は旦那様からの言伝をお伝えするために来ましたので少しお時間を頂きます」
ミリーナはそう前置きをしてから話を始めた。
「大変申し訳無いのですが、明日の朝に領主邸へおふたりで来て頂きます。
これは旦那様……いえ領主様の指示ですので必ず来るようにしてください。
話の詳細はその時にあると思いますが薬師ギルドの件との事だと伺ってます」
ミリーナの言葉に僕は頷き「やはりそうですか。まあ、少しばかり言い過ぎたところもありましたから」と言い「分かりました。明日の朝、必ず伺いますと領主様にお伝えください」と頭を下げた。
「ーーーでは明日の朝、領主邸にてお待ちしております」
ミリーナは診療所の前でこちらを振り返り深々と礼をしてから領主邸へと帰って行った。
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