156 / 159
第156話【白紙の本の使い方を探る】
しおりを挟む
「――怪我に対する検証はこのくらいで大丈夫だろう。
今度は病気に対する策だけど今までみたいに治癒魔法で治す訳にはいかないから『テストをしたいので病気の人を紹介してください』とは頼みにくいよな」
「そうね。でも、患者を診るからには治療をしてあげたいんでしょ?
それには誰かに薬を調薬して貰わないといけないのだし、ナナリーはまだ無理だから結局のところ薬師ギルドに協力して貰わないと検証なんて出来ないと思うわよ」
「まあ、そうだよな。
すぐに治せる保証のない患者を紹介してと言うのがこれほど苦痛だとは思わなかったよ」
「あら、今までの常識からすればそれが当然だと思いますよ。
むしろ、ナオキの『治せて当然』の方がよっぽど非常識だったと自覚して欲しいわよ」
リリスはそう言いながらため息をついた。
「では、明日は薬師ギルドに向かう予定にしますね。
では、私は今から薬師ギルドに行ってギルマスの面会予約をお願いしてきますので皆さんは先に施設へ戻ってくださいね」
ナナリーはそう告げると僕が何かを言う前に部屋から飛び出して行った。
「そんなに慌てて行かなくても馬車で一緒に行って話をしてくれば良いのに……」
「まあ、彼女はナオキの役にたちたい気持ちが強いんでしょう。
それに前も言ったけどナオキはもう貴族の一員なんだから必要ない時には自分が動かない方が話が早くまわると思うわよ。
あまり貴族様にうろうろされると平民の一般人は緊張するものだからね」
「うわぁ……。
やっぱり爵位を受けたのは失敗だったかもしれない……」
「まあまあ、そんな事を言わないのよ。今後、絶対に貴族の権力があって助かる事案も出てくると思うからね」
泣きごとを言う僕を笑いながら慰めるリリスに連れられて施設へ帰るために馬車へと向った。
その後、ギルド前にて馬車へ乗り込もうとする僕に後ろから声がかかる。
「ナオキ様! お待ちください!」
声がする方を見るとそこには先程治療をしたサリルナが自分の足で走って来ていた。
「おお、もう走れるようになったのですか?」
「はい。あれからラーズギルマスより説明を受けて足を動かしているうちにいつの間にか思い通りに動かせるようになっていました。
本当になんといってお礼を言えば良いかわかりませんが、とにかくありがとうございましたと伝えたくて……」
サリルナは久しぶりに走ったせいで息も荒くしていたが笑顔でそう言って深々と頭を下げた。
「無事に治って良かったです。
これまで怪我で出来なかった事が出来るようになれば僕も嬉しく思います。
では、お元気で……」
僕はそう言うと馬車へと乗り込んでいった。
「――さて、調薬ギルドとの調整はナナリーが行ってくれているからその結果を待つとしよう」
その後、施設に戻った僕達は食事をとりながらナナリーの帰りを待った。
「――ただいま戻りました。
薬師ギルドとの面会は明日の昼前になりましたので同行をお願いします」
「ああ、わかった。準備をしておこう。
食事の準備も出来ているからゆっくり休むといい」
僕はナナリーを労いながらリリスと明日の話をどう持っていくかを話し合って決めた。
* * *
――次の日、予定の時間に薬師ギルドを訪れた僕達を迎えてくれたのはサブギルドマスターのドーランという男だった。
「話はナナリーさんから聞いております。
カルカル薬師ギルドのサブギルドマスターを任されております『ドーラン』といいます。
本来ならばギルドマスターが対応する案件なのですが調薬についてのご質問があるとの事でしたので私の方が良いであろうとの判断になりましたことを先にお伝えしておきます」
ドーランはそう言うと頭を下げた。
「治癒士のナオキです。
この度は僕のスキルについての検証にご協力を頂いてありがとうございます。
これからのお互いの関係を良好なものにするためにも今日のことは必要だと考えていますので宜しくお願いします」
僕の挨拶にドーランは恐縮していたが、話はナナリーが通していたためすぐにギルド内にある病室へと案内された。
「このギルドには病室があるのですね。
