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第157話【他人を頼ること】
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「――全ての素材はギルド内の素材庫にありました!」
職員の報告に「そうか、すぐに第一調薬室へと運んでくれ!」とドーランが叫ぶ。
「あなたが調薬をされるのですか?」
「そのつもりです。
ああ、心配はいりませんよ。
これでも私はこのギルドで一番の腕をもっている自負がありますから」
「調薬を見学しても宜しいですか?」
「見学だけでしたら大丈夫ですが調薬途中での質問はお答え出来かねますのでご了承ください」
ドーランはそう言うと調薬室へと向った。
「しかし、こんな何処にでもあるような素材でつくる薬が彼女に効くとは思えないんだが……。
しかし、確かに今までの調薬手順とは違う新たな抽出方法もあって自分の知識の足りなさが恥ずかしくなってきたよ」
素材の確認と調薬手順の確認を終えたドーランは急に真剣な表情となり一言発した。
「ここからは静かに頼みます。
かなり繊細な作業になりそうですので時間もかかるかもしれません。
もし、休まれるのであれば応接室を開けていますのでそちらにお願いします」
ドーランはそう言うと調薬作業に没頭していった。
(調薬作業は初めて見るけど繊細な作業なんだな)
暫く見ていた僕達だが彼の気が散ると悪いので話す事も出来ない状態に疲れた僕はそっと部屋から出るとそれに気がついたリリスもそっとついてきた。
「ナナリーさんは真剣に見ていましたのでそっとしておきましたよ。
しかし、あのレベルを彼女に求めるとなると10年くらいかかるかもしれないですから素直に彼に頼んだ方が良いのではないですか?」
リリスの指摘に僕は「だれしも最初からうまくいく事はないだろうし、難しいものだけ頼むという手もあるんじゃないかな?」と返した。
「――お待たせしました。
指示書どおりに作れたとは思いますが使ってみなければ効果は分からないので確認のうえ投薬してもいいでしょうか?」
ドーランが僕に確認をしてきたので薬を試してみる事を了承した。
眠っている彼女に飲ませるのは難しいのでスポイドのようなもので数滴口の中に投与するとピクリと反応をして唾を飲み込むように薬も飲み込んだ。
寝ていても反射的に唾を飲み込む事が出来るように少しずつならば投薬出来る事がわかったドーランは慎重に薬を飲ませていくとあきらかに彼女の顔色が良くなってきているのが見てとれた。
「用意した薬液はこれで全てだが本当に目覚めるのか?」
ドーランが慎重に飲ませた薬液の瓶を見つめながら呟く。
「ん……」
その時、1ヶ月以上目を覚まさなかったシーラが意識を取り戻した。
「おおっ!?」
「あれ? ここは何処でしょうか?
私……高熱がでて意識がもうろうとして……それからよく覚えてなくて……」
意識を取り戻したシーラが記憶を辿るがずっと眠っていたのでそれは無理な話だった。
「ここは薬師ギルドの病室のひとつで、あの日君の父親が抱えてギルドを訪れてからもう1ヶ月以上眠ったままだったんだよ。
でも、もう大丈夫だ。もう少し検査は必要かもしれないけれどすぐに両親の元へ帰れることだろう」
ドーランはそう言うと彼女に優しく笑いかけた。
「なるほど、やはりこの本は僕が診察した患者の状態と治療方法が記載される女神の本という事がはっきりしたな」
僕は白紙の中に唯一記載されているページを見ながら呟いた。
そのページには『シーラの眠り病』との題名がついていた。
「いや、素晴らしい調薬の腕ですね。これだけの腕をお持ちならばこの町の人達は安心して薬師ギルドに身を任せることが出来ますね」
僕の称賛にドーランは「いえ、ナオキ様の指示書があったからに過ぎません。現に私は彼女を一月以上も救う事が出来ませんでしたから」と真剣な表情で答えた。
「例えレシピがあったとしても調薬したのはドーランさんなのですから自信をもってください。
そしてこれからも同様の患者が現れる可能性もありますので協力体制をお願いしますね」
「こちらの方こそ宜しくお願いします。
私どもは患者の症状から病気を予測して薬を調合してきましたが予測が外れて効果がない事も多くあったのです。
これからは特に難しい患者はナオキ様の協力で一層効果的な治療が出来る事でしょう」
ドーランはそう言うと僕と握手を交わした。
* * *
「……なるほど。
こうすれば病気の人達を間接的に治す事が出来るのか。
自分で直接治療を出来なくても患者が元気になる姿を見るとなんとも嬉しい気持ちになるものだな」
施設に戻った僕達は夕食をとりながら今日の感想を話していた。
「今まではナオキが一人居るだけでなんでも治療できたから他人を頼る必要性を感じなかっただけなのよ。
本来ならば自分に出来ない事を出来る人に頼んで最終的に成果に結びつけるのがあるべき姿なんだと思うわよ」
リリスも自分の意見を述べる。
