異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日開店です 〜女神に貰ったカード化スキルは皆を笑顔にさせるギフトでした〜

夢幻の翼

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第12話 GMとの面会と専属契約

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 ――かちゃり。

 ビルが応接室のドアを開けるとテーブルを挟んで三人が座れるソファが対になって置いてある部屋が目に入る。

「とりあえず、ギルドマスターが来るまで座って待つことにしょうか」

 ビルはそう言って先にソファへ座ると私にも座るように促す。彼はこういった状況を何度も経験しているのだろうか落ち着いた様子で私が座るのを待ってから話を始めた。

「説明は俺がするから間違っていたら訂正をしてくれると助かる」

 その言葉に私が頷いた時、入口のドアが開きフィーと少しばかり年上の女性が部屋に入って来るのが見えた。おそらく彼女がギルドマスターなのだろう。

「お忙しいところをすみません。ギルドマスター」

 女性を見てビルがそう告げると彼女は小さく頷いて私の目の前にあるソファへと座った後にゆっくりとその口を開く。

「私はカロリーナ。現在、この商業ギルドのマスターを拝命しております。今回はビルの報告より、あなたをギルドの臨時職員として雇うことが提案されました。書類による内容をそのまま受け取るならば資格は十分だと思いますが、虚偽等の有無に関しては私が直接に面接をすることで判断させて頂きたく思います」

 カロリーナはそう言うと私の顔をジッと見つめる。その目は真実を見極めるスキルでもあるかのように深く引き込まれるような瞳だった。

「あ、詳細説明は俺の方から……」

 ビルが横からそう言って説明をしようとしたが、それを彼女は手で制して止める。

「報告書は既に読んでいますから、今は彼女と話をしたいと思います。あなたは私の許可があるまで発言は控えてください」

 カロリーナの言葉にビルは出鼻を挫かれたような表情をするが、黙って頷くと私に小さく「すまない」と言ってソファに深く座り直す。

「それではリアさん。私の質問にお答えして頂けますか?」

「は、はい。答えられることならば、お答え致します」

 私の言葉にカロリーナは頷くと質問の前に礼を言って来る。

「では、まずは今回の鉄鉱石運搬の依頼を引き受けて完遂してくださりありがとうございました。急に入って来た依頼で馬車の不具合とも重なり引き受け手が見つからないと報告が上がっていましたので助かりました」

「いえ、こちらこそ登録して初めての依頼だったのに信用して任せてくれて嬉しかったです」

 私の感想に飲み物の準備を終え、入室して来たフィーが補足説明をする。

「その依頼に関しては、依頼人から最大限の評価を頂きまして同じく最大限の報酬を用意させて頂きました」

「その報告書は見せて貰ったわ。かなりレアなスキルを持っているようね。ビルの言葉を信用していないわけではないけれど、私自身も見てみたいからお願いできるかしら。そうね、そこの壁際にある本棚でも可能かしら?」

 カロリーナはそう言って笑みを浮かべながら私を見る。

「わかりました。では失礼して……」

 私はそう言うとソファから立ち上がって壁際の本棚の前に歩いて行くと手を本棚に触れてからスキルを発動させた。

「――圧縮」

 私の言葉に反応したスキルは横幅数メートルの本棚を並べてあった本もろとも一枚のカードにしてしまう。

「なるほど、これは予想を越えるスキルですね。分かりました、リアさんの専属契約を承認致します。契約期間は一年単位で双方どちらかが契約更新をしないと言うまで。それでどうかしら?」

「――仕事は選べるのでしょうか? あと、報酬はどうなるのですか?」

 カロリーナの出した条件で気になることをはっきりと聞く。社会人として非常に大事なことだ。

「ギルドで受けた仕事を精査して依頼書を作成してから打診させてもらうわ。その内容を確認して引き受けるかどうかの判断をしてくれたらいいわ。だけど、こちらとしても危険な依頼は除外するつもりなので基本的には引き受けて欲しいわね」

