女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

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第152話【新しい理想の追求】

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「――ふたつめの条件でお願いします」

 僕はほとんど迷わずにそう答えた。

「理由を聞いても良いですか?」

 女神は表情を変えずに理由を尋ねてきた。

「はい。まずひとつめの条件では男性も治療対象になるのはありがたいのですが怪我の治療で自己修復力を高めるだけならば薬師の調合した薬で対応出来るからです。
 これをやってしまうと前に失敗した薬師ギルドとの軋轢をカルカルでも起こしてしまう可能性が高いからです。
 そして先にみっつめですが、身近な方のみ強力な治癒の加護を約束されても僕の考えている理想とはかけ離れているからです。
 たしかにリリス――妻や身近な数人を万全な状態で保護するのはそれはそれでひとつのあり方なのかもしれないですが、それでは僕がこれから生きていくのに身近な人だけが元気ならばいいと考えてしまう僕が嫌だからです。
 なので、そのみっつの中ではふたつめの案が一番理想に近いと思ったからです」

「そうですね。あなたならばきっとそう言うと思いました。
 しかし、病気が治せなくなる事には不満があるのではないですか?」

 女神は僕の表情から出された条件に不満がある事を読み取って確認してくる。

「はい。ですが今の僕では全く治癒魔法が使えない状態ですのでそれに比べたら天と地程の差があります。
 ですから問題はありません」

「ふふっ。その謙虚な態度があなたの良いところであり、また悪いところでもあるのよ」

 女神はそう言うと僕に向けて空間から取り出した短めの杖をくるりと僕の前で回して僕に聞き取れない言葉で何か呟いた。

 次の瞬間、僕の身体が淡く光を帯びて数秒で体内へと取り込まれていった。

「これでいいわ。条件はさっき言ったとおりになるわ。
 これからは今までどおりになんでも治す万能治癒士ではなくなるけれど代わりにこの本をあげるわね」

 女神はそう言うと僕に一冊の本を渡してくれた。

「この本は?」

「それは白紙の辞典というものであなたの鑑定スキルで解析した怪我や病気に関する情報が自動的に記載される本なの。
 それを上手く活用して魔法で治せない病気は新たな治療薬を作るなどで対応してみると良いですね。
 これからはあなたひとりで全てを背負うのではなく多くの仲間とともにあなたの理想の世界を目指すと良いと思います」

 女神はそう言い残すと光の中に消えていった。

   *   *   *

 ――次に僕が気がついた時にはまた巨木の根を枕にして寝転んだ状態だった。その手には女神から貰った白紙の本がしっかりと握られていた。

(夢……では無かったんだよな?)

 僕はその場から起き上がると本をパラパラとめくってみたが予想どおり全ページ白紙だった。

(今度はこれを埋めていけって事だな。
 かなり大変だけど、これでまたやり甲斐のある人生が歩めるって事だな)

 ぱたりと本を閉じた僕は馬車の待つ道へと向かって歩きだした。

 ――ガサガサ。

 歩くこと数分。神木を目指して歩いた時にはいつまでもたどり着けなかった(女神の結界があったため)道程はあっさりと終わり、馬車と別れた道までたどり着いた。

(小道を出たら左側に進めば祠にたどり着くはず、ふたりを待たせるのも悪いからさっさと向かう事にするか……)

 僕がそう思いながら歩き出した瞬間、目の前の曲がり角から馬車が現れたので驚いた。

「やはり丁度いいタイミングだったようですね」

 御者をしているダルマルが僕を見てそう話す。

「丁度いい?
 僕が小道から出てくるのが分かったんですか?」

「いえいえ、私達は祠に行って、女神様へ数分間お祈りをしただけですよ。
 やはり神木の地はこちらの世界とは違う存在なのでしょうね。
 私達が戻るタイミングに合うように女神様が調整をされているのだと思います」

 そう言って馬を止めたダルマルの後からリリスが飛び出して来て僕に抱きついてきた。

「良かった!
 無事に帰ってきてくれたのね!
 ――それで女神様にお会い出来たの?」

 一度抱きついたリリスだがダルマルも見ている事もあり、すぐに離れて話題を僕のその後の事にすり替えた。

「ああ、会う事が出来たよ。
 やっぱり僕の能力はおかしくなっていたようで新たに授けて貰ったんだ。
 ただし、今までとはやり方も治癒のレベルも変わってしまったけどね」

「今までとは違う?
 詳しく話して貰えるかしら?」

「うん。リリスには話しておかなければならない事がたくさんあるけどまずは町に帰ろう。
 家についたらゆっくりと説明してこれからどうするかを決めないといけないからね」

「なんだかよく分からないけれどナオキが納得する結果になったんだよね?」

「まあ、これからはひとりで頑張らなくても良いと女神様に言われてしまったからね。
 新しい僕の理想を実現出来るように他の人達にも協力をして貰うようになると思う。
 もちろんその中にはリリスも入ってるから側で支えてくれたら嬉しいな」

 僕はそう言いながらリリスの頭を優しく撫でた。

「おふたりとも、そろそろ町に到着しますので通行証の準備をお願いしますね」

 僕達が馬車の外を見るとカルカルの町並みが近づくのが見えた。
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