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第69話【バグーダ斡旋ギルド】
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――からんからん。
斡旋ギルド共通のドア鐘が響くと反射的に注目が集まる。
時間的に夕の鐘がなる少し前だった事もあり、明日の依頼を登録する人達がまばらに居るだけで受付のカウンターは空いていた。
「すみません。到着の報告とギルドマスターへの面会の予約をお願いしたいのですが」
僕は新規受付の表示がある第一受付のカウンターで受付嬢に内容を伝えた。
「バグーダ斡旋ギルドへようこそお越しくださいました。
到着の報告とギルドマスターとの面会予約とのご依頼ですが、まず到着の報告はどなたにされたら宜しいでしょうか?」
「えっと、僕は治癒士をしているナオキと言いますが、アーロンド伯爵……いえ、領主様に目をかけて頂いた事により僕の所在を知りたいそうで町を移動する度に斡旋ギルドへ報告するようにと言われています。
これがその内容ですので確認ください」
僕はそう言って領主家から渡された手紙を受付嬢へ渡した。
「これは、確かに領主家のろう印が押されていますね。
私の権限ではこの封筒を開くことは出来ませんので少しお待ちいただけますか?」
受付嬢はそう僕達に伝えるといそいそと奥の部屋に手紙を持って行った。
「これは、あの人が出てくるパターンよね。
すぐに面会が始まったらなかなか帰れそうにないわね。
しまったわね、先に宿屋の手配をするべきだったかしら」
僕は横でリリスが呟くのを聞きながら(また面倒な事にならないといいけど)とため息をついた。
「――おまたせしました。
ギルマスの都合がつくそうですので第一応接室へご案内致します」
予想どおりギルマスとの面会はすぐに実現した。
正直、この時間から話をするとなるとこの後の展開が安易に予想出来るだけあってどう逃げるかを考えながら僕達は応接室へと向かった。
案内されて出された紅茶に口をつけた直後にバタバタと廊下から足音が聞こえてきて『バタン』と勢いよくドアが開けられた。
「バグーダの斡旋ギルドへようこそ!
ようやく私の元で働く決心をされたのですね!」
ドアから現れたのは言わずとしれたバグーダ斡旋ギルドのギルドマスター『アーリー』であった。
以前、治療のために会った時から数ヶ月しかたっていない事もあって相変わらずの女性フェロモンを漂わせたままのアーリーだった。
「先日はどうも。
あれから調子はいかがですか? 怪我や病気では無かったので心配は要らないとは思いますが、何か問題があればお知らせください」
僕は出来るだけ淡々とした口調で事務的に話を進めようと心がける。
「それで、今回こちらに出向いた理由ですが、まず先程の領主様からの手紙とお兄様から預かったこちらの手紙を併せてお読みください。
その後でこれからの僕達の行動についてご説明したいと思います」
僕が新たにアルフから預かった手紙をアーリーの前に提示する。
「なに? お兄様から手紙ですって?」
アーリーは先程受付嬢に渡した領主様からの手紙の封を切らずにそのままこの場に持ってきていたが、領主様からの手紙よりも兄アルフからの手紙の方が気になるらしく先にそちらの封を切って読み始めた。
『アーリーへ
この度、治癒士のナオキ殿が領都サナールの薬師では手に負えない怪我や病気を負っていた女性の方々の治療を全面的に引き受けてくださり、この手紙を書いている時点でほぼ希望者全員の治療が完了した。
これ以上は領都の薬師との軋轢を生むため領主様とも協議した結果、各地の町や村を巡りたいとのナオキ殿の希望もありそれを認める事となった。
ついては、本人の希望で第三の町バグーダでまずは活動をされるとなったので斡旋ギルド領都本部ギルドマスターとして彼の仕事のサポートを頼みたい。
地元の薬師ギルドとの兼ね合いもあるだろうが出来るだけ彼の希望を聞いて欲しい。
また、彼は一定期間町での治療活動をした後は他の町へと移動を希望しているのでその際は何処へ向かうかの報告を受けるようにとの領主様からの要望もある。
お前の性格は知っているつもりだが、彼には余計なちょっかいは出さないようにきつく記しておく。
以上、領都本部ギルドマスター アルフより』
手紙を読んだアーリーは「ふうん」といった表情で手紙を置くと領主様からの手紙も封を切り内容に目を通していった。
「――概ね内容は了解したわ。
ただ、両方の手紙にもあったように薬師ギルドのギルドマスターとも一度話をしておいた方が後々で問題が起きにくいとは思うわ。
あ、もちろん町長にも同席して貰うから心配しないでいいわよ」
アーリーはそう言うと手帳を広げて都合の良い日の確認をし、控えていた受付嬢に薬師ギルドと町長への連絡を頼んでから下がらせた。
「仕事の話はこれくらいにして食事でもしながら少しお話をしましょうか」
アーリーの誘いにずっと側で控えていたリリスが反応する。
「お申し出はありがたいのですが、私達は先程この町に到着したばかりですのでまだ拠点とする宿も決めておりません。
ですのでそう言った申し出はまたの機会にお願いします」
リリスの言葉にアーリーは一瞬だけ(あなたには聞いてないわよ)との雰囲気を出したが僕の手前穏やかな表情を崩さずに「それは残念ですね。ではまたの機会にしましょう」と引き下がった。
「――意外とあっさり引き下がったわね」
斡旋ギルドから出て宿屋が立ち並ぶ区域に向かいながらリリスが話しかける。
「そうだね。
まあ、拠点が決まったら連絡をしてもらう為にまたギルドに行かないといけないし、暫くこの町で活動するなら何度かは会わないといけないからまだまだ油断は出来ないけどね」