 私は少し考えてから「契約内容を書面で頂けますか?」とカロリーナに告げる。

「もちろんよ。口頭だけでは何の効力も無いからね」

「わかりました。一応、この場ではお引き受けする方向で返事をしておきます。正式には契約内容を確認してからとなりますがよろしいですか?」

「ええ、じゃあ明日にでもまた来て貰って契約を結ぶことにしましょう。良い結果になることを期待しているわ」

 カロリーナはそう言うと立ち上がって私に微笑むと部屋を出て行った。

「ああ。せっかく香茶を準備したのに……」

 カロリーナが話し終えると直ぐに部屋を退室したのでテーブルには手のつけられていない香茶のカップが残されており、準備したフィーが不満を漏らす。

「仕方ありません。この香茶は私が責任を持って飲ませて頂きます。あ、お二人もどうぞ飲まれてくださいね」

 フィーはそう言ってカロリーナの居たソファに座ると役得とばかりに香茶のカップを手に取り、ゆっくりと香りを楽しむ。きっと同じようなことは何度もあったのだろう。

「ギルドを信用しても良いのですよね?」

 私はせっかくなので、出された香茶を手にビルにそう尋ねる。

「ギルド関係者である俺が言っても本当に信用出来るかは判断に困るが、問題はないと思う。ギルドマスターはああ見えて誠実な人だ。無茶な依頼はしてこないだろうし、自分の中で無理と判断したならばきちんと断る事も出来るはずだ」

 ビルは本当にそう思っているようで真剣な表情でそう言ってくれた。

 ◇◇◇

 次の日、私は契約書を前にして座るカロリーナに最後の質問をしていた。

「今はこうして商業ギルドにお世話して頂くことになりますが、私の夢は自分のお店を持つことなので、その開店資金が貯まったら契約を終了させて頂きたいです」

「なるほど。この町で開店するのならば商業ギルドとしては助力を惜しまないつもりですが、他の町でとのことであればお手伝いは難しいでしょうね」

 暗にお店を開きたいならこの町で開店しろと言われているに同義だったが、商業ギルドが後ろ盾となってくれるのならば、それはそれでありがたい申し出だったので話に乗らせてもらうことに。

「もちろんそのつもりです。それで、この町でお店を構えるために必要な資金はどのくらいあればいけますか?」

「店の規模と内容次第としか言えませんが、どのようなお店をお考えですか?」

「今はまだおぼろげにある内容ですが、色々な商品を全てカード化して販売するお店ですね。例えば軽い品物から重い品物まで、または旅の食事やお土産に持ち帰る地元のお菓子なんかも面白いかもしれませんね」

 私の頭の中にある案だけで実現可能かの検証もしていない内容だったが、そのアイデアにカロリーナは驚きの表情を見せた。
「それってリアさんがカード化したものを全く別人が元に戻せるってことですか?」

「え? ああ、まだ検証が出来ていないので確証はないですね。それこそこれから検証をしていくところですよ。今の話はまだ案の状態ですから、真に受けないでくれると助かります」

「そ、そうですよね。もし、そんなことが可能なら商売として成り立つどころの話ではないでしょうから」

 カロリーナはそう言って微笑むと「ああ」と言って私の質問に答えてくれた。

「今のお話が実現したと仮定させてですが、お店の土地、建物の代金がおよそ金貨五百枚くらいでしょうか。もちろん賃貸をいう選択肢もありますので、その際はギルドで紹介も可能です。こちらは月に金貨二十枚といったところでしょう」

 金貨五百枚。それなりの大金だが、貯めることは可能だろう。だけど、金貨五百枚で終わりじゃない。商品を仕入れるお金や生活費も考えなければならない。

「二、三年はギルドのお世話になることになりそうね」

「ふふふ。二、三年と言わず。末永いお付き合いが出来ればと思いますわ」

 微笑むカロリーナの言葉を聞きながら、私は契約書の承認サインを記入したのだった。
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