今まで薬師ギルドの中はあまり見たことが無かったので知りませんでしたよ」
「そうですね。
部外者を入れることは殆どありませんので意外と知っている人は少ないのかもしれないですね。
あ、ここになります」
ドーランの案内で病室のひとつに入った僕は簡素な部屋のベッドで眠るひとりの少女の前に立った。
「彼女の名前はシーラといいます。病気であると思われていますが実際のところは不明です」
「それは病名が分からないと言う事ですか?」
「いえ、病名がどうとかのレベルではなく何処が悪いのかが分からないのです。
彼女は1ヶ月程前から眠ったままでいくら調べても誰も分からない状態なのです」
「眠ったまま……ですか。
とりあえず身体の状態を確認させてください。
――状態確認」
僕が彼女の状態を魔法で確認すると頭の中にいくつかの治療方法が浮かび上がった。
「これは……」
「なにか分かったのでしょうか?」
「ええ、彼女は自らの身体を守るために強制的に睡眠の状態を続けているようです」
「すみませんが私には言われている意味が理解できないのですが、もう少し簡単に説明いただけないですか?」
「彼女の身体は進行性の病にかかっていますが彼女自身の治癒力によって病気の進行を遅らせている状態なのです。
これを治すには特殊な治療薬が必要になりますが今の薬学知識では難しいと思われます。
それこそ、以前の僕ならば問題なく治療出来たのですが今の僕には病気を治す力はありません。
ですので薬師の方に調薬をお願いしたいと思います」
「し、しかし……。
調薬と言われても調合する媒体と比率が分からなければ私どもにもどうしようもありません」
ドーランの悲痛の訴えに僕は頷いて先程から淡く光を放っている白紙の本のページをめくると患者の名前と共に必要な薬品名と調薬方法が浮かび上がっていた。
「ここに書かれている素材を集めて調薬をお願いします。
もし、手元の素材が足りなければ斡旋ギルドと連携をして調達してください」
僕の言葉に半信半疑ながらも必要な情報を書き写したドーランは急いで職員を呼びギルド内にある素材の確認をさせた。
今度は病気に対する策だけど今までみたいに治癒魔法で治す訳にはいかないから『テストをしたいので病気の人を紹介してください』とは頼みにくいよな」
「そうね。でも、患者を診るからには治療をしてあげたいんでしょ?
それには誰かに薬を調薬して貰わないといけないのだし、ナナリーはまだ無理だから結局のところ薬師ギルドに協力して貰わないと検証なんて出来ないと思うわよ」
「まあ、そうだよな。
すぐに治せる保証のない患者を紹介してと言うのがこれほど苦痛だとは思わなかったよ」
「あら、今までの常識からすればそれが当然だと思いますよ。
むしろ、ナオキの『治せて当然』の方がよっぽど非常識だったと自覚して欲しいわよ」
リリスはそう言いながらため息をついた。
「では、明日は薬師ギルドに向かう予定にしますね。
では、私は今から薬師ギルドに行ってギルマスの面会予約をお願いしてきますので皆さんは先に施設へ戻ってくださいね」
ナナリーはそう告げると僕が何かを言う前に部屋から飛び出して行った。
「そんなに慌てて行かなくても馬車で一緒に行って話をしてくれば良いのに……」
「まあ、彼女はナオキの役にたちたい気持ちが強いんでしょう。
それに前も言ったけどナオキはもう貴族の一員なんだから必要ない時には自分が動かない方が話が早くまわると思うわよ。
あまり貴族様にうろうろされると平民の一般人は緊張するものだからね」
「うわぁ……。
やっぱり爵位を受けたのは失敗だったかもしれない……」
「まあまあ、そんな事を言わないのよ。今後、絶対に貴族の権力があって助かる事案も出てくると思うからね」
泣きごとを言う僕を笑いながら慰めるリリスに連れられて施設へ帰るために馬車へと向った。
その後、ギルド前にて馬車へ乗り込もうとする僕に後ろから声がかかる。
「ナオキ様! お待ちください!」
声がする方を見るとそこには先程治療をしたサリルナが自分の足で走って来ていた。
「おお、もう走れるようになったのですか?」
「はい。あれからラーズギルマスより説明を受けて足を動かしているうちにいつの間にか思い通りに動かせるようになっていました。
