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第158話【新たな拠点と明るい兆し】
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――あれから一年の時が流れ、仮の住まいとして使っていたギルドの施設では薬師ギルドから紹介された患者の治療を行う日が日常となっていた。
怪我については薬で治らないものを中心に、病気については患者の診断を受け持ち、本に記載された調薬レシピを担当の薬師に提供する形で対応していた。
「ナオキ! ナオキ! 何処にいるの?」
受付から毎日聞こえるリリスの声が響く。
「ああ、奥の書斎にいるよ。どうした? 急患でもきたのかい?」
僕はゆっくりと椅子から立ち上がり書斎のドアを開けた。
「あ、ここに居たのね。
斡旋ギルドのラーズさんから都合の良いときに顔を出して欲しいと連絡があったわよ。
多分、新しい屋敷の件じゃないかと思うけど……」
「ああ、そろそろ出来る頃か。
なんだかんだと要望を出していたら結局一年かかってしまったよな。
おかげでこの施設での生活が身体に染み付いて引っ越すのが面倒になってるんだよな」
「気持ちは分かるけど、私達がここに住んでる限りギルドの職員は保養施設として使いにくいのだから動けるならばさっさと引っ越しをした方がいいと思うわ」
「まあ、そうなんだよな。
……分かった。今、患者はいないよな。であればすぐにギルドに顔を出してみよう」
「では、すぐに向かうと連絡を入れてから出発の準備をしましょう」
リリスはそう言うと手早く手配を済ませて外出の準備を始めた。
* * *
「いきなり呼び出して申し訳ありません。
以前より準備をしていた新たな屋敷の準備が出来ましたので引き渡しと引っ越しに関してのすり合わせをお願いしたいと思いましてお越し頂きました」
ギルドに到着するとすぐにギルドマスターのラーズが対応してくれた。
貴族への対応としてはごく当たり前なのだがやはり気恥ずかしくなかなか慣れない対応に苦慮していた。
「屋敷に関しては先日ご案内したので場所等はご存知だと思いますので簡単な説明と引っ越しの日取りを決めて頂ければと思います」
席に着くとラーズが今日の議題に関して順を追って話しを進める。
「新たな屋敷には普通の貴族の屋敷のような豪華な部屋や装飾品は控えて執務室や日常生活の場に加えてご希望の診療施設を組み込んでおります。
いうなれば豪華な診療所のイメージですね」
ラーズの説明に頷いた僕は「では明日の午後にでも確認に行きたいと思います」と告げた。
「分かりました。では、明日の午後に係の者を現地に派遣しておきますので詳細はその者よりお聞きください」
その後、いくつかのやり取りを終えた僕達は施設に戻って引っ越しの準備を進めた。
次の日、診療の予定を入れないように薬師ギルドに伝えてから僕達は新しい屋敷へと向った。
「――到着しました。お帰りの際はお知らせください」
施設から馬車で送ってくれたドーランに労いの言葉をかけてから僕達は屋敷の門をくぐった。
「確か係の人が居ると言ってたよね。中で待機してるのかな?」
僕の疑問にリリスは「係の者と言っても私達相手のギルド職員といえば多分彼女しかいないと思うけれどね」と誰が待っているかわかっている様子だった。
――からからん。
僕が入口のドアを開けると小気味良いドア鐘が響き、中にはリリスの予想通りの女性が待機していた。
「お待ちしておりましたわ。屋敷内の説明を担当させてもらうナナリーです。宜しくお願いしますね」
ナナリーは少し大げさにお辞儀をして笑顔で僕達を迎え入れてくれた。
「ナナリーさん。
余所行きの言葉遣いはしなくてもいいからいつもの通りでいいですよ」
「はい、ありがとうございます。
ですが、一応案内係の仕事中ですのでそれらしくしておこうと思います。
では、まずは1階の部屋から説明させて頂きますね」
ナナリーはそう言うと僕達を連れて一部屋づつ間取りから設置されている家具、設備についての詳細を話してくれた。
「全て要望どおりに作ってくれたんだね。
かなり無理を言った自覚はあるんだけどこれだけ完璧にしてくれたら文句のつけようがないよ」
「ありがとうございます。
大工の皆さんにもお伝えしておきますね。
では、次に2階の居住スペースについてですが……」
その後もナナリーが全ての部屋について説明をしてくれ、最後にとんでもない事を言い出した。
「それで、オプションとして……」
「オプション?」
僕の問にナナリーは「はい」と言ってから続けた。
「この屋敷の管理について現在ギルド保養施設を管理している3名がそのままこちらでお世話になる事が決まりました。
ですので……これからも宜しくお願いしますね」
ナナリーの満面の笑みにリリスは「お願いしますね……って言うかそうでなければあなたに調薬の資格をとらせた意味がないでしょ?」と冷静に突っ込んだ。
そうなのだ。ナナリーはあれからたった一年で調薬士の資格に合格していたのだ。
「えへへ。まだまだ見習いの文字がとれたばかりのなりたてほやほやですけど、これからはナオキ様の役にたてる調薬士としてお側に居させてくださいね」
