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第110話【出発日前日の手紙と突然の訪問者】
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ガリウムとの話し合いにより出発は明日の朝食後になる事が決まった。
僕達は契約をした足でガリウムの商隊が泊まっている宿へ向かい約束どおりに穀物の半分を収納魔法に入れ、保証金を手渡した。
「では、明日の朝の2番鐘が鳴る頃にここに来ますのでよろしくお願いしますね」
「ああ、こっちも今から追加の商品の仕入れをして間に合うようにしておく。
ああ、心配せずとも君たちふたりを乗せる馬車には十分な空きを作っておくからの」
そう言ってガリウムは荷台の空いた馬車を走らせ市場へと向かって行った。
「それじゃあ僕達も宿に……」と言いかけて僕は案内所のナナリーに挨拶をするのを忘れていた事に気がついた。
「そういえばナナリーさんに出発の挨拶をしていなかったよね。
アーリーさんに伝えているから大丈夫だと思うけどお世話になった事は間違いないし、やっぱりきちんと話をしておいた方が良いよね」
僕がリリスにそう聞くと「うーん……。私が言うのもなんだけど最後に直接あって別れを伝えるのが本当に彼女の為になるのかな……ってちょっとだけ思ったりもするのよね」と返してきた。
「どういうこと?」
「……彼女はナオキの事がまだ好きなんだと思うの。
確かにあなたがきちんと断りをいれて彼女も表向きは納得してくれたんだけど人を好きになるってそんな簡単に諦められるものじゃないのよ。
少なくとも私が彼女の立場だったらこのタイミングで別れの言葉を伝えられたらあなたに抱きついて泣きじゃくると思うわ」
リリスはナナリーの気持ちを自分に投影させて話をしてくれた。
「うーん。でも、仕事を一緒にした人に挨拶もせずに他所に行くことは不義理なような気がして僕はそっちの方が心残りになると思うんだけど……」
どうも前世の名残りが頭をよぎってそういった考え方をしてしまう自分に苦笑しながらどうしたら納得出来るかを考えた結果、直接会わずに手紙を届けてもらう事に決めた。
宿に戻り僕はリリスと話し合いながらナナリーにお礼と僕達のこれからの行き先と仕事に関するアドバイスを書き綴った手紙を宿の小間使いに手数料を渡して案内所に届けて貰った。
「まあ、あの娘ならばすぐに自分のやりたい仕事について頑張る事でしょう。
それよりも私達も明日から約1ヶ月間の長旅になるのよ、ゆっくり休めるのも暫くは出来ないかもしれないし今日は早めに休みましょう」
「そうだね。じゃあ夕食後にいつもの治療をして休むとしようか」
僕の言葉にリリスは頬を赤らめながら頷くと部屋の片付けを手早く済ませていった。
――片付けも終わり、少し早めの夕食にするため1階の食堂へと足を運んだ僕達のテーブルに同席するナナリーの姿があった。
「ナナリーさん。どうして君がここに居るのか教えて貰えませんか?」
僕は自分の夕食に手をつけながらも隣でパクパクと同じく夕食を食べるナナリーに聞いた。
「どうしても何もここは宿屋兼食堂ですよ。
私が食事に来てもおかしくは無いと思うんですけど……」
ナナリーはしれっとそう言うと「すみませーん。追加をお願いします」と給仕の女性を呼んで飲み物を追加していた。
「……手紙は読んで貰えたんですよね?」
僕の質問にナナリーはちらりと僕の方を見ると運ばれてきた飲み物をぐいっと一気に煽ってから言った。
「もちろん読ませて貰ったわよ。
読ませて貰ったから私がここに居る訳でしょ?」
ナナリーは顔を赤くして吐き捨てるように僕に言葉で噛み付いた。
「あんな手紙を一通寄越しただけで会わずに町を出て行くなんて酷くないですか?」
ナナリーはそう言いながら涙目になっていた。
「そうなるから手紙にしたんだけど、きちんと向き合って別れを伝えた方が良かったかな?」
僕が次の言葉につまっているとリリスが静かに口を挟んできた。
「ナナリーさん。
ナオキはあなたのためを思って手紙にしておいたのは分かってるわよね?