「そうですよ。私も調薬の勉強を頑張りますから頼ってください」
ふたりから応援して貰った僕は「やれる事をやるので良いんだよな」と自分の中で気持ちの整理をつけた。
職員の報告に「そうか、すぐに第一調薬室へと運んでくれ!」とドーランが叫ぶ。
「あなたが調薬をされるのですか?」
「そのつもりです。
ああ、心配はいりませんよ。
これでも私はこのギルドで一番の腕をもっている自負がありますから」
「調薬を見学しても宜しいですか?」
「見学だけでしたら大丈夫ですが調薬途中での質問はお答え出来かねますのでご了承ください」
ドーランはそう言うと調薬室へと向った。
「しかし、こんな何処にでもあるような素材でつくる薬が彼女に効くとは思えないんだが……。
しかし、確かに今までの調薬手順とは違う新たな抽出方法もあって自分の知識の足りなさが恥ずかしくなってきたよ」
素材の確認と調薬手順の確認を終えたドーランは急に真剣な表情となり一言発した。
「ここからは静かに頼みます。
かなり繊細な作業になりそうですので時間もかかるかもしれません。
もし、休まれるのであれば応接室を開けていますのでそちらにお願いします」
ドーランはそう言うと調薬作業に没頭していった。
(調薬作業は初めて見るけど繊細な作業なんだな)
暫く見ていた僕達だが彼の気が散ると悪いので話す事も出来ない状態に疲れた僕はそっと部屋から出るとそれに気がついたリリスもそっとついてきた。
「ナナリーさんは真剣に見ていましたのでそっとしておきましたよ。
しかし、あのレベルを彼女に求めるとなると10年くらいかかるかもしれないですから素直に彼に頼んだ方が良いのではないですか?」
リリスの指摘に僕は「だれしも最初からうまくいく事はないだろうし、難しいものだけ頼むという手もあるんじゃないかな?」と返した。
「――お待たせしました。
指示書どおりに作れたとは思いますが使ってみなければ効果は分からないので確認のうえ投薬してもいいでしょうか?」
ドーランが僕に確認をしてきたので薬を試してみる事を了承した。
眠っている彼女に飲ませるのは難しいのでスポイドのようなもので数滴口の中に投与するとピクリと反応をして唾を飲み込むように薬も飲み込んだ。
寝ていても反射的に唾を飲み込む事が出来るように少しずつならば投薬出来る事がわかったドーランは慎重に薬を飲ませていくとあきらかに彼女の顔色が良くなってきているのが見てとれた。
「用意した薬液はこれで全てだが本当に目覚めるのか?」
ドーランが慎重に飲ませた薬液の瓶を見つめながら呟く。
「ん……」
その時、1ヶ月以上目を覚まさなかったシーラが意識を取り戻した。
「おおっ!?」
「あれ? ここは何処でしょうか?
私……高熱がでて意識がもうろうとして……それからよく覚えてなくて……」
意識を取り戻したシーラが記憶を辿るがずっと眠っていたのでそれは無理な話だった。
「ここは薬師ギルドの病室のひとつで、あの日君の父親が抱えてギルドを訪れてからもう1ヶ月以上眠ったままだったんだよ。
でも、もう大丈夫だ。もう少し検査は必要かもしれないけれどすぐに両親の元へ帰れることだろう」
ドーランはそう言うと彼女に優しく笑いかけた。
「なるほど、やはりこの本は僕が診察した患者の状態と治療方法が記載される女神の本という事がはっきりしたな」
僕は白紙の中に唯一記載されているページを見ながら呟いた。
そのページには『シーラの眠り病』との題名がついていた。
「いや、素晴らしい調薬の腕ですね。これだけの腕をお持ちならばこの町の人達は安心して薬師ギルドに身を任せることが出来ますね」
僕の称賛にドーランは「いえ、ナオキ様の指示書があったからに過ぎません。現に私は彼女を一月以上も救う事が出来ませんでしたから」と真剣な表情で答えた。
「例えレシピがあったとしても調薬したのはドーランさんなのですから自信をもってください。
そしてこれからも同様の患者が現れる可能性もありますので協力体制をお願いしますね」
「こちらの方こそ宜しくお願いします。
私どもは患者の症状から病気を予測して薬を調合してきましたが予測が外れて効果がない事も多くあったのです。
これからは特に難しい患者はナオキ様の協力で一層効果的な治療が出来る事でしょう」
ドーランはそう言うと僕と握手を交わした。
* * *
「……なるほど。
こうすれば病気の人達を間接的に治す事が出来るのか。
自分で直接治療を出来なくても患者が元気になる姿を見るとなんとも嬉しい気持ちになるものだな」
施設に戻った僕達は夕食をとりながら今日の感想を話していた。
「今まではナオキが一人居るだけでなんでも治療できたから他人を頼る必要性を感じなかっただけなのよ。
本来ならば自分に出来ない事を出来る人に頼んで最終的に成果に結びつけるのがあるべき姿なんだと思うわよ」
リリスも自分の意見を述べる。
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