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第56話【信念と現実のバランス】
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「随分と薬師ギルド寄りの案になりましたね」
僕の言葉にサラは首を傾げて「そうかしら?」と言った。
「確かに収入の面では支援を頂ければ問題は無いかと思いますが、僕の信念は『出来るだけ多くの患者を治療したい』のですから治療を制限される条件ではあまり好ましくない状態ですよね?」
僕のその言葉にサラは冷静に反論をしてきた。
「確かにあなたの信念からすると不満はあるかもしれないわ。
でも、少し考えてみて。
確かにあなたは素晴らしい能力を持っていますが、女性しか治療出来ないという制約があるわ。
それに、完全に治す事が出来ると言ってもこの領都で怪我や病気で困っている女性全員をあなた一人で治療する事は到底無理な話。
せっかく女神様から頂いた貴重な能力はそれなりに重症な患者や私のように薬では絶対に治せない部位欠損の患者を優先するのが本当のあなたの役目ではないかしら?」
サラは僕の目をしっかりと見ながら丁寧に説得を続ける。
「それに、領都の薬師ギルドはあなたが来る前からずっと領民の健康を守ってきた存在なの。
確かに技術的に未熟な薬師も存在するし、全員が褒められた経営をしているとは言わないけれどそこは今回の命令でギルドに改善させるつもりよ。
適材適所という言葉があるようにやはり男性及び多くの女性軽症患者については今までどおりに薬師達に任せる方が『より困っている患者に手が届く』といった意味ではあなたの信念に沿うものではないかしら?」
サラの言葉に僕は目を閉じて考えを巡らせる。
(確かにサラ様の言い分は理解出来る。
だけど理解出来るのと納得出来るかは別物だ。
やはり診療所みたいに受け入れる診療方法は無理があるのか?)
僕が目を開けて隣に座っているリリスの方を見ると黙って頷いたので心を決めた。
「分かりました。概ね了承します。
ただ、僕からもお願いがあります」
「何かしら? 出来るだけ聞いてあげたいけど難しい事もあるわよ」
「まず、診療所で直接受け付ける診察は中止します。
ですが、急に辞めるとなると混乱が起きるので領主様、若しくは斡旋ギルドの名前でお知らせを出して頂きたいのです。
そして、明日からは言われたように薬での治療が難しい方の依頼を斡旋ギルド経由でのみ受け付けたいと思います」
「それでは領主家の提案を全面的に受け入れてくれるのですね?」
サラの言葉に僕は静かに首を振った。
「内容についてはそうですが、申し訳ないのですが期間を区切らせて頂きたいです。
具体的には……半年……いえ3ヶ月を目処に僕を必要とされている患者さんを中心に回り、治療をしてから他の街へと向かう準備をしたいと思います」
「なんだと!? 領都から出ると言うのか?」
「はい。ただ、伯爵様には診療所の開設や知名度の向上等の恩もありますので街を出た後も僕の能力が必要な時は連絡を頂ければ必ず協力をさせて頂きます」
「ううむ。出来れば君には領都に留まって欲しかったのだが……何とか考え直さないか?」
伯爵は不服そうな表情で引き止めを打診した。
「僕を評価してくださるのはありがたいのですが、やはり僕の信念を通すには今のやり方では十分ではありませんし、僕は女神様から能力を頂く時に僕の目の前の人々を救いたいと願いました。
ですが、ここに留まっていてはその願いを叶えられるとは思えないのです。
ですから……」
「もう良い。分かった」
「あなた!?」
アーロンドの言葉にサラが驚く。何とかナオキが考え直してくれる言葉を必死で考えている矢先の事だったからだ。
「サラ、良いのだ。
女神様との話を出されては領主と言えども無理は出来ん。
それに、彼は彼なりに私の事を理解して必要な時は力になると言っておるのだ」
アーロンドはまだ何か言いたそうなサラを手で制してから僕に言った。
「君の気持ちは分かった。
だが、出来る事なら1年に1回程度は領都を訪れて患者の治療にあたって欲しいものだが……」
「そうですね。
僕としても出来るだけその要望にはそえられるようにしたいと思います。
リリスの故郷がカルカルなのでそちらにも時々は行きたい考えていますので……」
「そうか、だが必ず街を出る時には斡旋ギルドで良いので何処に行くかを伝えるようにする事を必ず守るように」
「はい。それは約束をさせて頂きます」
僕はそう言うと椅子から立ち上がった。
「あ、薬師ギルドには領主家から説明して頂けるのですよね?」
「ああ、もちろんだ心配はしなくてもきちんと説明をしておく」
「ありがとうございます」
僕は再度お礼を言うとリリスとともに診療所へと帰って行った。
「ーーー本当に良かったのですか?」
僕達の帰った部屋でサラが夫に問いかける。
「仕方あるまい。
治癒魔法は彼に与えられたものだ。
無理を通して伯爵家との繋がりを切られるよりは、こちらに恩を感じている状態で所在のみ把握していた方がいざという時に要求を通す事が出来るだろう」
伯爵の言葉にサラは「そうね、そうかもしれないわね」と同意した。
「ミリーナ。
今の話を纏めておくので薬師ギルドのギルドマスターへ繋ぎをとって面会に来るように伝えてくれ。
当初は双方とも呼び出して話す予定だったが、その必要もないだろう」
「分かりました。そのように処理しておきます」
* * *
後日ノーラに決定した事を説明し、ナオキも3ヶ月後には街を出る事を伝えた。
彼女はその事実に驚いたが女神の祝福を授かった人物を他所の街へ追いやった責任(実際はナオキ自身が決めた事ではあるが)として薬師達の一層のレベルアップと悪徳薬師の洗い出しを厳命された。