「ああ、そうだな。宜しく頼むよ」
僕はナナリーの頭をポンポンと軽く叩くと笑いながらそう言った。
怪我については薬で治らないものを中心に、病気については患者の診断を受け持ち、本に記載された調薬レシピを担当の薬師に提供する形で対応していた。
「ナオキ! ナオキ! 何処にいるの?」
受付から毎日聞こえるリリスの声が響く。
「ああ、奥の書斎にいるよ。どうした? 急患でもきたのかい?」
僕はゆっくりと椅子から立ち上がり書斎のドアを開けた。
「あ、ここに居たのね。
斡旋ギルドのラーズさんから都合の良いときに顔を出して欲しいと連絡があったわよ。
多分、新しい屋敷の件じゃないかと思うけど……」
「ああ、そろそろ出来る頃か。
なんだかんだと要望を出していたら結局一年かかってしまったよな。
おかげでこの施設での生活が身体に染み付いて引っ越すのが面倒になってるんだよな」
「気持ちは分かるけど、私達がここに住んでる限りギルドの職員は保養施設として使いにくいのだから動けるならばさっさと引っ越しをした方がいいと思うわ」
「まあ、そうなんだよな。
……分かった。今、患者はいないよな。であればすぐにギルドに顔を出してみよう」
「では、すぐに向かうと連絡を入れてから出発の準備をしましょう」
リリスはそう言うと手早く手配を済ませて外出の準備を始めた。
* * *
「いきなり呼び出して申し訳ありません。
以前より準備をしていた新たな屋敷の準備が出来ましたので引き渡しと引っ越しに関してのすり合わせをお願いしたいと思いましてお越し頂きました」
ギルドに到着するとすぐにギルドマスターのラーズが対応してくれた。
貴族への対応としてはごく当たり前なのだがやはり気恥ずかしくなかなか慣れない対応に苦慮していた。
「屋敷に関しては先日ご案内したので場所等はご存知だと思いますので簡単な説明と引っ越しの日取りを決めて頂ければと思います」
席に着くとラーズが今日の議題に関して順を追って話しを進める。
「新たな屋敷には普通の貴族の屋敷のような豪華な部屋や装飾品は控えて執務室や日常生活の場に加えてご希望の診療施設を組み込んでおります。
いうなれば豪華な診療所のイメージですね」
ラーズの説明に頷いた僕は「では明日の午後にでも確認に行きたいと思います」と告げた。
「分かりました。では、明日の午後に係の者を現地に派遣しておきますので詳細はその者よりお聞きください」
その後、いくつかのやり取りを終えた僕達は施設に戻って引っ越しの準備を進めた。
次の日、診療の予定を入れないように薬師ギルドに伝えてから僕達は新しい屋敷へと向った。
「――到着しました。お帰りの際はお知らせください」
施設から馬車で送ってくれたドーランに労いの言葉をかけてから僕達は屋敷の門をくぐった。
「確か係の人が居ると言ってたよね。中で待機してるのかな?」
僕の疑問にリリスは「係の者と言っても私達相手のギルド職員といえば多分彼女しかいないと思うけれどね」と誰が待っているかわかっている様子だった。
――からからん。
僕が入口のドアを開けると小気味良いドア鐘が響き、中にはリリスの予想通りの女性が待機していた。
「お待ちしておりましたわ。屋敷内の説明を担当させてもらうナナリーです。宜しくお願いしますね」
ナナリーは少し大げさにお辞儀をして笑顔で僕達を迎え入れてくれた。
「ナナリーさん。
余所行きの言葉遣いはしなくてもいいからいつもの通りでいいですよ」
「はい、ありがとうございます。
ですが、一応案内係の仕事中ですのでそれらしくしておこうと思います。
では、まずは1階の部屋から説明させて頂きますね」
ナナリーはそう言うと僕達を連れて一部屋づつ間取りから設置されている家具、設備についての詳細を話してくれた。
「全て要望どおりに作ってくれたんだね。
かなり無理を言った自覚はあるんだけどこれだけ完璧にしてくれたら文句のつけようがないよ」
「ありがとうございます。
大工の皆さんにもお伝えしておきますね。
では、次に2階の居住スペースについてですが……」
その後もナナリーが全ての部屋について説明をしてくれ、最後にとんでもない事を言い出した。
「それで、オプションとして……」
「オプション?」
僕の問にナナリーは「はい」と言ってから続けた。
「この屋敷の管理について現在ギルド保養施設を管理している3名がそのままこちらでお世話になる事が決まりました。
ですので……これからも宜しくお願いしますね」
ナナリーの満面の笑みにリリスは「お願いしますね……って言うかそうでなければあなたに調薬の資格をとらせた意味がないでしょ?」と冷静に突っ込んだ。
そうなのだ。ナナリーはあれからたった一年で調薬士の資格に合格していたのだ。
「えへへ。まだまだ見習いの文字がとれたばかりのなりたてほやほやですけど、これからはナオキ様の役にたてる調薬士としてお側に居させてくださいね」
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僕はナナリーの頭をポンポンと軽く叩くと笑いながらそう言った。
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