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7話 村での混乱の序章
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「早い! 凄い! お姉ちゃん凄い! 格好いい!」
「はっはっは! そうだろう! そうだろう! お姉ちゃんは凄いからな!」
お姫様抱っこされているディモが嬉しそうに絶叫する。腕の中でテンション高くはしゃいでいる様子を見ながらヘレーナは楽しそうにしていた。改めてディモの姿を眺めると、その小ささに疑問を感じる。十五才にしては身体と喋り方が幼かった。喋り方についてはヘレーナが強制的に求めているのもあるが。
「苦労してるのだろうね」
「お姉ちゃん? どうかした?」
「なんでもないよ。気に入ったなら空中回転でもしようか?」
「それは次の時に! 今は村に少しでも早く帰らないと!」
ヘレーナの提案だったが、ディモは即座に断る。今は、一刻でも早く村に帰りたかった。父親は産まれた時にはすでにおらず、母親とも子供の時に死別しているが、商店街の人達は出来る限りの援助をしてくれていた。クズ野菜や切り落としの肉でもあってもディモにとってはありがたい話であり、今までなんとか暮らしてこれたのも商店街の人達が温かく見守っていたからだった。
「待っててね! 早く帰るから! お姉ちゃんがいるから魔物がいても大丈夫だよ」
ディモの小さな呟きを聞きながら、ヘレーナは口元を緩めて微笑みながら、さらに魔力を込めてスピードを上げるのだった。
ディモの育った村は人口は二〇〇名ほどであり、町に近い村として栄えていた。高くはないが石壁で村は囲まれており、物見櫓も設置されていた。最初に異変に気付いたのは物見櫓で周囲を警戒していてた村人である。
「魔物の姿が見えるぞ! それも数が多い! 速く逃げろ! 教会だ! 男は武器を取れ!」
物見櫓に設置されている音の出る魔道具を発動させた村人は、急いで降りると門を閉める。そして五分後には、それぞれが武器を片手に集まった。その中にマイクがいる事に気付いた道具屋の主人が驚く。
「おい! なぜお前がここにいる? 封印石を見に行ったのではないのか?」
「あっ! じいちゃん。えっと……。そ、それはその……。なんと言いますか……」
「封印石の様子はどうだったんじゃ! 馬で向かうと言っとったから、異変を感じて戻ってきたのか?」
「ええっと、なんと言いますか。封印石にはディモに行かせたと言いますが……」
「なにをしておるのじゃ! お前は……。まあよい。今はそれどころではない! マイク。お前は援軍を頼みに近くの街に行け」
怒られると思っていたマイクだったが、道具屋の主人は懐からお金を取り出すと、手渡しながら馬を使って近くの街に行くように伝える。それは自分を逃がす為の詭弁だと分かったマイクだが、手渡された皮袋の中身が大量のお金だと気付くとさらに驚いた顔になる。
「じいちゃん。これって店の売上じゃ……」
「集団の魔物に襲われるなんて今までなかった。このままでは村が壊滅するかもしれん。その前にお前だけでも逃げろ」
「じっちゃん。でも……」
二人が話している間に、魔物達は門に到着したらしく激しい音がしだした。物見櫓にいた村人が青ざめながら叫ぶ。
「魔物の数は五〇はいた。それに大型のゴーレムが最後尾にいた。黙ってて済まない!」
その報告に今まで平和な世界で暮らしていた村人達は呆然と立ち尽くした。大型のゴーレムは魔族が使役する魔物として有名であり、それが村に向かってきているのは近くに魔族がいると同じ意味だからである。
「魔族? 今までおとぎ話としてしか聞いたなかったのに……」
「女、子供だけでも逃がした方がいいんじゃ? 魔族が居るとなると嬲られて殺されるぞ! 魔物みたいに隠れてるだけでやり過ごせないだろ!」
「どこに逃げるんだよ! 今すぐ逃げても追いつかれるだけだろ! なんですぐに言わなかった!」
「言ったら混乱するだろうが!」
村人達が突然の出来事に混乱状態に陥る。逃げ出そうとする者、それを取り押さえようとする者。膝をついて発狂したように笑い出す者。まともに立っている者は一〇人も居なかった。その一〇人も悲壮な顔になっており、少しでも時間を稼いで家族を逃がそうと考えていた。
「あれはなんだ!」
突然、村人の一人が空を指さす。空に視線を向けると遠くから鳥にしては大きい影が村に向かった近付いてきていた。徐々に大きくなる影。門を破壊しようとする音に魔物の鳴き声。今までは味わう事のなかった状況に固まっている村人達だったが、門が破壊される音で現実に戻ってきた。
「うわぁぁぁぁ。門が破られたぞ!」
「お、俺は逃げるぞ! こんなところで死んで……。ぎゃぁぁぁぁぁ」
「戦え! 一匹でも多く倒すんだ!」
門の近くに居た村人が逃げだそうとするのを魔物は見逃さず背後から斬りつけ、倒れたところを別の魔物達が襲いかかった。連携もとれずに次々と倒されていく中で、戦う意思を見せていた者達はお互いをカバーし合いながら戦い始める。時間にして数分。村人達にすれば永遠の時間が流れていく中、ついにディモとヘレーナが到着した。
「お姉ちゃん! 頑張って!」
「任せな! ディモは村人達は魔物が居ない場所に連れて行きな。けが人は助けられそうな人からだよ!」
「……。分かった」
手に癒やしの魔石を握りながらディモが走る。村人達に向かって逃げるように指示しながら軽いけが人を癒やし始めた。無防備な姿を晒すディモを魔物達が見逃すはずもなく、奇声を発しながら襲いかかろうとする。
「おい! 私の可愛いディモになにするんだよ。よっぽど死にたいらしいね。どっちにしてもお前らは全員死ね!」
先頭に居た魔物を一刀で斬り伏せたヘレーナに魔物達の視線が集中するのだった。
「はっはっは! そうだろう! そうだろう! お姉ちゃんは凄いからな!」
お姫様抱っこされているディモが嬉しそうに絶叫する。腕の中でテンション高くはしゃいでいる様子を見ながらヘレーナは楽しそうにしていた。改めてディモの姿を眺めると、その小ささに疑問を感じる。十五才にしては身体と喋り方が幼かった。喋り方についてはヘレーナが強制的に求めているのもあるが。
「苦労してるのだろうね」
「お姉ちゃん? どうかした?」
「なんでもないよ。気に入ったなら空中回転でもしようか?」
「それは次の時に! 今は村に少しでも早く帰らないと!」
ヘレーナの提案だったが、ディモは即座に断る。今は、一刻でも早く村に帰りたかった。父親は産まれた時にはすでにおらず、母親とも子供の時に死別しているが、商店街の人達は出来る限りの援助をしてくれていた。クズ野菜や切り落としの肉でもあってもディモにとってはありがたい話であり、今までなんとか暮らしてこれたのも商店街の人達が温かく見守っていたからだった。
「待っててね! 早く帰るから! お姉ちゃんがいるから魔物がいても大丈夫だよ」
ディモの小さな呟きを聞きながら、ヘレーナは口元を緩めて微笑みながら、さらに魔力を込めてスピードを上げるのだった。
ディモの育った村は人口は二〇〇名ほどであり、町に近い村として栄えていた。高くはないが石壁で村は囲まれており、物見櫓も設置されていた。最初に異変に気付いたのは物見櫓で周囲を警戒していてた村人である。
「魔物の姿が見えるぞ! それも数が多い! 速く逃げろ! 教会だ! 男は武器を取れ!」
物見櫓に設置されている音の出る魔道具を発動させた村人は、急いで降りると門を閉める。そして五分後には、それぞれが武器を片手に集まった。その中にマイクがいる事に気付いた道具屋の主人が驚く。
「おい! なぜお前がここにいる? 封印石を見に行ったのではないのか?」
「あっ! じいちゃん。えっと……。そ、それはその……。なんと言いますか……」
「封印石の様子はどうだったんじゃ! 馬で向かうと言っとったから、異変を感じて戻ってきたのか?」
「ええっと、なんと言いますか。封印石にはディモに行かせたと言いますが……」
「なにをしておるのじゃ! お前は……。まあよい。今はそれどころではない! マイク。お前は援軍を頼みに近くの街に行け」
怒られると思っていたマイクだったが、道具屋の主人は懐からお金を取り出すと、手渡しながら馬を使って近くの街に行くように伝える。それは自分を逃がす為の詭弁だと分かったマイクだが、手渡された皮袋の中身が大量のお金だと気付くとさらに驚いた顔になる。
「じいちゃん。これって店の売上じゃ……」
「集団の魔物に襲われるなんて今までなかった。このままでは村が壊滅するかもしれん。その前にお前だけでも逃げろ」
「じっちゃん。でも……」
二人が話している間に、魔物達は門に到着したらしく激しい音がしだした。物見櫓にいた村人が青ざめながら叫ぶ。
「魔物の数は五〇はいた。それに大型のゴーレムが最後尾にいた。黙ってて済まない!」
その報告に今まで平和な世界で暮らしていた村人達は呆然と立ち尽くした。大型のゴーレムは魔族が使役する魔物として有名であり、それが村に向かってきているのは近くに魔族がいると同じ意味だからである。
「魔族? 今までおとぎ話としてしか聞いたなかったのに……」
「女、子供だけでも逃がした方がいいんじゃ? 魔族が居るとなると嬲られて殺されるぞ! 魔物みたいに隠れてるだけでやり過ごせないだろ!」
「どこに逃げるんだよ! 今すぐ逃げても追いつかれるだけだろ! なんですぐに言わなかった!」
「言ったら混乱するだろうが!」
村人達が突然の出来事に混乱状態に陥る。逃げ出そうとする者、それを取り押さえようとする者。膝をついて発狂したように笑い出す者。まともに立っている者は一〇人も居なかった。その一〇人も悲壮な顔になっており、少しでも時間を稼いで家族を逃がそうと考えていた。
「あれはなんだ!」
突然、村人の一人が空を指さす。空に視線を向けると遠くから鳥にしては大きい影が村に向かった近付いてきていた。徐々に大きくなる影。門を破壊しようとする音に魔物の鳴き声。今までは味わう事のなかった状況に固まっている村人達だったが、門が破壊される音で現実に戻ってきた。
「うわぁぁぁぁ。門が破られたぞ!」
「お、俺は逃げるぞ! こんなところで死んで……。ぎゃぁぁぁぁぁ」
「戦え! 一匹でも多く倒すんだ!」
門の近くに居た村人が逃げだそうとするのを魔物は見逃さず背後から斬りつけ、倒れたところを別の魔物達が襲いかかった。連携もとれずに次々と倒されていく中で、戦う意思を見せていた者達はお互いをカバーし合いながら戦い始める。時間にして数分。村人達にすれば永遠の時間が流れていく中、ついにディモとヘレーナが到着した。
「お姉ちゃん! 頑張って!」
「任せな! ディモは村人達は魔物が居ない場所に連れて行きな。けが人は助けられそうな人からだよ!」
「……。分かった」
手に癒やしの魔石を握りながらディモが走る。村人達に向かって逃げるように指示しながら軽いけが人を癒やし始めた。無防備な姿を晒すディモを魔物達が見逃すはずもなく、奇声を発しながら襲いかかろうとする。
「おい! 私の可愛いディモになにするんだよ。よっぽど死にたいらしいね。どっちにしてもお前らは全員死ね!」
先頭に居た魔物を一刀で斬り伏せたヘレーナに魔物達の視線が集中するのだった。
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