本当になんといってお礼を言えば良いかわかりませんが、とにかくありがとうございましたと伝えたくて……」
サリルナは久しぶりに走ったせいで息も荒くしていたが笑顔でそう言って深々と頭を下げた。
「無事に治って良かったです。
これまで怪我で出来なかった事が出来るようになれば僕も嬉しく思います。
では、お元気で……」
僕はそう言うと馬車へと乗り込んでいった。
「――さて、調薬ギルドとの調整はナナリーが行ってくれているからその結果を待つとしよう」
その後、施設に戻った僕達は食事をとりながらナナリーの帰りを待った。
「――ただいま戻りました。
薬師ギルドとの面会は明日の昼前になりましたので同行をお願いします」
「ああ、わかった。準備をしておこう。
食事の準備も出来ているからゆっくり休むといい」
僕はナナリーを労いながらリリスと明日の話をどう持っていくかを話し合って決めた。
* * *
――次の日、予定の時間に薬師ギルドを訪れた僕達を迎えてくれたのはサブギルドマスターのドーランという男だった。
「話はナナリーさんから聞いております。
カルカル薬師ギルドのサブギルドマスターを任されております『ドーラン』といいます。
本来ならばギルドマスターが対応する案件なのですが調薬についてのご質問があるとの事でしたので私の方が良いであろうとの判断になりましたことを先にお伝えしておきます」
ドーランはそう言うと頭を下げた。
「治癒士のナオキです。
この度は僕のスキルについての検証にご協力を頂いてありがとうございます。
これからのお互いの関係を良好なものにするためにも今日のことは必要だと考えていますので宜しくお願いします」
僕の挨拶にドーランは恐縮していたが、話はナナリーが通していたためすぐにギルド内にある病室へと案内された。
「このギルドには病室があるのですね。
今まで薬師ギルドの中はあまり見たことが無かったので知りませんでしたよ」
「そうですね。
部外者を入れることは殆どありませんので意外と知っている人は少ないのかもしれないですね。
あ、ここになります」
ドーランの案内で病室のひとつに入った僕は簡素な部屋のベッドで眠るひとりの少女の前に立った。
「彼女の名前はシーラといいます。病気であると思われていますが実際のところは不明です」
「それは病名が分からないと言う事ですか?」
「いえ、病名がどうとかのレベルではなく何処が悪いのかが分からないのです。
彼女は1ヶ月程前から眠ったままでいくら調べても誰も分からない状態なのです」
「眠ったまま……ですか。
とりあえず身体の状態を確認させてください。
――状態確認」
僕が彼女の状態を魔法で確認すると頭の中にいくつかの治療方法が浮かび上がった。
「これは……」
「なにか分かったのでしょうか?」
「ええ、彼女は自らの身体を守るために強制的に睡眠の状態を続けているようです」
「すみませんが私には言われている意味が理解できないのですが、もう少し簡単に説明いただけないですか?」
「彼女の身体は進行性の病にかかっていますが彼女自身の治癒力によって病気の進行を遅らせている状態なのです。
これを治すには特殊な治療薬が必要になりますが今の薬学知識では難しいと思われます。
それこそ、以前の僕ならば問題なく治療出来たのですが今の僕には病気を治す力はありません。
ですので薬師の方に調薬をお願いしたいと思います」
「し、しかし……。
調薬と言われても調合する媒体と比率が分からなければ私どもにもどうしようもありません」
ドーランの悲痛の訴えに僕は頷いて先程から淡く光を放っている白紙の本のページをめくると患者の名前と共に必要な薬品名と調薬方法が浮かび上がっていた。
「ここに書かれている素材を集めて調薬をお願いします。
もし、手元の素材が足りなければ斡旋ギルドと連携をして調達してください」
僕の言葉に半信半疑ながらも必要な情報を書き写したドーランは急いで職員を呼びギルド内にある素材の確認をさせた。
0
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる