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番外編(レオ視点)
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シャルロの健康を危惧していたのに、まさか俺の生死に関する話になるとは思わなかった。
すぐに話の真意を聞きたかったが「ここだと人目があるし、とりあえずご飯を食べて、話はそれからだよ」とエミリアに押し切られた。
大量にあった料理は素早くエドウィンの胃袋に収納され、その食べっぷりを見ると作り過ぎたと言うのは俺に声をかけるための二人の気遣いだったのかもしれない。食後人気のない裏庭の庭園に移動し、やっと本題に入った。
「ごめん! まさかレオ君が抱く方だと思ってなくて、てっきり【聖女】になってるのかと思ってた」
食事をしたおかげかいくぶん顔色の良くなったエミリアが、がっくりと肩を落としている。
「俺は聖女候補だから、抱かれる側だと思われてても仕方ない」
「それはそうなんだけど、予想できてなかった自分が悔しいって言うかなんと言うかっ」
「それでエミリア。レオが死ぬってのはどう言うことなんだ?」
落ち込むエミリアにエドウィンが優しく声をかける。
「そのことだけど、修道院で極秘に伝わってる話の中に「花の騎士の体液には蜜の魅了って呼ばれる力がある」っていうのがあるの」
「体液……ジャックが花の騎士の力に魅了効果もあるんじゃないかって予測してたけど、事実だったのか」
性格に難はあるがこういう時に研究者としてジャックは本当に優秀だと実感する。
「魅了だけならまだいいんだけど効果はそれだけじゃなくて、中毒性の高い毒みたいなものなんだって」
「は??」
「毒?」
エミリアの言葉に俺とエドウィンは顔を見合わせる。
「なんでも一度摂取すると人格が変わったり普通の生活ができなくなって、花の騎士への執着行動もエスカレートして異常者として幽閉や処罰されたり、誘惑を我慢すると禁断症状に耐えられなくなって狂い死ぬって言われてる」
「つまり……俺は死ぬしかないと」
「落ち着けレオ、結論を急ぐな。そこまで判ってるなら解毒方法も伝わってるんじゃないのか?」
いつになく冷静なエドウィンの言葉にエミリアが重々しく頷く。
「蜜の魅了を回避する方法のひとつは聖女になること。これは聖女の精神防御が高いから無効になるだけで花の騎士の体液自体の質は変わらない。もうひとつは実を結ぶことだって言われてる」
「実を結ぶ……って事は子どもを授かるってことか?」
「そういう意味だと思う。花の騎士は聖女以外とも幸福な家庭を築いたって伝説も多いし、蜜の魅了体質のままだったら円満な家庭にはならないと思う。きっと中毒になった人達も回復するんだろうって推測されてて、そこが物質的な毒ではなく魔力による精神干渉だと言われるゆえんなんだけど…」
エミリアの声がぴたりと止まる。
静かに話を聞いていた俺の考えが読めているのだろう。
「……俺とシャルロはどっちも男で子どもは出来ないし、俺は聖女にもなれない」
「そうなんだよね……」
一瞬だが体質を変えるためにシャルロが俺以外と一夜を共にすることを考えかけたか……心がどす黒く染まるのを感じる。
「シャルロが他の奴とするなんて、それが解毒のためだとしても……俺は我慢できない」
―― シャルロを奪われるくらいなら、この世界など……。
「だから、落ち着けレオ」
どす黒い魔力を纏い始めた俺に、慌てた様にエドウィンが言葉をかける。
「シャルロが悲惨なレオの未来を視ていないなら、望みはあるはずだ」
「俺の……未来?」
「わたしもそう思う。シャルロさまの未来視はわたし達が危機を回避できるようなものが多かったでしょ。特にレオ君が中心だったじゃない」
確かにシャルロの未来視は幸福な事ではなく不幸回避の助言が多かった。
特に俺に関するものが多く、「レオは愛されてるね」とみんなに羨ましがられたほどだ。
「この調子だとシャルロが言ってたレオの魔王化が実現しそうだが、そうなるとしたらレオの気持ち自体を受け入れてないはずだ。ということはお前達がこのままでも幸せになる解決策は必ずある」
「そうだよレオ君、わたしたち幸せになろうって約束したよね。シャルロさまもずっと皆の幸せを望んでいた。わたし、 諦めないから」
二人の想像以上に前向きで優しい言葉に、俺はその時どんな表情をしたらいいのか判らなかった。
―― ただきっと、シャルロならこんな時、皆を安心させるように笑うんだろうなと思った。
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