140 / 159
第140話【領都へ向かう馬車の中で】
しおりを挟む
「――おはようございます」
次の日の朝、少し早めに起きた僕達は時間に遅れないようにと1階へと降りて、先に宿の精算を済ませてから朝食を注文していた。
「ねえ、ナナリー。確か昨日は集合場所に集まるって話してなかったかな?
どうしてここに居て一緒に食事をしてるのか教えてくれない?」
「どうしてかと言われると『私もこの宿に泊まったから』と答えるしかないですね」
どうやらナナリーはあの後ギルドで書類の処理をしてからもう一度宿に来て泊まったらしい。
「実は、帰ったらお母様に『ナオキ様の部屋に泊めて貰いなさい』と言われて家を追い出されてしまったのです。
で仕方なく宿まで来たのですが、さすがにおふたりが寝ている部屋に押し入るのは気が引けて仕方なく自分のお小遣いで一番安い部屋を借りたんです。
まったく酷いと思いません?」
「ああ、あの人ならばやりかねないな」
「そうね」
僕達はアーリーギルドマスターの顔を思い浮かべながら苦笑いをした。
「――それじゃあ待ちあわせの噴水広場に行きましょうか。
ってあれ? ナナリーは?」
リリスがそう言うと部屋の奥から何やら重そうなリュックをよたよたとしながら背負ったナナリーが現れた。
「ちょっと待ってくださいよぉ」
「うわぁ……。
なんか凄い量の荷物だね。
これ全部持っていくつもりなの?」
リリスがあ然とした表情でナナリーの荷物に目をやる。
「いくらなんでもそれは荷物が多すぎないか?」
僕もその量を見て思わずそう言葉が出る。
「そうなんですけど、暫く向こうに滞在する事になりそうなので、どうしても荷物が多くなっちゃうんです」
「ま、まあ女性は荷物か多くなるのは仕方ないのかな?
とりあえず、サナールに着くまでは僕のスキルで運んであげるよ」
僕はそう言いながらナナリーの荷物を収納魔法に入れていく。
「――何なんですかそのあり得ない魔法は!?」
あ然とするナナリーに「そういえば話した事無かったな」と言いながら「治癒魔法と一緒に神様から授かった能力なんだ。完全に隠している訳じゃないけど大ぴらに公言してもいないから『そんなものなんだ』くらいにとらえてくれたら助かるな」と笑って誤魔化した。
「そう言えばナオキ。治癒魔法は上手くいかないけど収納魔法には影響なかったの?」
リリスが今さらながらにそう聞いてきたので僕が答える。
「そうだね。治癒魔法も魔力注入が不安定なだけで発動自体は出来ていたからね。
同じ事で収納魔法も出し入れが不安定だったけど前よりは安定してきたし治癒魔法ほど魔力操作が必要ないみたいで今は特に問題なく使えるみたいだね」
「それなら良かったわ。
もし、ナオキが収納したまま死んだらその荷物はどうなるの?」
「どうもならないだろうね。
多分だけど異空間に入ったまま二度と取り出せなくなるだけだと思うよ」
「まあ、そうなるわよね……」
僕達の会話について行けないナナリーが困った表情で「それよりもそろそろ時間が……」と言い出したので僕達は慌てて宿を出た。
「――お待たせしました」
僕達は予定の時間ギリギリに集合場所へとたどり着いた。
そこには既に馬車が待機しており、僕達を待っていたのであろう御者や護衛の面々がこれからの予定の確認をしていた。
「時間どおりですね。
ではサナールへ向けて出発しましょうか」
「宜しくお願いします」
――こうして僕達に加えてナナリーも一緒に馬車へと乗り込み温泉の町バグーダを出発する事になった。
* * *
「領都サナールまでは約5日程の旅ですが、ナナリーさんはサナールへは行かれた事はあるんですか?」
今回の旅は王家から斡旋された馬車隊で身の回りの事や安全に気を使う事が無いため話をするか眠るしかやる事が無かったので必然的にナナリーの話を聞くことが多くなった。
「そうですね。小さい頃に何度か行った事はありますけど最近はバグーダで習い事や仕事をしてるので訪れてないですね。
案内書を訪れる旅人に話を聞くとかなり発展している様子ですので行くのが楽しみです」
ナナリーはそう言って笑った。
「そう言えばナナリーさんはかなりの荷物を持って行ってましたけど、領都で何をするのかは聞いてるんですか?」
「それが……。
お母様からは『領都斡旋ギルドマスターに手紙を渡して指示を受けなさい』と言われたのと『暫くかかると思うから泊まりの準備もして行きなさい』とも言われました」
「ふーん。領都でしばらく研修でもするのかな?」
「どうなんでしょうね。そのあたりの事はお母様は何も教えてくれませんでしたから……」
ナナリーはそう答えると話を僕達の事に切り替えてきた。
「それでおふたりはカルカルへ戻られたら何をされる予定なんですか?
今回の叙爵で無理をする必要が無くなったと思うんですけどやっぱり治癒士として薬師との調整をしながら患者を診ていくのですか?
あっ、もちろんナオキ様の調子が良くなってからの話ですけど……」
「うーん。今の時点ではなんとも言えないかな……。
僕も出来ればそうありたいと思ってるけど名誉爵位とはいえ貴族の仲間入りをした僕のもとに治療を受けに来てくれるか心配ではあるんだよね。
まあ、でも何かしら町に貢献出来る事を考えていきたいと思ってるよ」
隣で僕の肩にもたれかかりながら半分眠っているリリスを気づかいながらそう答えた。
「それは良い考えですね。私も何かお手伝いが出来たらと思います」
僕の答えに満足したナナリーは僕の前でニコリと微笑んでそう言った。
そんな話をしながら馬車は領都サナールへ向かって順調に進んでいた。
次の日の朝、少し早めに起きた僕達は時間に遅れないようにと1階へと降りて、先に宿の精算を済ませてから朝食を注文していた。
「ねえ、ナナリー。確か昨日は集合場所に集まるって話してなかったかな?