あなたがナオキをしたっているのは知っているけど別れが辛いのはあなただけじゃないの。
それに手紙に書いてあったように私達は明日には王都へ向けて出発するから今日は早めに休む予定なの。
ここまで押しかけて来たからには話があるのでしょうけど手早く最小限で済ませて貰うわよ」
どうやらリリスもナナリーをそのまま追い返すつもりは無いようなので僕も話を聞くつもりで手早く夕食を終えた。
「で、どんな話があるのかしら」
ナナリーと共に部屋に戻った僕達は荷物の整理を終えて備え付けの家具しか無くなった部屋で椅子とベッドに分かれて座り彼女の話を待った。
「リリスさん。無茶なお願いだとは分かってますが、少しの間だけで良いのでナオキさんとふたりだけで話をさせて貰えませんか?」
ナナリーはリリスに向かってそうお願いをする。
「ふたりだけで?」
リリスはナナリーが何を考えて何をしたいがが予測出来たので全面的に否定しようとしたが、彼女の考えが分かるが為に自分と重ねてしまい思わず肯定してしまった。
「本当に少しだけよ。そうね、30分ほど外してあげるわ。
さっきも言ったけど明日から長旅になるんだから早く休ませて貰うわよ。
ナオキも話を聞いたら『手早くしてね』」
リリスはそう言いながら『きちんとケリをつけなさい』とばかりに僕に目配せをしてから部屋を出て行った。
僕達は契約をした足でガリウムの商隊が泊まっている宿へ向かい約束どおりに穀物の半分を収納魔法に入れ、保証金を手渡した。
「では、明日の朝の2番鐘が鳴る頃にここに来ますのでよろしくお願いしますね」
「ああ、こっちも今から追加の商品の仕入れをして間に合うようにしておく。
ああ、心配せずとも君たちふたりを乗せる馬車には十分な空きを作っておくからの」
そう言ってガリウムは荷台の空いた馬車を走らせ市場へと向かって行った。
「それじゃあ僕達も宿に……」と言いかけて僕は案内所のナナリーに挨拶をするのを忘れていた事に気がついた。
「そういえばナナリーさんに出発の挨拶をしていなかったよね。
アーリーさんに伝えているから大丈夫だと思うけどお世話になった事は間違いないし、やっぱりきちんと話をしておいた方が良いよね」
僕がリリスにそう聞くと「うーん……。私が言うのもなんだけど最後に直接あって別れを伝えるのが本当に彼女の為になるのかな……ってちょっとだけ思ったりもするのよね」と返してきた。
「どういうこと?」
「……彼女はナオキの事がまだ好きなんだと思うの。
確かにあなたがきちんと断りをいれて彼女も表向きは納得してくれたんだけど人を好きになるってそんな簡単に諦められるものじゃないのよ。
少なくとも私が彼女の立場だったらこのタイミングで別れの言葉を伝えられたらあなたに抱きついて泣きじゃくると思うわ」
リリスはナナリーの気持ちを自分に投影させて話をしてくれた。
「うーん。でも、仕事を一緒にした人に挨拶もせずに他所に行くことは不義理なような気がして僕はそっちの方が心残りになると思うんだけど……」
どうも前世の名残りが頭をよぎってそういった考え方をしてしまう自分に苦笑しながらどうしたら納得出来るかを考えた結果、直接会わずに手紙を届けてもらう事に決めた。
宿に戻り僕はリリスと話し合いながらナナリーにお礼と僕達のこれからの行き先と仕事に関するアドバイスを書き綴った手紙を宿の小間使いに手数料を渡して案内所に届けて貰った。
「まあ、あの娘ならばすぐに自分のやりたい仕事について頑張る事でしょう。
それよりも私達も明日から約1ヶ月間の長旅になるのよ、ゆっくり休めるのも暫くは出来ないかもしれないし今日は早めに休みましょう」
「そうだね。じゃあ夕食後にいつもの治療をして休むとしようか」
僕の言葉にリリスは頬を赤らめながら頷くと部屋の片付けを手早く済ませていった。
――片付けも終わり、少し早めの夕食にするため1階の食堂へと足を運んだ僕達のテーブルに同席するナナリーの姿があった。
「ナナリーさん。どうして君がここに居るのか教えて貰えませんか?」
僕は自分の夕食に手をつけながらも隣でパクパクと同じく夕食を食べるナナリーに聞いた。
「どうしても何もここは宿屋兼食堂ですよ。
私が食事に来てもおかしくは無いと思うんですけど……」
ナナリーはしれっとそう言うと「すみませーん。追加をお願いします」と給仕の女性を呼んで飲み物を追加していた。
「……手紙は読んで貰えたんですよね?」
僕の質問にナナリーはちらりと僕の方を見ると運ばれてきた飲み物をぐいっと一気に煽ってから言った。
「もちろん読ませて貰ったわよ。
読ませて貰ったから私がここに居る訳でしょ?」
ナナリーは顔を赤くして吐き捨てるように僕に言葉で噛み付いた。
「あんな手紙を一通寄越しただけで会わずに町を出て行くなんて酷くないですか?」
ナナリーはそう言いながら涙目になっていた。
「そうなるから手紙にしたんだけど、きちんと向き合って別れを伝えた方が良かったかな?」
僕が次の言葉につまっているとリリスが静かに口を挟んできた。
「ナナリーさん。
ナオキはあなたのためを思って手紙にしておいたのは分かってるわよね?
あなたがナオキをしたっているのは知っているけど別れが辛いのはあなただけじゃないの。
それに手紙に書いてあったように私達は明日には王都へ向けて出発するから今日は早めに休む予定なの。
ここまで押しかけて来たからには話があるのでしょうけど手早く最小限で済ませて貰うわよ」
どうやらリリスもナナリーをそのまま追い返すつもりは無いようなので僕も話を聞くつもりで手早く夕食を終えた。
「で、どんな話があるのかしら」
ナナリーと共に部屋に戻った僕達は荷物の整理を終えて備え付けの家具しか無くなった部屋で椅子とベッドに分かれて座り彼女の話を待った。
「リリスさん。無茶なお願いだとは分かってますが、少しの間だけで良いのでナオキさんとふたりだけで話をさせて貰えませんか?」
ナナリーはリリスに向かってそうお願いをする。
「ふたりだけで?」
リリスはナナリーが何を考えて何をしたいがが予測出来たので全面的に否定しようとしたが、彼女の考えが分かるが為に自分と重ねてしまい思わず肯定してしまった。
「本当に少しだけよ。そうね、30分ほど外してあげるわ。
さっきも言ったけど明日から長旅になるんだから早く休ませて貰うわよ。
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