女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
157 / 159

第157話【他人を頼ること】

しおりを挟む
「――全ての素材はギルド内の素材庫にありました!」

 職員の報告に「そうか、すぐに第一調薬室へと運んでくれ!」とドーランが叫ぶ。

「あなたが調薬をされるのですか?」

「そのつもりです。
 ああ、心配はいりませんよ。
 これでも私はこのギルドで一番の腕をもっている自負がありますから」

「調薬を見学しても宜しいですか?」

「見学だけでしたら大丈夫ですが調薬途中での質問はお答え出来かねますのでご了承ください」

 ドーランはそう言うと調薬室へと向った。

「しかし、こんな何処にでもあるような素材でつくる薬が彼女に効くとは思えないんだが……。
 しかし、確かに今までの調薬手順とは違う新たな抽出方法もあって自分の知識の足りなさが恥ずかしくなってきたよ」

 素材の確認と調薬手順の確認を終えたドーランは急に真剣な表情となり一言発した。

「ここからは静かに頼みます。
 かなり繊細な作業になりそうですので時間もかかるかもしれません。
 もし、休まれるのであれば応接室を開けていますのでそちらにお願いします」

 ドーランはそう言うと調薬作業に没頭していった。

(調薬作業は初めて見るけど繊細な作業なんだな)

 暫く見ていた僕達だが彼の気が散ると悪いので話す事も出来ない状態に疲れた僕はそっと部屋から出るとそれに気がついたリリスもそっとついてきた。

「ナナリーさんは真剣に見ていましたのでそっとしておきましたよ。
 しかし、あのレベルを彼女に求めるとなると10年くらいかかるかもしれないですから素直に彼に頼んだ方が良いのではないですか?」

 リリスの指摘に僕は「だれしも最初からうまくいく事はないだろうし、難しいものだけ頼むという手もあるんじゃないかな?」と返した。

「――お待たせしました。
 指示書どおりに作れたとは思いますが使ってみなければ効果は分からないので確認のうえ投薬してもいいでしょうか?」

 ドーランが僕に確認をしてきたので薬を試してみる事を了承した。

 眠っている彼女に飲ませるのは難しいのでスポイドのようなもので数滴口の中に投与するとピクリと反応をして唾を飲み込むように薬も飲み込んだ。

 寝ていても反射的に唾を飲み込む事が出来るように少しずつならば投薬出来る事がわかったドーランは慎重に薬を飲ませていくとあきらかに彼女の顔色が良くなってきているのが見てとれた。

「用意した薬液はこれで全てだが本当に目覚めるのか?」

 ドーランが慎重に飲ませた薬液の瓶を見つめながら呟く。

「ん……」

 その時、1ヶ月以上目を覚まさなかったシーラが意識を取り戻した。

「おおっ!?」

「あれ? ここは何処でしょうか?
 私……高熱がでて意識がもうろうとして……それからよく覚えてなくて……」

 意識を取り戻したシーラが記憶を辿るがずっと眠っていたのでそれは無理な話だった。

「ここは薬師ギルドの病室のひとつで、あの日君の父親が抱えてギルドを訪れてからもう1ヶ月以上眠ったままだったんだよ。
 でも、もう大丈夫だ。もう少し検査は必要かもしれないけれどすぐに両親の元へ帰れることだろう」

 ドーランはそう言うと彼女に優しく笑いかけた。

「なるほど、やはりこの本は僕が診察した患者の状態と治療方法が記載される女神の本という事がはっきりしたな」

 僕は白紙の中に唯一記載されているページを見ながら呟いた。
 そのページには『シーラの眠り病』との題名がついていた。

「いや、素晴らしい調薬の腕ですね。これだけの腕をお持ちならばこの町の人達は安心して薬師ギルドに身を任せることが出来ますね」

 僕の称賛にドーランは「いえ、ナオキ様の指示書があったからに過ぎません。現に私は彼女を一月以上も救う事が出来ませんでしたから」と真剣な表情で答えた。

「例えレシピがあったとしても調薬したのはドーランさんなのですから自信をもってください。
 そしてこれからも同様の患者が現れる可能性もありますので協力体制をお願いしますね」

「こちらの方こそ宜しくお願いします。
 私どもは患者の症状から病気を予測して薬を調合してきましたが予測が外れて効果がない事も多くあったのです。
 これからは特に難しい患者はナオキ様の協力で一層効果的な治療が出来る事でしょう」

 ドーランはそう言うと僕と握手を交わした。

   *   *   *

「……なるほど。
 こうすれば病気の人達を間接的に治す事が出来るのか。
 自分で直接治療を出来なくても患者が元気になる姿を見るとなんとも嬉しい気持ちになるものだな」

 施設に戻った僕達は夕食をとりながら今日の感想を話していた。

「今まではナオキが一人居るだけでなんでも治療できたから他人を頼る必要性を感じなかっただけなのよ。
 本来ならば自分に出来ない事を出来る人に頼んで最終的に成果に結びつけるのがあるべき姿なんだと思うわよ」

 リリスも自分の意見を述べる。

「そうですよ。私も調薬の勉強を頑張りますから頼ってください」

 ふたりから応援して貰った僕は「やれる事をやるので良いんだよな」と自分の中で気持ちの整理をつけた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...