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第二章
69.5話 幕間2(前)ティシウスカーク視点
主人公(カデル)不在のティス視点です。
59話のあと。森の屋敷でドタバタが起きた夜の話。
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「ねぇ? オルトゥス。キミはあの子を追いつめたいの? 可愛がりたいの?」
僕は黒髪赤目の魔神に聞いてみた。
ここはウェスペルの森の中。僕が昔住んでいた屋敷のサロン。さっきまで大騒ぎしていたみんなが寝静まった屋敷はとっても静かだ。
静寂の中、お気に入りの林檎酒を飲んでいたら旧友がやってきて、目の前のソファーにどさっと腰を下ろした。
僕の問いには答えずにギロリと睨んでくれば、勝手に人の酒を飲み始める。
まあ僕は寛大だから! そのくらいのことでは怒らないけどね!
「だいたいさぁ、さっきだってわざとカデルが襲われるように仕向けたよね」
「……」
「え? なに?無視するの?? 答えなくっても判っ……」
「ティシウス頼みがある」
「えーまたぁ?」
わざわざ僕の前に姿を現すってことは何かあるんだろうとは思ったけど、今ここにいるのだってこの旧友に頼まれたからだ。カデルたちに謝れって言われたのもあるけど、何かあったら手を貸すように言われてた。人の質問を無視して自分の頼みを通すとか、ほんとに自分勝手だし、過保護だよねぇ。
「今夜の皆の記憶を消して、新しい記憶に書き換えてくれ」
「んー? んん? 書き換えだけじゃなくて奪っちゃうの? うーん、それは僕だけだと難しいなぁ」
「城にアイが来ている。彼女にも手伝って貰えばいい」
「しょうがないなぁ。みんなって言ってるけどカデルのは残すんでしょ?」
「相変わらず覗き見か? 趣味が悪いな」
「覗いてないよぉ。キミの声が大きいだけだもん」
アイは僕と同じ、オルトゥスから伯爵の位を貰った夢魔と呼ばれる記憶や感情を食糧とする一族の娘だ。まあ、彼女の力があれば人狼やヒトの記憶を奪ってしまうのは容易い。本当にただ、バクバクっと食べてしまえば無くなっちゃうからね。
どこからともなく取り出したグラスで林檎酒を飲んでいるオルトゥスを観察してると、心底機嫌が悪そうにこちらを睨んでくる。
「カデルの記憶もなくしてあげればいいのに、あの子混乱しちゃうんじゃない? 一生懸命思い出すようみんなに訴えたりしちゃ……ああ、だからちゃんと消しちゃうのか」
僕は記憶を操作することは出来るけど、完全に消滅させることは出来ない。だから何かのきっかけで書き換える前の記憶を思い出しちゃうことがあるんだよね。でも、夢魔族に食べられた記憶や感情は戻らない。
それはそれで可哀想だなぁとは思うけど。あの仔犬のようにくるくる変わる態度や表情は大変愛らしい。それが混乱したり恐怖したりするのは……うん、可愛い!! 怯えるのも可愛いからいいか!
「ティシウス、君いま最低なこと考えただろう?」
「うん! キミほどじゃないけどね!」
ふふふーん! そんなカデルにまたちょっかい出すのも楽しそうだなぁ。怯えるかなぁ、怯えるよねぇ。怯えるのに逃げ出さず噛みつこうとして来る、その無知で健気な姿がとてもいい。僕の今の一番のお気に入りだ。
「ティシウスカーク。私を見ろ」
僕がルンルン気分で今後のカデルの遊び方を思案していたら、ひっじょーに低い声でオルトゥスに名を呼ばれた。あー、やり過ぎたかな。
うえええ、やだなぁ。支配するのは好きだけど、されるのは僕、嫌いなんだよねぇ。しかしそうはいっても抗えない。それが魔神の力だ。
「なんでしょうか陛下?」
僕は抵抗したくてもすることもできず、オルトゥスへ視線を向けた。
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