イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音

文字の大きさ
3 / 10

第三話 黒持ち

 
 昔はエルレも俺に笑顔を返してくれたのだが、今はあまり視線も合わせようとしてくれない。
 嫌われてはいないと思うんだけど……よそよそし過ぎるんだよなぁ。
 内心では首を傾げつつも見た目はにこやかに俺もカップに口をつけた。

 恵まれすぎていて成り上がる必要などない俺だが、世間的には二つほど同情されていることがあった。

 一つは優秀なのに第二皇子がゆえに皇太子になれないこと。

 まあこれは俺的にはありがたいと思ってる。皇帝なんて責任の重い仕事なんてやりたくない。補佐で済むならその方が全然楽だしラッキーである。兄上がボンクラなら下剋上を考えても良かったが、多分皇族の遺伝子が優秀なのだ、兄上も俺と同じく何をやらせてもチートである。問題が見当たらない。

 そしてもう一つが、今目の前で俯いている黒髪の青年、エルレ・スターシス=シュヴァルトが婚約者だということ。

 この世界では髪や瞳の色に精霊の祝福が現れると言われている。分かりやすく説明すれば目や髪の色に使える魔法の素質が現れるってことだ。

 たとえば金なら光、赤なら火、茶なら土、緑なら風、青なら水となる。俺のように淡い金髪や銀髪の場合は多属性持ちが多い。
 たぶん光の三原色なんだろう。色が混ざると白になる原理である。
 この世界の人は必ずそのルールにのっとった色彩を身に宿している。

 しかし、そのルールを無視した存在が黒髪黒目である。

 黒髪あるいは黒目で産まれてきた者は闇魔法の素質があり、世界を滅ぼす魔王になりやすいとされている。そうならないよう、見つけ次第手厚く保護するという法律が各国にあり、バルバラルキア皇国にもあった。
 なんでも昔は世界的に黒持ちを迫害してたらしいんだけど、その都度国が滅ぼされ痛い目をみまくったらしい。

 エルレもその法律にのっとり保護された子どもである。15歳までは公爵家が後見人を努めていたが、今は黒髪黒目の者が授与される一代限りの伯爵位を持つ伯爵様だ。
 だがしかし、黒髪黒目は色んな特権があるものの、さすがに皇族との婚約がセットになっているわけではない。
 たまたま皇宮に来ていたエルレがこの赤薔薇の庭で泣いていて、声をかけ慰めた俺に惚れたのだ。そして俺が側にいることを望んでくれた。

 魔王にしないためにも黒髪黒目の希望は可能な限り聞くのが安全策でもあり、バルバラルキアの掟。
 第二皇子だし後継がいないほうが兄皇子とも揉めないしいいんじゃない、なんて考えもあって10歳のときに俺達は婚約者となった。

 前世で多様性の時代を生きていたおかげか、はたまたまだ幼かったからか、相手が同性だということはまったく気にならなかったし、俺としてはその頃には努力家でちょっぴり不器用だけど直向きに頑張る笑顔の可愛いエルレがけっこう好きだったので、婚約できて願ったり叶ったりだった。
 家族も俺が納得していたので不満はなかったようだ。

 だというのに、周りには波紋が広がった。

 エルレの見た目だけを取り上げて黒髪黒目は不吉だの、第二皇子が生贄になっただの、皇宮内でも市井でもマイナスイメージの噂が広がったし、「おいたわしや」と俺も直接言われたこともある。

 そもそも黒髪黒目は闇の魔法の素質があるというだけだ。才能や道具なんてものは使う人間によって善にも悪にもなりえる。
 それを知っていた前世持ちの10歳の俺はプンスコした。偏見も甚だしい。
 そもそも黒髪黒目なんて、元日本人の俺からすれば安心こそすれ不安感や嫌悪感など浮かびはしないのだ。

 これはもう俺がエルレを幸せにするしかあるまい。

 そう決意して、早8年。
 年々エルレは俺に対して壁を作るようになった。


 
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です! 表紙は、Pexelsさまより、Abdalrahman Zenoさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます! 文章にはAIを使用しておりません。校正も自力です!(笑)

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! 表紙は、自作です(笑)

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!

木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。 この話は小説家になろうにも投稿しています。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。