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第82話【少女の治療を終えて】
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魔力の注入は特に大きなトラブルもなく完了した。
「念のためにもう一度確認をさせてくださいね」
額から流れる汗を拭いながら少女に笑いかけた僕は状態確認の魔法を少女にかけて結果をみる。
「――うん。問題ないようだね。
それじゃあ発声練習からしてみようか?
いきなり大きな声を出すと治ったばかりの声帯がびっくりするから程々にしてみようか。
まずは『あー』から始めてみよう」
僕は少女をベッドに座らせて目線を合わせながら促す。
少女は一度両親の方を見たが両親が頷いたのを見ると小さな口を開けて声を発してみた。
「あ、あいうえお……」
小さく控えめにだが間違いなく少女の口から言葉が発せられていた。
「うん。大丈夫そうだね。
もう安心していいからゆっくりと好きな事を話してもいいよ」
僕の言葉に喉に手をあてながら「あー、あー」と自分の声を聞きながら話せる事を確認すると少女は両親の方を向いて「お父さん、お母さん」と小さいながらもはっきりとした発音で両親に語りかけた。
「……!? ロシュ!
言葉が……言葉が……」
大きく見開いた父親の目からは大粒の涙が、涙で目を開けられなくなった母親は両手で顔を隠して喜びを噛み締めた。
「お父さん……お母さん、わたし……わたし……」
もう一度ロシュがふたりを呼ぶ。その目には今にもこぼれ落ちそうな大粒の涙が浮かび肩を震わせていた。
「うわあぁぁぁん」
ロシュは突如として決壊した感情に涙を流しながら父親の胸に飛び込んで行った。
「おとうさん! わたし! わたし!」
ロシュは言葉にならない感情を父親に抱きしめられる事で消化していく。
「うわあぁぁぁん」
大きく泣きじゃくりながら父親の胸で泣くロシュを見ながらロギスが呟いた言葉はナオキに対する嫉妬や治してやれなかった不甲斐ない自分を貶める言葉ではなく、ただひとこと本心から出たものだった。
「良かった……本当に良かった」
父親に抱きしめられる娘を更に母親が覆いかぶさるように抱き合う光景にロギスの涙腺が緩む。
その光景を見ながら僕達はそっとその部屋を出て、皆が落ち着くまでふたりで話す事にした。
「でも、良かったわね。
ロシュちゃんが話せるようになって……」
「そうだね」
「ん? どうかしたの?
なんだかあまり嬉しそうじゃないみたいだけど……」
リリスは僕の顔を見て疑問を投げかけた。
「いや、ロシュちゃんの治療が無事に終わった事は凄くほっとしてるし、良かったと思ってるよ。
ただ……」
「ただ?」
「今のロギスさんの表情を見てるとあれが本当の『人を救いたい者の顔』なんだと感じてね」
「そんなの、ナオキだって今までに沢山の患者さんを治してきたじゃない。
それを恥じる事なんてないわよ」
「ありがとう、リリス。
君が側に居てくれて本当に良かったと思うよ」
僕達が話しているとロギスがこちらの部屋に入ってきて「ロシュの両親がお礼を言いたいそうだ」と告げた。
「――本当に、本当にありがとうございました。
もう二度と娘の声を聞く事は出来ないと思ってましたので、こんな日がまた来るとは思いませんでした」
ロシュの両親は深く頭を下げて僕達に感謝の言葉をかけた。
「ロシュちゃんが元気になられて良かったですね」
リリスが僕の横で笑顔で返す。
「ロギス様も今までありがとうございました。
初めて相談させて頂いてからもう3年も経ったというのに定期的に様子を見にきてくださっていたから今回のような出会いがあったのだと思います。
本当にありがとうございました」
ロシュの両親はロギスにも深くお辞儀をして感謝の言葉をかけた。
「いや、俺は何も出来なかったから……」
ロギスが両親からの感謝の言葉を素直に受け止められないでいると、その後ろからロシュが顔を出してロギスに言った。
「ロギスお兄ちゃん、今までずっとロシュの事を診ていてくれてありがとう。
……やっと自分で言えた」
ロシュはロギスにお礼を言うと恥ずかしいのか両親の後ろに隠れてしまう。
「ほらほら、ロシュ。
あなたを治療してくれた治癒士様にもちゃんとお礼を言わないと」
両親は後ろに隠れたロシュを自分達の前に呼んで僕の前に立たせた。
「あ、あのう……。
ロシュの声を治してくれてありがとう。
また、いっぱいお友達ともお話が出来るようになって凄く嬉しいです」
ロシュはそう言うと両親の真似をして僕達に頭を下げてお礼を言った。
「どういたしまして」
僕は微笑みながら少女に言った。
「本当にありがとうございました」
何度もお礼を言いながら見送るロシュの家族を後に全ての治療を終えた僕達は今回の擦り合わせと今後の話をする為に個室のある食事処に行く事になった。
「ロギスさん。どこかいいお店知りませんか?