どうしてここに居て一緒に食事をしてるのか教えてくれない?」
「どうしてかと言われると『私もこの宿に泊まったから』と答えるしかないですね」
どうやらナナリーはあの後ギルドで書類の処理をしてからもう一度宿に来て泊まったらしい。
「実は、帰ったらお母様に『ナオキ様の部屋に泊めて貰いなさい』と言われて家を追い出されてしまったのです。
で仕方なく宿まで来たのですが、さすがにおふたりが寝ている部屋に押し入るのは気が引けて仕方なく自分のお小遣いで一番安い部屋を借りたんです。
まったく酷いと思いません?」
「ああ、あの人ならばやりかねないな」
「そうね」
僕達はアーリーギルドマスターの顔を思い浮かべながら苦笑いをした。
「――それじゃあ待ちあわせの噴水広場に行きましょうか。
ってあれ? ナナリーは?」
リリスがそう言うと部屋の奥から何やら重そうなリュックをよたよたとしながら背負ったナナリーが現れた。
「ちょっと待ってくださいよぉ」
「うわぁ……。
なんか凄い量の荷物だね。
これ全部持っていくつもりなの?」
リリスがあ然とした表情でナナリーの荷物に目をやる。
「いくらなんでもそれは荷物が多すぎないか?」
僕もその量を見て思わずそう言葉が出る。
「そうなんですけど、暫く向こうに滞在する事になりそうなので、どうしても荷物が多くなっちゃうんです」
「ま、まあ女性は荷物か多くなるのは仕方ないのかな?
とりあえず、サナールに着くまでは僕のスキルで運んであげるよ」
僕はそう言いながらナナリーの荷物を収納魔法に入れていく。
「――何なんですかそのあり得ない魔法は!?」
あ然とするナナリーに「そういえば話した事無かったな」と言いながら「治癒魔法と一緒に神様から授かった能力なんだ。完全に隠している訳じゃないけど大ぴらに公言してもいないから『そんなものなんだ』くらいにとらえてくれたら助かるな」と笑って誤魔化した。
「そう言えばナオキ。治癒魔法は上手くいかないけど収納魔法には影響なかったの?」
リリスが今さらながらにそう聞いてきたので僕が答える。
「そうだね。治癒魔法も魔力注入が不安定なだけで発動自体は出来ていたからね。
同じ事で収納魔法も出し入れが不安定だったけど前よりは安定してきたし治癒魔法ほど魔力操作が必要ないみたいで今は特に問題なく使えるみたいだね」
「それなら良かったわ。
もし、ナオキが収納したまま死んだらその荷物はどうなるの?」
「どうもならないだろうね。
多分だけど異空間に入ったまま二度と取り出せなくなるだけだと思うよ」
「まあ、そうなるわよね……」
僕達の会話について行けないナナリーが困った表情で「それよりもそろそろ時間が……」と言い出したので僕達は慌てて宿を出た。
「――お待たせしました」
僕達は予定の時間ギリギリに集合場所へとたどり着いた。
そこには既に馬車が待機しており、僕達を待っていたのであろう御者や護衛の面々がこれからの予定の確認をしていた。
「時間どおりですね。
ではサナールへ向けて出発しましょうか」
「宜しくお願いします」
――こうして僕達に加えてナナリーも一緒に馬車へと乗り込み温泉の町バグーダを出発する事になった。
* * *
「領都サナールまでは約5日程の旅ですが、ナナリーさんはサナールへは行かれた事はあるんですか?」
今回の旅は王家から斡旋された馬車隊で身の回りの事や安全に気を使う事が無いため話をするか眠るしかやる事が無かったので必然的にナナリーの話を聞くことが多くなった。
「そうですね。小さい頃に何度か行った事はありますけど最近はバグーダで習い事や仕事をしてるので訪れてないですね。
案内書を訪れる旅人に話を聞くとかなり発展している様子ですので行くのが楽しみです」
ナナリーはそう言って笑った。
「そう言えばナナリーさんはかなりの荷物を持って行ってましたけど、領都で何をするのかは聞いてるんですか?」
「それが……。
お母様からは『領都斡旋ギルドマスターに手紙を渡して指示を受けなさい』と言われたのと『暫くかかると思うから泊まりの準備もして行きなさい』とも言われました」
「ふーん。領都でしばらく研修でもするのかな?」
「どうなんでしょうね。そのあたりの事はお母様は何も教えてくれませんでしたから……」
ナナリーはそう答えると話を僕達の事に切り替えてきた。
「それでおふたりはカルカルへ戻られたら何をされる予定なんですか?
今回の叙爵で無理をする必要が無くなったと思うんですけどやっぱり治癒士として薬師との調整をしながら患者を診ていくのですか?
あっ、もちろんナオキ様の調子が良くなってからの話ですけど……」
「うーん。今の時点ではなんとも言えないかな……。
僕も出来ればそうありたいと思ってるけど名誉爵位とはいえ貴族の仲間入りをした僕のもとに治療を受けに来てくれるか心配ではあるんだよね。
まあ、でも何かしら町に貢献出来る事を考えていきたいと思ってるよ」
隣で僕の肩にもたれかかりながら半分眠っているリリスを気づかいながらそう答えた。
「それは良い考えですね。私も何かお手伝いが出来たらと思います」
僕の答えに満足したナナリーは僕の前でニコリと微笑んでそう言った。
そんな話をしながら馬車は領都サナールへ向かって順調に進んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる