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スキルの活用に気付く
第18話 初めての依頼受注
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「これって初依頼なんだろなー」
バスケットを持ちながらユーフェは女将に教えてもらった鍛冶屋に向かっていた。彼女が持っているバスケットは鍛冶屋に渡す分であり、自らの分はアイテムボックスに収納していた。
可愛らしい少女がバスケットを持ち、ご機嫌な表情を浮かべて歩く姿は周囲から注目されてい流のだが、当の本人は全く気付いていなかった。
「こっちであってるよな? ……。ああ、あった。ここだ。まだ開いてないのかな? すいませーん」
少々道に迷いながらも鍛冶屋の看板を見つけたユーフェが嬉しそうに扉を叩く。
「あれ? すいませーん! 誰も居ませんかー?」
何度も扉を叩くが反応がなく、ユーフェは諦めそうになりながら扉を軽く押してみた。扉は鍵が掛かっていなかったようでゆっくりと開いた。
「えー。無用心すぎるだろ。すいませーん。宿屋の女将さんから食事を預かってきたんですけどー」
恐る恐る扉をくぐりながら店内に入るユーフェ。窓からの光は入っているので全体的に店は明るい感じではあるが、人の気配がせず防具や武器が並んでいる店内は若干怖かった。
「えー。誰も居ないのー? ここにバスケットを置いて帰ったら怒られ……きゃー!」
カウンターにバスケットを置いて帰ろうとしたユーフェだったが、小さな息遣いに気付く。そしてカウンターの奥を覗き込んで倒れている人を見付けて思わず悲鳴を上げるのだった。
◇□ ◇□ ◇□
「な、なんじゃ! 何事じゃ!」
ユーフェの悲鳴に驚いた老人が勢いよく飛び起きた。そして周囲をキョロキョロとし、ユーフェに気付くと一瞬鋭い目をしたが、害意が無いことが分かると安堵のため息を吐いた。
「なんじゃ客か。まだ開店時間じゃないぞ。ん? バスケットを持ってきてくれたのか?」
「あ、はい。宿屋の女将さんに頼まれました」
ユーフェの回答に老人は受け取ったバスケットを速攻で開けると、中からパンを取り出して食べ始める。
よほどお腹が減っていたのか一心不乱に食べており、ユーフェは仕事が終わったと安堵して店から出ようとした。
「うっ! くくっ!」
突然、老人から苦しそうな声が聞こえる。驚いたユーフェが近づくとパンが喉に詰まったのか、胸を叩きながら目を白黒させている老人の姿があった。
「寝起きでパンを一気に食べるからですよ! はい、飲み物です」
アイテムボックスからジュースが入った皮袋を取り出して老人に手渡す。奪い取るように皮袋を掴んだ老人は一気に飲み干すと、口を拭いながら大きくため息を吐いた。
「ふー。死ぬかと思ったわい。助かったぞ、嬢ちゃん」
笑いながら皮袋を返す老人にユーフェが苦笑を浮かべる。
「お金は取りますからね。ジュース代で銅貨1枚ですよ」
「分かっておるわい。アマンダの依頼で飯を持ってきてくれたお嬢ちゃんから、飲み物をタダで奪ったりはせんよ。ん? なんじゃ。中に紙が入っているな。紹介状か……」
老人がユーフェに銅貨1枚を払いながら、バスケットに手を入れて食事の続きをしようとしたが、中に紙が入っているのに気付くと内容を確認する。
そしてユーフェを見て顔をしかめると肉を頬張りながら話しだした。
「お嬢ちゃん。冒険者になるんなら、もうちっとキチンとした装備を身に付けんと。街で仕事を探した方がいいんじゃないかの?」
「こ、これは他に着る物がなかったからです! ここで装備を整えてからギルドに行く予定だったんですよ。そしたら女将さんが紹介してくれたんです」
服に使われている生地は見事だが、防御力は皆無にしか見えない様相に老人が残念そうな者を見る目でユーフェに語りかける。それを受けたユーフェは自覚があるのか、顔を赤らめながら慌てて言い訳をする。
そんな様子に老人は笑いながら何度も頷くと、一気に食事を終わらせユーフェの防具を見繕い始めるのだった。
バスケットを持ちながらユーフェは女将に教えてもらった鍛冶屋に向かっていた。彼女が持っているバスケットは鍛冶屋に渡す分であり、自らの分はアイテムボックスに収納していた。
可愛らしい少女がバスケットを持ち、ご機嫌な表情を浮かべて歩く姿は周囲から注目されてい流のだが、当の本人は全く気付いていなかった。
「こっちであってるよな? ……。ああ、あった。ここだ。まだ開いてないのかな? すいませーん」
少々道に迷いながらも鍛冶屋の看板を見つけたユーフェが嬉しそうに扉を叩く。
「あれ? すいませーん! 誰も居ませんかー?」
何度も扉を叩くが反応がなく、ユーフェは諦めそうになりながら扉を軽く押してみた。扉は鍵が掛かっていなかったようでゆっくりと開いた。
「えー。無用心すぎるだろ。すいませーん。宿屋の女将さんから食事を預かってきたんですけどー」
恐る恐る扉をくぐりながら店内に入るユーフェ。窓からの光は入っているので全体的に店は明るい感じではあるが、人の気配がせず防具や武器が並んでいる店内は若干怖かった。
「えー。誰も居ないのー? ここにバスケットを置いて帰ったら怒られ……きゃー!」
カウンターにバスケットを置いて帰ろうとしたユーフェだったが、小さな息遣いに気付く。そしてカウンターの奥を覗き込んで倒れている人を見付けて思わず悲鳴を上げるのだった。
◇□ ◇□ ◇□
「な、なんじゃ! 何事じゃ!」
ユーフェの悲鳴に驚いた老人が勢いよく飛び起きた。そして周囲をキョロキョロとし、ユーフェに気付くと一瞬鋭い目をしたが、害意が無いことが分かると安堵のため息を吐いた。
「なんじゃ客か。まだ開店時間じゃないぞ。ん? バスケットを持ってきてくれたのか?」
「あ、はい。宿屋の女将さんに頼まれました」
ユーフェの回答に老人は受け取ったバスケットを速攻で開けると、中からパンを取り出して食べ始める。
よほどお腹が減っていたのか一心不乱に食べており、ユーフェは仕事が終わったと安堵して店から出ようとした。
「うっ! くくっ!」
突然、老人から苦しそうな声が聞こえる。驚いたユーフェが近づくとパンが喉に詰まったのか、胸を叩きながら目を白黒させている老人の姿があった。
「寝起きでパンを一気に食べるからですよ! はい、飲み物です」
アイテムボックスからジュースが入った皮袋を取り出して老人に手渡す。奪い取るように皮袋を掴んだ老人は一気に飲み干すと、口を拭いながら大きくため息を吐いた。
「ふー。死ぬかと思ったわい。助かったぞ、嬢ちゃん」
笑いながら皮袋を返す老人にユーフェが苦笑を浮かべる。
「お金は取りますからね。ジュース代で銅貨1枚ですよ」
「分かっておるわい。アマンダの依頼で飯を持ってきてくれたお嬢ちゃんから、飲み物をタダで奪ったりはせんよ。ん? なんじゃ。中に紙が入っているな。紹介状か……」
老人がユーフェに銅貨1枚を払いながら、バスケットに手を入れて食事の続きをしようとしたが、中に紙が入っているのに気付くと内容を確認する。
そしてユーフェを見て顔をしかめると肉を頬張りながら話しだした。
「お嬢ちゃん。冒険者になるんなら、もうちっとキチンとした装備を身に付けんと。街で仕事を探した方がいいんじゃないかの?」
「こ、これは他に着る物がなかったからです! ここで装備を整えてからギルドに行く予定だったんですよ。そしたら女将さんが紹介してくれたんです」
服に使われている生地は見事だが、防御力は皆無にしか見えない様相に老人が残念そうな者を見る目でユーフェに語りかける。それを受けたユーフェは自覚があるのか、顔を赤らめながら慌てて言い訳をする。
そんな様子に老人は笑いながら何度も頷くと、一気に食事を終わらせユーフェの防具を見繕い始めるのだった。
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