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第86話【案内所への訪問とナナリーの相談】
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「ロギスさんにあんな提案してたけど、やっぱりナオキがナナリーさんにそのまま話した方が簡単に決着がつきそうよね」
宿に帰ってからどうすれば自然に予定のシチュエーションに持っていけるかをふたりで検討していたが、考えば考える程に難しい事が鮮明になっていた。
「あの時は絶対に良い案だと思ったんだけどな。
まあ、とりあえず明日ナナリーさんと会ってみてそれとなくゼアルからの接触があるかを探ってみようか。
もし、本当に緊急性がある段階だったら仕方ないから僕がこっそり暴露して止めるしかないだろうね」
その日はそこまでしか決める事が出来ずに僕達はモヤモヤした気持ちのまま次の日を迎えた。
「――よし!
うだうだと考えていても話は進まないからとりあえず会いにいくぞ」
僕は朝食を手早くすませるとリリスと共に案内所へと向かった。
案内所の中を覗くといつもと同じように明るく働くナナリーの姿を見つけることが出来た。
「おはようございます。
おふたりとも今日はどのようなご要件でしょうか?」
案内所に入るとナナリーが僕達の側に来て用件を尋ねる。
「ナナリーさん、おはようございます。
先日紹介してもらった宿屋はいい所ですね。
紹介して頂いてありがとうございました。
少し聞きたい事があるのですがお時間は大丈夫ですか?」
「聞きたい事ですか?
そうですね、第二相談室が空いていたと思いますのでそちらへどうぞ。
ちょっと報告をしてから行きますので先に座っておいてくださいね」
ナナリーは笑顔で僕達を案内してから報告に向かった。
「ところで何を聞くつもり?」
相談室へ案内された後、リリスが僕に聞いてきた。
「とりあえず、最近の様子を聞いてみようと思う。
あとは知り合いに僕が必要な人が居ないかを聞いてみようと思ってるよ」
僕がリリスと話していると入口のドアがノックされてナナリーが入ってきた。
「おまたせしました。
私に聞きたい事とは何でしょうか?」
ナナリーが目の前のソファに腰かけるとにこりと微笑みながら僕達に目的を聞いた。
「うん。聞きたい事はいくつかあるんだけど、まず最近の調子はどうなのかな?ってね」
「調子ですか?
体調は悪くないし、仕事も順調ですからいい感じですね。
あっ、でも前に言ってた彼からの誘いが仕事中に何度かあって少しだけ困ってるかな。
仕事と休暇の曖昧なひとはどんなに格好いい人でも減点ですよね。
そうは思いませんか?リリスさん」
突然話を振られたリリスは「はひ」と変な返しをしながらコクコクと頷いた。
「それは大変ですね。
仕事に支障があるようなら案内所の責任者に相談するか、お母様に相談すればいいかもしれないですよ」
「そうですね。ですが、まだそこまで酷くありませんのでその都度お話をさせて貰ってます」
「分かりました。
もし、僕達の力が必要ならばいつでも言ってくださいね」
「ありがとうございます。
それで、お話はそれだけでは無いですよね?」
ナナリーの言葉に僕は頷き、用意していたもう一つの案件を話し始めた。
「先日から薬師ギルドのロギスさんに手伝ってもらい患者の治療にあたっているのですが、薬師ギルドでも把握しきれていない患者が居る可能性があるのでこちらの案内所やナナリーさん個人で知り合いに治療が必要な人がいるかもしれないと思って聞いてみたかったんです」
とりあえず本命の話は済んだので体裁づくりに用意しておいた予備の話題を振った僕にナナリーは「そうですね」と言って考え出した。
「正直、ナオキ様に頼まなければ駄目な程の人は思い当たらないのですけど、出来るならば一度会って欲しい人なら居ます」
「会って欲しい人?」
「はい。その人は『リノ』と言う私と同い年の娘なんですけど数年前から顔にソバカスがたくさん出てきて一時期男の子達からからかわれていました。
その事もあって塞ぎ込んでいたのですが、ある日突然ソバカスのない顔で現れたのでびっくりして聞いたら『お化粧で隠している』と教えてくれたんです」
「確かにそうする事によってコンプレックスが無くなるならば良い選択をしたのではないのかな?」
「はい。確かに彼女の表情は明るくなったのですが……。
リリスさんならば分かってくれると思いますが、本来お化粧は人前に出る時に自らの気持ちを切り替えるためにするもので、いくら負担の少ない素材を使っていてもやはりお化粧をしたままと言うのはあまり薦められないですよね」
「そうね。私が化粧をしていた時も受付嬢としてカウンターに立つ時だけだったし、仕事が終われば一度綺麗に洗い流してましたね」
ナナリーの言葉をリリスが肯定する。
「ですが、彼女はお化粧を落としたソバカスだらけの顔が嫌いで寝る時もずっとお化粧をしている様なんです。
私もアザの事でずっと悩んでいましたが、服装に気をつける事で他人に見せなくて済んでいたのですが彼女はそうはいかないのでお化粧で隠すしかなかったのでしょう。
ナオキ様の治癒魔法でソバカスが消えるかは分かりませんが、私のアザを消せたのですからもしかしたら彼女のコンプレックスを消してあげられるかもしれないと思うのですが、どうでしょうか?」
僕は深く考えるまでもなくナナリーに即答していた。
「良いですよ。
上手く治療出来るかは分かりませんが、一度お会いして話を伺ってみたいですので都合を調整してください」
「ありがとうございます。
今日にでも彼女に伝えておきますので宜しくお願いしますね」
ナナリーの事を解決する手段を見つけるために彼女に会いに来たが、いつの間にか別の患者を診る話になっていたのは予想をしていなかった。
宿に帰ってからどうすれば自然に予定のシチュエーションに持っていけるかをふたりで検討していたが、考えば考える程に難しい事が鮮明になっていた。
「あの時は絶対に良い案だと思ったんだけどな。
まあ、とりあえず明日ナナリーさんと会ってみてそれとなくゼアルからの接触があるかを探ってみようか。
もし、本当に緊急性がある段階だったら仕方ないから僕がこっそり暴露して止めるしかないだろうね」
その日はそこまでしか決める事が出来ずに僕達はモヤモヤした気持ちのまま次の日を迎えた。
「――よし!
