69 / 159
第69話【バグーダ斡旋ギルド】
しおりを挟む
――からんからん。
斡旋ギルド共通のドア鐘が響くと反射的に注目が集まる。
時間的に夕の鐘がなる少し前だった事もあり、明日の依頼を登録する人達がまばらに居るだけで受付のカウンターは空いていた。
「すみません。到着の報告とギルドマスターへの面会の予約をお願いしたいのですが」
僕は新規受付の表示がある第一受付のカウンターで受付嬢に内容を伝えた。
「バグーダ斡旋ギルドへようこそお越しくださいました。
到着の報告とギルドマスターとの面会予約とのご依頼ですが、まず到着の報告はどなたにされたら宜しいでしょうか?」
「えっと、僕は治癒士をしているナオキと言いますが、アーロンド伯爵……いえ、領主様に目をかけて頂いた事により僕の所在を知りたいそうで町を移動する度に斡旋ギルドへ報告するようにと言われています。
これがその内容ですので確認ください」
僕はそう言って領主家から渡された手紙を受付嬢へ渡した。
「これは、確かに領主家のろう印が押されていますね。
私の権限ではこの封筒を開くことは出来ませんので少しお待ちいただけますか?」
受付嬢はそう僕達に伝えるといそいそと奥の部屋に手紙を持って行った。
「これは、あの人が出てくるパターンよね。
すぐに面会が始まったらなかなか帰れそうにないわね。
しまったわね、先に宿屋の手配をするべきだったかしら」
僕は横でリリスが呟くのを聞きながら(また面倒な事にならないといいけど)とため息をついた。
「――おまたせしました。
ギルマスの都合がつくそうですので第一応接室へご案内致します」
予想どおりギルマスとの面会はすぐに実現した。
正直、この時間から話をするとなるとこの後の展開が安易に予想出来るだけあってどう逃げるかを考えながら僕達は応接室へと向かった。
案内されて出された紅茶に口をつけた直後にバタバタと廊下から足音が聞こえてきて『バタン』と勢いよくドアが開けられた。
「バグーダの斡旋ギルドへようこそ!
ようやく私の元で働く決心をされたのですね!」
ドアから現れたのは言わずとしれたバグーダ斡旋ギルドのギルドマスター『アーリー』であった。
以前、治療のために会った時から数ヶ月しかたっていない事もあって相変わらずの女性フェロモンを漂わせたままのアーリーだった。
「先日はどうも。
あれから調子はいかがですか? 怪我や病気では無かったので心配は要らないとは思いますが、何か問題があればお知らせください」
僕は出来るだけ淡々とした口調で事務的に話を進めようと心がける。
「それで、今回こちらに出向いた理由ですが、まず先程の領主様からの手紙とお兄様から預かったこちらの手紙を併せてお読みください。
その後でこれからの僕達の行動についてご説明したいと思います」
僕が新たにアルフから預かった手紙をアーリーの前に提示する。
「なに? お兄様から手紙ですって?」
アーリーは先程受付嬢に渡した領主様からの手紙の封を切らずにそのままこの場に持ってきていたが、領主様からの手紙よりも兄アルフからの手紙の方が気になるらしく先にそちらの封を切って読み始めた。
『アーリーへ
この度、治癒士のナオキ殿が領都サナールの薬師では手に負えない怪我や病気を負っていた女性の方々の治療を全面的に引き受けてくださり、この手紙を書いている時点でほぼ希望者全員の治療が完了した。
これ以上は領都の薬師との軋轢を生むため領主様とも協議した結果、各地の町や村を巡りたいとのナオキ殿の希望もありそれを認める事となった。
ついては、本人の希望で第三の町バグーダでまずは活動をされるとなったので斡旋ギルド領都本部ギルドマスターとして彼の仕事のサポートを頼みたい。
地元の薬師ギルドとの兼ね合いもあるだろうが出来るだけ彼の希望を聞いて欲しい。
また、彼は一定期間町での治療活動をした後は他の町へと移動を希望しているのでその際は何処へ向かうかの報告を受けるようにとの領主様からの要望もある。
お前の性格は知っているつもりだが、彼には余計なちょっかいは出さないようにきつく記しておく。
以上、領都本部ギルドマスター アルフより』
手紙を読んだアーリーは「ふうん」といった表情で手紙を置くと領主様からの手紙も封を切り内容に目を通していった。
「――概ね内容は了解したわ。
ただ、両方の手紙にもあったように薬師ギルドのギルドマスターとも一度話をしておいた方が後々で問題が起きにくいとは思うわ。
あ、もちろん町長にも同席して貰うから心配しないでいいわよ」
アーリーはそう言うと手帳を広げて都合の良い日の確認をし、控えていた受付嬢に薬師ギルドと町長への連絡を頼んでから下がらせた。
「仕事の話はこれくらいにして食事でもしながら少しお話をしましょうか」
アーリーの誘いにずっと側で控えていたリリスが反応する。
「お申し出はありがたいのですが、私達は先程この町に到着したばかりですのでまだ拠点とする宿も決めておりません。
ですのでそう言った申し出はまたの機会にお願いします」
リリスの言葉にアーリーは一瞬だけ(あなたには聞いてないわよ)との雰囲気を出したが僕の手前穏やかな表情を崩さずに「それは残念ですね。ではまたの機会にしましょう」と引き下がった。
「――意外とあっさり引き下がったわね」
斡旋ギルドから出て宿屋が立ち並ぶ区域に向かいながらリリスが話しかける。
「そうだね。
まあ、拠点が決まったら連絡をしてもらう為にまたギルドに行かないといけないし、暫くこの町で活動するなら何度かは会わないといけないからまだまだ油断は出来ないけどね」
そう話しながら旅の疲れを癒やす為、良さそうな宿を探した。
