偽王子は竜の加護を乞う

和泉臨音

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番外編(レーヴン視点)・君の笑顔が咲く場所を俺は永遠に守ると誓う

(7)救出

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「――……てめえええ!! エールック!!!!!!!!!!!!」

 ルハルグ様の力に感謝した。
 油断をしているというより、目の前のヴェルに夢中だったエールックを殺すなど造作もなかった。だけど俺がそれをせずに留まることができたのは、激しい感情を封じてもらったからだろう。

 怒りは覚えるが、我を失う事はない。

 ヴェルヘレックは俺に立ち止まるよう叫ぶ。それに気を良くしたのかエールックはヴェルの姿を俺に見せつけるようにした。
 感情が制御できるから、ヴェルに拒絶されても俺は絶望しないですんだ。

 手を拘束され、強引に下半身を弄られているのは確認をしなくても判る。それをヴェルが望んでいるとなぜそんな事を言えるのか。俺にはエールックの気持ちが、まったく判らない。
 これでヴェルもエールックの非道さに気付いてくれただろう。
 自分の置かれている危機に気付いてほしかった。だけど、こんな風に傷つけたかったわけじゃない。

 まずはヴェルの安全を確保して……と二人の様子を伺っていればヴェルが抵抗を始めた。
 指輪がどうとか騒いでいる。グリがあげたという仕掛け指輪のことだと俺は気付いた。
 だから、ヴェルが抵抗しているのは仕掛け指輪からエールックを守ろうとしているからなのかと……驚愕した。

 だけど、それがヴェルヘレックなんだ。
 切り捨てる決断力がない、そう言ってしまえばそれまでだけど、たぶんそうじゃない。
 ヴェルはなんでも許すんだ。許して自分が追いつめられても、それを誰のせいにもしない。

 とても優しくて、潔くて、危うくて、弱いくせに強い。
 
 エールックがこちらにヴェルから取り上げた指輪を投げて来た。
 そんな上手く事が進むとは思ってなかったが、エールックは指輪に仕掛けられた罠にかかった。
 白目をむいてエールックがヴェルに倒れ込む。ヴェルは小さな悲鳴を上げて覆いかぶさって来たエールックから逃れた。

 ヴェルがエールックを拒絶したのを見て、俺は安堵した。エールックとの関係をヴェルが望んでいないと判って、嬉しかった。
 自分勝手だと言われたっていい。それが俺がその時思ったことなんだから。
 それからルハルグ様の力を再び借りてエールックを拘束し、怯えるヴェルを連れてグリたちの元へ戻った。

 腕の中で泣きじゃくるヴェルを見て、俺はいろんな感情がごちゃ混ぜになった。
 守り切れなかった申し訳なさや後悔、それに反して俺を頼って身を預けてくれたことに対する高揚感。

 不安や辛い時だけしか、俺はヴェルを腕に抱いていない。
 高望みだとは判っていたが、何事も無いときにこの腕の中にヴェルの熱と、花咲くような笑顔を感じたいと思った。

 俺の代わりに王子として生きてきたこの少年が、愛しくてたまらなかった。
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