女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
95 / 159

第95話【リリスの臨時受付嬢講義③】

しおりを挟む
「はい、今日の受付業務は終了よ。
 これからそこに山積みになっている書類を片付けてから受付嬢基礎訓練のおさらいをするわよ」

 リリスの言葉にクレナは顔を引きつらせながら「はい……」と頷いた。

「……よし、書類関係はこれで終わり!」

 リリスは残っていた書類を片付けるとクレナの書いた書類に目を通す。

「クレナさん、何ですかこの書類の書き方は?
 こんな書き方じゃ管理事務部にまわした時に内容不備ですぐに返されるわよ!
 いい? ここはこう書いて、この場合もこうすればわかり易いでしょ?」

 リリスはクレナの書類不備を指摘しながら手早く修正していく。

「本来ならば私が直すんじゃなくてあなたがするべきだけど、この後の事を考えると間に合わないから今日だけはやっておくわ。
 但し、明日からは自分の書類不備は自分で修正すること。いいわね」

「は、はい。すみません」

 クレナは言われた事を確認し、メモを取りながら覚えていく。

「じゃあ、これから基本礼節の指導に入るわよ。
 これがしっかり出来て始めて受付嬢として認められる事になるのですからね。
 まず、あなたはギルドに来てくれる利用者さまに対しての言葉遣いが良くありません。
 利用者様はお友達ではないですのでたとえ何度も来られた常連でもまずは丁寧な受け答えをするように。
 話の流れで多少の砕けた話し方になる事は良いですが、節度を守って良い印象を与える行動が必要になります」

 その後もリリスはクレナに利用者様への声掛けのタイミングや話す内容、言葉遣いからお辞儀の仕方まで何度も繰り返して教え込んだ。

「今日はもうこれくらいで勘弁して欲しいです……」

 業務が終わってからたっぷり3時間は基礎学習に費やしたクレナはへとへとになりながらリリスに懇願した。

「そうね。とりあえず今日はこのくらいにしておきましょうか。
 私もアーリーさんとの打ち合わせがあるのでさっさと終わらせなくてはならないから片付けが終わったら帰っても良いわよ……って思ったけれどそんなに疲れてたら明日の業務に差し支えるわね」

 リリスは少し迷ったが、目的の達成を少しでも早めるために彼女にドーピングを施す事を決めた。

「……今日は私が泊まっている宿に来なさい。
 温泉が良いから疲れも取れるでしょうし、もう一つスペシャルな疲労回復を施してあげるから」

 リリスの有無を言わさない圧力にクレナは不安になりながらも「はい」と頷くしか無かった。

「じゃあ私はアーリー様と打ち合わせをしてくるので30分ほど今日のおさらいをして待っててね」

 リリスはそう言うとアーリーの待つ執務室へと向かった。

 ――コンコン。

「リリスです。今日の報告と依頼の契約に来ました」

「どうぞ、開いてるわよ」

 リリスがドアをノックすると中からアーリーの声が返ってきた。

「失礼します」

 リリスがドアを開けて中へ入るとアーリーが仕事机の上から書類を持って応接セットのテーブルへと向かうところだった。

「お疲れ様。どう? 彼女は。
 何とか使えるレベルになりそうかしら?」

「まだ、初日ですから……。
 暫くかかるかもしれないですけど引き受けたからには何とかして見せますよ」

「それは頼もしい発言ね。
 何か私に頼みたい事はあるかしら?
 出来る範囲でだけど協力はするわよ。
 それと、この書類が契約書でこちらが報酬を書いたものよ」

 アーリーはそう告げながら書類をリリスの前に差し出す。

 リリスはそれを確認しながら「では今日のところはひとつだけ」と言い右手の人差し指をピッと立てた。

「研修期間中はクレナさんは私が泊まっている宿屋に部屋を取って貰います。
 そうすれば仕事から帰ってからも指導は出来るし、万が一倒れてもナオキが居ますので直ぐに回復出来るでしょうから」

 リリスはそう告げるとアーリーの許可を求めた。

「まあ良いでしょう。
 彼女はギルドの女子寮に住んでいるから連絡を入れておけば問題ないわ。
 何度も言うようだけど彼女が使えるようにならないとギルドも困るから頼むわね。
 早く仕事を任せられるようになったら仕事は完了で良いからね」

「それって、使えるようにならなかったらずっと終わらないって事じゃ無いですよね?」

「最低限のレベルに達していなければ悪いけどそうなるかもしれないわね。
 だけど、あなたなら大丈夫でしょ?」

「……出来るだけ善処はしますけど保証はできませんよ。
 そして、ナオキの方が先に片付いたら研修が途中でもキャンセルさせて貰いますからね」

 リリスはそう告げると席を立ってクレナの元に向かった。

「――お待たせ。じゃあ行きましょうか」

「え? 何処へですか?」

「あなたが今日から研修の終わりまで寝泊まりする宿へよ」

 リリスはクレナにそう告げると更衣室へと向かい、制服から着替えて戸惑うクレナの背中を押しながら宿屋へと向かった。

「ここが私達の泊まっている宿よ。
 温泉が凄く良くて疲れた身体に良く効くからしっかりと疲れを癒やして明日に備えなさいね」

 宿に着くとリリスはテキパキとクレナの宿泊手続きを行う。

「え? ちょっと私なにも聞いて無いんですけど……」

 クレナは当然のように戸惑いながらリリスに説明を求める。

「あなたの身柄は研修が終わるまで私が監視管理をする事に決まったから連れてきたの。
 ギルドマスターのアーリー様の許可も取ってあるし、あなたの住んでいる女子寮にも連絡してもらうようにお願いしてあるから心配しなくて大丈夫よ」

 次々と自分の意思に反して研修計画が決まっていく現状にクレナは呆然と成り行きに任せるしか無かった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...