僕達はバグーダのお店はまだよく知らないので教えて貰えると助かります」
「……そうだな。
食事処アジライなら話をするのに良いかと思う。
こちらもいくつか聞きたい事があるからそこでいいか?」
「良いもなにも僕達には分からないのでお任せしますよ」
僕はそう言ってロギスの薦めた店に行く事になった。
「念のためにもう一度確認をさせてくださいね」
額から流れる汗を拭いながら少女に笑いかけた僕は状態確認の魔法を少女にかけて結果をみる。
「――うん。問題ないようだね。
それじゃあ発声練習からしてみようか?
いきなり大きな声を出すと治ったばかりの声帯がびっくりするから程々にしてみようか。
まずは『あー』から始めてみよう」
僕は少女をベッドに座らせて目線を合わせながら促す。
少女は一度両親の方を見たが両親が頷いたのを見ると小さな口を開けて声を発してみた。
「あ、あいうえお……」
小さく控えめにだが間違いなく少女の口から言葉が発せられていた。
「うん。大丈夫そうだね。
もう安心していいからゆっくりと好きな事を話してもいいよ」
僕の言葉に喉に手をあてながら「あー、あー」と自分の声を聞きながら話せる事を確認すると少女は両親の方を向いて「お父さん、お母さん」と小さいながらもはっきりとした発音で両親に語りかけた。
「……!? ロシュ!
言葉が……言葉が……」
大きく見開いた父親の目からは大粒の涙が、涙で目を開けられなくなった母親は両手で顔を隠して喜びを噛み締めた。
「お父さん……お母さん、わたし……わたし……」
もう一度ロシュがふたりを呼ぶ。その目には今にもこぼれ落ちそうな大粒の涙が浮かび肩を震わせていた。
「うわあぁぁぁん」
ロシュは突如として決壊した感情に涙を流しながら父親の胸に飛び込んで行った。
「おとうさん! わたし! わたし!」
ロシュは言葉にならない感情を父親に抱きしめられる事で消化していく。
「うわあぁぁぁん」
大きく泣きじゃくりながら父親の胸で泣くロシュを見ながらロギスが呟いた言葉はナオキに対する嫉妬や治してやれなかった不甲斐ない自分を貶める言葉ではなく、ただひとこと本心から出たものだった。
「良かった……本当に良かった」
父親に抱きしめられる娘を更に母親が覆いかぶさるように抱き合う光景にロギスの涙腺が緩む。
その光景を見ながら僕達はそっとその部屋を出て、皆が落ち着くまでふたりで話す事にした。
「でも、良かったわね。
ロシュちゃんが話せるようになって……」
「そうだね」
「ん? どうかしたの?
なんだかあまり嬉しそうじゃないみたいだけど……」
リリスは僕の顔を見て疑問を投げかけた。
「いや、ロシュちゃんの治療が無事に終わった事は凄くほっとしてるし、良かったと思ってるよ。
ただ……」
「ただ?」
「今のロギスさんの表情を見てるとあれが本当の『人を救いたい者の顔』なんだと感じてね」
「そんなの、ナオキだって今までに沢山の患者さんを治してきたじゃない。
それを恥じる事なんてないわよ」
「ありがとう、リリス。
君が側に居てくれて本当に良かったと思うよ」
僕達が話しているとロギスがこちらの部屋に入ってきて「ロシュの両親がお礼を言いたいそうだ」と告げた。
「――本当に、本当にありがとうございました。
もう二度と娘の声を聞く事は出来ないと思ってましたので、こんな日がまた来るとは思いませんでした」
ロシュの両親は深く頭を下げて僕達に感謝の言葉をかけた。
「ロシュちゃんが元気になられて良かったですね」
リリスが僕の横で笑顔で返す。
「ロギス様も今までありがとうございました。
初めて相談させて頂いてからもう3年も経ったというのに定期的に様子を見にきてくださっていたから今回のような出会いがあったのだと思います。
本当にありがとうございました」
ロシュの両親はロギスにも深くお辞儀をして感謝の言葉をかけた。
「いや、俺は何も出来なかったから……」
ロギスが両親からの感謝の言葉を素直に受け止められないでいると、その後ろからロシュが顔を出してロギスに言った。
「ロギスお兄ちゃん、今までずっとロシュの事を診ていてくれてありがとう。
……やっと自分で言えた」
ロシュはロギスにお礼を言うと恥ずかしいのか両親の後ろに隠れてしまう。
「ほらほら、ロシュ。
あなたを治療してくれた治癒士様にもちゃんとお礼を言わないと」
両親は後ろに隠れたロシュを自分達の前に呼んで僕の前に立たせた。
「あ、あのう……。
ロシュの声を治してくれてありがとう。
また、いっぱいお友達ともお話が出来るようになって凄く嬉しいです」
ロシュはそう言うと両親の真似をして僕達に頭を下げてお礼を言った。
「どういたしまして」
僕は微笑みながら少女に言った。
「本当にありがとうございました」
何度もお礼を言いながら見送るロシュの家族を後に全ての治療を終えた僕達は今回の擦り合わせと今後の話をする為に個室のある食事処に行く事になった。
「ロギスさん。どこかいいお店知りませんか?
僕達はバグーダのお店はまだよく知らないので教えて貰えると助かります」
「……そうだな。
食事処アジライなら話をするのに良いかと思う。
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僕はそう言ってロギスの薦めた店に行く事になった。
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