うだうだと考えていても話は進まないからとりあえず会いにいくぞ」
僕は朝食を手早くすませるとリリスと共に案内所へと向かった。
案内所の中を覗くといつもと同じように明るく働くナナリーの姿を見つけることが出来た。
「おはようございます。
おふたりとも今日はどのようなご要件でしょうか?」
案内所に入るとナナリーが僕達の側に来て用件を尋ねる。
「ナナリーさん、おはようございます。
先日紹介してもらった宿屋はいい所ですね。
紹介して頂いてありがとうございました。
少し聞きたい事があるのですがお時間は大丈夫ですか?」
「聞きたい事ですか?
そうですね、第二相談室が空いていたと思いますのでそちらへどうぞ。
ちょっと報告をしてから行きますので先に座っておいてくださいね」
ナナリーは笑顔で僕達を案内してから報告に向かった。
「ところで何を聞くつもり?」
相談室へ案内された後、リリスが僕に聞いてきた。
「とりあえず、最近の様子を聞いてみようと思う。
あとは知り合いに僕が必要な人が居ないかを聞いてみようと思ってるよ」
僕がリリスと話していると入口のドアがノックされてナナリーが入ってきた。
「おまたせしました。
私に聞きたい事とは何でしょうか?」
ナナリーが目の前のソファに腰かけるとにこりと微笑みながら僕達に目的を聞いた。
「うん。聞きたい事はいくつかあるんだけど、まず最近の調子はどうなのかな?ってね」
「調子ですか?
体調は悪くないし、仕事も順調ですからいい感じですね。
あっ、でも前に言ってた彼からの誘いが仕事中に何度かあって少しだけ困ってるかな。
仕事と休暇の曖昧なひとはどんなに格好いい人でも減点ですよね。
そうは思いませんか?リリスさん」
突然話を振られたリリスは「はひ」と変な返しをしながらコクコクと頷いた。
「それは大変ですね。
仕事に支障があるようなら案内所の責任者に相談するか、お母様に相談すればいいかもしれないですよ」
「そうですね。ですが、まだそこまで酷くありませんのでその都度お話をさせて貰ってます」
「分かりました。
もし、僕達の力が必要ならばいつでも言ってくださいね」
「ありがとうございます。
それで、お話はそれだけでは無いですよね?」
ナナリーの言葉に僕は頷き、用意していたもう一つの案件を話し始めた。
「先日から薬師ギルドのロギスさんに手伝ってもらい患者の治療にあたっているのですが、薬師ギルドでも把握しきれていない患者が居る可能性があるのでこちらの案内所やナナリーさん個人で知り合いに治療が必要な人がいるかもしれないと思って聞いてみたかったんです」
とりあえず本命の話は済んだので体裁づくりに用意しておいた予備の話題を振った僕にナナリーは「そうですね」と言って考え出した。
「正直、ナオキ様に頼まなければ駄目な程の人は思い当たらないのですけど、出来るならば一度会って欲しい人なら居ます」
「会って欲しい人?」
「はい。その人は『リノ』と言う私と同い年の娘なんですけど数年前から顔にソバカスがたくさん出てきて一時期男の子達からからかわれていました。
その事もあって塞ぎ込んでいたのですが、ある日突然ソバカスのない顔で現れたのでびっくりして聞いたら『お化粧で隠している』と教えてくれたんです」
「確かにそうする事によってコンプレックスが無くなるならば良い選択をしたのではないのかな?」
「はい。確かに彼女の表情は明るくなったのですが……。
リリスさんならば分かってくれると思いますが、本来お化粧は人前に出る時に自らの気持ちを切り替えるためにするもので、いくら負担の少ない素材を使っていてもやはりお化粧をしたままと言うのはあまり薦められないですよね」
「そうね。私が化粧をしていた時も受付嬢としてカウンターに立つ時だけだったし、仕事が終われば一度綺麗に洗い流してましたね」
ナナリーの言葉をリリスが肯定する。
「ですが、彼女はお化粧を落としたソバカスだらけの顔が嫌いで寝る時もずっとお化粧をしている様なんです。
私もアザの事でずっと悩んでいましたが、服装に気をつける事で他人に見せなくて済んでいたのですが彼女はそうはいかないのでお化粧で隠すしかなかったのでしょう。
ナオキ様の治癒魔法でソバカスが消えるかは分かりませんが、私のアザを消せたのですからもしかしたら彼女のコンプレックスを消してあげられるかもしれないと思うのですが、どうでしょうか?」
僕は深く考えるまでもなくナナリーに即答していた。
「良いですよ。
上手く治療出来るかは分かりませんが、一度お会いして話を伺ってみたいですので都合を調整してください」
「ありがとうございます。
今日にでも彼女に伝えておきますので宜しくお願いしますね」
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