女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
83 / 159

第83話【ロギスとの情報交換】

しおりを挟む
 僕達はロギスの薦める食事処アジライに行き、ロギスが店員に話をすると直ぐに個室に案内された。

「よく利用されてるのですか?」

 店員の態度にリリスが尋ねる。

「まあな。
 今回みたいに個室で打ち合わせを兼ねて食事をする事が幾度かあったから顔くらいは憶えてるのだろう」

 実際は薬師ギルドの部門長クラスの人間を憶えておかない店員が居る店では客商売としてはなかなか厳しいのが本音だったのだが、ロギスはそのあたりはあまり気にしない性格だった。

「まあ、座るといい。好き嫌いが無いなら適当に店のオススメを頼むがいいか?」

「大丈夫ですよ。それでお願いします」

 僕がそう言うとロギスは店員を呼び止めていくつかの注文をすると「入るときは声をかけてくれ」と頼んでおいた。

「まあ、なんだ。
 かなり前にだが、重要な話をしている時に料理を運んできた事があってな。
 口止めをするのに少々面倒な事になったんだ」

 ロギスはため息をついてそう話す。

「まあ、そんな事はどうでもいいか……。
 それより今日の治療に関しての話をするとしよう」

 ロギスは話題を変えて今日の事についての話を始めた。

「今日の君の治療を見て改めて女神様の祝福が如何に規格外かを思い知らされたよ。
 君たちが別室へ移った後でロシュの両親からいくつか話を聞いたのだが、治療の許可のひとつに患者の心臓付近に手を添えるとか、ロシュはまだ子供だったからそこまで問題にならなかったが成人女性の場合はそうはいかないのではないか?」

「そうですね。
 実際にその説明が一番のハードルだったりしますよ。
 何で胸なのか? とか、手を握るとかじゃ駄目なのか? とかね」

 僕は今までにあった事例をいくつか取り上げて説明した。

「……一応、ギルドの方でも最低限の話は聞いていたがこうして実際に話をしていると話以上に厄介な能力なんだな。
 はたから聞くと女神様の祝福を悪用して女性の胸を触りまくるとんでもない奴に聞こえるからな」

 ロギスは半分呆れた顔でそう僕に言った。

「ナオキは治療中にそういった感情は起きないようで、私が側で助手をしている時も一度たりともニヤけたりする事は無かったですよ」

 ロギスの言葉を聞いたリリスがすぐさま僕のフォローに入った。

「ああ、すまない。
 一般論を言っただけで俺がそう思ってる訳じゃないんだ。
 だが、現実問題で結構大変なんだろ?」

「まあ、大変か? と聞かれればそうだと答えるけど、僕の治療を待っている患者がいるならばそのくらいは弊害とは思ってないさ」

 僕は苦笑いを見せながら手をひらひらさせた。

「ところで、君は薬師ギルドの薬師部門長だと言ってたけど、まだ相当若いよね?
 何か特殊な調薬か出来るとか理由でもあるのかい?」

 僕は疑問に思っていた事を聞いてみた。

「まあ、若造なのは自分でも分かってるつもりだ。
 俺の父親が前任者だったんだがのギルマスに代わった時に世代交代とか言って若い者達にトップを譲るように指示されたんだ。
 薬師部門の皆はかなり反発したけど最後は俺が引き継ぐ事を条件に渋々だが了承したんだ」

「引き継ぐって言っても君は相当若かったんじゃないか?」

「まあな。成人して直ぐだったから当時は15歳だな。
 あれから5年経ったから今は20歳だがまだ若造と言われても仕方ないがな」

「結構無茶な要求をするギルマスなんだな」

 僕が素直な感想を漏らすとロギスは「まあ、いろいろあるんだよ」とはぐらかした。

「それじゃあこれからも患者の情報を教えて貰えるんですね」

「まあ……そうだな。
 但し、条件……と言うか頼みがあるんだが……」

「何でしょうか?
 無理な事でなければ相談にのりますが……」

「全てとは言わないが、少なくとも俺が担当していた患者の治療に行くときは同行させて欲しいんだ」

「それは問題ないですから大丈夫ですけどロギスさんも忙しいのでは無いのですか?」

 僕の言葉にロギスは頷いて「出来るだけ調整をつけて同行出来るようにする」と答えた。

「でしたら問題ないかと思いますし、その方が患者さんも安心するかもしれないですからね」

 僕が了承すると横でリリスが何か言いたそうな表情でこちらを見ていたが『はぁ』と小さくため息をついて視線を外した。

「では、そちらにお願いする患者の情報を取りまとめておくようにしよう。
 こちらの話はそれだけだがそちらから何か聞きたい事があるか?」

 ロギスの言葉に「うーん」と唸る僕だったが、ふと思い出したようにある人物について聞きたいと思っていた。

「そうだ、薬師ギルドの化粧品部門長のゼアルさんについて聞きたい事があったんです」

「ゼアルの事?
 あいつが『また』何かやったのか?」

 話がゼアル話になるとロギスは苦い顔になる。

「『また』とは以前、何かやらかしたのですか?」

「ああ、身内の恥をさらすようで気が進まないが、彼は化粧品の調合が上手くて部門長に抜擢されたんだが、お店にくる若い女の子達に声をかけまくる……言い方を替えればナンパをよくするようになったんだ。
 あとは、まだ化粧品が必要のない未成年に化粧を薦めたりと現ギルマスのお気に入りだからとかなり自由にやっているようだ」

「そちらもも世代交代で部門長にゼアルが抜擢されたのですか?」

「いや、化粧品部門は現ギルマスか着任してから新設したので彼が初代だな」

「そうですか。
 あっ、食事が出来上がったようですので先に頂きましょう。
 食べ終わったらもう少しだけ教えてください」

 と言った僕の言葉にロギスは頷きながら運ばれてきた料理をテーブルへと並べた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...