そう話しながら旅の疲れを癒やす為、良さそうな宿を探した。
斡旋ギルド共通のドア鐘が響くと反射的に注目が集まる。
時間的に夕の鐘がなる少し前だった事もあり、明日の依頼を登録する人達がまばらに居るだけで受付のカウンターは空いていた。
「すみません。到着の報告とギルドマスターへの面会の予約をお願いしたいのですが」
僕は新規受付の表示がある第一受付のカウンターで受付嬢に内容を伝えた。
「バグーダ斡旋ギルドへようこそお越しくださいました。
到着の報告とギルドマスターとの面会予約とのご依頼ですが、まず到着の報告はどなたにされたら宜しいでしょうか?」
「えっと、僕は治癒士をしているナオキと言いますが、アーロンド伯爵……いえ、領主様に目をかけて頂いた事により僕の所在を知りたいそうで町を移動する度に斡旋ギルドへ報告するようにと言われています。
これがその内容ですので確認ください」
僕はそう言って領主家から渡された手紙を受付嬢へ渡した。
「これは、確かに領主家のろう印が押されていますね。
私の権限ではこの封筒を開くことは出来ませんので少しお待ちいただけますか?」
受付嬢はそう僕達に伝えるといそいそと奥の部屋に手紙を持って行った。
「これは、あの人が出てくるパターンよね。
すぐに面会が始まったらなかなか帰れそうにないわね。
しまったわね、先に宿屋の手配をするべきだったかしら」
僕は横でリリスが呟くのを聞きながら(また面倒な事にならないといいけど)とため息をついた。
「――おまたせしました。
ギルマスの都合がつくそうですので第一応接室へご案内致します」
予想どおりギルマスとの面会はすぐに実現した。
正直、この時間から話をするとなるとこの後の展開が安易に予想出来るだけあってどう逃げるかを考えながら僕達は応接室へと向かった。
案内されて出された紅茶に口をつけた直後にバタバタと廊下から足音が聞こえてきて『バタン』と勢いよくドアが開けられた。
「バグーダの斡旋ギルドへようこそ!
ようやく私の元で働く決心をされたのですね!」
ドアから現れたのは言わずとしれたバグーダ斡旋ギルドのギルドマスター『アーリー』であった。
以前、治療のために会った時から数ヶ月しかたっていない事もあって相変わらずの女性フェロモンを漂わせたままのアーリーだった。
「先日はどうも。
あれから調子はいかがですか? 怪我や病気では無かったので心配は要らないとは思いますが、何か問題があればお知らせください」
僕は出来るだけ淡々とした口調で事務的に話を進めようと心がける。
「それで、今回こちらに出向いた理由ですが、まず先程の領主様からの手紙とお兄様から預かったこちらの手紙を併せてお読みください。
その後でこれからの僕達の行動についてご説明したいと思います」
僕が新たにアルフから預かった手紙をアーリーの前に提示する。
「なに? お兄様から手紙ですって?」
アーリーは先程受付嬢に渡した領主様からの手紙の封を切らずにそのままこの場に持ってきていたが、領主様からの手紙よりも兄アルフからの手紙の方が気になるらしく先にそちらの封を切って読み始めた。
『アーリーへ
この度、治癒士のナオキ殿が領都サナールの薬師では手に負えない怪我や病気を負っていた女性の方々の治療を全面的に引き受けてくださり、この手紙を書いている時点でほぼ希望者全員の治療が完了した。
これ以上は領都の薬師との軋轢を生むため領主様とも協議した結果、各地の町や村を巡りたいとのナオキ殿の希望もありそれを認める事となった。
ついては、本人の希望で第三の町バグーダでまずは活動をされるとなったので斡旋ギルド領都本部ギルドマスターとして彼の仕事のサポートを頼みたい。
地元の薬師ギルドとの兼ね合いもあるだろうが出来るだけ彼の希望を聞いて欲しい。
また、彼は一定期間町での治療活動をした後は他の町へと移動を希望しているのでその際は何処へ向かうかの報告を受けるようにとの領主様からの要望もある。
お前の性格は知っているつもりだが、彼には余計なちょっかいは出さないようにきつく記しておく。
以上、領都本部ギルドマスター アルフより』
手紙を読んだアーリーは「ふうん」といった表情で手紙を置くと領主様からの手紙も封を切り内容に目を通していった。
「――概ね内容は了解したわ。
ただ、両方の手紙にもあったように薬師ギルドのギルドマスターとも一度話をしておいた方が後々で問題が起きにくいとは思うわ。
あ、もちろん町長にも同席して貰うから心配しないでいいわよ」
アーリーはそう言うと手帳を広げて都合の良い日の確認をし、控えていた受付嬢に薬師ギルドと町長への連絡を頼んでから下がらせた。
「仕事の話はこれくらいにして食事でもしながら少しお話をしましょうか」
アーリーの誘いにずっと側で控えていたリリスが反応する。
「お申し出はありがたいのですが、私達は先程この町に到着したばかりですのでまだ拠点とする宿も決めておりません。
ですのでそう言った申し出はまたの機会にお願いします」
リリスの言葉にアーリーは一瞬だけ(あなたには聞いてないわよ)との雰囲気を出したが僕の手前穏やかな表情を崩さずに「それは残念ですね。ではまたの機会にしましょう」と引き下がった。
「――意外とあっさり引き下がったわね」
斡旋ギルドから出て宿屋が立ち並ぶ区域に向かいながらリリスが話しかける。
「そうだね。
まあ、拠点が決まったら連絡をしてもらう為にまたギルドに行かないといけないし、暫くこの町で活動するなら何度かは会わないといけないからまだまだ油断は出来ないけどね」
そう話しながら旅の疲れを癒やす為、良さそうな宿を探した。
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