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第二章
68話
「わたくし、始祖エスカータと魔神オルトゥスのお話が大好きで、小さい頃からずっと憧れておりました。わたくしは王子ではありませんから、オルトゥス王とご一緒に国民のために何かを成すのはむずかしいでしょう。でもその憧れのオルトゥス王へ嫁げると知り、もちろん花嫁になりたいと申しましたわ」
クリスティア姫は昔を懐かしむように目を細めつつ言葉を続ける。
「他の姫たちはみな驚いていました。得体のしれない魔族の王の妻になど誰もなりたくないと、わたくしは変わり者だと。わたくしは腹が立ちました、わたくしが命知らずの変わり者と言われるのは構いませんわ。だけどオルトゥス王は今なお、エスカータとの約束を守り我が国のみならず、ヒト族の平和をお守りくださっています。それを得体のしれないなどと卑下するのは許せません。そうお思いにならなくて?」
「え、ああ、まあ」
姫がぷくっと頬を膨らませて怒っているのポーズを取ってから、俺に同意を求める。
姫の怒りはもっともだが、ヒト族の魔族に対する認識を思えば周りの反応ももっともだと思うので、曖昧な返事になってしまった。
「わたくしがオルトゥス王と婚約したのは九つの時でしたの。婚約が決まった時、セルドレット様がエスカータ城にいらして、わたくしに一通のお手紙をくださいました」
「手紙ですか?」
「ええ、オルトゥス王からのお手紙です。オルトゥス王からいただくお手紙はとても不思議でした。読み終えるとお花や時には小鳥に変化いたしましたの。最初は簡単な時節の挨拶からはじまりました、わたくしもお返事を書きました。机の上に置いておくと翌日にはなくなっていて、そのお返事がしばらくしてから同じ場所に届きました。アーニャたちに確認したのですけど、城の者が手紙をやりとりしているわけではなく、オルトゥス王が何かしらの手段でわたくしの部屋から手紙をお持ちになっていたようです。そのため気味悪がる者も多く、わたくしの専属侍女はアーニャだけになりましたの。そうそう、こちらのドレスも、オルトゥス王のお手紙が変化した贈り物なのですよ。アエテルヌムに来る日を楽しみにしている、と書かれておりましたわ」
クリスティア姫はそういうとドレスについているピンク色のレースに触れる。アエテルヌムへ来た最初の日に纏っていたドレスだ。姫にとてもよく似合っている。
オルトゥス王がどれだけクリスティア姫を愛しているのか、わかった気がした。
「お手紙はたわいもないことを書きましたわ。幼いわたくしには簡単な言葉でお返事をくださいましたし、とても楽しかった。10年以上もの間文通をしておりましたのよ」
手紙をやりとりしていてそれとなく人となりを知っていたから、クリスティア姫は我が王に対してほとんど恐怖心がないのかと納得した。
我が王からとても愛されているから、怖がる必要もない。
10年って長いよな。ん? 10年???
「あれ、九つの時から10年以上って……?」
「ふふ、やはりカデル様わたくしが年下だと思ってらっしゃいましたわね。わたくし今年で20になりましたわ。カデル様より年上ですのよ」
えええええええ?! それは詐欺じゃないのか??? どうみても14、5歳だと思っていた。
俺が驚いているのを見れば姫は楽しそうに笑う。
「今となっては一番下の妹より年若く見られる時もありましたから、カデル様だけが勘違いされているわけではないのですけどね。ふふ、わたくしは子どもっぽいと言われますし、実際わたくしは幼かったのです。愛というものを理解できていませんでした。オルトゥス王のことはお慕いしております。でもそれはアーニャとジークのような恋愛ではありませんでしたの」
「え……?」
クリスティア姫の衝撃的な告白に、俺は息を飲んだ。
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