これにより、女神の祝福者は領都を去るが領民の健康はナオキが来る前よりも平均すると上がる事になった。
僕の言葉にサラは首を傾げて「そうかしら?」と言った。
「確かに収入の面では支援を頂ければ問題は無いかと思いますが、僕の信念は『出来るだけ多くの患者を治療したい』のですから治療を制限される条件ではあまり好ましくない状態ですよね?」
僕のその言葉にサラは冷静に反論をしてきた。
「確かにあなたの信念からすると不満はあるかもしれないわ。
でも、少し考えてみて。
確かにあなたは素晴らしい能力を持っていますが、女性しか治療出来ないという制約があるわ。
それに、完全に治す事が出来ると言ってもこの領都で怪我や病気で困っている女性全員をあなた一人で治療する事は到底無理な話。
せっかく女神様から頂いた貴重な能力はそれなりに重症な患者や私のように薬では絶対に治せない部位欠損の患者を優先するのが本当のあなたの役目ではないかしら?」
サラは僕の目をしっかりと見ながら丁寧に説得を続ける。
「それに、領都の薬師ギルドはあなたが来る前からずっと領民の健康を守ってきた存在なの。
確かに技術的に未熟な薬師も存在するし、全員が褒められた経営をしているとは言わないけれどそこは今回の命令でギルドに改善させるつもりよ。
適材適所という言葉があるようにやはり男性及び多くの女性軽症患者については今までどおりに薬師達に任せる方が『より困っている患者に手が届く』といった意味ではあなたの信念に沿うものではないかしら?」
サラの言葉に僕は目を閉じて考えを巡らせる。
(確かにサラ様の言い分は理解出来る。
だけど理解出来るのと納得出来るかは別物だ。
やはり診療所みたいに受け入れる診療方法は無理があるのか?)
僕が目を開けて隣に座っているリリスの方を見ると黙って頷いたので心を決めた。
「分かりました。概ね了承します。
ただ、僕からもお願いがあります」
「何かしら? 出来るだけ聞いてあげたいけど難しい事もあるわよ」
「まず、診療所で直接受け付ける診察は中止します。
ですが、急に辞めるとなると混乱が起きるので領主様、若しくは斡旋ギルドの名前でお知らせを出して頂きたいのです。
そして、明日からは言われたように薬での治療が難しい方の依頼を斡旋ギルド経由でのみ受け付けたいと思います」
「それでは領主家の提案を全面的に受け入れてくれるのですね?」
サラの言葉に僕は静かに首を振った。
「内容についてはそうですが、申し訳ないのですが期間を区切らせて頂きたいです。
具体的には……半年……いえ3ヶ月を目処に僕を必要とされている患者さんを中心に回り、治療をしてから他の街へと向かう準備をしたいと思います」
「なんだと!? 領都から出ると言うのか?」
「はい。ただ、伯爵様には診療所の開設や知名度の向上等の恩もありますので街を出た後も僕の能力が必要な時は連絡を頂ければ必ず協力をさせて頂きます」
「ううむ。出来れば君には領都に留まって欲しかったのだが……何とか考え直さないか?」
伯爵は不服そうな表情で引き止めを打診した。
「僕を評価してくださるのはありがたいのですが、やはり僕の信念を通すには今のやり方では十分ではありませんし、僕は女神様から能力を頂く時に僕の目の前の人々を救いたいと願いました。
ですが、ここに留まっていてはその願いを叶えられるとは思えないのです。
ですから……」
「もう良い。分かった」
「あなた!?」
アーロンドの言葉にサラが驚く。何とかナオキが考え直してくれる言葉を必死で考えている矢先の事だったからだ。
「サラ、良いのだ。
女神様との話を出されては領主と言えども無理は出来ん。
それに、彼は彼なりに私の事を理解して必要な時は力になると言っておるのだ」
アーロンドはまだ何か言いたそうなサラを手で制してから僕に言った。
「君の気持ちは分かった。
だが、出来る事なら1年に1回程度は領都を訪れて患者の治療にあたって欲しいものだが……」
「そうですね。
僕としても出来るだけその要望にはそえられるようにしたいと思います。
リリスの故郷がカルカルなのでそちらにも時々は行きたい考えていますので……」
「そうか、だが必ず街を出る時には斡旋ギルドで良いので何処に行くかを伝えるようにする事を必ず守るように」
「はい。それは約束をさせて頂きます」
僕はそう言うと椅子から立ち上がった。
「あ、薬師ギルドには領主家から説明して頂けるのですよね?」
「ああ、もちろんだ心配はしなくてもきちんと説明をしておく」
「ありがとうございます」
僕は再度お礼を言うとリリスとともに診療所へと帰って行った。
「ーーー本当に良かったのですか?」
僕達の帰った部屋でサラが夫に問いかける。
「仕方あるまい。
治癒魔法は彼に与えられたものだ。
無理を通して伯爵家との繋がりを切られるよりは、こちらに恩を感じている状態で所在のみ把握していた方がいざという時に要求を通す事が出来るだろう」
伯爵の言葉にサラは「そうね、そうかもしれないわね」と同意した。
「ミリーナ。
今の話を纏めておくので薬師ギルドのギルドマスターへ繋ぎをとって面会に来るように伝えてくれ。
当初は双方とも呼び出して話す予定だったが、その必要もないだろう」
「分かりました。そのように処理しておきます」
* * *
後日ノーラに決定した事を説明し、ナオキも3ヶ月後には街を出る事を伝えた。
彼女はその事実に驚いたが女神の祝福を授かった人物を他所の街へ追いやった責任(実際はナオキ自身が決めた事ではあるが)として薬師達の一層のレベルアップと悪徳薬師の洗い出しを厳命された。
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