女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
145 / 159

第145話【カルカルに戻ったふたり】

しおりを挟む
 あいかわらず旅は順調だった。しっかりと護衛のついた馬車を襲う頭の悪い盗賊はもちろん獣のたぐいもほとんど出ずに馬車はカルカルへ向けて進んでいた。

「えっと、カルカルに着いたらすぐに斡旋ギルドに顔を出してアルフさんからの手紙を渡して僕達が住む家を紹介して貰わないといけないよな。
 どんな家を紹介してくれるのか楽しみだけど自分の家となると管理が大変になるからあまり大きな家じゃなければいいけど……」

「私もカルカルで斡旋ギルドに所属してたけどギルドが所有する個人宅レベルの家の情報は聞いたことがないのよね。
 あるとしたら領主様の別邸か税金を払えなくて差し押さえになった商人の元お店あたりなんだけど、あんな大きな建物は必要ないしそれこそ管理人や侍女が必要になるレベルよ」

 リリスは受付嬢をしていた時に読んだ資料を思い出しながら自分の意見を述べる。

「さ、さすがにそれは無いんじゃないかな?」

「私もそう思いたいけど一応ナオキは貴族様になるんだから普通の平民が住むような平屋の一軒家とはいかないと思うわよ」

「ふう。やっぱり断っておけば良かった気がしてきたよ。
 もし、能力が戻らなかったら生活に困るかもしれないと思った僕が浅はかだったのかな?」

 僕がため息をつきながらボヤいていると「そんなに悩まないで良いと思うわよ」とリリスが優しく頭を撫でてくれた。

(そうだな。まずはカルカルに戻ってから今後の事を決めていけばいいんだよな)

 僕はリリスに寄り添いながらひとまず不安を胸にしまっておいた。

   *   *   *

 ――5日後。トラブルもなく予定どおりにカルカルへ到着した僕達は道中お世話になった御者や護衛の人達にお礼言って酒場での飲み代を少し多めに手渡したら大変恐縮された。

 皆は2日ほどカルカルで休んでから王都へ帰る事になったが、無事に僕達をカルカルまで送り届けられた事に安堵していた。

「長い道のりでしたが本当にありがとうございました。
 王都へ帰られましたら女王陛下に感謝の意をお伝えください」

 僕はそう伝えると御者の長と握手を交わしてから別れ、斡旋ギルドへと向った。

 ――からんからん。

 どこの斡旋ギルドでも同じドア鐘の音だがなんとなくカルカルのドア鐘の音は他の町と違う気がする。
 初めて訪れた町だったからに過ぎないのかもしれないし、リリスと出会ったギルドだからかもしれない。
 そんな事を考えながらリリスと受付へ向かうとリリスの元同僚受付嬢達が次々と声をかけてきてくれた。

「お帰りなさいリリス!」
「王都に行ってたんだってね。向こうの話を聞かせてよ」
「やっぱり王都《むこう》はイケメンが多かった?」
「あー、私も行ってみたいな」
「ところで結婚したって本当なの?」
「えっ!? それ本当だったの?」
「なら、もしかして『おめでた』でこっちに帰ってきたって訳?」
「いや、旦那が貴族に叙爵されたから貴族婦人としてこのギルドのマスターになるとかなんとか……」

 女子が3人あつまればかしましいのを体現するように取りとめのない話が飛び交っている。

「カ、カオスだ……」

 僕は顔を引きつらせながら彼女達がおさまるのを少し離れて眺めながら呟いた。

 パンパンパン。

 突然受付の奥から手を叩く音が響き、男性の声がその場を遮った。

「はいはいはい。そこまでだ!
 お前達、今は休憩時間でもなければ就業後の飲み会でもないぞ。
 懐かしいのは分かるが目の前の利用者を蔑ろにすることは許さんぞ」

「ギ、ギルドマスター!
 すみませーん! すぐに仕事に戻ります!!」

 リリスの周りに集まって来ていた元同僚の受付嬢達はギルドマスターのラーズが姿を見せると慌てて各自の窓口へと戻って行った。

「バタバタして申し訳ない。
 ナオキ殿の話は領都のギルマスから連絡を受けていますので確認と説明のために応接室へとお願い出来ますか?
 ああ、もちろんリリスさんも同してもらって構わないよ」

 ラーズはそう僕達に伝えると側にいた職員の女性に案内とお茶を頼むと「資料を取ってくるから先に行っておいてください」と言い執務室へと向った。

   *   *   *

 ――数分後、ラーズが資料を手に応接室へと入って来た。

「そうですね。
 まずは先日、領都のギルマスから頂いた手紙の確認事項から始めたいと思いますがナオキ殿……いえ、『ナオキ様』とお呼びした方が良いですかね。
 先日、女性陛下よりナオキ様が爵位を賜ったとありました。
 名誉爵位との事でしたが、これに間違いはありませんか?」

「はい、間違いないですね」

 僕はそう言うと女王陛下から預かった貴族の短剣を取り出して見せた。

「ありがとうございます。
 では、次に女王陛下よりこのカルカルに屋敷を準備するようにとの話が来ています。
 それで、領都のギルマスが領主様と協議した結果、カルカルのギルドが所有する物件のうちの一つを譲渡することになりました」

 ラーズはそう言うと町の地図を取り出して場所の説明をする。

「場所は町の中心部から東寄りの閑静な区画にあるギルドの保養施設なのですが暫くそこを使って頂こうと思っております」

「暫く……とは?」

 ラーズの言葉に引っかかった僕は率直に理由を聞いてみた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...