斡旋ギルド共通のドア鐘が響くと反射的に注目が集まる。
時間的に夕の鐘がなる少し前だった事もあり、明日の依頼を登録する人達がまばらに居るだけで受付のカウンターは空いていた。
「すみません。到着の報告とギルドマスターへの面会の予約をお願いしたいのですが」
僕は新規受付の表示がある第一受付のカウンターで受付嬢に内容を伝えた。
「バグーダ斡旋ギルドへようこそお越しくださいました。
到着の報告とギルドマスターとの面会予約とのご依頼ですが、まず到着の報告はどなたにされたら宜しいでしょうか?」
「えっと、僕は治癒士をしているナオキと言いますが、アーロンド伯爵……いえ、領主様に目をかけて頂いた事により僕の所在を知りたいそうで町を移動する度に斡旋ギルドへ報告するようにと言われています。
これがその内容ですので確認ください」
僕はそう言って領主家から渡された手紙を受付嬢へ渡した。
「これは、確かに領主家のろう印が押されていますね。
私の権限ではこの封筒を開くことは出来ませんので少しお待ちいただけますか?」
受付嬢はそう僕達に伝えるといそいそと奥の部屋に手紙を持って行った。
「これは、あの人が出てくるパターンよね。
すぐに面会が始まったらなかなか帰れそうにないわね。
しまったわね、先に宿屋の手配をするべきだったかしら」
僕は横でリリスが呟くのを聞きながら(また面倒な事にならないといいけど)とため息をついた。
「――おまたせしました。
ギルマスの都合がつくそうですので第一応接室へご案内致します」
予想どおりギルマスとの面会はすぐに実現した。
正直、この時間から話をするとなるとこの後の展開が安易に予想出来るだけあってどう逃げるかを考えながら僕達は応接室へと向かった。
案内されて出された紅茶に口をつけた直後にバタバタと廊下から足音が聞こえてきて『バタン』と勢いよくドアが開けられた。
「バグーダの斡旋ギルドへようこそ!
ようやく私の元で働く決心をされたのですね!」
ドアから現れたのは言わずとしれたバグーダ斡旋ギルドのギルドマスター『アーリー』であった。
以前、治療のために会った時から数ヶ月しかたっていない事もあって相変わらずの女性フェロモンを漂わせたままのアーリーだった。
「先日はどうも。
あれから調子はいかがですか? 怪我や病気では無かったので心配は要らないとは思いますが、何か問題があればお知らせください」
僕は出来るだけ淡々とした口調で事務的に話を進めようと心がける。
「それで、今回こちらに出向いた理由ですが、まず先程の領主様からの手紙とお兄様から預かったこちらの手紙を併せてお読みください。
その後でこれからの僕達の行動についてご説明したいと思います」
僕が新たにアルフから預かった手紙をアーリーの前に提示する。
「なに? お兄様から手紙ですって?」
アーリーは先程受付嬢に渡した領主様からの手紙の封を切らずにそのままこの場に持ってきていたが、領主様からの手紙よりも兄アルフからの手紙の方が気になるらしく先にそちらの封を切って読み始めた。
『アーリーへ
この度、治癒士のナオキ殿が領都サナールの薬師では手に負えない怪我や病気を負っていた女性の方々の治療を全面的に引き受けてくださり、この手紙を書いている時点でほぼ希望者全員の治療が完了した。
これ以上は領都の薬師との軋轢を生むため領主様とも協議した結果、各地の町や村を巡りたいとのナオキ殿の希望もありそれを認める事となった。
ついては、本人の希望で第三の町バグーダでまずは活動をされるとなったので斡旋ギルド領都本部ギルドマスターとして彼の仕事のサポートを頼みたい。
地元の薬師ギルドとの兼ね合いもあるだろうが出来るだけ彼の希望を聞いて欲しい。
また、彼は一定期間町での治療活動をした後は他の町へと移動を希望しているのでその際は何処へ向かうかの報告を受けるようにとの領主様からの要望もある。
お前の性格は知っているつもりだが、彼には余計なちょっかいは出さないようにきつく記しておく。
以上、領都本部ギルドマスター アルフより』
手紙を読んだアーリーは「ふうん」といった表情で手紙を置くと領主様からの手紙も封を切り内容に目を通していった。
「――概ね内容は了解したわ。
ただ、両方の手紙にもあったように薬師ギルドのギルドマスターとも一度話をしておいた方が後々で問題が起きにくいとは思うわ。
あ、もちろん町長にも同席して貰うから心配しないでいいわよ」
アーリーはそう言うと手帳を広げて都合の良い日の確認をし、控えていた受付嬢に薬師ギルドと町長への連絡を頼んでから下がらせた。
「仕事の話はこれくらいにして食事でもしながら少しお話をしましょうか」
アーリーの誘いにずっと側で控えていたリリスが反応する。
「お申し出はありがたいのですが、私達は先程この町に到着したばかりですのでまだ拠点とする宿も決めておりません。
ですのでそう言った申し出はまたの機会にお願いします」
リリスの言葉にアーリーは一瞬だけ(あなたには聞いてないわよ)との雰囲気を出したが僕の手前穏やかな表情を崩さずに「それは残念ですね。ではまたの機会にしましょう」と引き下がった。
「――意外とあっさり引き下がったわね」
斡旋ギルドから出て宿屋が立ち並ぶ区域に向かいながらリリスが話しかける。
「そうだね。
まあ、拠点が決まったら連絡をしてもらう為にまたギルドに行かないといけないし、暫くこの町で活動するなら何度かは会わないといけないからまだまだ油断は出来ないけどね」
そう話しながら旅の疲れを癒やす為、良さそうな宿を探した。
1
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる