女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

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第155話【現在の精一杯と未来の予想図】

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「――状態確認スキャン

 僕が患者の身体を確認すると足のふくらはぎの筋肉に損傷が見つかった。

「ああ、これは足をくじいた時に起きた肉離れだね。
 安静にしていれば治るけど歩くのも結構痛いでしょ?
 ちょっと患部を触らせてもらうよ」

 僕は彼女のふくらはぎにそっと手をあてて魔法を唱えた。

「――完全治癒ヒール

 今までには無かった現象として魔法をかけた箇所が淡く光を放っていた。

「何か違和感はありますか?」

 僕の問に彼女は「触られているところが温かく感じます」と答えて微笑んだ。

 魔力の注入はものの十数秒で終わり治療の終わった彼女はふくらはぎを触ってみたり軽く跳び上がってみたりした。

「どう? まだ違和感はある?」

 僕の問に彼女は首を左右に振って「ありません。痛みも違和感も無いです」と答えた。

「驚いた。本当に治ったわね」

 一連の行為を見ていたリリスがそう呟く。

「ナオキ様の魔法で怪我が治るのは当たり前ではないのですか?」

 詳しい事情を知らなかったラーズがリリスに問いかける。

「詳しい事は説明しないけれど、ナオキは少し前から治癒魔法が使えなくなっていたの。
 まず今回のことで治癒魔法がまた使えるようになった事に驚いたのがひとつ、あとナオキの治癒魔法は患者の魔力溜まり……つまり胸に手を添えないと発動出来なかったのだけど今回の件でそれが患部に手を添える事でも治せるようになったの。
 その事に驚いただけ……」

 リリスの説明に側にいたナナリーも同意する。

「そうですね。これならば治療を躊躇ちゅうちょする人は格段に少なくなるでしょう。
 でも、そうなると大勢の患者が押し寄せてパンクするんじゃないですか?」

「いや、今回は治癒魔法が正常に働くかのテストだったから症状の軽い人で試したけど基本的には薬師の手に負えない患者のみ診るつもりだからそこまで多くはならないと思うよ。
 あ、でも念のために部位欠損レベルの患者も試してみたいな。
 ラーズさん、どなたか知り合いに困っている方は居ないですかね?」

「それは部位欠損でなければ駄目なのかい?」

 ラーズは少し考えてそう答えた。何か思い当たる人物でも居るのだろう。

「いえ、駄目ではないですけどそれなりに治療の程度が高い方がより検証に良いかと思っただけです」

「では、うちの職員で随分昔に仕事中に負った怪我が元で足が動かない者が居るのだが彼女を診てやってはくれないか?」

「ええ、大丈夫ですよ。
 ではその方を呼ぶか僕が行って治療をするかを決めてください」

「ああ、すぐに来るように手配するので少しだけ待って貰えると助かる。
 おい、すまないがサリルナを呼んで来てくれないか?
 おそらく図書室にいると思う」

 ラーズは側にいる職員にそう頼むと彼女の詳しい話をしてくれた。

   *   *   *

「お呼びですか? ギルドマスター」

 数分後にはひとりの女性が車椅子に乗った状態で部屋に入ってきた。

 ラーズは彼女をちらりと見ると僕に紹介をしてくれた。

「――彼女がサリルナです。足が不自由なために今は図書室の受付と書物の管理を担当しています。
 もし、治るのならば彼女の足を治してやってください」

 ラーズはそう言って僕に頭を下げた。

「ギルドマスター?
 先程から聞いていて話が全くみえないのですが詳しいお話を伺っても宜しいですか?」

 サリルナは当然の疑問をラーズに向ける。

「ああ、紹介をしておこう。
 彼が名誉貴族であり治癒士の仕事をされているナオキ様だ。
 今日は君の足の治療をしたいと言われておられるのだ」

「私の足を?
 お言葉ですが私の足は動かす事が出来なくなってもう5年以上は経っていますので薬は当然、優秀な魔術士でも治す事は不可能ですよ?」

 ナオキの領都以降の活動を知らなかったサリルナはラーズの言葉の意味を理解出来ずに首を傾げる。

「まあ、そう言わずに私の顔をたてる意味で協力をして欲しいんだ」

「はあ、なんだか良くわかりませんがギルマスがそう言われるのであれば協力をしますよ」

 サリルナが頷いたのを確認した僕は「では、患部の足に手を触れさせて頂きますね」と断ってから治癒魔法をかけた。

「――完全回復ヒール

 先程と同じく患部が淡く光を帯びて魔力の注入が始まる。

「何か違和感はありますか?」

「特になにも……。
 私の足は怪我をしてから感覚が麻痺していて痛みも何も感じ無いのです」

 そう話していた彼女の表情が急変わった。

「触れている感覚がある……?」

 治療がほぼ終わろうとしているタイミングで彼女がそう呟く。

「一応、これで治療は終わりましたがご自分で足を触られてみて何か変わりましたか?」

 僕がもう一度彼女に確認をとるとサリルナは震える声ではっきりと答えた。

「足の感覚がある……。
 ついさっきまで全く無かったはずの感覚がはっきりと感じられます」

「では、私が補助しますのでその場に立ち上がってみましょう」

 リリスがすぐにサリルナに手を貸して起立を促す。

「え? そんな事できるわけが……」

 サリルナはそう言いながらもリリスの半ば強引な補助により車椅子から立ち上がった。

「えっ!? 私、立ってる?」

 サリルナが立ち上がったのを確認したリリスがその手を離すが彼女はしっかりと自分の足で立ったまま呆然としていた。

「おお!!
 これは聞きに勝る治癒の魔法。
 まさに女神様の祝福!」

 重症患者の治療を初めて目にしたラーズも興奮さめやらぬままにそう叫んだ。

「うん。とりあえずこのレベルの治療魔法は使える事が確認されたし、これならば最低限の治療行為はできそうだな」

 彼女の結果をみて満足した僕の顔と立っている自分の身体を交互にみながら口をパクパクするサリルナだったが僕の「まあ、一旦落ち着いて座りましょう」との言葉に素直に従った。

「念のために確認させてくださいね。
 ――状態確認スキャン

 僕は念のために彼女の足の状態を診るが問題なく治療は完了していた。

「怪我自体は完治しましたが数年間動かなかった事により暫くはリハビリが必要になると思います。
 こればかりは魔法でも即完治とはいかないのです。
 ラーズさん。後のことはお任せしても良いですか?」

「ああ、本当にありがとう。
 あとは任せてくれ、知り合いにその道の専門がいるので頼んでみるよ」

 僕とラーズの会話を聞きながらまだ現状がよく飲み込めないサリルナにラーズが声をかけて一緒に部屋を出ていった。

「とりあえずこれが今の出来ることだな。あとは病気に対するこの本の有用性を確認出来たら進む事が出来るだろう」

 僕の呟きにその場にいた皆が同意をした。
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